第十章 第九学年の家庭科指導
第九年は中学校の最高学年である。既に青年期に入り,思考は理づめになって来る。眼は高く遠きを追うけれども,現実の経験の不足のために,しばしばつまづく。ここに生活の改善を主題として指導を展開する理由がある。すなわち次の表に示すものがその一案である。
単元(一) 家庭生活と能率
B 労力の使い方
C 配給や行列に費す時間の問題
単元(二) 食生活の改善
B 共同炊事
単元(三) 被服と活動
B エプロン
単元(四) 乳幼児の保育
単元(五) 家庭の和楽
単元(六) 病人の看護
B 乳幼児の病気とその手当
単元(七) 近所の交わり
B 贈答
C 手伝い,協同
単元(八) 帯と羽織,またはドレス
B 羽織
C ドレス
D 一年間の被服計画
単元(九) 家事の経理
B これからの女子の生活
1 目 標
生徒自身,自分の時間の大切なこと,又他人の時間の大切なことを理解するようになる。
2 指導の方法──生徒の活動
A 時間の上手な使い方
(1) 各自,前日朝起きてから寝るまで何をしたか委しく書いてみる。その記録から,
遊んだ時間
家の手伝いをした時間
睡った時間
を計算する。そして各自一項目ずつの時間を発表し合って討議する。
b 勉強の時間はどのくらいか。
花子と秋子は学校の成績は同じくらいだが,勉強の時間が大変違うのはどうしてか。
授業中の注意力のよさ。
予習,その他計画のよさ。
(2) 上記の討議から,上の四項目に大体どのくらい時間をかけたらよいか,討議してきめる。
(3) 更に一日中の時間表を作ってみる。
七時半 食事
B 時間や労力を省いて能率をあげるにはどうしたらよいか。
(1) 生徒は家へ帰って,母が夕食の支度をするのを,始めから終りまで,その仕事の種類とそれに費した時間を,そばについて見て記録する。
火をつくるには
御飯ができ上がるまで
煮物の時間
盛りつけして食卓に運ぶまで
夕食用意全体に要した時間
生徒は各自の家の流しの高さを測って来る。
以上によって,級で各自の記録を発表し比較する。
その相違はどこにあるか(家族の人数,手伝いの有無を考慮に入れる)
台所の設備のわるさ──流しが外にある。かまどが外にある,薄暗がりでする,など。
一つしては次に何をするかを考えるから,食品がなくて探すのに骨が折れたから,など。
(2) 台所の仕事をもっと早くするには,どうしたらよいか。その場で考えたり探したりしないためには,どうしたらよいか計画を立てる。
食品のかんでも,びんでも,中みがわかるようにしておく。
食品の戸だなのどこかに,中にある物の目録を書いてはっておく,など。
材料はどういう所にしまってあるのが一番よいか。
流しの近く(一々縁の下をのぞくことなどないように)。
上手な火のおこし方と時間の関係
薪のたきつけ方と,それに要する時間。
炭のおこし方と,それに要する時間。
それらと電熱器,ガスとの比較。
炊飯や煮物の時間の研究
手順のよいこと。
流し,煮炊きの場所,盛りつけの場所の関係と時間,労力の関係。
光線の位置と時間・労力との関係。
流しの高さと能率の関係
各自机の前に立ってみて,流しで物を洗ったり,切ったりするのに一番らくな高さをきめる。高さがきまったら,測って来た家の流しの高さに比較してみる。自分の母の背丈を考え,家の流しが母によいかわるいかをきめる。働きよいようにしてあげるにはどうしたらよいか研究する。
その他戸だな,引き出しの整理のし方などを研究する。
C 配給や行列に費す時間の問題
(1) なぜ行列しなければ物が手に入らないか,行列しなくて,正常の筋道で手に入る方法はないかを考える。
(2) 自分だけの利を追わず,調和的にみんなが満足する方法はないかを研究する。
(3) 行列の時間を節約する方法を,みんなで発見する。
(4) お互に信頼することができれば,どんな方法があるかを考案する。
協力による労力節約の事例を挙げる。
段取りをいろいろに変えて所要時間をはかってみる。
3 指導結果の考査
いろいろな学校作業を始めたり,完了したりした後に,時間計画を検討する。
作業中時計を利用する習慣がついたかどうかを見る。例えば,調理実習に時間の観念が取り入れられているかどうか。
1 目 標
