第七章 第六学年の家庭科指導
第六学年の指導内容
六学年は全く前青年期である。思考は現実的・論理的となるから,いろんな生活方式の合理性を探究させるによく,まだ機械的記憶が盛んであるから,主要食品の栄養価などは,好んで暗記するであろう。物を収集する興味によって,小ぎれを集めたり,台所用品の広告やカタログなどを集めたり,食べられる野菜を採集したりさせるのもおもしろい。以下家族の保健衛生を中心題目として,この学年の指導内容の基準としての試案を示すことにする。
第 一 学 期 |
第 二 学 期 |
第 三 学 期 |
単元(一) 健康な日常生 活 A 家族の健康 B 住居と衛生 C 運動具・遊び道具 の製作・修理(男) D 運動服の製作(女) E 簡単な洗たく F 食物のとり方 |
単元(二) 家庭と休養 A 適当な眠りと休息 B 家具・建てつけの 手入れ(男) C 寝まき又はじゅば んの製作(女) D 家庭の楽しいひと 時 単元(三) 簡単な食事の 支度 A 蒸しいも B 青菜のひたし C いり卵 |
D 台所用具とその扱い方 単元(四) 老人の世話 |
1 目 標
(1) 明かるい家庭生活に家族の健康がどんなに必要であるかを理解する。
(2) 家族の健康のために,家族のみんなの心がけなければならない事を理解する。
2 指導の方法──児童の活動
(1) 家族のだれかが病気の時の家族の心配,骨折り,失費などについて話し合う。
(2) 家族のものの病気やけがが,家庭生活をくらくすることについての経験の発表,話し合い。
(3) 病気やけがをしないための,ふだんの心がけや習慣について話し合う。
安全第一
清潔法
食物のとり方
運動のし方
休養のし方
(4) 今年の学習計画を,だいたい上の線に沿って追求することにきめる。
3 指導結果の考査
健康保持のための心がけについて,再生法・組み合わせ法・訂正法等によって考査。
1 目 標
(1) 保健のために清潔の必要なことを理解する。
(2) 住居や器物等にふだんの清潔法を実行する習慣を養う。
(3) 目下の困難な住宅事情を少しでも気持よく衛生的であるように工夫する態度を養う。
2 指導の方法──児童の活動
(1) 家庭において,とかく不潔になりやすい所と物とを調べる。話し合いによってまとめる。
[まとめ方一例]
台所 流し場 下水 湯殿 洗たく物 便所 ちり捨て場
b 不潔になりやすい物
下着類 エプロン 運動服 ふきん たわし 食器 食卓 はき物 便所のかけ手ぬぐい。
(2) それぞれに適当な清潔法について話し合う。特に台所は食物調理の場所であるから,各自の家の台所についての考察点を話し合ってきめる。
b 明かるいか(窓の方向や電燈の位置はどうか)。
c ねずみ・はい・油虫などはいないか。
d 野菜くずなどの始末が完全にできているか。
e 給水・排水の設備は衛生的か。
f 換気・通風はよいか。
(3) 清潔の実行方法を問題とし,もっとよく清潔を保つ方法はないかを話し合う。一週とか,月とかで定期的にする掃除,臨時に行う大掃除,近所と共同でしなければならない掃除などを研究する。
(4) 目に見えない不潔を指摘する者があったら,次のような問題を話し合う。
b 細菌の汚染
c 用水の不適
d 十分な日光の必要
(5) 害毒を媒介する動物の防除について話し合う。(備考参照)
(6) 下水とかちり捨て場とかの不潔になっている所を手分けして調査する。
できれば協同して薬剤をまくとか,さらえるとか,ちりを焼くとか,肥料に利用するとか,適宜の処置をする。
3 指導結果の考査
(1) 窓の開閉が宜しきを得るようになったかどうかを観察。
(2) 夕オル,ハンカチ・下着類及び頭髪やつめや手足などの点検。
(3) 外出から帰ったらうがいをするか,食前に手を洗うかなど,衛生上の習慣を観察する。
(1) はい はいは伝染病の媒介をすることが多く,繁殖しやすい。発生の場所は,ごみ箱,便所等である。
