第1節 各教科の目標および各教科・科目の目標と内容
各教科の目標および各教科・科目の目標と内容については,高等学校学習指導要領第2章第1節から第8節までに示すところに準ずるものとする。
第2節 各教科・科目に関する指導計画の作成と内容の取り扱い
各教科・科目に関する指導計画の作成と内容の取り扱いについては,高等学校学習指導要領第2章第1節から第8節までに示すところに準ずるもののほか,次に示すところによるものとする。
第1 国 語
2 「現代国語」の指導に当たっては,生徒の言語能力や心身の発達段階に即した基礎的学習の充実を図るとともに,言語による思考能力を高めるように,配慮することが必要である。
3 「現代国語」の指導のうち「読むこと」,「聞くこと」の事項の指導に当たあっては,生徒の障害の状態に応じて,要点を速く的確に把握(はあく)させるように指導することが必要である。
4 「現代国語」の指導のうち「話すこと」,「書くこと」の事項の指導に当たっては,生徒の言語障害および書写の能力に応じて,養護・訓練との関連をれ図り,適切に取り扱うことが必要である。
5 「古典」の指導に当たっては,「現代国語」の指導と関連させ,生徒が「読むこと」に対する興味をもち,進んで鑑賞する態度を身につけるよう配慮することが必要である。
6 書写の事項の指導に当たっては,生徒の書写の機能の状態に応じた筆記用具をくふうし,また適切な補助用具の活用などの配慮が必要である。
2 「倫理・社会」に関する事項の指導に当たっては,生徒の実態に即してわが国や世界の現状を具体的に理解できるようにくふうし,つとめて生徒の視野を広めるように配慮することが必要である。
3 「政治・経済」に関する事項の指導に当たっては,医療,教育,職業などにおける生活と関連づけるようにすることが必要である。
4 「歴史」に関する事項の指導に当たっては,基本的な事項を重点的かつ弾力的に取り扱うようにすることが望ましい。
5 「地理」に関する事項の指導に当たっては,基本的な事項を重点的かつ弾力的に取り扱うようにすることが望ましい。
6 内容を取り扱うに当たっては,生徒の肢体不自由の状態に応じて,効果的に資料が活用できるように配慮することが必要である。
7 内容を取り扱うに当たっては,生徒の社会的経験および見聞を広げられるようにし,つとめて地域社会の特色を生かした観察,見学および調査を取り入れたり,視聴覚教材を利用するなどのくふうをすることが必要である。
2 内容を取り扱うに当たっては,つとめて具体的な扱いをし,基本的な事項の理解が確実にできるように,生徒の肢体不自由の状態に応じた効果的な指導をくふうすることが必要である。
3 内容を取り扱うに当たっては,教育機器等を有効に利用するなどして,生徒の肢体不自由の状態や能力をじゅうぶんに考慮して,個々の生徒に即した取り扱いができるようにすることが望ましい。
4 計算,作図,図表,グラフの作成など,作業をともなう事項の指導に当たっては,生徒の肢体不自由の状態に応じて,計算尺,計算機,その他の用具などの活用を図るなど適切な配慮をすることが必要である。
2 生徒の肢体不自由の状態の回復,改善と関係がある内容の取り扱いに当たっては,養護・訓練との密接な関連を図って,適切な指導計画を作成することが必要である。
3 実験,観察の指導に当たっては,生徒の肢体不自由の状態に応じたくふうや配慮をすることが必要であり,特に機械・器具の使用に際しては,危険の防止にじゅうぶん留意することが必要である。
4 自然界のいろいろな事象についての生活経験が不足している生徒の指導に当たっては,可能な限り観察,実験および野外調査の機会を多くしたり,視聴覚教材の活用を図って,自然科学についての理解を高めるようにすることが必要である。
2 「体操」および「器械運動」の事項の指導に当たっては,特に生徒の肢体不自由の状態の改善を考慮して,個々に必要な運動を課すものとする。