食習慣の改革の一つとして,粉食の重要性を認識し,その技術を習得する。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 粉食は粒食に比べて,どんな長所や短所があるかを討議する。
(2) 種々の粉の性質を調べてみる。
他の粉を同様にして試みる。
その結果から,どんなことがわかるか。小麦粉以外の粉では,パンやめんがよくできないのはなぜかを発見する。
(3) 各自の家庭では,どんな粉調理が行われているかを報告する。
めん類
まんじゅう,即席パン,発酵パン
(4) すいとんの実習
1 すいとんが常食として便利なのはなぜか。
2 すいとんだけで一食とするには,どんな材料を取り合わせたらよいか。
3 すいとんを,どんな方法で作るか。
b 粉を練らないで用いる。
等の問題を話し合ってから実習する。3については,試食の後,小麦粉以外の材料では,両者大した相違はないが,小麦粉の場合は口ざわりが違うことを認識する。
(5) 干しうどんの蒸し煮(冷やしうどん)の実習。
干しうどんを少しかんでみると,かなり濃い塩味がつけてあることがわかる。これは技術上の必要からである。
b 実験
干しうどんは,ゆでると初めの凡そ何倍の目方になるかを実験し,四倍内外であることを決定し,その結果から,
c 干しうどんを蒸し煮するには,湯をどのくらい用意すればよいかを考え干しうどんの目方の三倍内外であるが,余裕を見て約四倍とすることにきめて,実習する。
d 試食 蒸し煮したうどんは,そのまま食べることもあるが,暑い時分は水に取って,ざっと洗って水を切り,二杯酢で食べるのもよい。
かけしるは,初めのうどんのからさによるが,しょうゆ,水を切ったうどんの目方の百分の五,酢,しょうゆと同量,これにしょうがおろし又はからしを加えると一層おいしい。
e 冷やしうどんにどんな食品を配すれば,一食として適当な栄養を含み,味も調和のとれたものになるかを考察する。
(6) 即席パン 実習
実験 水に重炭酸ソーダを入れてとかしてみる。これを徐々に加熱してみる。
次に,水に酢を入れ,これに重炭酸ソ—ダを入れてみる。更に加熱してみる。
売っているふくらし粉は,
重炭酸ソーダ 1 酒石英 2
等であることから,上の実験と考え合わせて,ふくらし粉の働きを理解する。
実習 粉に対して塩1%,重炭酸ソーダ1%,水70%にしてパンを作る。
① 粉と重炭酸ソーダをまぜて,これを塩水に入れてざっとかきまわす。またはよく練る。
② 水に重炭酸ソーダと塩をとかし,粉を入れて①と同じようにする。
③ 酢を用いる時はどうすればよいか(酢の使用量は重炭酸ソーダの目方の約15倍)
④ このようにして,こね合わせたパン種は,フライなべで焼いたり,蒸し器で蒸したりする。その場合,おのおのの火加減はどうしたらよいか。
これらの実験から,パンを上手に取る要点を決定する。
このようにして粉を米の代用とするには,どれだけ用いればよいかを計算する。
このように用いる粉の成分と米の成分とを比べてみる。
1 目 標
(1) 食生活の能率化の一端として,共同炊事を実行する素地を作る。
(2) 大量の食品処理の技術を習得する。
(3) 隣人に対するよい態度を養う。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 共同炊事の重要性を自覚するための討議──実例があったら,その報告から出発する。
戸別炊事と共同炊事の得失
b 栄養食配給の保健上の意義から。
c 経済上,合理的消費の点で。
d 隣保共助の点で。
(2) 共同炊事実行の機会を考察する。
b 工場地帯で。
c 商店街で。
(3) 共同炊事の施設及び経営を計画する。
b 場所 当番
c 設備 器具
d 材料の調達
e 配給方法
f 会計方法
(4) 共同炊事実施上の注意として,
b 調理上の注意
を討議する。
(5) 実習
ご飯のでき工合によっては,湯炊きの方法を指導する。
1 目 標
(1) 仕事着の具備すべき条件を会得し,在来の仕事着が,これに当てはまっているかどうかを研究する。
(2) 仕事着の用い方を,従来のものよりもいっそう便利なように工夫する。
