第Ⅵ章 数学科における単元による学習指導

 

§1.単元による学習指導のねらい

 単元による学習指導はどのようなことをねらっているのであろうか。—般に,単元学習はこどもの問題解決の学習であるといわれているが,これがいわゆる書かれた問題の解決による学習と,どのように違っているか,その相異を明らかにすることによって,このねらいを明らかにしてみよう。
 
単元でとりあげる問題を解決していく過程は,書かれた問題を解決していく過程と比べて,どんな点に相違があるか。

 いま,この相違を,次のような二つの問題を例にして,考えてみよう。Aの問題は,ひとつの単元の中心となる問題であり,Bの問題は,これまでの数学科の指導の中心におかれていたような書かれた問題である。

1.問題のはあくについて
 

 なぜそのことが問題となるのかということ,すなわち,その理由となることが,こどもたちの生活の中にあり,こどもの必要に基いたものである。問題を解決していくためには,このなぜということを,こどもたち自身で考えなければならない。

 なぜということは,教師がおもにこどもたちのことを考えて,説明して与えるこのような形で問題を与えれば,あるこどもは必要を感ずるし,他のこどもは感じないかもしれない。なぜということを考えなくとも,問題はとける。

 Aのような問題を解決していくためには,なぜこづかいを問題にするのか,そのわけをはっきり考えなければならない。そうすると,ほしいものが買えないとか,むたづかいをしすぎて困ったとか,いろいろなこどものトラブルがまず考えられるだろう。そして,なぜそのトラブルが困ったことになるのか,その理由を反省していけば,自主的に消費生活を規正していって,りっぱな中学生としての生活をしていきたいというような,こどもの必要につきあたるであろう。

 こうした必要をはっきり自覚して,これを分析していってこそ,この問題が解決されるのである。

 Bのような問題では,このなぜは教師の考えた数学の指導過程の中の一つの手段にすぎず,こどもたちの生活の中から題材を取ってはいるが,生活を高めようとする点が反省されてないから,このなぜの生まれる理由がない。たとえそれが反省されたにしても,問題が特定の状態のものに限定されているから,すべての生徒が,その必要を感ずるとはいえない。たとえば,毎月定額のこづかいをもらっていない生徒は,この問題にそれほど必要を感じないであろう。また,本代の予算をどうして40%ときめたのかわからないから,本を買うことにあまり重きをおいていない生徒は,なぜそんなことをするのかわからないであろう。また,こづかいを豊かにもらっている生徒は,何も予算などたてなくてもよいではないかと考えて,この問題にあまり必要をおぼえないかもしれない。また,こうしたことを教師がていねいに説明して必要をおぼえさせたとしても,また次の問題について,同じようなことをくり返さなければならない。

2.問題の分析について
 

 この問題を解決していくためには,さきにあげたなぜということをよく考えて,問題を分析したり,限定したりして,Bのように数量的に解決できるいくつかの問題に分析していかなくてはならない。

 この問題を解決していくためには,問題のなかにある条件に基いて,与えられた数量の間の数量的関係を明らかにし,どんな計算や測定などを適用すればよいかを考えればよい。解決のために必要な仮定や資料はいっさい与えられている。

 「こづかいをどのように使ったらよいか」というAの問題を解決するためには,自主的にこづかいを使うという観点に立って,これを「予算生活の計画を立てる」という数量的な問題におきかえる。しかもこの問題を自分の個性を生かしつつ,合理的にという観点から,次の二つの問題に分析する。

 この(1)は,「必要か」とせず「適当か」としたところに,合理的にという見方がはいっており,(2)では,「よいか」というのであるから,よいわるいの観点として,自分の個性を伸ばすという考えがはいっている。