防除法 発生しやすい場所をよく掃除し,さらし粉液,特に便所の汲み取り口などは,密閉し,つぼの中は暗くして,はいの侵入を防ぐ。
(2) 蚊 蚊はマラリヤ・デング熱の媒介をする。
駆除法 みぞ,下水などのたまり水を少なくし,掃除を行い,水はけをよくし,又石油乳剤などで消毒する。
(3) のみ のみの発生予防には,室内を清潔にし,特に乾燥させる。大掃除の際など,畳の下は特に入念に掃除を行い,新聞紙を敷いて,ナフタリン・パラヂクロール・ベンジンの類をまき,その上に畳を敷く。
(4) ねずみ ペスト・家だに等の媒介をする。侵入しやすい台所,押し入れなど,ねずみを誘う食品類はなるべく丈夫な箱に入れておく。又台所は清潔・せいとんをよくし,且つねずみの侵入するすき間を作らないように注意する。
1 目 標
(1) 手製器具の有利さを認め,これに興味を持つ。
(2) 物をたいせつにする良習慣を養う。
(3) 工作能力の発展。
2 指導方法──児童の活動
(1) 手製運動具・遊び道具等を集めて陳列する。
(2) それらの実費・耐久性等を商品と比較してみる。
(3) 運動具・遊び道具等の製作を計画し,製図する。
(4) 運動具・遊び道具等の手入れを要する個所を調べ,方法を研究する。
(5) 実習。
1 目 標
(1) 最も活動に適する表着の形を理解する。
(2) 適切な村料を選ぶ能力を養う。
(3) 裁ち方・縫い方の基礎,特に上衣のえり,下衣の上部の始末についての技術を習得する。
(4) たびたび洗たくすることの必要とその方法を会得する。
2 準 備
運動服のほかに,シャツ及び普通のブラウスや下ばきのでき上がり標本,少なくとも大中小三つの型紙。
3 指導の方法──児童の活動
(1) 運動服のいろいろな実物見本・写真・絵等を見る。
(2) 形について標本を観察し,又使用の目的から,運動服としての特徴を話し合う。
b 上衣を普通のブラウスと比べて,活動衣としての特徴,シャツと比べて表着としての特徴。
c 下衣を下ばきと比べて,その特徴。
d 衛生的であること,活動的であること,表着として単純ながら美を備えなければならないこと。
(3) 材料の選択について話し合う。
はげしい活動と,たびたびの洗たくに耐えることを主眼として,適当な布地の選択要領が決定される。みんなで,得られた材質の目的に対する評価をする。
(4) 製作
い) 型紙をでき上がり標本の形と対照し,又シャツのと比べる。
ろ) 自分の寸法に近い型紙。
は) 型紙を自分に適合するように直す方法
上衣 丈・ゆき,そで口の広さ
下衣 丈・幅
b 裁ち方
い) 布に型紙の置き方を工夫する。
ろ) 縫代のつけ方は,その始末を考えて寸法をきめる。
c 縫い方
上衣
シャツからの発展で工夫される所。
前あきの始末,えり附けなどは特に注意を要する。
あて布,ボタン附け
下衣 下ばきの応用でよいが,ひだを取る場合の上部のまとめ方,わきあけの始末に工夫する。
(5) でき上がったら,運動してみて,自分で評定し,話し合う。
(6) 平常の手入れ,特に汗のついた場合の処置を話し合う。
(7) 洗たくの問題を発見する。
4 指導結果の考査
(1) 製作品について記述尺度法による考査。
(2) 運動服の特徴について,再生法・真偽法・完成法等による考査。
1 目 標
(1) 保健と容儀と経済の上から,洗たくが必要であることの理解。
(2) 早めに洗たくすることの必要の理解。
(3) 洗たくの技術の習得。
(4) 簡単な洗たくを,手まめに実行し,いつも身なりを清潔にする習慣の養成。
2 準 備
実習用の汚れ物,洗たく用具,洗剤,前掛など。洗たく用水。
3 指導の方法──児童の活動
(1) 各自の家庭の洗たくの状況について調査する。
(2) 洗たくの必要と,早めに洗たくすることの有利な理由を,持ち寄った汚れ物を中心として話し合う。
(3) 洗たく手順や方法の話し合い。
