第1章 総 則
第1 教育目標
小学部および中学部における教育については,学校教育法第71条に定める目的を実現するために,児童および生徒の精神発育の遅滞や社会適応の困難性をもつことなどを考慮して,次に掲げる目標の達成に努めなければならない。この場合において,それぞれの教育目標をじゅうぶん達成するための基盤となる基本的能力の伸長を図らなければならない。
1 小学部においては,次に掲げる教育目標
(2) 日常生活に必要な基礎的な生活習慣を身につけ,進んで仕事をしようとする態度を養うこと。
(3) 家庭生活や,学級,学校,地域社会における集団生活に参加する能力や態度を養うこと。
(4) 身近な社会や自然についての関心や初歩的な知識をもたせ,社会生活に必要な技能を養うこと。
(5) 日常生活に必要な国語や数量についての基礎的な知識をもたせ,それらを使用したり,処理したりする能力を養うこと。
2 中学部においては,次に掲げる教育目標
(2) 日常の経済生活についての関心を深め,将来の職業生活や家庭生活に必要な基礎的な知識と技能を身につけるとともに勤労を重んずる態度を養うこと。
第2 教育課程一般
1 学校においては,法令およびこの章以下に示すところに従い,児童または生徒の精神発育の遅滞の状態および心身の発達段階と特性ならびに地域や学校の実態をじゅうぶん考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。
2 小学部については,第2章以下に示す小学部の生活,国語,算数,音楽,図画工作および体育の各教科,道徳,特別活動ならびに養護・訓練の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない。
3 中学部については,第2章以下に示す中学部の国語,社会,数学,理科,音楽,美術,保健体育および職業・家庭の各教科,道徳,特別活動ならびに養護・訓練の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても取り扱わなければならない。
4 学校において特に必要がある場合には,心身の障害の状態により学習が困難な児童または生徒について,小学部または中学部の各教科の目標および内容に関する事項の一部を欠き,または中学部の各教科の目標および内容に関する事項の全部もしくは一部を当該各教科に対応する小学部の各教科の目標および内容に関する事項の全部もしくは一部によって代えることができる。
5 精神薄弱以外に他の心身の障害をあわせ有する児童または生徒(以下「重複障害者」という。)については,次に示すところによることができる。
(2) 重複障害者のうち,学習が著しく困難な児童または生徒については,各教科,道徳および特別活動の目標および内容に関する事項の一部を欠き,養護・訓練を主として指導を行なうこと。
6 学校においては,小学部または中学部の各教科(中学部においては,学校教育法施行規則第73条の8に定めるその他特に必要な教科を含む。以下この章において同じ。),道徳,特別活動および養護・訓練について,相互の関連を図り,全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成し,発展的,系統的な指導を行なうものとする。
なお,指導計画の作成に当たっては,この章ならびに第2章以下に示す小学部または中学部の各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の指導計画の作成に関する事項にじゅうぶん留意するものとする。
7 授業時数については,次に示すところによるものとする。
(2) 小学部または中学部の各学年の養護・訓練に充てる授業時数は,児童または生徒の心身の障害の状態に応じて適切に定めること。
(3) 重複障害者について特に必要がある場合は,実情に応じた授業時数を定めることができること。
(4) 小学部または中学部の各教科,道徳,特別活動および養護・訓練の授業は,年間35週(小学部第1学年においては,34週)以上にわたって行なうように計画すること。この場合,児童または生徒の精神発育の遅滞の状態をじゅうぶん考慮し,週当たりの授業時数が負担過重とならないようにすること。
(5) 小学部または中学部における授業時数の1単位時間は,学校や児童または生徒の実態に即して適切に定めること。
8 以上のほか,次の事項について配慮するものとする。
(2) 児童または生徒の経験および興味や関心を特に重んじ,適切な指導を行なうこと。
(3) 教師と児童生徒および児童生徒相互の好ましい人間関係を育て,日常生活の指導の充実を図ること。
(4) 学校生活全体における言語環境を整え,児童または生徒の言語活動が適正に行なわれるように努めること。
(5) 教科書その他の教材・教具を有効に活用し,学校図書館を計画的に利用すること。
なお,精神薄弱の実態に即した教材・教具を創意くふうし,それらを活用して指導の効果を高めるようにすること。
(6) 指導の効率を高めるため,教師の特性を生かすとともに,教師の協力的な指導がなされるようにくふうすること。
(7) 個々の児童または生徒について,指導の成果を絶えず評価し,指導の改善に努めること。
(8) 学校医等との連絡を密にし,児童または生徒の心身の障害の状態に応じた保健および安全にじゅうぶん留意すること。
(9) 家庭等との連絡を密にし,指導の効果をあげるように努めること。
第3 道 徳 教 育
学校における道徳教育は,学校の教育活動全体を通じて行なうことを基本とする。したがって,道徳の時間はもちろん,各教科,特別活動および養護・訓練においても,それぞれの特質に応ずる適切な指導を行なわなければならない。
道徳教育の目標は,教育基本法および学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち,道徳教育は,人間尊重の精神を家庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造と民主的な社会および国家の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成するため,その基盤としての道徳性を養うことを目標とする。
第4 養護・訓練
心身の障害に基づく種々の困難を克服させ,社会によりよく適応していく資質を養うため,養護・訓練に関する指導は,養護・訓練の時間はもちろん,学校の教育活動全体を通じて適切に行なうものとする。
特に,養護・訓練の時間における指導は,各教科,道徳および特別活動と密接な関連を保ち,個々の児童または生徒の心身の障害の状態や発達段階に即して行なうよう配慮しなければならない。
第5 体 育
健康で安全な生活を営むのに必要な習慣や態度を養い,心身の調和的発達を図るため,体育に関する指導については,児童または生徒の心身の障害の状態や発達段階に即して,学校の教育活動全体を通じて適切に行なうものとする。
特に,体力の向上については,小学部の体育科および中学部の保健体育科の時間はもちろん,特別活動および養護・訓練においても,じゅうぶん指導するよう配慮しなければならない。