 さて,この二つの問題は,このままでは解決できない。そとで,たとえば(1)について適当ということを,いろいろな過去の経験や教師の助言に基づいて,ある基準を設け,あるものに対するある割合にするというような見とおしをたて,その基準や割合のとり方の資料として,どんなものが手に入りそうかを考えるであろう。いま,その資料として入手できる見込のあるものとして家計調査の資料があるとすれば,この基準を「普通の家庭の教育費中に占めるこづかいの割合」と仮定することもできよう。そうすると,(1)の問題は次のような小問題に分けられる。

 このように分析していって,しまいには,その問題の答が数学的な判断によって決定できるもの,調査等によって明確にできるもの,※他教科での成果を利用して判定できるもの等に帰着させることができる。この間に,さきに基準について仮定を設けたように,問題を分析していって,ある場合には数量的解決が可能になるように,問題に仮定を設けて限定したり,資料によって考えるべき数値をきめたりして,いつもどうしたら解決できそうかという見透しをつけて分析を進めていくことが必要となる。そうして数学的解決のきく問題にまで分析が進んだあとをみれば,Bのような問題の一群ができあがっていることになる。

 すなわち,単元の問題は,それがしだいに分析されて数学的解決のきく問題に到達する。いま,この問題の系列を示せば,次のようになる。

 

 

 この表でいえば,問題(a)(イ)(ロ)(c)(d)(ハ)(ニ)(f)が数量的に解決される問題であり,このひとつひとつが,Bの型の問題に当る。

 こうした分析の過程は,Aのように,限定されてない現実の場におきてくる問題に特有なことであって,Bのような問題での分析とは,まったく異なるものである。Bのほうは,与えられた,きちんと条件のそろった場面にある,隠された数量的関係をとりだすための分析であって,初めから解決可能なことが前提とされているのが普通である。Aにあっては,解決可能であるように限定していくために,自分で条件と前提をつけていくことが必要になる。

 

注※ 成果を得るための過程については,その教科の学習にゆずることにして,結果だけを,資料としての知識として利用したりすることを考えておかないと,指導が散漫になり焦点を失うおそれがある。

 

3.解決の多様なことについて
 

分析のしかた,限定のしかたは必ずしも一義的でない。したがって,分析や限定のしかたに応じて,いろいろな程度の一連の問題が起ってくる。解決も同一の結果にはならない。

解決のためにとり出される関係は,一義的である。その関係の処理のしかたには,いろいろな方法が考えられても,結果は同一になる。

 たとえば,(1)にあげた総額をきめる基準として,これまでのクラスの生徒たちの毎月の記録のうちから,むだ使いの分を除いた額の月平均をとることも考えられるし,また,クラスの生徒のこづかいの平均の,クラスの生徒の家の家計費の平均に対する割合をとることも考えられる。

 また,こづかいの配分を考えるとき,何に重きをおくかによって,いろいろな配分のしかたも考えられる。この配分のしかたをきめることは,ひとつの問題の限定であるが,この限定のしかたにも,百分率によって詳しくきめることもできるし,簡単な分数を用いて大ざっぱにきめる方法もとれるし,100円に対する内訳で示す方法もある。このように方法上にもいろいろな変化をとりうる。これは分析された後の問題に対しては,いろいろな条件となるわけのものである。こうして,限定のしかたと方法的な条件をきめても,また,ひとりひとりのこどもによって,こづかいの高も違うし,大ざっぱに200円とか300円とかいう程度にしかきめられない事情のものもあろうし,250円とか175円とかいうように,細かくきめられる事情のものもあろう。このような数字のくわしさが違えば,そこに遭遇する数学的な困難さの違った問題が起ってくる。このように,こどものもつ見とおしによって,条件や限定,資料となる数量が異なり,したがって,数学的な困難さの程度の違った,しかも同じ種類のいくつもの問題が起ってくる。これは,Bのように,条件を明示し,状況を一義に指定した問題には起ってこない点である。

4.解決の限界について
 

 得られる結果は,自分できめた仮定や条件に基くものであるから,それが実際にどんな意味をもっているか,どんな限界をもっているががめいりようになるし,まだどんなことが残されているかも明らかになる。