(3) 各種の仕事着の調製技術を習得する。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 和式仕事着
上衣 二部式あわせに倣う。
下衣 洋式を基礎として工夫するか,またはもんぺを用いる。
(2) 洋式仕事着
上衣
下衣
(二) 自分の製作する形をきめ,用布を選ぶ。
用布の研究──ちぢむこと,色のとまり方など。
(三)製作(12〜13図)
(四)用い方について平常着との関係を調べ,いっそう便利な考案はないかを工夫する。
[備考]
洋式仕事着下衣(ズボン)の縫い方
1 仮縫い
仮縫いができたらはいてみる。その上で種々の動作をして修整する。
2 本縫い
口 うしろまた上縫い 布を十分にのばして縫い,縫代は割る。
ハ いしき当て附け,裏からまつり附ける。
二 右わきにポケットを附ける。上から4㎝下げてポケット口15㎝,ポケットの深さ13cm,幅14㎝ぐらいとし,わきの形に合わせて裁つ。まずポケット口を縫い(下側はわき縫代いっぱいに,上側は見返り0.2cm)袋の奥を縫う。
ホ 前また上縫い。
へ 左上にわきあけを作る。持ち出し,見返しにする。
ト わき縫い,すそ口あき6㎝
わきを縫い前へ折る。次にポケットの縫代をわき縫いにとじ附ける。
チ また下縫い。
リ 腰布附け,前の上にひだを取る。
ヌ すそ口布附け。
ル 仕上げ。
ヲ 穴かがり,ボタン附け。
ワ ひも,ひもとおし附け。
1 目 標
(1) 基本的な作業用エプロンの形を理解する。
(2) エプロンの材料の選び方を知る。
(3) エプロン調製の技術を習得する。
(4) 各種エプロンへの発展の興味を養う。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 使用の目的,形,各部の名称の研究。
(2) 形,材料をきめる。
(3) 製作計画
b 型紙の置き方
c 布の裁ち方
d 縫い方
い) そで ろ) 身ごろ,肩合わせ は) えりぐり,後ひも附け
に) そで附け ほ) ポケット附け へ) 仕上げ と) そで口
ゴムひもとおし
(4) 実習
1 目 標
(1) 乳幼児の発育に対する理解を深める。
(2) 乳幼児の食べ物の世話ができるようになる。
(3) 幼い子供によいしつけをする必要を覚り,且つよい指導を与える方法を会得する。
(4) 正しい育児への興味を深める。
(5) 乳幼児の被服の調製能力を養う。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) どんなのが健康な赤ちゃんであるか。
血色がよい。
皮膚にはりがあり,つまんでも固い。
いつもきげんがよい。
よく眠る。
(2) 赤ちやんの食べもの──ミルクの必要を強調——「なにをたべるか」の前項復習。
(3) 授乳を電車の中でも,路ばたでもどこでもすることの批判──家庭の中だけのことであることの理解。男子の放尿とともに日本人の悪習慣であることも悟らせる。
(4) お守りの要領を話し合う。
首がすわらぬうち,首のすわってから。
負い方
背負うことの是非。
(5) よいしつけの復習と発展
b はなを垂らしていないか。
c 手やつめはよごれていないか。
d 着物を着たり脱いだり,あるいは排便を要求したり,自分でしたりするか。
e 寝起きは規律的にできるか。
(6) 乳幼児の生活と発育に即した着物は,どんなのがよいかの討議。
い) 成長の速度に伴なう工夫。
ろ) 形,材料,色。
b 幼児服(遊びの生活)
い) 成長に伴なう工夫。
ろ) 遊ぶに都合のよい考察。
は) 形,材料,色。
特定ののために,形を選び,見取り図をかく。
(7) 子供服
運動動作及び発育を妨げないよう。
ゆとり
単純な形,明かるい色
丈夫な材料,仕立て方
ひとりで脱ぎ着ができるように,あきや留めを工夫。
成長の速度に伴なう工夫。
1 目 標
(1) 家族とのよい間柄を発展させる。
(2) 栄養に対する知識を確実にし,調理技術を進歩させる。
(3) 物日に必要な家庭的常識を会得する。
(4) 弁当の作り方を習得し,自分の食事は自分で責任を持つ態度を発展させる。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 家族が特別の調理を楽しむ,物日について話し合う。
