要 旨
しかしあまり多くのことをねらうと,いたずらに内容ばかり広がって,かえって焦点がぼかされることになるから,ここでは国土の生産を高める問題に学習の重点をおいたほうがよいであろう。
目 標
2.わが国の農・山・漁村の生活の向上が,日本の再建にどのような重要性をもっているかの理解。
3.国土の総合的開発の必要性およびそれがわが国でこれまでどのように行われてきたかの理解。
4.いなかの生産生活の向上と民主化のために,戦後どのような改革が行われたか,また現在どのような問題が残されているかの理解。
5.自然の災害を克服し,自然環境を積極的に利用開発しようとする意欲。
6.いなかの生産生活の改善に積極的に参加する態度。
7.実生活や野外の諸事象の中から,学習の目的に必要な資料を見いだす能力と技能。
内 容
(2) わが国の農林・水産業はその経営や技術の点で,諸外国のそれとどのように違っているか。
(2) 土地の生産力を高めるために,技術の面でどのような努力がなされてきたか(品種改良・肥料の改善・機械の利用など)。
(3) 経営を合理化して生産を高めるために,どのようなくふうが行われてきたか。
(4) 国土の生産を高めるために,現在なおどんな問題が残されているか。
(2) 諸外国では総合計画によって,国土の開発に貢献した例にどのようなものがあるか。
(3) 現在わが国で実施されている開発計画には,どのようなものがあるか。またそれは日本の再建のためにどのような役割を果そうとしているか。
(2) 協同組合は,生産の合理化や生活の向上にどのように貢献しているか。
(3) 村の人々の生活を合理化するために,われわれとしてはどんな協力ができるか。
学習活動の例
2.土地利用に関する統計書によって,県やわが国の総面積に対する耕地面積・可耕地・森林・原野等の割合を計算し,おもな外国のそれと比較する。さらに耕地1方キロに対する人口密度や農業人口程度も計算して,これらの結果から県やわが国の土地利用の特色(数字に現れた)を箇条書きにしてみる。
3.平地あるいは山地を含む任意の幾枚から5万分の1地形図をよく読んで,わが国の平地および山地の土地利用には全体としてそれぞれどんな特色があるか(水田・畑・森林・原野などの分布と地形との関係)について話し合う。
4.地理調査部発行の日本土地利用図を読んで,水田・普通畑・桑畑・果樹園・森林・原野のそれぞれの分布を大観し,これについて話し合う。次にこれらの分布には,地域的に何か特色がないかどうかを研究してみる。
5.わが国の水田の裏作率の図を見て,その分布がどんな自然条件と最も深い関係をもっているかを考える。
6.郷土付近の地形図(5万分1のあるいは2万5千分の1)を土地利用の種別によって色分けして,その特色をつかむ。さらに野外に行って,先生から実地観察の指導を受ける。
7.外国,たとえばアメリカ合衆国の耕地の写真を見て,わが国の耕地の状態とどんな点が違うかを話し合う。
8.上のことについて書いてある本を読んでこれを学級で紹介する。
9.ヨーロッパ・アメリカ合衆国・オーストラリアなどの農業や林業のやり方を示す写真を見て,日本とどのような点で違うかを話し合う。
10.日本の農業や林業のやり方の特色について書いた本を読み,上の話合いの結果がはたしてあたっていたかどうかを確かめる。そして今後特に改善すべき点についてメモをとり,身近な地域においてその実行を妨げているものは何かを討議する。
11.日本人には自然の不利に対して積極的に挑(ちょう)戦してこれを克服する性格が養われにくかったといわれるが,これははたしてあたっているかどうかを討議する。そして,もしそういう点が認められたとすれば,それはなぜかについても考えたり,先生の意見を聞く。
12.ある任意の地域を実地調査して,そこには自然の不利を補う努力としてはどんなことが観察できるかを地図に書き入れ,学校へ帰ってから整理して表につくる。
13.篤農家や生産の向上に貢献した人々の業績を調べてさらにその努力が村の生産の向上にどんな影響を与えたかを調べる。
