社 会 科 編
Ⅱ 一般社会科 (中学1年−高等学校1年,中学校日本史を含む)
(試 案)
昭和26年(1951)改訂版
文 部 省
目 次
まえがき
中学校 一般社会科
第2単元 わが国土はわれわれに,どんな生活の舞台を与えているか
第2単元 近代工業はどのように発達し,われわれの日常生活に,どんな変化を与えたか
第2単元 奈良や京都のような都は,どのような世の中で作られたか
第3単元 各地に城が建てられたころの世の中は,どのようであったか
高等学校 一般社会科
第3単元 村の生産を高め,人々の生活を向上させるためには,どんな努力をしなければならないか
第4単元 われわれの国の経済は,どのようなしくみによって動かされているか
第5単元 われわれの生活には,外国の文化や物資が,どのように取り入れられているか
この学習指導要領は,中学校第1学年から高等学校第1学年までの一般社会科および中学校日本史の指導計画を含むものである。この本の使用にあたっては,次の事項に注意されることを希望する。
1 社会科を取り扱うにあたっては,何よりもその一般目標を重視し,これに基いてすべての計画および指導がなされなければならない。
理 解
(1) 民主主義がわれわれの生活の幸福にどのような意味をもっているかの理解。
(2) 民主主義を現代のわが国の政治的,経済的,社会的活動に具体北することが,どんなに重要であるかの理解。
(3) 現代の政治的,経済的,社会的問題がどのような歴史的背景をもって今日に及んでいるかの理解。
(4) われわれの社会生活が,自然環境とどのような関係をもって営まれているかの理解。
(5) 各地の文化,たとえば言語・宗教・芸術・風習・衣食住の様式などにはいろいろの違いがあるが,その底には共通な人間性が横たわっていることの理解。
(6) 各地の人々の相互依存関係がどんなに重要であるかの理解。
態 度
(1) 人種・国籍・信条・性別・社会的身分などのいかんにかかわらず,他人の権利や業績を尊敬する態度。
(2) 社会の一員として自己の責任を自覚し,義務を果すとともに,自分の権利が尊重されることを主張する態度。
(3) 自分と反対の見解や,他人の意見に対して,広い心をもって接する態度。
(4) 人々と協力して,社会生活上の種々の問題解決に,みずから進んで参加する態度。
(5) 真理を追求し,正義の実現に努力する態度。
(6) 外国の文化を尊重するとともに,わが国の文化をいっそう発展させようとする態度。
(7) 生活を計画的に営み,日常の行動において,礼儀を正しくする態度。
能力・技能
(1) 書籍・雑誌・パンフレットなどから,あるいは観察・調査・面接などによって,適切な資料を見いだす能力・技能。
(2) 資料を科学的に処理し,正しい結論を得る能力と技能。
(3) 地図・統計資料・グラフ・絵画などを解釈したり,作ったりする能力と技能。
(4) 社会生活上の種々の問題を見いだし,社会生活をよりよくする計画を立てる能力。
(5) 人々といろいろな問題について討議したり,自分の考えをはっきり発表する能力。
2 この学習指導要領は,中学校および高等学校第1学年の社会科の指導計画をたてるにあたっての基準として編集されたものであって,このとおりに実施することを要求しているものではない。各学校では,これを参考にして,生徒の実情に応じた指導計画を立案されることが望ましい。
3 中学校の一般社会科は,第1学年は地理的分野,第2学年は地理および歴史的分野,第3学年は歴史および政治・経済・社会的分野の問題を中心として単元が構成されている。しかしまだ全体としてすっきりしない点もあるので,将来はさらに改善の機会を得たいと考えている。
4 高等学校の一般社会科は,1年間で,地理・歴史・経済・社会の広い分野について,ある程度の学習が行われるように計画されている。これがために実際の指導上には種々な困難もあろうが,このような計画になることは一般社会科の性格上やむを得ないところである。そこで教師の専門的教養いかんによって,あるかたよった分野の指導に重点がおかれることにならないように注意することがたいせつである。
5 中学校では,日本史の指導が一般社会とは別個になされてもよいことになっているが,たとえば第2学年および第3学年で毎週わずかな時間だけこれを行う場合には,日本史の知識を授けることがおもとなり,社会科としてのたいせつな目標の多くが見のがされがちになるであろう。このような欠点を少なくするためには,たとえば第2学年の終りのほう,あるいは,第2学年の終りから第3学年にかけて,集中的に行う計画をたてることも一つの方法であろう。
6 各学年の各単元ごとに,学習活動の例がたくさんあげられているが,これらが全部実施されることを考えているわけではない。また,たとえこれらの学習活動を,その順序にしたがって全部実施したところで,各単元の内容に関する系統だった知識や理解が得られるわけではない。それは教科書をよく読んだり,教師に説明してもらう活動は,あまりにも当り前のことであるので,この種のものの大部分は略されているからである。したがって各学校では,この中から適当と思うものを取り上げ,さらに学校としての独自の活動をもってこれを補って,断片的知識の獲得に終らないように注意しなければならない。
7 各単元の評価の例には,知識・理解・能力・態度などがあげられているが,これらはここに掲げた単元例を学習すれば,その結果としてこのようなものが出てくるのではないかとの,ある目やすを考えたものにすぎない。したがってこれらは決して最低限度を示したものではない。