しゃがんだ姿勢と立った姿勢,腰掛けた姿勢などの検討。
下洗い,本洗いの区別とその理由。
洗たく用水の量,洗剤の種類や分量,洗い水の温度,洗い方の手法の得失。
(4) 実習(洗たく設備のない所でも,なるべく工夫して実習する)
b 班を分けて実習する。
(5) すすぎ方,干し方の実習。
(6) 実習後の話し合い。
どんなしばり方をしたか,何度すすいだか,どんな場所を選んで干したか,干す時にどんな注意をしたか,どんな道具があったら便利であるか。
(7) 後始末の成績を,みんなで査察し,話し合う。
(8) 仕上げ実習。
b できればアイロン仕上げの示範,実習。
c 洗った後で,手入れを要する所はないかを調べる。
4 指導結果の考査
(1) 洗たくの技術,仕上がり品について記述尺度法による考査。
(2) 再生法・真偽法・完成法等による洗たくの必要や方法についての理解の考査。
1 目 標
(1) 家族の健康を保つ上に,栄養のたいせつなことを理解する。
(2) 食品に対する興味を深め,進んで研究的態度を養う。
(3) 正しい食事の態度と心構えを作る。
2 準 備
主要食品の分析表,完全な栄養弁当の見本。
3 指導の方法──児童の活動
(1) 「病は口より入る」ということわざについての話し合い。
(2) 自分やほかの人の病気の原因についての発表。
b 不消化が病気の原因となることもある。
c 食べ過ぎて病気になることもある。
d 偏った食べ方をすると,病気になることがある。
(3) 食物を食べなければよいか,食べれば何でもよいかについての話し合い。
b 質の不良と健康。
(4) 自分の毎日食べている食物についての調査,その分類。
[例]
b 動物性食品 肉類・魚貝類・乳製品・卵
c 塩など
(5) 空腹の時,満腹の時の気持の発表,話し合い。
(6) 口から入った食物が,体内で,どんな働きをするかについての研究。
b 運動や労働で失われる活動力を補う。
c うばわれる体温を保つために,熱を作り出す。
これらを栄養を営むという。
(7) 消化や吸収の経路を,図によって見る。自分で図をかく。
(8) 栄養を営むのは,食物のうちのどういうものかを研究する。
(9) 主要食品についてその栄養価を研究する。
b さつまいも・じやがいもの類 熱の源となる。
c 大豆などの豆類。
d 野菜類・果実類・海草類 血液の酸性になるのを防ぐ。
e 肉類・魚貝類。
f 牛乳・卵の類。
(10) 自分の弁当の食品の栄養価を調査する。
(11) 自分の弁当の栄養価を研究し計算する。
(12) 児童の発育と必要な栄養価を研究する。
(13) 自分の弁当の栄養価と,標準になる栄養価とを比較して表と作る。
(14) 自分の朝夕の食物を調べて,その栄養価を研究する。
(15) 自分の食物には,どういう栄養素が足りないかを研究する。
(16) 栄養価を十分にするためには,どうすればよいかを話し合う。
(17) 保健の上から,食事についての注意を話し合う。
b よくかむ,よく味わう。
c 偏食しない。
d 食べ過ぎない。
(18) 食事の際に実行している礼法を調べる。話し合う。
4 指導結果の考査
(1) 健康と栄養との関係についての理解を考査──再生法・真偽法・判定法・完成法等。
(2) 研究の報告をさせ,記述尺度法によって考査。
1 目 標
(1) 家庭は心身の最もよい休養の場所でなければならないことを理解する。
(2) 家族の健康保持のために,適当な休息と睡眠とに注意する必要があることを理解する。
(3) 休養のために住居やその設備あるいは被服等に必要な考慮を払う態度を養う。
(4) 睡眠についてのよい習慣を発展させる。
2 準 備
(1) その地方の一般家庭の寝室,寝具その他睡眠,休息に関する風俗習慣の調査。
(2) 児童の睡眠時間の調査。
(3) 睡眠に関する児童の習慣,習癖の調査──例えばよいっぱり,朝寝ぼう,寝行儀,歯ぎしり,寝ごとなど。