進学 ひな祭 端午 七五三 など子供の祝
植えつけや養蚕や刈り入れを終った農家の祝
(2) それらの中で特に自分達の好きなものをあげてみる。その中から実習したいものをきめる。
[例]一 赤飯 茶わん蒸し かぶの甘酢
二 雑煮 照りごまめ 数の子のしょうゆづけ 煮豆 なます
(3) 休日に家族そろって何かをする計画をたてる。家族が意見を出し合う。
母 親類を訪ねたい。
兄 野球を見に行きたい。
下の二人 遠足に行きたい。
自分(花子)は家庭で何かおもしろいことをしてみんなで遊びたい。
これらのちがった意見をどうしたらよいか。
(4) 家族そろって遠足に行くとして,どんな準備がいるか。
出発時間その他のプログラムを作る。
お弁当を作る。
家族全員でその責任を分けあう。
目的地の選定とプログラム 父と兄
お弁当 母と自分
向こうでするゲーム 下の二人
(5) 弁当の要件を討議し,献立実習。
b しるが出ないこと。
c 腐敗のおそれがないこと。
d 携帯に便利な──容器の工夫
(6) 毎日の弁当の作り方を,もっと改善することを問題とし,次の事項を決定する。
b 弁当の質の要件
い) 少量で栄養に富むこと。
ろ) 栄養素の配合がよいこと。
は) 弁当に欠けやすい栄養素に注意すること。
(7) 実習
弁当箱を要しない焼きむすび,などのうち,適当に実習する。
3 考 査
毎日の弁当の評定。
1 目 標
(1) 正しい親切な看護ができるようになる。
(2) ふだんの生活にいっそう衛生上の注意が行き届くようになる。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 病室の要件を考察する。
b 暖房には何を用いるか。火ばちを用いることの可否。
c 隔離を要するのは,どんな病人か。
d 静かにしておく必要のあるのは,どんな病人か。それにはどんな処置をするか。
e 各自の家で病室として使える部屋はどれか。その部屋を病室として適当なものにするには。どんな工夫がいるか。
(2) 病人の被服について話し合う。
b 寝具にはどんな注意が必要か。一般に寝具の手入れ法を研究し実習する。
c 着物を着かえさせる方法。
(3) 病人の食事の研究と実習。
b 半流動食にはどんな調理法があるか。
c 実習
かゆ,くず湯,卵豆腐,ゆで卵,半熟卵,茶わん蒸し,野菜スープ等のうち適宜。
(4) 看護表の家庭向きな簡易な形式を考案し,実習する。
(5) 看護における精神的要素の重要さを体験するために学級でその見舞の計画をたて,実行する。
一般に回復期における病人の注意,看護の注意を話し合い,それを実習する。
(6) 吸入器,便器等の取り扱い方を実習する。
1 目 標
(1) 乳幼児の健康の異常に早く気がつくようになる。
(2) 乳幼児の病気に,やさしい手当てができる力を養う。
(3) 一般に看護の技術を進歩させる。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 乳幼児の死亡原因と死亡率を調査し,どんな病気が多いかを知る。
(2) 弟妹やよその乳幼児が病気にかかったことはないか,どんな病気であったか,その原因,そのくり返された度数。
b けが。
c 栄養のまちがい。
(3) 下痢の原因,下痢を起させないように家庭で気をつけなければならないことを討議する。
(4) 呼吸器系統の病気にはどんなものがあるか。それに対して,どうして抵抗力をつけておくか。
(5) はしか,百日ぜきにはどんな予防法があるか。
(6) ジフテリアや疫痢に対してどんな予防や手当がいるか。
(7) 結核の予防についてどんな心得がいるか。
(8) 乳幼児の体温や呼吸や脈はどれくらいあるのが普通か。発熱したらどうしてやるか。
(9) 薬の飲ませ方の実習。
1 目 標
(1) 自分たちの社会を住み心地よいものにするための地盤として,近所の交わりをよくする態度を養う。
(2) 客のもてなし方を会得する。
(3) 贈答の心得を学ぶ。
(4) 隣人との共同の仕事に協力の必要を自覚する。
2 指導の方法──生徒の活動
(A) 招待
正月,うらぼん,祭礼等慣例の場合。
