第八章 第七学年の家庭科指導

 

 第七学年の指導内容

単元(一) 家庭生活

単元(ニ) 備えある生活

単元(三) 食物と栄養

単元(四) 備えある生活(続き)

単元(五) 幼い家族の世話(乳幼児の生活)

 

1 目   標

(1) 幸福な家庭の建設に,自分がどんな役割りを持つべきかを理解する。

(2) 家族のものと意見が違った場合どうして解決して行くか,又家族とおたがいに協力して美しい間柄を持ち続けるにはどうしたらよいかを学ぶ。

(3) このような努力が,わが国の家庭の向上に貢献することを理解する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 過去二年間の家庭科学習の結果,自分の寄与によって,家庭が実際によくなったと思われることを考えて来て,報告する。例えば,自分の意見がとおってよくなった事とか,自分のした仕事が役にたっている事とか。これによって,たがいに新しい級友の家庭事情に就いて理解を持ち親しみをいだくことができる。

(2) 一方,自分の意見がとおらなくて残念に思っていることに話が触れる。例えば,台所の模様変えが母の気に入らないとか,栄養本位が味覚本位の家族と調和しないとか。これらの場合どんな態度をとったか,どう処理するのが適当であるかを話し合う。

(3) それについて,両親に対する要求のとおらない幾つかの場合が,だれにもあることが気づかれる。例えば,

 など。そこで,それらの理由に就いて話し合う。

(4) これらの場合に執るべき態度について討議する。例えば前のaについて,

 これらの討議の結果から,解決の根本として,家族がたがいにわかり合い認め合い,みんなが自分の責任を重んじながら,協力して行く態度の必要であること,それによって幸福な家庭が営まれることを知る。

(5) 更に,幸福な家庭の営みは,その日その日の暮しに追われてばかりいないで,将来への見とおしと計画とが必要であることを決定し,衣食住その他の計画的生活の研究に発展させる。

3 指導結果の考査

(1) 家庭の協力に就いて,適当な題の作文を書かせて,記述尺度法で考査。

(2) 選択法,完成法などで家庭生活の態度についての理解を考査。

 

 新聞の社会記事には,毎日のように,思わぬ災害に襲われた人々とか,とっさの機転でうまく危険をのがれた話とか,わるい病気の流行や犯罪とかが伝えられる。戦災のため,にわかに身寄りのない気の毒な境遇におちた人のことは,目のあたり見もし聞きもする。これらの見聞にもとづき,静穏安全な家庭生活を維持するために,日常の用意としてどんなことを心がけたらよいかの研究計画を立てる。

 

1 目   標

(1) 貯蓄の増殖に興味を持つように預金や貯金の意議を研究する。

(2) 一層節約の習慣を養う。

(3) 小遺い帳などの記帳の形式を習得し,これを生活に役立てるようにする。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 家庭の経済の失調を防ぐためには,どんな心がけが必要かを話し合う。

(2) 節約には,どんな要領があるかの話し合い。

(3) 貯蓄にどんな方法があるか,どれが簡便であるか,どれが有利であるか,どれが安心であるかをざっと話し合う。

(4) 貯金をふやすには,どんな要領があるかを話し合う。

(5) 節約に役立つ設備や,道具の研究に発展することもあろう。

 例えば沸いた湯を魔法びんにとっておけば,三度三度のむ湯を沸かさなくてよいとか,着物であったら上っ張のを着て作業をするとか,道具であったら,そのいたみを防ぐ手入れを怠らないとか。

(6) (4)から小遺い帳の形式と,その利用法に発展させる。

(7) ある期間,食物費の出納を受け持ち,又は賄帳の記帳にあずかる。その結果気づいたことを学級に報告する。家計簿記の家庭経済上有意義であることを話し合う。

(8) 「時は金なり」の格言の意味を考え,時間の節約についても,金と同様に予定と計画の必要なことを,種々の実例を挙げて話し合う。

1 目   標

(1) 予想される災害に対し,平素の生活においてどんな用意がいるかを理解しこれを実行する能力を養う。

(2) 地方的な災害とその対策について理解する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) いろいろな災害を,新聞やラジオ等によって記録し,話し合う。

(2) それらのうち,特に火災の予防について研究する。

(3) 盗難の予防について話し合う。

(4) 風水害・雪害等地方に起りがちな災害を調査し,その予防について話し合う。

3 参考書

 小山書店発行 吉村冬彦著「とちの実」

  183ページ「災難雑考」

  108ページ「震災日記より」

4 指導結果の考査

 記録法,再生法,選択法,完成法等によって災害予防についての理解を考査。

 