3 指導の方法──児童の活動
(1) 各自の家族の睡眠時間,その他眠りの事情(寝室・寝まきなどの如き)の調査。
(2) よく眠れない時は,どんな気持ちがするかの経験についての発表。
(3) 休まないで動き続けた時の経験についての発表。
(4) 運動したり,勉強したりして疲れた時,それをどうして直すかについての話し合い──仕事をかえる,遊ぶ,茶をのむ,食べる,休む,眠るなどのうちで,休息と眠りとの大切なことの発見。
(5) 家族のものの休息の方法と場所と設備などについての調査──横になる,
半臥の姿勢をとる,あんま,入浴,茶をのむなど。
(6) いろいろな休息の方法について,その意味を研究する。
(7) 休む場所として種々なものがあるが,家庭が最もたいせつな場所であることについての話し合い。
(8) 睡眠結果の調査について,その差がどこから来るかについて,いろいろな角度から研究する。
(9) 眠りの時間の多少の原因について研究する。
b 眠りの深さ
c 年齢
d 健康度
e 病気の有無
f 習慣
(10) 自分の眠りの時間が多いか少ないかについて標準時間と照らし合わせて研究し,又その原因を研究する。
(11) よく眠るにはどうしたらよいかを話し合う。
b 不消化なものや刺激の強いものを食べたり飲んだりしない。
c 寝る前に気持をあらだてたり,心配したりしない。
d 夜おそくまで起きていない。
e 静かな部屋,暗いか薄明かりの部屋で寝る。
f 換気や保温に注意する。
(12) 自分の家についてよく眠る条件に合うかどうかを研究し,これに対する処置を研究し,発表する。
(13) 夢をみる原因について話し合う。
(14) よく眠るために寝具や寝まきについての考えを話し合う。
(15) 寝具の敷き方,あげ方,清潔,日に干すことなどについて話し合う。
(16) 寝まきの手入れについて話し合う。
4 指導結果の考査
(1) 学校における課業と遊びの転換,適度の休息をとるようになったかどうかを記述尺度法などで考査。
(2) 早寝早起きの習慣についての児童の記録によって考査。
(3) 家庭の観察によって,眠りの状態の向上について考査。
[備考]
年
齢 |
一 │ 二 |
二 │ 三 |
三 │ 四 |
四 │ 五 |
五 │ 六 |
六 │ 七 |
七 │ 八 |
八 │ 九 |
九 │ 一 ○ |
一 ○ │ 一 一 |
一 一 │ 一 二 |
一 二 │ 一 三 |
一 三 │ 一 四 |
一 四 │ 一 五 |
一 五 │ 一 六 |
睡 眠 時 間 |
一 二 │ 一 六 |
一 二 │ 一 五 |
一 ○ │ 一 四 |
一 ○ │ 一 四 |
一 ○ │ 一 四 |
一 一 │ 一 四 |
一 ○ ・ 五 │ 一 三 |
一 ○ │ 一 二 ・ 五 |
一 ○ │ 一 二 |
九 │ 一 二 |
九 │ 一 一 |
九 │ 一 ○ ・ 五 |
九 │ 一 ○ ・ 五 |
八 ・ 五 │ 一 ○ |
八 ・ 五 │ 九 ・ 五 |
標 準 時 間 |
一 四 ・ ○ |
一 三 ・ ○ |
一 三 ・ ○ |
一 三 ・ ○ |
一 三 ・ 三 |
一 一 ・ 九 |
一 一 ・ 二 |
一 一 ・ ○ |
一 ○ ・ 七 |
一 ○ ・ 三 |
一 ○ ・ ○ |
九 ・ 八 |
九 ・ 八 |
九 ・ 三 |
九 ・ 一 |
1 目 標
五年二の5に同じ
2 指導の方法──児童の活動
(1) 家具や建てつけの手入れを要する個所を調べて来て,目録を作る。例えば戸障子のきしみ,金具のさび,回転部の不調,その他ほつれ,ねじれ,ひわれ,ひずみなど。
(2) 手入れ法の討議と実習。
例えは,とぐ,油をひく,ろうをひく,油をさす,洗う,分解して掃除するなど。
1 目 標
(1) 睡眠中の衛生と容儀の点から寝まきの形をきめることを理解する。