 仮定や条件がどうして生れたかが明示されていないから,その結果を実際の生活の上にどう適用してよいかがはっきりしない。

 前にあげた問題について,総額や配分の計画ができたとすると,これに基いて,生活していくことを考えるときには,この解決が,さきにあげた基準なり,条件なりを認めた上のものであり,そのかぎりでの解決であることが明らかであるから,この解決を実際に照して反省する場合にも,反省すべき点がこれらの基準のたて方,条件のつけ方にあることがはっきりする。たとえば,こづかいを家計と教育費などの割合からきめたとして,その額がなお現実の家計に大きな負担を与えるということがわかれば,家計と教育費との割合は,どの家庭でも一様であるとするわけにはいかないのではないかという点に反省が向けられ,ここからまた新しい問題が生れる。予算を配分して,それに基いて実行したとき,ある費目はばかに苦しくなり,ある費目は余ってくることがわかれば,配分のときに考えた仮定としての自分の個性を反省しなくてはならない。

 これに反して,Bのような問題にあっては,その結果の反省は,問題の条件に対してなされるだけであって,実際への適用については,明確に判断する資料が与えられていない。しかも,結果は一意にきまってきて,それ以上に発展するものをその中に含んでいないのが普通である。

 
 
単元による指導はどんなことをねらっているのか。

 上のように比べてみると,問題の解決を中心として指導するにしても,単元による指導と,書かれた問題による指導では,その過程が大きく違ってくる。これは,そのねらい自身に違いがあるのであって,書かれた問題について指導することが無意味であることを意味するのではない。

 Bのような問題は,百分率の用い方についての理解を深めていく練習のためや,百分率の意味を知っていく資料としては意味があるのであるが,そのねらいとするところは,百分率の理解やこれを用いる技能を伸ばすという狭い場面に限られているのである。

 これに対して,Aのような問題を中心とする指導は,次のようないくつかのねらいをもっている。しかもこのねらいの一つ一つは,ある場合には,同じ単元で同等な重みをもっている場合もあるし,ある場合には,その一つ,ないし二つに重きをおかれているという場合もある。しかし,人によって,どれを重くみるかに違いはあるにしても,いずれもBのような問題の指導では,達成できにくいものである。次に,そのねらいの一つ一つについて考えてみよう。

ま と め
 

§2 単元を構成するときの留意点

 単元による学習指導のねらいを前節において明らかにした。このねらいに合うように指導していくためには,ばく然と生活に関係したことを取り上げて,なんらの目あてなしに指導したのでは単元の学習にはならない。何よりもまず,単元の学習は問題の解決でなければならないことは前節で述べたとおりである。ところがこの問題も,ただでたらめに生活の問題をもってきて,生徒たちにかってに解決させればよいというわけにはいかない。このねらいに合うように問題を取りあげ,計画をたて,重点をはっきりつかんで,このねらいに合うように生徒の学習を指導していかなくてはならない。この節では,主として,構成の際の留意点を,次の節では,指導の際の留意点を述べることにする。これは,実際にどのような方法で構成し指導するか,という方法のもとになる原則である。その実際の方法・手順については,4節以降で述べることにする。

 すなわち,この節の問題は,次のことである。

 単位による学習指導のねらいに合うようにするには,単元を構成するときに,どんなことに留意したらよいか。

 単元を構成するときに,原則的に留意すべき点としては,とりあげる問題の内容や性格の面と,そこに含まれる数学的な内容——主として技能——の面とである。これを前節にあげた四つのねらいについて考えよう。
 
数学を用いて生活を改善し続けてやまない人間の育成をねらうためには,どんなことに留意して単元を構成したらよいか。

自主的に学習していくこどもの育成をねらっていくためには,単元を構成するときに,どんなことに留意しらよいか。
 
 
個人差に応じ,問題を解決しながら,しかもみんなで協力して仕事をしていく人間の育成をねらっていくには,どんなことに留意したらよいか。
既習の技能を適宜に指導していくことをねらうには,どんなことに留意したたよいか。

