第三章 指 導 内 容

 

 この家庭科の内容は,他の教科目と同様,生徒の興味,活動,心身の発達,また可能な将来の活動や社会の要求などを考慮に入れて展開させてある。

 各学年共この指導内容は単元の形式によってしくまれている。教科課程ににおける単元とは,それ一つで完全な一つの研究題目で,生徒の興味あるいは活動から論理的に発展し,学習の到着点として,望ましい確かな結果をもたらすように,まとめたものである。そして,この各単元が互に論理的に関連し合って,教科課程全体を作りあげているのである。

 このやり方は,第六章以下にこまかく内容づけてあるので,注意されたい。しかし,この一時的な課程に,提案してある内容は,決して動かしてはならないものではない,教師は地方地方の特殊な環境を考慮に入れて,更によい計画を立て新しい単元を作るようにしてほしい。家庭科の分野には,他の教科目にもまさって,教科内容を豊かに拡げ,改良し,また変化をつける特別に大きな機会が与えられている。それは,この教科内容が,従来のように,調理をしたり,着物を縫ったりすることが,じようずにできるための手先の器用さ,熟練を基本的目的にするのでなく,この基本的目的はもっと広く家庭や家族生活の最もよい型を求めそれを保って行くということにあるからである。

 以上のような理由で,第五,六学年のこの新しいは課程は最も重要なものである。ここで男女児共にはじめて家庭生活の重要さ,またそれに対する自分の役割について,自覚させられるからである。教師は特に,この課程が単に裁縫と調理をいっしょにしたものではないということを認識することがたいせつである。もちろん男の子たちがそんな課程を望むものではない──それは,新しい日本を作るために,今までより,もっとよい家庭生活をすることを目的にして男女ともにわかち合う経験の発展であり,又それは当然男も女と同様責任のあることであって,男子も子供の時から理解しなければならないことである。

 この考え方は,最も効果的な教育は,現在の直接重要な問題を解決するとともに,生徒の興味と発達に適当な活動を与えるという教育原理にも一致するものである。この原理は,更に進んで児童が成長するにしたがって,その興味と能力も大人に近いものになって行くことを示す。

 そこで,第七,八,九年において,また更に第十,十一,十二年においては,その内容が,生徒の興味や能力につれて変化して来る。ここでは,この課程は職業科の一つとなり,選択科目の一つとなる。大多数の女子がこの科目を選ぶと思うが,女子全部の必須科目ではない。