(2) 寝まきやじゅばんは,たびたび洗たくする必要のあることの理解。
(3) 洗たくに耐える材料を選ぶ途を会得する。
(4) 裁ち方・縫い方の基礎を習得する。
2 準 備
教師‥‥実物標本,部分標本,型紙
児童‥‥裁ち紙,用布
3 指導の方法──児童の活動
(1) どんな形の寝まきを用いているか,又知っているかについての発表。
b 筒そで上衣とズボン式下衣
c パジャマ
d ワンピース型
など。
(2) 寝まきの種々な標本,写真,絵を見る。
(3) どんな形が子供に一番よいかを話し合う。
(4) 自分で縫う寝まきの形を決定し,そのわけを発表する。
(5) 製作の計画を立てる。
A 上衣の一 シャツから発展した形
丈・ゆき・胸囲
b 型紙の直し方
後はシャツの復習,前は形によって考える。
えり・ひもの用布はどれだけあればよいかを考える。
c どんな布地が適するか。
はだざわり,水分の吸収・発散,丈夫さなどについて考える。
d 裁ち方
布に型紙の置き方を工夫する。縫代の附け方を話し合う。
e 布地に適する糸や針を考えてきめる。
f 縫い方・畳み方
B 上衣の二 筒そで上衣
b この形に型紙を要するかどうかを討議し,普通寸法について調べる。
い) シャツの丈のようにして,各自の丈をきめ,学級の統計をとり,普通寸法と比べる。
ろ) 各自のじゅばんの寸法と普通寸法と比べる。
c 幾枚の,どんな寸法の布でできているか。
裁ち切りそで丈 幅
裁ち切り身丈 幅
裁ち切りえり丈 幅
d 用布について話し合う。
e 裁ち方。
用布にそれぞれの布をどう組み合わせて裁つかを工夫する。
f どれだけの布が必要かを算出する。
g 簡単にそれぞれの布の丈を調べ,又裁ち切りを容易にするために,折り積もりすることを理解する。
h 各布の裁ち切り方を工夫する。
i 標附け方
い) 順序 どの布から標を附けるかを考える。
ろ) 布の置き方 でき上がりの形や,表裏の関係や,物さしとへらの使い方から考える。
は) でき上がり寸法ときせ 実物標本を観察して理解する。
に) 標附けの要所を話し合い,注意すべきことを発見する。
ほ) 自分の寸法で十分の一縮図を描いてみる。
へ) 縫い方・畳み方
C 下衣
Aの取の扱い方にならう。
わき丈・また上・腰囲
b 裁ち方
布幅により,前後続きの布となり,あるいはわきではぐようになることを,実地にためす。
4 指導結果の考査
(1) 製作品について 記述尺度法によって考査。
(2) 図解法・排列法等によって,寝まき又はじゅばんの部分,裁ち方,縫い方の順序等について調査。
Ⅰ 型紙の取の方
上衣
2 そで幅はゆきより身幅を引き,別そでとする。
3 えり肩あき 横はシャツのもと線より1cm多くあける。縦は後1cm前は形によってくる。
4 そで口はそで丈より約3cmつめる。場合によって加減する。
下衣
2 また上下ばきよりやや多くする。
3 また下のくり方 また下寸法の中央へ向かって斜線を引き,約1cmのまるみをつけてくる。
Ⅱ 縫い力順序
上衣
2 そで口は三つ折りぐけ又は三つ折り縫い。
3 背と肩は袋縫い又は二度縫いにする。背の縫代は左身ごろに,肩は前へ返す。
4 えり下は三つ折り縫い又は耳ぐけ。
5 えり附け
待針の打ち方を次のように注意する。
えりの中央を身ごろの背縫いに,中表に合わせて打つ。
えり肩まわりの角は,縫代浅く,えりがつれないようにする。
前身の斜めを伸ばさないように,机上に正しく置き,その上にえりをのせて打つ。
あらかじめえり附けの線を小針に縫っておくとよい。
えり附け縫い方
布の釣り合い,布の持ち方に注意して,少しずつ縫い,十分糸こきをする。えり肩まわりの角は,特に小針に縫い,はじめと終りはすくい返し留めにする。
すくい返し留め
縫いはじめ,縫い終りを丈夫に留める方法。布を斜めに小針にすくって,糸を掛け,固く締め,続いて返し留めにする。えりの方へ折りきせをかけ,えり幅を整えて,待針を打つ。
えり先
