要 旨
生活様式も種々な角度から見ることができるが,ここではおもに基本的な衣・食・住の生活様式を特にとり上げることにした。衣食住の生活様式は,自然を離れて考えることはできないものであるから,世界諸地域の自然環境の有様をよく理解させることが先決問題である。世界の人々は自然にどのように適応しまた自然の不利な条件をいかに克服しているかを理解して,その土地土地の特異性を認めると同時に,外に現れた様式は違っても,人間として共通な基本的欲求を満たそうとして,努力していることを深く認識しなければならない。また世界の国々の人々の努力が,いかにわれわれの生活に深く結びついているかをも理解しなければならない。これはやがて物事を世界的に考え,世界平和に貢献しようとする自覚への基礎をなすものである。
なおこの単元では,前の単元と同様に,生徒のこれまでの知識や理解を,世界地誌的に系統づけることも目ざしているが,生徒の必要に応じて,日本に比較的近い地域と遠い地域とに分けた2単元に構成することも考えられるであろう。
目 標
2.各地の住民の生活様式と自然との間には,密接な関係が見られる場合があることの理解。
3.自然は,各地の人々の衣食住の様式に決定的な力をもっているものではないことの理解。
4.生活を豊かにするために,人々は自然の不利を補ったり,自然をいっそう有効に利用しようとして,いろいろな努力をしていることの理解およびそれらの努力に対する尊敬の態度。
5.自分たちと,人種・国籍・衣食住の様式が違っている人々に対する正しい理解。
6.比較的に縮尺の小さい地図を描いたり,読んだりする技能。
内 容
(2) 世界のおもな山地・高原・丘陵などは,どこに,どのように横たわっているか。
(3) 世界のおもな平野は,どのように分布しているか。
(4) 平均気温や気温の年変化は,地域によってどのように違うか。
(5) 雨の降り方には,地域によってどんな違いが見られるか。
(6) 地表の植物帯は,どのようになっているか。それは地形や気候と,どんな関係をもっているか。
(7) 地表は,どんな国々に分れているか。
(2) 大昔の人々は,アジアのどのへんで,どんな生活を営んでいたか。
(3) アジア季節風帯は,どうして大きな人口をささえていることができるか。
(4) アジア季節風帯の中でも,地域によって自然にはどのような違いがあるか。そして人々の食料生産,衣服や住居の様式には,地域によってどんな差があるか。またわれわれの衣食住の様式と,どんな点が共通しているか。
(5) 中部および南西アジアの人々は,乾燥した自然を舞台として,どんな特色のある生活を営んでいるか。
(6) シベリアの森林地帯では,どういう人々が,どうやって生活をたてているか。
(2) ヨーロッパの人々の食料生産・衣服・住居の様式は,地域によってどのように違っているか。そしてそれらの様式の中の,どういう点が各地域の自然と特に深い関係をもっているか。
(3) われわれの衣食住の様式には,ヨーロッパ的のものが,どのように取り入れられているか。
(4) ヨーロッパとアフリカとでは,住民や人口の分布状態が,どのように違っているか。
(5) 古い文明が発生したにもかかわらず,アフリカの開拓はなぜあまり進んでいないのか。
(6) アフリカには原始的生活が,どのように残されているか。
(2) ヨーロッパから新しく移住した人々は,南北アメリカの新天地を,困難な事情にうちかちながら,どのように開拓したか。
(3) 日のアメリカは,衣食住の原料生産の上で,世界的にどんな地位を占めているか。
(4) アメリカでは,原始的生活が,今日まだどういう人々によって,どこにどのように営まれているか。
(5) われわれはアメリカの人々の日常生活から,どんな点を学んだらよいか。
(6) オーストラリアやその付近の島々には,どんな人々が住み,土地の開拓は,どんな程度まで進んでいるか。
学習活動の例
2.世界のおもな国の首府と人口100万以上の都市を調べて,白地図に記入する。そのうち首府は赤印をつける。
3.経緯線の引き方のちがっているいくつかの世界地図によって,大陸の形や大きさの割合が地球儀とどのように違っているかを調べる。またそれらの図法の長所や短所について話し合う。
4.世界の白地図に次の事項を記入する。
6.
