第1款 目 標
観察,実験などを通して,自然を探究する能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての基本的な科学概念の理解を深め,科学的な自然観を育てる.
第2款 各 科 目
第1 理 科 Ⅰ
1 目 標
2 内 容
3 内容の取扱い
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする.
イ (2)の「物質の構成単位」については,原子が原子核と電子から成ることにも触れること.
ウ (3)の「細胞」については,光学的顕微鏡で観察できることを中心に扱うこと.「発生」については,動物の初期発生の過程を中心に扱うこと.「遺伝」については,メンデルの法則を中心にして扱い,「変異」は,突然変異を中心に扱うこと.「生物の進化」については,示準化石にも触れること.
エ (4)の「地球の運動」については,自転と公転とを取り上げ,その証拠を中心として扱うこと.「地球の形状」については,地表の変化や層構造にも触れること.「地球の熱収支」については,大気や水の循環を扱うこと.「生態系と物質循環」については,物質とエネルギーの流れを中心に有機的自然,無機的自然を総合して扱うこと.
オ (5)の「資源」については,化石撚料などを例として扱い,その特質や有限性に触れること.「太陽エネルギー・原子力の活用」については,エネルギー資源としての利用を扱い,放射能にも触れること.「自然環境の保全」については,自然環境の人間に及ぼす影響,人間の活動の自然環境に及ぼす影響などを扱うこと.
第2 理 科 Ⅱ
1 目 標
2 内 容
(2) 自然環境についての調査
(3) 科学の歴史的事例についての研究
3 内容の取扱い
(2) 研究課題については,「理科Ⅰ」との関連を考慮し,次の例示を参考にして設定するものとする.
イ 内容の(2)については,生物や地学に関する野外調査及び自然環境に関する諸問題を適宜扱うこと.
ウ 内容の(3)については,科学史上の重要な発見について,原理・法則の確立の経益などの歴史的事例を適宜扱うこと.
第3 物 理
1 目 標
2 内 容
円運動,単振動,万有引力
イ 運動量
運動量,力積,運動量の保存
ウ 気体分子の運動
気体の法則,気体の分子運動
縦波と横波,波の伝わり方,波の干渉・回折
イ 音波
音波の伝わり方,共鳴,共振
ウ 光波
光の進み方,光の干渉・回折,スペクトル
電界,電位,電気容量
イ 電流
電気抵抗,電流と仕事
ウ 電流と磁界
電流による磁界,磁界が電流に及ぼす力
エ 電磁誘導と交流
誘導起電力,交流,共振回路,電磁波
電子の電荷と質量,電子の波動性,光の粒子性
イ 原子と原子核
原子の構造,原子核の構成,放射能,核エネルギー
3 内容の取扱い
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする.
イ (2)のウの「光の進み方」については,光の速さ,反射,屈折及び屈折率を扱うこと.
ウ (3)のアの「電気容量」については,誘電体内部の電界の強さには触れないこと.イの「電気抵抗」については,導体及び半導体中を移動する自由電子などにも触れること.エの「交流」については,交流の発生とその基本的性質を扱い,「共振回路」及び「電磁波」については,実験を中心に扱うこと.
エ (4)のイの「原子の構造」については,例えばスペクトルをもとにして水素原子のエネルギー準位を扱うこと.「核エネルギー」については,原子力の利用とその安全性の問題にも触れること.
第4 化 学
1 目 標
2 内 容
単体,化合物,イオンの確認
イ 有機化合物
有機化合物の特徴,炭素・水素・酸素からなる化合物,窒素を含む化合物
ウ 高分子化合物
天然高分子化合物,合成高分子化合物
気体,液体,固体
イ 混合物
気体の分圧,溶液,コロイド溶液
速い反応と遅い反応,触媒
イ 化学反応と熱
反応熱,熱化学方程式
ウ 化学平衡
可逆反応,化学平衡の移動
エ 酸と塩基の反応
酸・均基,中和,水素イオン濃度
オ 酸化還元反応
酸化・還元.電気分解,金属のイオン化傾向,電池
原子構造のモデル,核外電子配置,元素周期表
イ 化学結合
イオン結合,共有結合,物質の構造と性質
3 内容の取級い
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする.