3 「陸上競技」や「球技」などの事項の指導に当たっては,生徒の肢体不自由の状態や能力に即したくふうをすることが必要である。
4 「水泳」の事項の指導に当たっては,段階的な指導を徹底し,安全にじゅうぶん留意することが必要である。
5 「格技」の事項の指導に当たっては,規則や審判法,競技の見かたなどの学習に重点をおくようにすることが必要である。
6 「体育理論」や「保健」の事項の指導に当たっては,特に日常生活や養護・訓練と関連のある内容を精選して指導することが必要である。
7 運動機能の障害が重度の生徒については,他者の補助により各種の運動を経験させたり,可能な役割を分担することにより集団活動に参加させたりするように配慮することが必要である。
8 運動を課すことによって,肢体不自由の状態の悪化が予測される生徒については,学校医等との連絡を密にして適切に指導するものとする。
9 生徒の健康状態にじゅうぶん留意し,運動の質や量を生徒の体力や健康状態に応じて適切に定め,生徒が疲労しすぎたり,健康を害したりすることのないように配慮するものとする。
10 生徒の安全にじゅうぶん留意し,傷害や事故の発生の防止に努めるとともに,自己の身体を安全に処する技能を習得させるように配慮するものとする。
(2) 「歌唱」の事項の指導に当たっては,呼吸や発声・発語器官に障害のある生徒,音域の狭い生徒およびリズム表現等に障害のある生徒について,特に養護・訓練との関連を図って,個々の生徒に即した取り扱いをくふうすることが必要である。
(3) 「器楽」の事項の指導に当たっては,親しみやすい教材の選定や編曲などに努めるとともに,生徒の肢体不自由の状態に応じた適切な楽器を選択し,また補助用具を活用することが必要である。
(4) 「創作」の事項の指導に当たっては,生徒の表現機能の障害を考慮しつつ創作意欲を高め,創作したものを引き出すくふうをすることが必要である。
(5) 「鑑賞」の事項の指導に当たっては,鑑賞意欲を刺激するとともに,いろいろな楽曲のもつ美しさやおもしろさを味わわせるようにすることが必要である。
(6) 歌唱および演奏が困難な生徒の指導に当たっては,「鑑賞」を中心とした指導を展開するか,あるいは指導の方法および用具に特別のくふうをする必要がある。
(2) 「彫塑」の事項の指導に当たっては,生徒の肢体不自由の状態に応じて素材を選定し,技巧にとらわれず,直観や想像を率直に立体的に表現できるようにくふうすることが必要である。
(3) 「デザイン」の事項の指導に当たっては,構想やデザインの基礎的能力を伸ばすことに重点をおいて取り扱うことが必要である。
(4) 「鑑賞」の事項の指導に当たっては,すぐれた美術作品に接する機会を多くするなどの配慮が必要である。
(5) 「絵画」,「彫塑」および「デザイン」などの表現学習が特に困難な生徒の指導に当たっては,内容の「鑑賞」に示された事項をもって表現学習の指導に代えることが必要である。
(6) 用具の使用に当たっては,特に危険防止に留意するとともに,生徒の肢体不自由の状態に応じて補助用具のくふうをすることが必要である。
(7) 内容を取り扱うに当たっては,特に養護・訓練との関連を密接に図ることが必要である。その際,視聴覚教材をじゅうぶんに活用することが望ましい。
(2) 「デザインと製作」の事項の指導に当たっては,技巧にとらわれず,生徒の美的な創造力を伸ばすことに重点をおくとともに,製作に必要な材料や用具の選定や使用について,じゅうぶん配慮することが必要である。
(3) 「構成と表示」および「デザインと製作」の事項の学習が困難な生徒の指導に当たっては,演示および視聴覚教材の活用により工芸についての正しい理解を与えることが必要である。
(4) 「鑑賞と理論」の事項の指導に当たっては,生活に密着した工芸品を鑑賞しながら工芸品に対する関心を高めるようにすることが必要である。