 能力を用いて問題を構成していく面についての注意は,いちばん初めおよび番目のねらいについて述べたものと同じであるから省路する。

 

§3.単元による学習指導上の留意点

 前節では,学習指導にはいるまえの教師の計画としての単元構成上の留意点を述べた。この節では,この計画のもとに,実際に教室で生徒を指導するときの留意点を述べる。すなわち,この節で取りあげるのは,次の問題である。

 単元による学習指導のねらいに合うようにするには,学習指導に際して,どんなことに留意したらよいか。

 これについては,これまでに述べたことや,第Ⅰ章,第Ⅱ章で述べたことを教室の場面に置き換えて考えればよい。したがって,そのひとつひとつをくわしくのべることはやめて,一括して,箇条書の形にあげておこう。

 A.数学を用いて生活を改善し続けてやまない人間の育成をねらうためには,どんなことに留意して学習指導をしたらよいか。

 B.自主的に学習していく生徒の育成をねらっていくためには,どんなことに留意して学習指導をしたらよいか  C.個人差に応じ,問題を解決しながら,しかも,みんなで協力して仕事をしていく人間の育成をねらっていくには,どんなことに留意して学習指導をしたらよいか。  D.技能を適宜に指導していくことをねらうためには,どんなことに留意して学習指導をしたらよいか。  

§4.単元による指導計画のたて方Ⅰ:−年次計画−

 本節以後においては,単元による学習指導をしていくため,具体的に,どのように準備をしたらよいかということを,学年の初めの年次計画,各単元にはいるときの単元構成,毎時間の指導計画の三つについて述べてみよう。

 もとより,これらの計画のたて方は,教師各自の考え方の得意・不得意,熟練の程度などによって,いろいろ変ってよいものである。一定の型があって,これにむりに合わせなければならないといったものではない。以下に述べることも,各人がその個性を生かした方法をくふうするためのひとつの示唆である。

 この節以後の説明では,学年初めの計画から,毎時の計画にいたるまで,しだいに粗なものから密なものへと,時間的な間隔をおいて考えていく方法をとった。これは,一時に精密な計画をすっかりたてておくようにしたり,または,大ざっぱな計画のままで指導にのぞんだりするのに比べて,より実際的であると考えたからである。また,この説明では,主として教科書などを参考として指導計画をたてていくような方法をとった。これは,現在多くの教科書がなんらかの指導計画を予想して書かれてあること,多くの教師は,教科書を参考としながら,これを生徒や地域の実際に合うように修正して指導しようとしていること,などの実状に合わせるためである。もとより,指導計画は,学習指導要領,生徒および地域の実状に基づいてたてられ,教科書は,この指尊計画に便利なものを選ぶことが理想である。ここに述べたのは,この理想に近づいていくためのひとつの方法であるといってよい。

 以上のような考え方のもとに,本節では,まず年次計画について考えてみよう。
 
年次計画はなぜ必要か。

 学年の初めに当って,1年間のだいたいの見とおしをつけるため,その学年度に指導すべき単元名,単元で取りあげる生活や数学的内容を考え,取扱の時期や時間数などの目安をたてておくのが普通である。この全体計画を年次計画ということにする。この計画をたてずに,指導を進めると,次のような欠点を生じ,指導が計画性と一貫性を欠いたものになる。

年次計画は,どのようにしてたてたらよいか。

 年次計画は,上述のように,取りあげる生活経験と数学的内容の前後の連絡と程度の概観をつけ,取扱の時期と時間数の目安をおき,必要な準備をその時期までに整えることによって,指導の一貫性と計画性とを確保することをねらっている。その根拠となるものは,学習指導要領,生徒の実態,地域社会の事情,利用しうる教科書等である。このうち教科書は,最も具体的なものであるから,これを手がかりとして考えていく方法が最も実際的であろう。そのとき,特に重要なことは,学習指導要領に基いて,生徒や地域社会の実情に合うように,教科書の計画を修正していくことである。