イ (2)のアの「気体」については,気体の分子運動を数式的には扱わないこと.
「固体」については,簡単な結晶格子にも触れること.
ウ (3)の「ア 反応の速さ」については,濃度・温度などの影響を定性的に扱うこと.「ウ 化学平衡」は,定性的な扱いの程度にとどめること.
エ (4)の「ア 原子の構造」については,ボーアモデルの程度にとどめること.アの「核外電子配量」については,周期表の第3周期までの元素及びアルカリ金属・ハロゲン・希ガスの原子を扱う程度にとどめること.イの「物質の構造と性質」については,物質がその化学結合の違いによって,塩,分子性物質,金属の三つに大別されることを中心に扱うこと.
第5 生 物
1 目 標
2 内 容
細胞とその分化,組織の形成
イ 発生と形態形成
動物の発生と分化,植物の成長と形態形成
生体内の化学反応と酵素一同化,異化
イ 遺伝子と形質の発現
遺伝子の構造と複製,遺伝子と酵素
受容体と作働体,神経系の構造と機能,刺激と動物の行動
イ 個体の恒常性と調節
恒常性の維持,神経系とホルモン
動物の集団,植物の群落
イ 生物の集団の変動
動物の集団の変動,遷移,生物の分布
3 内容の取扱い
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする.
イ (2)のアの「同化」については,光合成に明反応と暗反応とが存在することを理解させる程度にとどめること.「異化」について,呼吸に関連して解糖の経路,TCA回路,電子伝達系などを扱う場合,それらの存在に触れる程度にとどめること.イの「遺伝子と酵素」について,遺伝子の形質発現の仕組みを取り上げる場合は平易に扱うこと.
ウ (3)のアの「神経系の構造と機能」については,神経の興奮の仕組みも簡単に扱うことイの「恒常性の維持」については,代表的な例を取り上げる程度にとどめること.
エ (4)のイの「生物の分布」については,生態分布を中心に扱い,世界における生物の地理分布を羅(ら)列的に扱わないこと.
第6 地 学
1 目 標
2 内 容
地球の特徴,地磁気と重力
イ 大気と海洋
大気の運動,海水の運動,大気と海水の相互作用
ウ 地球内部のエネルギー
地震,マグマと火成活動
地層の形成,地層の層序とその対比
イ 地かく
最近の地かくの変化,地質時代の地かくの変動
ウ 地球の進化
原始地球,地質時代
エ 日本列島の地質
日本列島の特徴,日本列島の成立
太陽の形状,太陽の活動
イ 恒星
恒星の放射,恒星の進化
ウ 銀河系と宇宙
銀河系,銀河系外星雲,宇宙
3 内容の取扱い
(2) 内容の範囲や程度については,次の事項に配慮するものとする.
イ (2)のアの「地層の層序とその対比」については,地質図についても触れるが,初歩的な事項にとどめること.ウの「原始地球」については,現在,考えられている地球の起源に関する説を取り上げ,大気と海洋の起源にも触れること,エの「日本列島の特徴」については,日本列島の地球上における地学的な特徴を中心に扱うこと.
ウ (3)のアの「太陽の形状」については,太陽を恒星の一つとして扱うが,そのエネルギー源である核融合反応については,その概略を扱う程度にとどめること.イの「恒星の放射」については,それらが宇宙の様子を知る手がかりになっていることも扱うこと.ウの「宇宙」については,宇宙論についても触れること.
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
1 「理科Ⅰ」は,原則として第1学年において履修させるものとし,「理科Ⅱ」,「物理」,「化学」,「生物」及び「地学」は,原則として「理科Ⅰ」を履修した後に選択して履修させるものとする.
2 内容の指導に当たっては,生命の尊重や自然環境の保全に関する態度の育成に配慮するものとする.
3 観察,実験,野外調査などの指導に当たっては,特に事故防止について十分留意するとともに,使用薬品などの管理及び廃棄についても適切な措置をするように配慮するものとする.