第3章 道   徳

 

第1 目 標

 道徳教育の目標は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち,道徳教育は,人間尊重の精神を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。

 道徳の時間においては,以上の目標に基づき,各教科及び特別活動における道徳教育と密接な関連を保ちながら,計画的,発展的な指導を通してこれを補充,深化,統合し,生徒の道徳的判断力を高め,道徳的心情を豊かにし,道徳的態度と実践意欲の向上を図ることによって,人間の生き方についての自覚を深め,道徳的実践力を育成するものとする。

 

第2 内 容

1 生命を尊び,心身の健康の増進を図り,節度と調和のある生活をする。  (自他の生命を尊重し,心身を鍛えて健康の増進を図るとともに,衝動的に行することなく,自制して堅実な生活を築いていくように努める。) 2 日常生活における望ましい生活習慣をわきまえ,それを身につける。  (身の回りや身近な環境を整え,時間や物などを大切にし,きまりのよい生活をするとともに,礼儀の意義を理解し,時と所に応じた適切な言動ができるように努める。) 3 ものごとに積極的に取り組み,着実にやり抜く強い意志をもつ。  (広い視野に立って,正しいと考えることを勇気をもって実行するとともに,困難に屈しないでねばり強く最後までやり通すように努める。) 4 人間としての自覚をもち,常に自主的に考え,自分で決断し,その結果について責任をもつ。  (自主自律の態度を伸長し,自ら選んだことを誠実に実行するとともに,自分の行動については率直に責任をとり,人間としての誇りをもつように努める。) 5 自分と異なる考えや立場も尊重し,いろいろなものの見方や考え方があることを理解して,他に学ぶ広い心をもつ。  (ひとそれぞれの個性や立場を重んじ,自分と異なる意見や行動にも寛容であろうとするとともに,他人の助言や忠告に謙虚に耳を傾けて,これを自己の反省と向上に生かすように努める。) 6 勤労の尊さを知るとともに,真の幸福を目指す充実した生き方を追求する。  (自分のなすべきことをやり遂げて,働くことの喜びを知り,職業についての正しい理解の基礎をつくるとともに,余暇の有効な活用を図り,目先の欲求のみにとらわれず,心から満足できる生きがいを求めるように努める。) 7 真理を愛し,真実を求め,理想の実現を目指して自己の人生を切り開いていく。  (常に希望をもち,積極的に真理と真実を求めるとともに,厳しく現実を見つめ,ものごとを理性的に判断し,安易な妥協を排してより高い目標を求め,それを実現するように努める。) 8 人間として生きることに喜びを見いだし,温かい人間愛の精神を深めていく。  (人間のもつ強さや気高さを信頼し,だれに対しても温かく接するとともに,人間は一面において弱さや醜さをもつことを率直に認めて,その克服に努め,他人に対しては思いやりの心をもつように努める。) 9 自然を愛し,美しいものに感動し,崇高なものに素直にこたえる豊かな心をもつ。  (自然と人間とのかかわり合いについて考え,自然や美しいものを愛する心をもつとともに,人間が有限なものであるという自覚に立って,人間の力を超えたものに対して畏敬(いけい)の念をもつように努める。) 10 友情の尊さを理解し,心から信頼できる友達をもち,互いの向上を図る。  (友達は,互いに相手を敬愛し,相手の向上を願って助け合うとともに,いたずらに友達に追従することなく,忠告し励まし合う真の友情を育てるように努める。) 11 男女は,互いに相手の人格を尊重し,健全な異性観を身につける。  (男女は,互いに相手の立場や特性を理解して助け合うとともに,清純で明朗な交際を通して互いの向上を図るように努める。) 12 家庭や地域社会の一員としての自覚をもち,協力し合って共同生活の充実を図る。  (家族や日常接する々,更には先人たちに支えられている自己の立場を自覚し,尊敬と感謝の気持ちを深めるとともに,明るい家庭の建設や郷土の発展に尽くすように努める。) 13 自己の属する様々な集団の意義を理解し,協力し合って集団生活の向上を図る。  (学校,学級など,自己の属する集団を愛する心を育て,規則を尊重し,進んで自己の役割を果たすとともに,和を重んじ,利己心や狭い仲間意識を克服して集団生活の向上に貫献するように努める。) 14 公私の別をわきまえ,公共の福祉を重んじ,社会連帯の自覚をもって理想の社会の実現に尽くす。  (公徳心を伸ばし,公共の福祉と社会の発展のために力を尽くすとともに,正義を重んじ,差別や偏見のないよりよい社会を実現するように努める。) 15 法の精神と権利・義務の意義を理解し,社会の規律を高めていく。  (遵法の精神を重んじ,権利と義務との関連を考えて,権利を正しく主張し,義務を厳しく遂行するとともに,力を合わせて社会の秩序と規律を高めていくように努める。) 16 日本人としての自覚をもって国を愛し,国家の発展に尽くすとともに,人類の福祉に寄与する人間になる。  (我が国の国土と文化に対する理解と愛情を深め,優れた伝統の継承や新しい文化の創造に役立とうとするとともに,常に国際的な視野に立って,世界の平和と人類の幸福に貢献することのできる人間になるように努める。)

 

第3 指導計画の作成と内容の取扱い 1 道徳の時間の指導は,学級担任の教師が行うことを原則とする。

2 指導計画の作成に当たっては,各学年の各教科及び特別活動における道徳教育との関連を考慮して,特に必要な内容についてこれを重点的に取り上げ,また,幾つかの内容を関連付けて指導するように配慮する必要がある。

3 第2の内容の各事項における括弧書きは,それぞれの事項の指導に当たって配慮すべき事柄を示したものであり,このことを十分考慮して指導計画を作成する必要がある。なお,内容の配列は指導の順序を示すものではない。

4 指導計画は,地域や生徒の実態に応じて具体的に作成するものであるが,固定的なものと考えず,必要に応じて弾力性をもたせるようにする。

5 指導に当たっては,その効果を一層高めるため,家庭や地域社会との共通理解を深め,相互の連携を図るように配慮する必要がある。

6 生徒の道徳性については,常にその実態を把握(はあく)するよう努める必要がある。しかし,各教科における評定と同様の評定を,道徳の時間に関して行うことは適切ではない。