 このときの要点をまとめてみると,次の表のようになる。
 
 
教科書を読むとき注意すべき点
計画を修正するための処置
生活経験について
①どんな生活の場から問題を取りあげているか。
 その場は,地域社会の実態に合つているか。また,生徒の経験から見て必要や興味を感ずるものであるか。

 

 

 

 

 

②問題を解決するのに必要な資料は,教科書にあるものでまに合うか。
 必要な教具は学校にあるか。

 

③他教科や前後の単元に類似な生活経験があるかどうか。あったら,その相違や関係はどうなっているか。

①生活の場が地域社会の実態に合わなかったり,生徒が必要や興味を感じそうでないときは,次のようなことを考える。
    (ⅰ) 類似の適当なものがあれば,これを用いる。

    (ⅱ) 教科書以外の導入のしかたや分析限定の方法を考える。

    (ⅲ) 重要でないものは省略する。

    (ⅳ) 取扱の時期を変更したほうがよいときは数学的内容の発展段階に注意する。

②必要な資料や教具で入手の見込のあるものは,その準備の時期を考える。見込のないときは,代りのものを考えるか,単元あるいは,その一部の変更を考える。

 

  (ⅰ) 他教科で,類似なものがあるときは,指導する内   容や時期を打ち合わせる。

    (ⅱ) 前後の単元の間では問題を取りあげる観点や取扱の程度の違いを考えておく。
数学的な内容について
①各単元で指導する数学的内容は何か。そのうち,新しいものは何か。既習事項は何か。これらがじゅうぶんあるか。

 

②指導内容一覧表に示された内容のうち,必要と思うものが全部計画の中にはいっているか。

③取りあげた内容が自分の生徒にとって,むずかしすぎることはないか。やさしすぎることはないか。

 

 

 

 

④数学的内容の前後のつながりはどうなっているか。

①単元によって,指導内容が豊富すぎたり,貧弱すぎたりして,指導上都合が悪いときには,内容の変更や省略を考える。

 

②計画もれがあったら補充の方法を考える。

 

③数学的内容の難易が生徒の発達に合わないときは,次のようなことを考える。

    (ⅰ) 順序を変更する。

    (ⅱ) 省略する。(必要なものは,どこで補充するかを考える。)

    (ⅳ) 補充する。(どこで,どんな材料でするかを考える。)

    (ⅲ) 取扱の程度を変更する。

④理解や技能の発展に飛躍があるときは,その補充法を考える。

(単元の順序を変えたときは,特に必要である。)

時間配当について
①各単元には,どれくらいの指導時間が必要か。いつごろ扱ったらよいか。 ①  (ⅰ) 学校の時間配当の方針から,毎週の時間数の少な   い学校では,単元の省略統合を考える。
    (ⅱ) 学年末に時間が不足することがないよう,余裕をみておく。

 
 
年次計画の例

 次に,年次計画の例を示しておく。形式は,このようなものに限るわけではない。作りやすく,見やすく,使いやすい形式をくふうすることが必要である。そのためには,このような一覧表にして,見やすいところにはっておいて利用するようにしたほうがよい。

 この例は,週3時間だけ数学のある学校でたてた案である。この学校で用いている教科書では,その学年に8単元扱うことになっているが,時間数を考慮して,数学的内容から見て省略してさしつかえないような単元三つを省いた。その単元で扱う数学は,他の単元を扱うときに参照することにしてある。

 なお,この案を作るときは,はじめ,教科書の単元と章・節(生活経験を示す)と数学的内容を一覧表の形に書き抜き,取扱の時間数や数学的内容・生活経験を考えて,単元を省略統合したもので,次に示す表は修正の終った結果を示したものである。この表ができ上るために,もうひとつの修正用の表があることに注意されたい。教科書の指導書等に年次計画の一覧表がついているときには,その表を,このように修正して用いることもできる。

