第5章 養 護・訓 練
第1 目 標
児童または生徒の心身の障害の状態を改善し,または克服するために必要な知識,技能,態度および習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤をつちかう。
第2 内 容
A 心身の適応
2 心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。
3 障害を克服する意欲の向上に関すること。
B 感覚機能の向上
2 感覚の補助的手段の活用に関すること。
3 認知能力の向上に関すること。
C 運動機能の向上
2 生活の基本動作の習得および改善に関すること。
3 作業の基本動作の習得および改善に関すること。
D 意思の伝達
2 言語の形成能力の向上に関すること。
3 言語の表出技能の習得および改善に関すること。
第3 指導計画の作成と内容の取り扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項について配慮するものとする。
(2) 各教科,道徳および特別活動における指導と密接な関連を保つようにし,組織的,計画的に指導できるようにすること。
(3) 児童または生徒の心身の障害の状態により,特に必要がある場合には,専門の医師およびその他の専門家と密接な連絡をとり,適切な指導ができるようにすること。
2 第2の内容の取り扱いに当たっては,たとえば次のような項目を取り上げるようにする。
イ 障害克服の態度と習慣の形成。
なお,内容のAの指導に当たっては,できるだけ実際活動を通じて指導を行なうようにすること。また,特に,上記イの指導に当たっては,自己の可能性を見いだすような配慮をすること。
(2) 内容のBについては,
イ 物の材質,形状,状態の判別。
ウ 音の変化の認知。
エ 量の感覚的把握(はあく)。
オ 事象の時間的順序づけ。
カ 空間表象の構成と空間認知。
なお,内容のBの指導に当たっては,児童または生徒が主体的態度で総合的に判断できる習慣が養われるように努めること。
また,内容のCにおいて取り扱う項目のうち,「協応動作の向上」と一体化した指導を行なうようにすること。
(3) 内容のCについては,
イ 姿勢の矯正(きょうせい)。
ウ 歩行能力の向上。
エ 基本的生活行動様式の習得および向上。
オ 作業における巧緻(こうち)性と敏捷(びんしょう)性。
なお,内容のCの指導に当たり,特に上記イ,ウ,エおよびオの項目については,児童または生徒が行動の目的および手順を明確に意識し,つねに感覚的制御ができるようにすること。
(4) 内容のDについては,
イ 点字や普通の文字学習の基礎能力の向上。
ウ ことばと事物や状態との対応。
エ タイプライティング技能の習得。
なお,内容のDの指導に当たっては,いろいろな場に応じて,適切な意思の交流ができるよう基礎技能の習熟を図ること。
3 内容の指導に当たっては,自然な形に設定された状況の中で,意欲的な活動を促すようにすること。この場合,指導が無意味な機械的反復に陥らないよう,特に配慮することが必要である。
4 内容の指導に当たっては,つねにその効果を確かめながら,発達の状態に即して,内容を相互に関連づけ,段階的に行なうようにすることが必要である。
5 養護・訓練の時間の指導は,専門的な知識,技能を有する教師が中心となって担当し,全教師の協力のもとに,効果的な指導を行なうようにすることが必要である。