高等学校
学 習 指 導 要 領
数 学 科 編
(試 案)
昭和26年(1951)改訂版
文 部 省
ま え が き
この書物は,学校教育法施行規則第55条および第57条に基いて,中学校・高等学校の数学科の教科課程・教科内容およびその取扱いの基準を示す目的でつくられたものである。ここにいう基準とは,教育を画一的に統一するわくを意味するものではない。教育の実際は,生徒および地域の違いに応じて,それに最もよくかなうよういろいろと変化しているものである。これに対して一律にこうするのだというようなわくが存在するものではない。
この書物で意図したところは,そのような教育計画をたて,実際に指導をしていく際に,教師にとって最もよい手がかりとなる示唆を提供しようとするところにある。したがって,ここに示された目標や内容・指導法などの具体的な事がらは,これによって原則的なものを例示して,示唆を具体的なものにしようという目的で示されたのであって,そのとおりに実行することを要求したものではない。基準となるのは,その背後に流れている基本的な考え方である。
たとえば,第Ⅰ章では,数学科の一般目標として10条の目標が述べられている。そして,その10条の目標がどんな考え方でつくられたかを説明してある。基準となるものは,この10条の目標それ自身ではなく,その目標をつくりだした基本となる考え方——すなわち,数学科も人間教育の一環として全人的な発展に寄与しなければならないし,寄与することができるという考え方——である。
教師は,学習指導要領一般編の中にある学習指導要領の使い方についての説明を参照せられ,本書の目的を最もよく生かすように利用していただきたい。
なお本書は,教材等調査審議会数学委員会の委員のかたがたによる原案と,審議とに基いて,文部省初等中等教育局中等教育課において編修したものである。昭和23年より審議を始めてから昭和26年5月審議を終るまで,長い期間積極的な御協力をいただいたことをしるして,謝意を表したいと思う。
また,委員以外の多数の教師,学者,有識者からいくた貴重な資料や意見をいただいた。特に日本数学教育会からは適切な批判と資料とをいただいた。これらの御好意に対しても深く感謝する次第である。
委 員 氏 名(五十音順)
○奈 良 女 子 大 学 付 属 高 等 学 校 教 諭 池 田 武 夫
○埼 玉 大 学 助 教 授 伊 藤 武
○東 京 都 豊 島 区 立 長 崎 中 学 校 長 宇 高 ラ ク
○東 京 学 芸 大 学 教 授 兼 付 属 竹 早 中 学 校 長 川 口 廷
○東 京 教 育 大 学 助 教 授 小 西 勇 雄
○東 京 都 立 忍 岡 高 等 学 校 長 小 松 直 行
○文 部 省 初 等 中 等 教 育 局 中 等 教 育 課 島 田 茂
○東 京 大 学 教 授 末 綱 恕 一
○千 葉 大 学 講 師 杉 岡 司 馬
○埼 玉 大 学 教 授 杉 村 欣 次 郎
○東 京 都 立 工 芸 高 等 学 校 教 諭 高 橋 運 宜
○東 京 都 教 育 庁 指 導 部 主 査 辻 田 正 己
○東 京 都 立 大 泉 高 等 学 校 教 諭 土 屋 正 夫
○東 京 都 立 立 川 高 等 学 校 教 諭 飛 岡 正 治
○文 部 省 初 等 中 等 教 育 局 中 等 教 育 課 中 島 健 三
○東 京 教 育 大 学 教 授 鍋 島 信 太 郎
○千 葉 大 学 教 育 学 部 長 野 村 武 衛
○東 京 都 立 戸 山 高 等 学 校 長 平 田 巧
○東 京 教 育 大 学 付 属 高 等 学 校 教 諭 松 岡 元 久
○成 蹊 大 学 教 授 兼 成 蹊 高 等 学 校 教 諭 松 田 道 雄
○東 京 教 育 大 学 付 属 中 学 校 教 諭 宮 崎 勝 弍
○東 京 大 学 助 教 授 森 繁 雄
○東 京 理 科 大 学 教 授 森 島 太 郎
○東 京 大 学 助 教 授 矢 野 健 太 郎
○長 野 県 高 岡 村 立 高 岡 中 学 校 長 山 岸 斉
○名 古 屋 大 学 教 育 学 部 長 依 田 新
○文 部 省 初 等 中 等 教 育 局 初 等 教 育 課 和 田 義 信
目 次
まえがき