 

年 次 計 画 (中学二年)(例)


単 元
教科書の章・節
生活経験番号
数  学  的  内  容
時間配当
備   考
新 指 導 内 容
復 習 事 項
一、地図の作り方 1.広い地域の地図
    地球の形・大きさ

    経度緯度の測り方

    経緯網の書き方

2.狭い地域の地図
    長さの測定

    平板測量法

 

 

 

 

 

○球(直径・大円)

○緯度と北極星の高度

 経度と時刻

○心射図,メルカトール図

○平板測量法

 三角形の決定条件

 

○円,円周率(大)

○比

○縮図,縮尺

四、五、六月(8週・24時)
○Ⅰ単元(わたくしたちの地球)
    問題分析を変える

    比例,反比例はⅣ単元へ

○社会科の近代産業,天然資源の地図参照

○測量器具整備,補充(8班分)

    耕地整備を取り上げる
二、わたくしたちの測量 1.測量と誤差
    長さの測定と誤差

    測定値の取扱

 

2.面積と体積

    縮図と面積

    面積

    体積

 

 

 

 

 

○誤差

    絶対誤差,相対誤差

    有効数字

    測量値計算(加減乗除)

○計算尺による乗除

○面積と体積

    三角形,平行四辺形,台形,円角柱

    円柱,角すい,円すい

○文字の使用
    文字使用の約束

    公式

 

○百分率

 

 

○概算(乗除)

○面積,体積の計算

    正方形,長方形

    曲線形の面積(方眼)

    立方体

六、七月(6週・18時)
○Ⅲ単元(わたくしたちの計量)

 Ⅰ単元の狭い地域の地図との連絡考慮

 

 

○三角形等の求積法について既習の程度を調べる

○文字の使用については次の単元との関係考慮

三、お金のはたらき 1.お金の価値

 

2.お金のはたらき

    貯蓄

    利息の計算

 
    投資
 

3.生産と家計

    生産と物価
 
    家計

 

 

 

 

 

 

 

○複利法

○文字の使用

    等号,等式,不等号

    同類項,係数

    括弧の 法,指数法則

○株式,債券
    額面,原価

    配当(率),利まわり

○指数
    計算尺と比例

    価格,物価,単純,綜合,

    生産,賃銀,生計費

○度数分布表
    柱状グラフ
 

○単利法

○文字使用の約束・公式

 

 

 

 

 

○歩合

 

○百分率

 

 

○折れ線グラフ

九、十月(7週・21時)
 

○Ⅲ単元(お金のはたらき)

 

 

 

 

 

 

○取引所見学の計画

 

○指数は省略したⅡ単元(天然資源)参照

 

 

○家計費調査の計画

    当市の資料を市役所にきく
四、日常における数と式
1.数・量と生活
    ことばとしての数

    割合の表示

    差の表示

2.式と生活
    計算法の表示

    関係の表示

 

 

○十進法

○正の符号,負の符号

○方程式

    根,未知数,解く,

    等式の基本性質

○不等式

○比例,反比例

    y=ax,y=a/x
○比
    分数,歩合,百分率
 

 

○公式,等式

 

○不等号

十一、十二月(6週・18時)
○Ⅴ単元(日常生活における数と式)

○歩合,百分率の取扱いは

    Ⅱ天然資源

    Ⅳわたくしたちのからだを参照

 

○比例,反比例は

    Ⅰ単元(p43−p48)参照
五、数量と図形 1.図形と生活
    形の役割

    合同,相似の条件

    相似形の大きさ

2.グラフと生活

3.数と式

 

 
 
 

 

 

 

 

○合同,相似

○相似の位置,比,中心

○相似比と面(体)積の比

○ピクトグラム

○正の数,負の数

    絶対値,四則計算
 

○三角形の決定条件

○棒グラフ,折れ線グラフ,面積グラフ

○式の計算

    指数の法則
○方程式
一、二、三月(8週・24時)
○Ⅷ単元(数量と図形)