イ) えり先とまりより0.5cm先を縫う。
ロ) とまりの所から表へ折る。
ハ) くけ代を折って,縦横の縫代をとじる。
ニ) 表へ返し,全体の釣り合いを見て,待針を打つ。
えりぐけ
えり先から0.5cmくらいとった所に,裏表に針を出して留め,えり先からくけ,終りも同じように留める。
6 わき
わきあけ8〜10cmあけて,小針に縫う。わきあけのとまりはすくい返し留めにする。縫代は割って耳ぐけにし,裁ち目の場合は,かがって同様に始末する。
耳ぐけ
布端が耳の場合は,耳からの2cmくらい内の耳側へ二針,表側ヘ一針ずつ小針を出してくける。針目の間隔は,だいたい折り代と同じくらいにするが,折り代の多少や地質によって加減する。
はた結び
糸つぎははた結びとする。
7 すそ
三つ折り縫い。
8 そで附け
先ず身ごろとそでを中表に合わせて,最初に山,次にそで附け標を合わせて待針を打つ。更に中間に打ち,小針に縫う。きせは身ごろの方へ返して,縫代はそでも身ごろもいっしょに耳ぐけにする。裁ち目の場合はかがって同様に始末する。
9 わきあけ
そで附け縫代の始末と続けて耳ぐけにする。裁ち目の時はかがって同様にくけ附ける。
10 ひも縫い
二方縫って,表へ返し,幅を整える。布の落ち着きのわるいものはしつけをする。しつけは,でき上がれば取り去るものであるから,しつけ糸を用い,一目落し(表3cm裏1cmくらいの針目で折り山から0.5mくらい離れた所を抑えておく)。この際,針はくけ針を用いる。
11 ひも附け
先ず着てみて適当の位置を見出させる。丈夫な附け方を考えて,
イ) えり附け際に,小針で縫い附ける。
ロ) 折り返して,三方をくけ附ける。
下衣
わきに縫い目がある場合は,先ずわき縫いをして表へ返し,ふせ縫いをする。他は下ばきと同様に縫う。
1 目 標
(1) 家族と楽しみを同じくすることのできる性格を発展させる。
(2) なるべく多くの楽しみ方を覚える。
(3) 家族と楽しみを同じくして,我を張らず,不平を言わぬ態度を養う。
2 指導の方法──児童の活動
(1) 家庭の娯楽の種類の共同調査と話し合い(社会科で学習している場合は,それを利用できる)。
[例]
b 庭球,羽子つき,ぶらんこ
c 音楽会
d 散歩,日帰りの行楽
(2) 各種の遊び方の得失について話し合う。(例えば,少数でしか遊べないものと大勢で楽しめるもの,単純でたわいないものと,熟練を要し,実力の差がはなはだしくておもしろくないものなど)。
(3) そのうち,みんながやってみようというものをきめ,規則や方法等をくわしく研究し,話し合う。
(4) 遊び終ったら,たがいに遊び方の態度を批判し,話し合う。
(5) うちで実際に遊んだ結果について報告し,どうすればもっとおもしろく遊べるか,,どういう場合におもしろくなかったかなどを話し合う。
(6) 遊びの結果,家庭に寄与した点があれば,それを報吉する。
(7) 教師は,心の休養の場所としての家庭の意義を取り上げて問題とし,家庭にこれををはばむなんらの暗い所もないようにするのが,家族全員の責任であり,主婦のとりわけ心を配らなければならないところであることを話して聞かせる。そうして,児童が積極的に家庭の諸関係へ働きかけることを期待する。
3 指導結果の考査
(1) 級友との遊びの態度について記述尺度法で考査。
(2) 父兄の報告を求めて考査。
1 目 標
(1) 食事の支度を手伝うことによって,食生活に深い関心を持つ。
(2) 自分で調理することによって,調理の喜びを感じ,進んで工夫・発展しようとする態度を養う。(特に男子にも緊急の場合キャンプ生活の場合などのための興味を起させる)
(3) 蒸し方の要領を会得する。
(4) 蒸し煮の要領を会得する。
(5) 蒸し器の特徴とその要領を理解する。
(6) いり卵の要領を会得する。
2 指導の方法──児童の活動