(2) 世界の夏の等温線の走り方にはどんな特徴があるかを調べる。また日本の夏の気温と同じくらいのところは,世界ではどのへんかを調べる。
(3) 気温表から,夏と冬との気温の差の大きいところと小さいところを調べて,それは何に原因しているかについて討議する。日本は同緯度の他の地方と比較して気温の上からどんな特色があるかについても討議する。
8.世界の森林の分布図から,森林の分布状況が気候によって,どのように違っているかについて討議する。
9.地図によって世界の草地と荒地の分布をよみ,それが気候とどのような関係があるかについて討議する。
10.世界の人口の分布状況を調べて,それが地勢や気候とどのような関係があるかについて話し合う。
11.アジア州の地勢図を中心に季節風帯,寒冷地帯および乾燥地帯の分布状況を調べて各地の気候の特色を明らかにする。また一方では,各地域の人々の日常の服装の写真を集めて,それらがそれぞれの地域の気候と,どのような関係があるかを討議する。できれば住居の絵や写真も集めて,同様な討議をする。
12.アジア各地で土地の利用状況がどのように違っているか,人口がどのように分布し,大きな都市がどのように発達しているかを調べる。
13.アジアで割合に早く農業の行われた地域はどこであるかを歴史の書物で調べる。
14.アジアの季節風とはどんなことか,なぜそのようなことが起るか,その影響する範囲はどのへんかについて,これまでに学習したことを整理する。
15.アジア季節風帯について,夏と冬との気温,雨量,風向のちがい,その地域の農産物と産地,ならびに人口の多い都市の分布状況を調べ,アジア季節風と人々の生活とどんな関係があるかについて討議する。
16.稲作の分布状況から,その栽培と気候とどのような関係があるかについて考えてみる。また世界で米を常食とする人々の住んでいる範囲を調べ,人々の食事のしかたは,われわれとどんな点で同じであったり,違っているかの話を聞く。
17.米が多く生産される国々の単位面積の生産高と日本のそれと比較した表をつくる。その相違の理由を自然条件や栽培様式から考えてみる。
18.茶のおもな生産国を調べてその産額をグラフにする。茶を輸出している国国を調べて,茶が栽培される地域にはどんな特色があるかを見いだす。
19.アジア季節風帯の農業のやり方について次の諸点を調べる。
(2) 栽培地で余る農産物としてどんなものがあるか。
(3) 土地はどの程度に利用されているか。
(4) 畜力や機械力はどの程度利用されているか。
21.蒙古(もうこ)の遊牧民の衣食住の様子には,どんな特色があるかを調べ,それらと蒙古の自然との関係を討議する。
22.世界でゴムの産する地域をあげ,それぞれの生産高を比べる。また栽培状況の写真を集めたり,栽培の歴史やその中心地に関する書物を読んで発表する。
23.インド・インドシナ半島・フィリピン・インドネシアなどの住民の生活について書いてある本を読み,われわれとどのような点で類似したり,違っているかを考える。
24.アジアの熱帯を中心として,マラリヤその他の流行病が住民の生活にどんな影響を与えているかを調べたり,現地へ行ったことのある人から話を聞く。次に他の大陸の熱帯についても調べてみる。そして世界保健機関(WHO)がそれに対してどんな仕事をしているかを調べる。
25.シべリアの諸都市の気温と雨量との年変化を表にして,わが国とどんなに異なるかを比べる。さらにシべリア特に森林地帯やツンドラ地帯の人々の日常生活について書いてある本を読んでその話をする。
26.中央アジアの農業について,気候・地勢との関係,およびおもな農産物の種類,生産高および人々の農業活動のやり方について調べる。
27.ヨーロッパとアフリカの地勢図を見て,おもな山脈・平野・川などの有様を読み,ヨーロッパとアフリカとでは地勢の上からどのような相違があるかについて話し合う。
28.ヨーロッパとアフリカの土地利用図を見て気づいたことを話し合う。
29.地中海沿岸地方・西部ヨーロッパ・東部ヨーロッパ・北部ヨーロッパの気候の特色とその原因について調べ,ヨーロッパを南から北へ,および東から西へ旅行したと仮定して,自然の景色がだんだんに違ってくるようすを作文に書いてみる。
30.ヨーロッパ人の衣服や住居のようすが,地域によって特にどういう点が違っているか,もしあまり違わないとすれば,それはなぜかなどについて討議する。
31.ヨーロッパ各国の住居や風俗の写真を集める。
32.ヨーロッパ各地のおもな農産物を調べ,これが自然とどのような関係があるかについて考える。特に麦類の栽培地域について,北はどのあたりまで栽培されているかを明らかにする。また,ヨーロッパ人の常食が地域によってどのように違うかも調べる。
33.ヨーロッパの地図によって,おもな都市の分布状態の特色および,特に重要な都市の位置や名前を調べる。さらに特に都市が多く発達している国や地域では,食料をどこからあおいでいるかについても調べる。
34.デンマルク人が1864年の戦争の荒廃から,どのようにして立ち上がったかを調べる。また,デンマルクの農牧について外国との依存関係や経営法などを調べ,わが国の農牧業と比べて見習うべき点があるかどうかを討議する。
35.オランダは海と戦っている国であるといわれているが,それはなぜだろうか,人々がどんなに一致協力して自然の不利を克服しているかの話を読んだり,聞いたりして,その要約を学級で話す。