○図工科

    生活と美術
○グラフは
    Ⅵ図とグラフ参照

    (簡単に復習)

 

§5.単元による指導計画のたて方Ⅱ:−単元構成−
 
単元構成とは何か。それはいつ,だれが構成するか。

単元を構成するときには,どれだけの事を考えておかなくてはならないか,これらをどのように整理しておけば,指導に便利であるか。
1.この単元を選んだ理由
 
 
Ⅱ.学習の展開計画
章の問題
節の問題
目 標(評価の観点)
教科書
時間配当
備  考
理 解
能 力
態 度
               

備考欄には,テストの時期,特別な問題練習,その他を書いておく。

 
 
Ⅲ.評価の計画

 評価については,第Ⅶ章を参照されたい。ここでは,単元の構成に際して,計画しなければならない事項と手順とを簡単にまとめておこう。

Ⅰ.この単元を選んだ理由 Ⅱ.学習の展開計画

 生徒の現在つけている出納簿を整理して,これをもとにして学習を進めることにしたので,問題の分析は,教科書のそれとは違ってきた。

 以下に示すのは,分析された問題と目標,その他との関係である。この案では,目標のもっと詳しい分析は,毎時の計画の際にゆずってある。評価の観点として,( )で示したのは,評価の方法とねらいの心おぼえであって,次のように記号で示してある。

 
 
問題の分析
目 標
(評価の観点)
教科書
時間

配当

備考
章の問題
節の問題
理 解
能 力
態 度
1.総額

わたくしたちの1月のこづかいはどれくらいが適当か。

§1.自分たちは毎月どれくらい使っているか。 出納簿の整理法

 収入,支出,残高(A.O)1

問題構成の能力
(C.O)1

そろばんの加減

(B.O)

物を大事にし,お金をむだづかいしない

(C.R.家庭通信)

P.105−P.119

p120のこづかい帳の例表参照

 

 

 

 

教科書にはない。

 

 

 

 

 

 

○単元導入を含む

○各自の出納簿の持参,整理

 

 

  §2.自分は学級のなかで,多いほうか少ないほうかを考えて,自分に適当な額をきめよう。 度数分布表

度数分布の意味(B.T)1

(平均の意味(A・O)2

折れ線グラフ,棒グラフの意味(A・O)3)

 

柱状グラフをかく

能力(B.T)2

○B.T.20分
2.項目別金額

づかいを,どのように使ったらよいか。

§1.自分たちは現在どんな使い方をしているか。
    a.どんな項目に

    b.いくらずつ

    c.友人との比較

項目にわけることの意味(B.O)1

(学用品費,日用品費等(A.O)4

比の一段(A.T)1

割合のよさ(C.T)1

円グラフの意味とかき方

  (A.T)1(B・T)4

分数,小数,百分率の関係

(A.T)2

比の値を求める

(B.T)

円グラフをかく

(B.T)4

自分の希望や興味を生かすように考えていく(C.R.O)2 P.120の例を共同研究

P.120−P.124

○A.T.20分

 

 

 

 

○B.T.20分

§2.どんな項目にいくらずつにしたらよいか。
    a.どんな項目に,どんな割合で

    b.総額と割合から項目別金額決定。

比の二段

a: b(A.O)5
  分数(B.T)5

     (C.T)6
 整数×分数(B.T)1
 整数×小数(B.T)7
 (小数の位取り(A.O)6
整・分数×分数(B.T)6

整・小数×小数(B.T)7

概数とくわしい数を見わけ使いわける(C.T)3

P.125−P.130

分数の計算

(P.152)

小数の計算

(P.156)参照

 

 

 

 

 

 

○B.T.20分

3.予算の実行

予算を実行するときに,どんなことに注意したらよいか。

進度表の意味(B.O.R)3

計画修正の必要性(C.O.R)2

出納簿の整理(C.T)2 計画を実行しつつ評価し改善していく(C.R.O)3 P.132−P.133  

 

○C.T.20分

 

Ⅲ.評価の計画

 

〔 単 元 構 成 の 例 〕その二

〔備考〕単元名  方程式のはたらき(中学三年)

 これは,このような単元における学習指導計画の最低の必要として,指導内容の前後との連絡,指導の重点と展開計画をしるしたものである。その他の計画は,細案のときにゆずってある。

 

Ⅰ.