(1) キャンプとか遠足の計画を立て,男女共に,その人数や食事回数によって,どのくらいの量の食物がいるかなどを考え,持って行くいも,卵,野菜などを話し合う。この場合,特に男の子のみの場合の案を立ててみてもよい。
(2) この話し合いを通して,男子は,自分たちも食事の支度について知っていなければ困ることのあることを覚る。
(3) 簡単な調理にも,いろいろな方法のあることを知るとともに,野外のはだか火で蒸し器もないような場合,どうするかなどを話し合う。
1 準 備
さつまいも適量,塩はいもの目方の百分の一,教師は種類のちがった蒸し器をなるべく多く用意する。
2 指導の方法──児童の活動
(1) 蒸しいもを食べた時の経験について,そのできあがり工合,おいしさ等を発表。
(2) 各自の家の蒸し器について調べて,図説する。
(3) 用意された種々の蒸し器について話し合う。
(4) 蒸し方の計画を立てて話し合う。
(5) いもを用意する。実習。(さつまいもは洗って,いたんだ部分だけ取り去り,一部分は1cmくらいの輪切りにし,他はなるべく大きさを一様に切り,そのうち三つ四つめ目方を測ってみることにする。)
(6) 蒸し方の研究
b 竹ぐしのような細いもので刺してみて,軟かくなったら器に取り出す。蒸し上がる時間を測る。
c 塩(いもの目方の百分の一)又は切りごまを振りかける。
d 残りの蒸し湯は何立方センチあるか測ってみる。
e この実習によって次のことを決定する。
い) いもの大きさにより,蒸す時間がちがう。
ろ) 実習に用いたいもの大きさと時間。
は) 蒸し湯の量はどれくらいが適当か。
に) これらのことを知っておくことの利益。
3 指導結果の考査
再生法等で蒸す手順,方法などを考査。
1 準 備
なるべくあくの少ない青菜 200g しょうゆ 20cc
2 指導の方法──児童の活動
(1) 菜のひたしを作るには,どんな方法があるかを話し合う。
(2) 菜に含まれている灰分やビタミンを逃がさないようにするには,どうしたらよいかを話し合う。
(3) 作り方の実習
b なべに青菜を入れてふたをし,ちゅう火にかけ,湯気が上がった時裏返し,再びふたして煮る。軟かくなったら,なべからおろし,材料をひろげてさまし,軽くしぼり,適当に切って,しょうゆで味をつける。
(4) あくの強いものはどうするかについて研究する。(蒸し煮にして水にさらすか,ゆでるかする。)
(5) ゆでる方法と蒸し煮にする方法とどちらがよいかを,実地に研究し,結果について発表する。
3 指導結果の考査
再生法等によって作り方・手順等についての理解を考査。
1 準 備
鶏卵1個 塩0.5g 砂糖3g 布き油少量 なべ はし
2 指導の方法──児童の活動
(1) いも・青菜・卵の栄養価を調べて比較する。
(2) 卵の栄養上の特質,卵が少なかったり,あまり高価であったりする場合は,何がその代りになるかを話し合う。
(3) 調理実習
b なべを火に掛け,熱くなったら油を布き,卵を入れる。火がとおりかけたら,数本のはしで,手早くかきまぜる。
c 全体に火がとおったら,おろして器に盛る。
3 指導結果の考査
調理法の手順などについて,再生法・排列法などで考査。
1 目 標
(1) 調理用具の初歩的な使用法を会得する。
(2) 計器の用途と食品計量の意義を理解する。
(3) 自分の力又は家人への協力により,台所を科学的にすることの興味と関心とを養う。
2 準 備
できるだけの台所用品の調査。
3 指導の方法──児童の活動
(1) 「簡単簡単な食事の支度」の経験から,台所用品の意味を話し合い,問題を発見する。
(2) 各自の家庭についての調査によって 台所用品を便宜な方式で分類する。
b 材質により
(3) 最も普通な調理用具とその扱い方の研究と実習。
い) 種類と用途。
ろ) ほうちょうをさびさせない方法。
は) ほうちょうの洗い方,とぎ方。
b まな板
い) その材質