36.近代工業の盛んなイギリスでは農牧生産はどのように行われているだろうか。イギリスの主要食料はどこから供給されているかについて調べる。またイギリス・フランス・ドイツなどの国々の人々の戦後の衣食住の状況についてよく知っている人の話を聞いて,学級へ報告する。
37.ヨーロッパのおもな国々の人々の日常生活(衣食住・産業・交通など)の特色を学級で手分けして表にまとめる。
38.われわれの衣食住の様式で,ヨーロッパ的なものをあげて,その適不適について討議する。
39.アフリカの開拓が遅れた理由を,地勢・気候の上から考えて討議する。また,人口や都市の分布図から開拓が比較的進んでいる地域はどこであることがわかるか,それはなぜかを考える。
40.ナイル河流域の土地利用の歴史的な発展について調べる。昔この地域に文化が発達した原因について考えてみる。
41.世界のさばくの分布状況とこの地帯の自然の特色を調べる。これらの乾燥地帯と世界の牧畜の盛んな地帯との関連性や,さばく地方の利用開発になんらかの方法はないものかについて討議する。
42.リヴィングストンや,スタンリーの探検記を読んで,どんなにこれらの人人が努力したか,その結果アフリカ内部について,どのようなことが明らかにされたかを学級に報告する。
43.ヨーロッパとアフリカの相互依存関係について調べる。
44.新大陸開拓の初めのころの事情について書かれている本を読んで,人々が困難に打ちかって生活を打ち立てていったようすを話し合う。
45.日本から南北アメリカに移住した人や,その子孫は,どのへんに多く住みどんな仕事に従事しているかを,事情の明るい人に聞いてみる。
46.地図によって南北アメリカの山脈・川・平野などを調べ,その名前を覚えたり,その大きさや広さをわが国のものと比べてみる。
47.南北アメリカの国やおもな都市の分布図によって,それらの分布の特色について話し合う。またおもな都市の名まえや位置を各自がどの程度知っているかを確かめる。
48.南北アメリカ各地の人々の生活状態を表わした写真を集めて話し合う。
49.北アメリカの土地利用図を農業・牧畜・森林に区別してつくり,土地利用が地勢・気候とどんな関係にあるかを調べる。
50.アメリカ合衆国の農牧業について,おもな生産別の分布図を調べ,それをもとにして,農牧業がどのように自然と関係をもって行われているかを話し合う。
51.北アメリカの事情をよく知っている人の話に北アメリカの人々の日常生活の話をしてもらう。その話や新聞・雑誌の記事を基にして,アメリカ合衆国の農村の生産の方法や生活状態を,わが国の農村と比べる。
52.世界の綿について次のことを調べる。
54.いろいろな資料によって,アメリカインディアンが土地の事情によって,どのように違った生活をしているかを調べる。
55.北部アンデス地方では,人々は,どういうところに多く住んでいるか,おもな都市はどのようなところに発達しているか,それはなぜかを調べる。
56.南アメリカの農牧の生産物分布図を描き,おもな輸出港を調べる。
57.アマゾン川流域の地勢・気候・動植物,および開発の状況や生活に適するか否かについて調べる。
58.アルゼンチン・ブラジル・チリーの自然環境や,人々の生活状態おもな都市の発達状態などについて書いた本を読んだり,先生の話を聞く。
59.オーストラリアの風景を示す写真を集め,風景の特色について話し合う。
60.オーストラリアやニュージーランドの植民の歴史を調べ,植民以前と今日とでは,自然と人々の生活との関係が,どのように変っているかを考える。
61.世界の牧羊について次のことを調べる。
評価の例
2.次の事項についての知識・理解は,どの程度に確かになったか,またそれをいっそう有効に利用することができるようになったか。
大陸やおもな島,および大洋やおもな海の名まえ,世界のおもな山脈・高原・盆地・平野の名まえ,おもな川の名まえ,気候に関する用語や術語〔気温・雨量・温度・等温線・寒帯・(冷帯)・温帯・熱帯・乾燥地帯・季節風・易貿風・大陸性気候・海洋性気候・地中海性気候・草地・さばく・熱帯雨林など〕,黄土地帯・黒土地帯などのような地域名,おもな国名,おもな都市名など。
(2)事実・原則・特色などの例
② 各大陸の自然環境の大要(地形や気候の特色)。
③ 自然環境と衣食住の様式との関係は,地域によってさまざまであること。
④ 各大陸の開拓状態および各地域の特色のある衣食住の様式。
⑤ われわれの衣食住の様式は,外国の影響をいろいろ受けていること。
⑥ われわれの衣食住は,物質的にも外国と深い関係をもっていること。
⑦ 原始的な社会生活を営んでいる人々も,その能力はわれわれよりも生れつき劣っているわけではないこと。
⑧ 世界各地域は,先人の非常な努力によって開拓されたものであること,および現在でも各地の人々は,自然の不利な条件に屈せず,これをいっそう有利に利用しようと,さまざまな努力をしていること。
⑨ 世界のおもな国々,人口,大都市の名まえ,分布状態などの概略。
② 種々な資料を集めること。
③ その他,単元2の場合に示された技能や能力を世界に拡大して養うこと。
② 生活様式の異なる人々に対しても,人権を尊重する。
③ 自然の不利に屈しない。
④ 諸外国の地理や生活状態について書いてある本を読む。