1 目   標

(1) 活発な生活活動に適する表着の構成を理解する。

(2) 自分のからだに合うように表着の型紙を調整する方法を会得する。

(3) 自分に似合う形や色の選び方を知る。

(4) 適当な材料の選び方を知る。

(5) 裁縫技術を進歩させる。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 製作見本,スタイルブック等を見る。

(2) 形と用布の選び方を研究し,話し合う。

 実物標本やスタイルブックによって,自分に適し,且つ平常着に適する形を選び,用布をきめて相互に批評する。

(3) 教師の示す型紙を写す。(附録教材型紙使用)(5〜6図)

(4) 次の事項について研究して型をかえる。

(5) 布地に応じた裁ち方を研究し,必要な縫代を型紙に記入して,むだが出ないように置いて,裁断する。

(6) 仮縫いをし,着てみて,相互に批評し合い,修整する。

(7) 地質に適した縫い方を工夫し,実習する。特にそで附けについては示範によって実習する。

(8) 仕上げて,着用し批評し合う。

(9) 日常の手入れ法を話し合う。

(10) 材料費や調製に要した時間等の計算。

3 指導結果の考査

(1) 製作品について記述尺度法による考査。

(2) 再生法,選択法,完成法などで布地の選び方,色や形の似合うかどうかについての理解を考査。

 

1 目   標

(1) 栄養に関する知識を一層確実にする。

(2) 調理手法を科学的にする心構えを養う。

2 指導の方法──生徒の活動

 災害の予防,あるいは不時の失費の原因を除くことの研究から進んで,病気の予防,健康保持の要件として食物研究へ発展する。

(1) 日常の保健に食物が重要な地位を占めるのはなぜであるかを,復習的に話し合う。

(2) 持参の弁当又は給食の食品を栄養上から分類する。その中,栄養価の高いたんぱく質をもっているもの,カルシウム,ビタミンABC等に富むものに○印を附けてみる。その正否を吟味し研究する。

(3) 同じ食物を食べても同じ効果が得られず,発育がよかったりわるかったりすることを問題として研究し,消化と吸収の条件について話し合う。

(4) 健康を楽しむことのできる食事の条件を挙げ,次の事項を研究する。

3 指導結果の考査

(1) 記録法,完成法等で栄養についての知識を考査。

(2) 完成法等で調理の合理化の心構えを考査。

 [備考]

    栄養に関する知識として,以下のようなことをなるべく実際的に取り扱う。

    各栄養素の機能

(1) たんぱく質  肉体を作る。

(2) 炭水化物・脂肪及びたんぱく質  体温や活動力のもととなる。

(3) 灰分(カルシウム・りん)  骨や歯を作る。

(4) 灰分(大部分)ビタミン  他の食物がからだに吸収されて栄養になるために,いろいろな変化をする時のなかだちになる。

 

1 目   標

(1) 簡単な基本的な調理手法を習得する。

(2) 材料として使用する食品の栄養価を理解する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 調理実習を始める前に、六年級での経験に基づき各自の心得なければならないことを話し合う。

(2) しる物の調理実習

(3) 蒸し物の調理実習

 蒸し物・蒸し器の復習から,日常の調理にもっと蒸し物を利用するのがよいことを発見する。

(4) 煮しめの調理実習

(5) 炊飯の調理実習

3 指導結果の考査

(1) 再生法,選択法,組み合わせ法,記録法などで,調理手法の理解を考査。

(2) 記述尺度法によって実習の際のやり口を考査。

 

1 目   標

(1) 食物の腐敗を防ぐ方法を会得する。

(2) 野菜類の貯蔵法を会得する。

(3) つけ物のつけ方を習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 不自由な食糧事情をどうしてしのいで来たか,又しのごうとしているかを話し合う。

(2) 食品貯蔵のために,何を知らなければならないかを研究し,更に腐敗の原因,微生物繁殖の条件を研究する。

(3) それから食品の腐敗防止の方法を研究する。

(4) 野菜の豊富な季節の喜びを話し合い,この喜びとの乏しい,そして思いがけない季節に味わう方法はないかを,各自好きな野菜を中心にして話し合う。そのうち,適当なものを実習する。

(5) つけ物の効用を話し合い,適当なものを実習する。

3 指導結果の考査

 選択法,組み合わせ法,記録法などで理解の如何を調査。

 