ろ) 使う前に水でぬらすわけ,使用後の始末,臭気が残った場合の処置。
は) 面がくぼんだ場合の処置。
c なべ・かま
い) その材質
ろ) 鉄製のなべかまの使い方。
は) アルミ製のなべ・かまの使い方。
に) アルマイト製のなべ・かまの使い方
ほ) 土製なべ・かまの使い方。
へ) 瀬戸引きなべの使い方。
と) なべ・かまの底の塗料の意味。
ち) なべ墨の処置。
(4) 台所用計器とその扱い方の研究と実習。
b どんな計器があるか。
い) はかり
種類
正しいはかり方
はかりの狂いの見方,調節のし方
ろ) ます
種類
正しいはかり方
ますの代用となる器
は) 時計
どんな場合に使われるか。
c 米の目方をはかって,重量と体積との関係を調べる。
茶さじ,テーブルさじ,玉さじ,飯茶わんなどを用いて,塩,砂糖,小麦粉等を同じように調べる。それを表に作る。
(5) 実習からの発展として,けがの手当法に及ぶもよい。
(6) 台所用具の便不便の検討から,備え附けの多寡が問題となったら,「道具は仕事の半分」ということ,道具立ては簡素にして,変化は縦横の技能を養うことについて話し合う。
4 指導結果の考査
(1) 調理用具,計器の使用を実施して,その技術について記述尺度法等で考査。
(2) 調理用具や計器などの使用上の注意について,再生法・真偽法・完成法等で考査。
(3) 台所の改善についての作文を作らせて,記述尺度法などで,その興味,意見の如何を考査。
1 目 標
(1) 家族の一人として,老人の健康保持に一層よく役立つ途を会得する。
(2) 老人の心持や体力を理解し,こまやかな心遣いができるようになる。
(3) 老人の世話が,家庭和楽の一つの中心であることに興味を持つ。
(4) 一般に年長者に対する態度を養う。
2 指導の方法──児童の活動
(1) 自分の家庭,ほかの人の家庭について,老人があるかないかを発表する。
(2) 何歳以上を老人とするかについて話し合う。体力や精神力が,必ずしも年齢によってきめられないが,年は争えないところもあり,先ず配給の主食量や菓子などで,一応の基準とすることなども話し合う。
(3) どんなことが老人に喜ばれるか,どんなことか老人の気持に合わないかを話し合い,双方に分けて黒板に列挙してみる。
例えば,気に入らないことは,
b うるさく歌ったり,しゃべったりする。
c ドタンバタンする。
d 物事に時間をとり過ぎる。
e 新しがったことを言ったり,したりする。
など。
なぜ気に入らないかを話し合う。そこから自然に老境の身体的特徴に移る。
(4) 老人のからだの特徴について話し合い,表を作る。例えば,
b 耳や目が遠くなる。
c 起ち居がおっくうになる。
d 過労に陥りやすい。
e 寒暑に対する抵抗力が弱くなる。
f 骨がもろくなる。
g 動脈が硬化し,血圧が高くなりやすい。
(5) おのおの老人を喜ばせることを話し合って研究する。例えば,柔らかい,消化しやすい食物を作る,新聞を読んであげる。ラジオを調節してあげる,煙草の火をとってあげる,肩をもんであげる,着物の脱ぎ着を手伝ってあげる,湯たんぼの世話をする,けがの起らぬよう手をとってあげる,湯殿では殊に注意する。など。
(6) あんまの要領を実習する。
教師がけいこ台になってやって,指先の力の入れ工合を試してやる。
(7) すき間風を防ぐとか,湯たんぽを入れてあげるとか,防寒と採暖の方法を話し合い,火のたき方を復習する。
(8) 家に老人がいなくても,父母,長上の疲労や病気に同じような奉仕ができることを話し合う。
(9) これまでよりも奉仕の途が広くなった喜び,これからもっと拡げられることを話し合う。
3 指導結果の考査
(1) 老人の身体についての特徴を,再生法,真偽法,組み合わせ法,完成法などで考査。
(2) 老人の世話についての心がけの習得状態を再生法・真偽法・完成法などで考査。
(3) 老人の世話について家庭へ質間し,その報告によって考査。