学 習 指 導 要 領
家 庭 科 編
(試 案)
昭和二十二年度
文 部 省
目 次
はじめのことば
学 習 指 導 要 領
(試案)
家庭科すなわち家庭建設の教育は,各人が家庭の有能な一員となり,自分の能力にしたがって,家庭に,社会に貢献できるようにする全教育の一分野である。
この教育は家庭内の仕事や,家族関係に中心を置き,各人が家庭建設に責任をとることがてきるようにするのである。
家庭における生活は各人の生活にとって,大きなまた重要な部分であるので,おのおのは家庭生活において,知的な,能率の高い一役をなすのでなければならない,このために,学校において,家庭建設に必要な要素を改善し,のばして行くような指導を与える必要がある。
小学校においては,家庭建設という生活経験は,教科課程のうちに必要欠くべからざるものとして取り扱わるべきで,家庭生活の重要さを認識するために,第五,六学年において男女共に家庭科を学ぶべきである。これは全生徒の必須科目である。中学校においては,家庭科は職業料の一つとして選択科目の一つになる。大部分の女生徒はこの科を選ぶものと思われるが,中には男生徒もこれを選ぶかも知れない。
家庭は社会の基礎単位であるので,次の時代にみんなが平和な生活をするか,戦争を好むか,信頼ある,愛情に富んだ豊かな生活をするか,不安な憎しみに満ちた貧困な生活をするかを決定する男女の性格を培っているのである。その人々の性格は家族のうちのおのおの異なった個人個人が,家族という関係において,一般的な(平生の,日常の)家族生活のうちに,互に刺激し合い,反応し合いながら行動して行くうちに,発達するのである。成長の自然な段階として,人々が家族間で,互にどんなふるまい方をするかが非常に重要である。そこで,この重要さのために,家庭科の教科目の中に家族関係の研究は必要欠くべからざる課程とすべきで第五,六学年に始まる家庭科の中にも,必須のものとすべきである。裁縫という科目で,今まで女子にのみ与えられていた科目に代わったこの新しい第五,六学年の家庭科を,今までの古い考え方で考えないように,その目的も内容も,考え方も,今までとは全く違ったものであり,すべて家庭生活を営むことの重要さを基礎にしていることを,よく注意すべきである。