第1単元 「学校や家庭の生活を明るくするには,どうすればよいか」
要 旨
生徒は,本単元の学習によって,細かい教育史の事実を記憶することよりも,自ら学ぶ中学校が自分自身にとっても,社会にとってもどのような意義をもっているかを理解しなければならない。また民法の条文を覚えるよりも,民主的な家庭生活がどんなものであるかを理解しなければならない。
本単元はもともと,新しい生活に対する心構えを養う導入的性格をもつものにすぎないし,この単元に盛られているような内容は,ホームルームその他で触れる機会が多いことであろうから,ここでは多方面にわたって深く学習することを望んでいない。したがって,その指導にあたっては,あまり時間をかけすぎて他の単元の学習に支障を来たさぬよう留意しなければならない。
目 標
2.学校・家庭・地方社会の生活は,それぞれ深い関係をもって営まれていることの理解。
3.集団生活の一員としての自覚を深めるとともに,自分の個性を知り,長所を伸ばし,短所を改める態度。
4.生徒として,家庭・学校その他身近な生活の改善に人々と協力できる機会をとらえて実行する態度・習慣およびこれに必要な技能。
内 容
(2) わが国の学校制度は,どのように発展してきたか。
(3) 終戦後,わが国の中学校教育の目標や教育課程には,どんな変化が起ったか。
(4) 教科の学習や特別教育活動の効果をあげるには,どうすればよいか。
(5) どうすれば学校生活で,民主的態度や技能を身につけることができるか。
(6) 学校生活の改善に対して,人々とどのように協力することができるか。
(2) 家庭生活は,われわれの健康や安全に,どんな役割を果しているか。
(3) 家族の人々の間の望ましい関係を発展させるには,どうすればよいか。
(4) われわれの家庭生活は,どのように移り変ってきたか。
(5) 現在の家庭生活では,どんな点が改善されねばならないか。
(2) 地方社会の人々は,われわれの教育の改善について,どんな配慮をしているか。
(3) 地方社会の人々は,われわれの家庭生活の改善について,どのように協力しているか。
(4) われわれは地方社会の生活の改善にどのように協力できるか。
学習活動の例
2.新旧中学校の制度を比較し,いまの中学校の特色をみんなで考えてみること。できれば明治以後の日本の教育制度がどのように発達変化したかを図に表わしてみる。
3.明治以後の教育のうつりかわりを知るために,老人・父母・兄姉などが,こどもの時代,どんな学校生活を送ったか,話を聞いてみんなでまとめてみること。また両親が使った教科書があったら,持ち寄って学級で展覧会を開いてみること。
4.学校日誌・学校沿革史・アルバムその他学校にある資料を基にして,自分の学校の創立以来の年表をつくり,また「自分の学校の歩み」と題して紙芝居に演出してみよ。
5.自分たちの毎日の学習方法を分類してみたら,どのようなものに分けられるだろうか。学習のしかたをもっと有効に能率的にするにはどうしたらよいか,みんなで話し合うこと。
6.生徒会やホーム ルームについて,われわれはどういう立場でその活動に参加したらよいか,みんなで討議してみること。
7.学校新聞やクラス新聞を編集して,自分たちの学校やクラスを楽しく明かるくするために努力する。またその新聞に次のような題目て論文や感想文を書いて寄稿する。
学校生活を楽しくする方法 わたくしの学校に対する責任
8.めいめいの家庭生活の一日に取材した脚本をつくり,上演すること。特にその中で民主的な点,民主的でないと思われる点を取りあげて討議してみること。
9.一家そろって楽しめるレクリエーションにはどんなものがあるか。たとえばラジオの番組の中からそれに適したものをさがしてまとめたり,自分のうちでできそうなレクリエーションの計画をたて実行してみること。
10.終戦後わが国の家庭生活はどんな点が変ったか。また法律上どんな点が変ったといわれているか。特に憲法第24条などを中心にして,新聞やラジオ,おとなの話などを参考にして,その理由を考えてみる。できれば封建時代や明治以後の家庭生活の特徴を歴史的に調べてみること。
11.自分のすきな世界の偉人について,家庭教育がどのようにその偉大さに影響しているかを調べてみる。
12.自分が両親から受けている指導や注意,たとえば健康や安全について特に注意されていることがらを書き並べて,学校の先生から受ける指導や注意と比較して考えてみること。
13.アメリカの家庭生活について書いてある書物を読んだり,話を聞いたり,適当な映画を見て,わが国の家庭生活と違っている点をあげてみる。特に親子・夫婦・兄弟間の関係を中心にして研究すること。
14.家庭生活を明るくするために,めいめいができることを箇条書にまとめ,実行してみる。
15.P・T・Aの役員の方を学校に招き,P・T・Aの目的や今年の事業計画について話を聞き,その活動がわれわれの学校生活にとってどんな意味をもっているか,みんなで討議してみること。
16.先生から教育委員会について話を聞き,その職責や権限を一覧表にすること。近くに教育委員会があったら委員や事務局を尋ねて,さらに詳しくその制度の意味や仕事の内容について研究してみること。
17.学校日誌によって,どんな人々がどんな用件で学校を訪問したり,利用したりしているか調べ,地方社会の学校に対する助力や利用について話し合う。
18.児童委員・少年保護員・警察署の少年係・文化団体の役員などを訪問し,どんな仕事をしているか,またそれが,われわれの生活,特に校外活動などとどんな関係をもっているか話し合うこと。
19.民生委員や婦人団体の役員を尋ね,その地方の家庭生活の改善についてどんな働きをしているか話を聞き,クラスに報告すること。
20.公民館・図書館・公園その他の公共施設がどんな目的で設けられているか,現在の利用法について改害すべき点はないか,その利用状況などについて調べること。
21.地方社会のために,われわれの手でできること,たとえば慈善運動・交通安全・作業奉仕などを計画して実際に行ってみること。
22.自分たちは,学校・家庭・地方社会などからどんな恩恵を受けて生活しているか,具体例をあげて,作文に書いてみること。
評価の例
2.次の事項について,知識・理解はどの程度明確になったか,またそれをいっそう有効に利用することができるようになったか。
義務教育,六三制,ホームルーム,生徒会,クラブ活動,教育制度,教育基本法,学校教育法,教育委員会,P・T・A,男女共学,民法,家族制度など。
(2) 事実・特色などの例
② 憲法第26条と新しい教育制度との関係。
③ 明治以後の教育のうつりかわりの概要。
④ おもな外国の教育制度と日本の比較。
⑤ いい中学校・いい中学生の備えていなければならぬ条件。
⑥ 地方社会と学校との関係。
⑦ 家庭生活の意義と社会との関係。
⑧ 戦後における日本の家庭生活の変化。
⑨ 日本の家庭生活の特色と改善すべき点。
(2) 服装や言葉づかいを中学生らしくする。
(3) 学校で男女よく協力する。
(4) グループ学習の場合,全員が協力する。
(5) 学校や教室を美しく気持よくする。
(6) 積極的に,自由な気持で質問したり発表したりする。
(7) 予習復習などをきまりよくする。
(8) 家庭の仕事を進んで分担する。
(9) 両親や教師に感謝する。
(10) 地方社会の生活改善に自分のできる範囲で積極的に協力する。