結婚,忌日,誕生,集まりなどの臨時の客。
(2) どんな持てなしが客を喜ばせたかを話し合い,形式的な持てなしよりもとぼしくても情味のある方がよいことを決定する。
(3) 普通の接待のし方として,お茶のいれ方,点心 客ぜん等の実習。
茶の種類,栄養,いれ方実習。
できれば,ここで薄茶,せん茶の実演を見るとか,心得のある人から話を聞くとかして,学ぶべき一般的心得を話しあい,試みる。
b 客ぜんの調え方。
[例]一 散らしずし 貝の潮じる 茶のごまあえ
[例]二 サンドウィッチ ゼリー 紅茶
(4) 六年の家庭娯楽,八年の季節の生け花の復習と発表。
(B) 贈答
(2) どんな品物が自分にうれしかったか,また先方を喜ばせたかの経験を発表する。
(3) みやげ物の選び方について,有効な示唆を書き留める。
(4) 贈答の好ましくない慣例はないか,あったらそれに対する態度の討議。
(C) 協同
(2) 炊事とか農耕その他何か共同で仕事をしているかを話し合い,その成果と,その発展の余地について研究する。
(3) どんな物がどんなふうに共用されているかを話し合い,その望ましい態度を列挙する。
例えば,順番や期限の厳守,汚したりこわしたりしないように慎重に使用することと,あとの手入れ。
(4) どんな奉仕が近所の生活をしあわせにしているか,またすることができるかを話し合う。
1 目 標
(1) 帯の実用的,装飾的役目について理解する。
(2) 半幅帯の材料,仕立て方並びに帯の締め方,結び方を習得する。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 近頃用いられている帯の種類,昔から用いられて来た帯の種類を調べる。
(2) 各種の帯の鑑賞と批判──特に衛生的見地を含めて。
(3) 半幅帯の製作の計画。
(4) 仕立て方の実習。
い) がわにはありあわせの材料を配合よくはぎ合わせて作る工夫をするもよい。
ろ) 帯の厚みと固さとを考えて,帯側に適した心を選ぶ。
b 寸法
い) 幅や丈はどのくらいが適当か(胴まわりと結び方によって寸法がきまる)
ろ) 胴まわりと手・垂れの寸法をきめる。
c 地直し
がわや心の地直しの必要な理由を知り,その方法を考える。
d 仮とじ,標附け
い) 仮とじの必要とその方法
ろ) とおし標のし方
e 縫い方
い) がわ縫い,角の縫い方,返し口のあけ方,縫い留めのし方
ろ) 心ごしらえ,心の幅のきめ方
は) がわと心とのつり合いの取り方
に) 心のとじ,とじ糸,位置,粗さ,ゆるさ
ほ) 引き返し口
へ) 返し口の始末のし方
と) しつけのし方
f 仕上げのし方,畳み方
g 着用,手入れ
相互に締め心地や結び方及び色,柄の着物に対する調和等を研究する。
1 目 標
(1) 羽織が保温調節に簡便な衣類であることを理解する。
(2) 羽織の材料,仕立て方,着方について習得する。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) 普通に用いられる羽織の形,種類について調べ,その損失について討議する。
(2) 自分の製作する形をきめる。
(3) 材料
表と裏の取り合わせ(地質,色,柄)について工夫する。
(4) 寸法をきめる。
前下がり附けるのはなぜか,寸法はどれくらいか。
乳の位置はどのあたりが適当か。
えり幅はどれくらいにするか。
b 長着によって寸法を加減する所はどこか,またその寸法はどれくらいがよいか。
(5) 裁ち方,仕立て直し物の布調べ。
b 前丈と後丈とは同寸法にするか,あるいは前丈の方を長くするか,どちらにきめたかその理由。
c そで口布は共布にする習慣であることを理解し,布の取り方を考える。
(6) 標附け,えり折り実習。
1 そで
2 身ごろは,前下がりとわきに注意する。
3 えりの折り方は,最も簡単な方法を選び,且つ仕立て直し物は,折り筋が目立たないように工夫する。
(7) 縫い方実習
b そで,あわせの経験を思い出して
c 胴はぎ,針目の粗さ,きせの分量,折りの方向
d 前下がり,縫う範囲,糸こき
e 背縫い,縫い上げて背の折りが左身ごろが高くなるように布のそろえ方を考える。
f わき縫い
g 身八つ口