(2) 「鑑賞」の事項の指導に当たっては,「表現」と相互に密接な関連を図ったり,視聴覚教材等の活用を図ったりして,指導の効果を高めるようにすることが必要である。
(3) 毛筆による臨書や創作することの困難な生徒の指導に当たっては,指導の方法について特別のくふうをすることが必要である。また,特に必要がある場合には,示範および視聴覚教材の活用により書道について正しい理解を与えるようにすることが必要である。
2 内容を取り扱うに当たっては,生徒の必要や興味に基づき,しかも経験の拡充に役だつような題材を選択することが必要である。
3 「聞くこと,話すこと」に関する事項の指導に当たっては,特に視聴覚教材や教育機器などを活用して,外国語の音声や基本的語法に慣れさせるように努めることが必要である。
4 「聞くこと,話すこと」および「読むこと」に関する事項の指導に当たっては,言語に障害のある生徒について,発音や抑揚などにあまりとらわれず,音読などによる反復練習を通して,基本的なことがらを効果的に取り扱うように配慮することが必要である。
5 「書くこと」に関する事項の指導に当たっては,書写の機能に障害のある生徒について,個々の障害の状態に応じた特別のくふうや配慮をすることが必要である。
2 実習に関する指導計画の作成に当たっては,生徒の肢体不自由の状態に応じ,実習可能な内容を重点的に選定したり,学習可能なように事項を変更したり,また可能な限り同等の教育的価値を有すると認められる他の学習をもって実習の指導に代えたりすることが必要である。
3 生徒の肢体不自由の状態により,実習,製作などの実践的な学習が困難な場合は,視聴覚教材の活用,演示,見学などを通して指導の効果が高められるようにくふうすることが必要である。
4 内容を取り扱うに当たっては,共同作業を取り入れ, 生徒の肢体不自由の状態に応じた仕事を分担させるなどのくふうをすることが望ましい。
5 機械・器具や材料の使用に当たっては,安全でしかも学習の効果があがるように,生徒の肢体不自由の状態に応じた改善やくふうをするとともに,特に危険の防止に留意することが必要である。
第3節 脳性まひ等の生徒に係る各教科についての特例
第1 各教科全体にわたる目標
心身の障害の状態の改善を図るとともに,生徒の心身の諸能力を可能な限り発達させる。
第2 内 容
(2) 日常生活に必要な簡単な技能が身につくようにする。
(3) 社会生活における望ましい習慣や態度が身につくようにする。
(4) 社会の事象や自然の事象に興味や関心をもち,人間生活との関係について理解できるようにする。
(5) いろいろな実習を通して,職業生活に必要な基礎的知識,技能および働く態度が身につくようにする。
(2) 経験したことや自分の思うことなどが話せるようにする。
(3) 日常生活に必要な簡単な読み書きができるようにする。
(2) 日常生活に必要な簡単な量の比較や測定,図形の理解ができるようにする。
(3) 日常生活に必要な金銭の処理ができるようにする。
(2) 音楽に親しみ,興味や関心をもって聞くようにする。
(3) いろいろな表現活動に進んで参加するようにする。
(2) いろいろな材料や用具を扱えるようにする。
(3) 美しいものに興味や関心をもつようにする。
(2) 健康な生活に必要な習慣や態度が身につくようにする。
(3) 安全な生活に必要な習慣や態度が身につくようにする。
第3 指導計画の作成と各教科全体にわたる内容の取り扱い
(2) 生徒の心身の発達段階に応じ,年間,学期,月または週ごとに,具体的な指導のねらいを明確に設定すること。
(3) 指導のねらいを達成するための生徒の望ましい経験や活動を選択・配列すること。
なお,生徒の経験や活動の選択・配列に当たっては,個々の生徒の生活経験や心身の障害の状態に即した適切なものを選び,それらが相互に関連しあうように配列すること。
(2) 生徒の心身の障害や発達の状態の差異に応じ,また個々の細かな行動の変化に即して,個別に指導できるようにくふうすること。