学習指導要領
家庭編(中等学校第四,五学年用)
(試 案)
昭和二十二年度
文 部 省
目 次
まえがき
第一章 家庭科の指導目標一 総目的
二 各学年別による目的
1.第五ないし第六年の目標
2.第七ないし第九年の目標
3.第十ないし第十二年の目標
第二章 家庭科学習と児童・青年の発達 第三章 指導単元一 被服
二 食物
三 住居と家事経理
四 家庭衛生
五 家族関係と子供
第四章 指導の方法一 教師の準備と活動例
二 生徒の活動例
三 指導結果の考査
第五章 単元指導細案例一 被 服
単元2.婦人服
二 食 物
単元2.調理技術の要点 その一
単元1.家族の栄養を常に保つには
三 家庭衛生
単元2.看護の心得(上手な家庭看護)
四 家族関係と子供
単元2.「成熟」の意味
単元4.結婚の計画
単元6.乳幼児の理解と保育
五 住居と家事経理
単元4.能率的な家務処理
学習指導要領(試案)
ま え が き
社会の構成単位は家庭である。各家庭の構成分子は個人である。教育の目的の大きな一つは各個人をよき家族の一員,よき家庭の建設者とすることである。家庭における経験は人間の経験のうちで最初のものであり,最も緊密なものであり,又,最も長いものである。この経験がよき指導と訓練をうけ,よき発展をなすことは個人の発展であり,また,家庭の,ひいては社会の発展である。
こう考えて来ると,家庭の諸問題を直接扱う家庭科の指導は,非常に大きな役目と責任を持つものである。
高等学校においても,この学科指導は実際的な活動の面において,また,家族関係においても各個人をおもに対象とするのであるが,家庭と社会の密接な相互関係を基調とすることを忘れてはならない。この教科目の最終目的は家庭生活の理解と,高い評価が培われ,その結果,人々がますますよき家庭人となり,社会人となることであろう。この意味での家庭生活を教科目の内容わけとして分析してみると,(1)衣服,(2)食物,(3)住居と家事経理,(4)家庭衛生,(5)家族関係と子供,の五分野に分けることができる。小学校五,六年から,中学校まではこれらを総合的に大まかに,単純に扱って来たが,高等学校では以上のような分野に分けてより深く研究することが生徒の心身発達の上からも,学習発展の過程からも望ましいことである。なおこうすることによって,高等学校においてはこの五分野全部をとらなくても生徒の希望により五分野のうちの一,二だけとるということも可能となるのである。例えば,ある生徒は中学校以上の調理は家庭において適当に練習できるため「住居と家事経理」だけとりたいと思うであろうし,また他の者は「家庭衛生」と「家庭関係と子供」をとりたいと望むかもしれない。このことは生徒の本当に興味のある,又必要とするものを与え,実際には必要としていないものを無理にとらせるというようなことがなくて大変望ましいことである。教師は,この選択に当たって生徒各々が実際に望み,必要とし,興味もあり又その能力もあるものを選びとるように助力し,指導する必要がある。なお,特に最後に注意したいことは,この時期においては青年前期を過ぎ,成人に達するのであるから,成人の意味について考えること,又,結婚の知識を十分に与えることを考慮すべきである。(この問題に関し参考書が整えられる筈故,教師はよき準備をされることが望ましい。)
更に付け加えなければならぬことは,従来,茶華道が教科目中に含まれ,授業時間がこれにさかれていたが,こうした芸道修業のために授業時間をさくべきでないということである。茶華道は日本伝来のよき家庭技術ではあるが,これの修得によってクレディットを与えるというようなことはあるべきでなく,どこまでも課外に全く自由な選択として扱われるべきである。