14.明治の初め以来,日本の耕地面積や反当収量は,どのように変化してきたかを書物で調べ,これについての説明を先生にしてもらう。
15.北海道の米作限界の進展の事実およびその裏にはどんな努力が払われたかを調べる。それと同時に,米作に主力をおいた政策に対して,どういう意見があるかも調べて報告する。
16.農業(水産)試験所を尋ね,わが国の作物の品種の改良や肥料の改善などの面でどんな努力が払われてきたかの話を聞く。
17.農業(漁業)協同組合の役員など,村の生産について指導的地位にある人々から,これまでの経営にはどんな不合理な点があったか,これをどのように改良しようとしているかなどについての話を聞く。
18.わが国土の生産を高めるための今後の問題と題して,これまでに学習したことの中から,これにあたる事項を黒板に書き上げてみる。
19.総合開発計画とはどういうことかを調べ,戦時中のものと現在のそれとはどういう点が違うかを明らかにする。
20.戦後に総合開発の必要がさけばれるようになった理由について調べてみる。
21.アメリカ合衆国のT・V・Aについて書いてある本を読み,先生から補足的な話をしてもらう。そしてT・V・Aの目的・事業・計画・結果の中で民主主義がどのように生かされているかを討議する。
22.T・V・Aの写真や絵を集める。
23.新聞や雑誌の記事からヨーロッパやアジアにおける総合開発の例を調べる。またそのようなニュースの信頼度について討議する。
24.わが国の代表的総合開発・計画例の2,3について,それぞれがどういうことを目標として,どんな計画をたてているか,これらを完成するにはどういう困難があるかを調べる。
25.わが国の総合開発計画およびその実施状態に関する写真を集めて,T・V・Aの写真といっしょに展覧する。
26.土地の開発に原子力が利用されるようになることを想像して,そのような時代を早く招来するための社会条件について考えてみる。
27.郷土付近を中心として,総合開発を行うとすれば,どんな計画が望ましいかを討議して,その結論について専門家の意見を聞く。
28.日本の未開発資源としては,どんなものが考えられるかを調べて報告し合う。
29.わが国で,農地改革が行われた事情について,本で読んだり,先生の話を聞く。
30.郷土村近について,農地改革によってどれだけの土地が開放されたか,改革以前と以後とでは,農民の生活や生産にどのような変化が見られるかについて,専門家に話を聞く。
31.農業(漁業)協同組合の組織や仕事およびこれらがいなかの生活の向上にどのように役だっているかについて調べる。
32.いなかの生活の向上および民主化のために,現在どんな努力がなされているか,さらに今後いっそう努力しなければならない方面は何かについて,有識者の意見を聞き,その結果を発表し合う。
33.都会よりもいなかが保守的であるといわれることがあるが,はたして事実であるかどうかについて討議する。もしそのような傾向があるとすれば,その原因およびこれを改善する方法について考えてみる。
評価の例
2.次の事項についての知識・理解はどの程度明確になったか,またそれをいっそう有効に利用することができるようになったか。
単作地帯,多角的経営,有畜農業,酪農業,二毛作,二期作,裏作,輪作,換金作物,工芸作物,集約農業,粗放農業,農業の機械化,遠洋漁業,沿岸漁業,漁区,総合開発計画,国土計画,地方計画,都市計画,耕地整理,農地改革,農地の交換分合,天然資源の保全など。
(2) 原則・事実・特色などの例
② 土地利用から見た日本の地域的特色。
③ わが国の農林業の技術および経営上の特色。
④ わが国近海の水産資源の概要。
⑤ 総合開発の意義およびわが国における総合開発の必要性と実施状況。
⑥ 外国において総合開発が成功した実例。
⑦ 国土の生産を高めるために技術と経営面で改善すべき点。
⑧ 地改革の意義と成果。
⑨ 農村に於ける協同組合の意義と成果。
(2) 5万分の1程度の縮尺の大きい地図から,土地利用と自然との関係を読み取る。
(3) 実地で観察する。
(4) 自然の威力に対して屈しない。
(5) 郷土の開発に協力する。
(6) 農村生活の合理化に協力する。