1 目   標

(1) 身だしなみのよい,よい趣味を発展させ,ほんとうの意味で身なりを考えるようになる。

(2) 衣類の手入れ保存の方法を理解する。

(3) 虫干しの要領を会得する。

(4) 廃物に近い衣類を復活させる喜びを知る。

(5) 目だたない,めんどうな仕事を厭わないよい習慣を養う。

(6) 普通の縫い方と異なるつくろい方の特殊な技術を習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 衣類の日常の手入れ

(2) たび,くつ下のいたみやすい部分についてあらかじめ補強することを考える。

(3) 保存

3 指導結果の考査

 繕い方の成績品を記述尺度法で考査。

 保存の知識を組み合わせ法,完成法等で調査。

 

1 目   標

(1) 自他の健康状態によく気がつき,よく気を配るようになる。

(2) 日常的な衛生知識を実行するようになる。

(3) 消毒法を知ってこれを実行する。

(4) 簡単な救急法を習得する。

(5) 常備薬についての知識を持つ。

(6) 簡単な衛生用品の取り扱いを習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 自分が,あるいは家族全部が,または家族のだれかが,実行している健康法の報告。

(2) 種々な健康法の中から,個人的に,又は学級で採用実践すべきものを話し合う。

(3) 伝染病や寄生虫病のまん延状況について,医師の話をきいたり研究したりする。

(4) 消毒法の研究に発展させる。

(5) どんな場合に消毒を必要とするかについて話し合う。

(6) どんな場合にどんな消毒法をとるかの話し合い。

 例えば,

(7) これまでの自分や他人のけがの経験をおたがいに発表し,けがをしないように,どんな注意をしているかを話し合う。

(8) けがや急病の手当法の実習(示範による)。

(9) 各自の家庭でどんな病気の対策ができているかを調べる。

(10) どんな薬品が家庭に備えてあるかを調べ,その薬品をいろいろに分類して用法を研究する。

(11) 薬品の保存,薬品の取り扱いに起りやすい,あやまちの話し合い。

(12) 各自の家庭にどんな衛生用品が備えてあるかを調べ,その取り扱い方を実習する。

3 指導結果の考査

(1) 消毒法,救急法,常備薬等についての知識を組み合わせ法,記録法等で考査。

(2) 器具の取の扱いについて,記述尺度法などで考査。

 

1 目   標

(1) 乳幼児を正しく愛し育てることの興味と関心を発展させる。

(2) 乳幼児の生活の早期指導のたいせつなことを理解する。

(3) 幼児のおやつを作る技術を習得する。

(4) 幼児の衣類の世話ができるようになる。

(5) 幼い弟妹に対しての姉としてのよい態度を養う。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 家族の保健防疫の問題から発展して幼い家族のよい成長を助ける方法を研究する。

(2) 弟妹を持たないものは,近所のふだんめんどうを見て上げられる乳幼児について経験する。

(3) 学級うちそろって,子供遊園とか幼稚園とか託児所とかを訪問し,いろいろ経験する。

(4) 幼い家族に対する姉としての態度と,実際に受け持っている責任について報告する。

 弟妹のないものは,なつかれている近所の子供について発表する。

(5) これらの態度や能力を発展させるために,乳幼児の生活を研究する。

 毎日十五分ずつ一週間乳幼児の生活を観察して,その記録を持ち寄り,年齢別に整理する。

(6) 望ましい社会性が養われつつあるかどうかを観察し,その指導の要領を話し合う。

(7) 泣き方によって異なる子供の要求や状態を研究する。抱きぐせはついていないかどうか,又ひとりできげんよく遊んでいる時,どんな精神が養われつつあるかを観察する。

(8) どんなおもちゃが,子供にどんな影響を与えるかを観察し,各歳児にどんな遊び道具がよいかを研究し,報告し,よいおもちゃの条件を討議する。できれば見本を陳列する。

(9) おもちゃの見本を観察する。

(10) おもちゃ屋に就いておもちゃの種類をしらべたり,売れ行きを調べる。

(11) 幼児について,その動きの観察を記録する様式をきめる。

(12) 幼児に与えるおやつの調理を実習し,食べさせる。

 [例]1.さつまいもの茶きんしぼりと魚肉野菜しる。

    2.きな粉かすりごまをまぶしたおむすび。

(13) 乳幼児のたび・くつ下を編む。

3 指導結果の考査

(1) 乳幼児の取り扱い方の理解の程度について,組み合わせ法及び記録法によって考査。

(2) 生徒の作品について,記述尺度法を用い,棒針編みの技術の考査。