h そで附け
i 身ごろえの附けの仮とじ,仮とじの必要とそのし方
j 乳の大きさと折り方,附け方
k えり,待ち針の打ち方,縫い方。
l えり先のまとめ
m えりくけ
n えりのしつけ
(8) 仕上げ
(9) 着用,手入れ
着てみて,えりの釣り合い,くり越しの適否を調べる。
第七年のワンピース,第八年のツーピースに同じ。
(1) 自分の持っている羽織,帯その他全部の記録を作る。これを基礎に,被服が足りているか,足りないものは何か,多過ぎないかなど考えてみる。
(2) 一年間にどうしても必要なものの数はどのくらいか,みんなで研究してきめる。
(3) 更に討議を発展させ,和洋二重生活をやめたら,もっと数が少なくてすむかどうかを考える。二重生活の批判をする。
1 目 標
(1) 堅実な家計運営の途を理解する。
(2) 合理的な予算生活の必要を覚る。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) お金は何のためにあるか,討議する。
b 将来に備えるため─生産,教育,災害などに対し。
c よりよい社会を作るため。
(2) 物を買ったり,好きなことをするにも,金には限りがあるから,ほしいままに使うことはできない。
これをどうしたらよいか。
b 予算を立てること。
c 収入と支出のつり合いをはかることなど。
(3) 将来に備えるためには,どうしたらよいか。
貯蓄の方法を話しあい,研究する。
郵便貯金
銀行預金
自分で貯金をしたことがあるか,話し合う。
貯金をしたことのある人もない人も,これから半年お小遣いの中から,貯金をすることを計画する。
休みにいなかのおばさんの所に行く。好きな本を買うなど。
人のためにお金を使ったことがあるか。
関西震災救助基金に寄附したことがあるなど。
こうして他人の事,社会の事にも金を使うことを覚えさせる。
1 目 標
(1) 家庭科の学習内容の総括と将来の生活に対する展望とを確かにする。
(2) 女子は家事担当者であるとともに,社会人であって,よりよい社会建設に責任があることを自覚する。
2 指導の方法──生徒の活動
(1) あのおかあさんはいいおかあさんだと自分が思ったり,あの方はりっぱな奥さんだと言う話を聞いたりしたことから,いいおかあさん,りっぱな奥さんとはどういう人かみんなでいってみる。
家中の人が仲よく気持よく暮らしている。
いつ行っても元気で明かるい感じ。
困った人や忙しい人の世話をよくする,など。
逆にあの家はいやだと思うのは,どんなのか。
家の中でけんかが絶えない。
自分たちだけいい事をして,決して人に知らせたり分け合ったりしない。
(2) 理想的なよい家庭婦人になるには,どうしたらよいか。
みんなが仲よく住むにはどうしたらよいか,いつもけんかしているのはどうしてか。その原因を除くにはどうしたらよいかなど。
いつも元気で明かるいためには──今までの勉強の復習とその発展。
自分だけがよくなるのでなく,人もよくなるにはどうしたらよいか。
社会なべや震災義金その他自分たちより困っている人のために,いつも喜んで自分の持っている物をさしあげたり,できることをしてあげる。
(3) 女は家庭婦人になることだけが仕事であろうか。
生徒は日本に婦人代議土ができたのはなぜか,外国では婦人はどんな仕事に就いているか,等を新聞,雑誌等から調べて来て発表しあう。
日本の著名な婦人たちはどういう人か,どうして有名か,その人々はどんな家庭を作っているか,などを話しあい,その中でも自分たちは誰が一番りっぱだと思うか,その人々を招いて話をしてもらうことかできるか,など,幾つかの委員に分かれて研究する。
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学習指導要領家庭科編
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(Date May,2,1947)
昭和二十二年五月 九日 翻刻印刷
昭和二十二年五月十五日 翻刻発行
(昭和二十二年五月九日 文部省検査済)
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