Ⅱ.学習の展開計画
 
問題の分析
目標
(評価の観点)
教科書
時間

配当

備 考
章の問題
節の問題
知識・理解
能力(技能)
態度習慣
1.

方程式にはどんなよさがあるか,どうしてたてるか。

§1.方程式を用いた場合とそうでない場合をくらべてみよう。 ○方程式のよさ

次方程式

 定数項,未知数

  ○方程式のよさを知って,これを用いて問題を解決しようとする。 補充 やや複雑な例で
§2.どうすれば方程式がうまくたてられるか。 ○公式から方程式をたてる考え方

○文章に書かれた関係から方程式をたてるときの考え方

○関係を理解して,これから方程式をまとめる。  
2.

方程式はどのように考えたら,うまく解けるか。

§1.グラフを用いて方程式を解くにはどうしたらよいか。 ○方程式とグラフの関係

○グラフを用いると便利な場合

元一次方程式をグラフで解く。 ○得られた結果を確かめてみようとする。 P121−P123

簡単に

 
§2.計算で方程式をもっとやさしく解くには,どうしたらよいか。 ○等式変形の原理

 移項,分母を払う

○検算の意味と方法

元一次方程式を計算で解く。 P124−P126 練習問題のプリント
§3.方程式を用いて問題を解いてみよう。 ○根の解釈

 応用問題の検算の必要

○方程式を用いて,問題を解決する。 P127−P128

P129−P130

問題練習
3.

複雑な関係を,方程式を用いて解決するには,どうすればよいか。

§1.複雑な関係を方程式に表わすには,どうすればよいか。 ○二元一次連立方程式

○連立方程式のたて方

○連立方程式の根

  ○複雑な関係を理解して,これを簡単な表現にまとめて解決しようとする。 補充  
§2.連立方程式をグラフを用いて解くには,どうすればよいか。 ○一次方程式のグラフ

○グラフと根の関係

○ダイヤグラム

○二元一次連立方程式をで解く。

○一次方程式のグラフをかく。

P131−P132 ダイヤグラムの準備
§3.連立方程式を計算で解くには,どうしたらよいか。 ○消去の意味

○加減法,代入法

○検算法

○二元一次連立方程式を計算で解く。 P133−P137 練習問題のプリント
§4.連立方程式を用いて,問題を解いてみよう。 ○根の解釈

○応用問題の検算の意味

○方程式のたてるときの考え方

○連立方程式を用いて問題を解決する。 P138−P140

問題練習テスト

 

§6.単元による指導計画のたて方Ⅲ:−指導細案−

 本節においては,前節のような単元構成の計画に従って,実際の教室に臨むまえに立案する細案について述べる。この細案は,一週間分ぐらいな幅で,二,三時間分まとめてたてることもあるだろうし,各時間ごとにたてることもあるだろう。まとめてたてた場合,第二時間目からは,それまでの進行状況によって,次の時間の計画を適当に修正しなくてはならないのが普通である。それゆえ,ここでは,だいたい各時間ごとに考えるような行き方を主体にしてかいていく。れは,週間計画を詳しくたて,また,各時間のことを詳しく考えるということを意味するつもりではない。

 
 
細案ではどんなことを考えておかなくてはならないか。

細案の一例

 ここでは,一例として,前にあげた単元の例その一の展開計画中,節2章こづかいをどのように使ったらよいかのうち,§2どんな項目にいくらずつにしたらよいかの部分5時間中の,第一時間目について考えてみよう。

 以上のような前提のもとに第一時の細案をたててみよう。