健康や体力についての理解と合理的な運動の実践を通して，心身の調和的発達を促すとともに，健康で安全な生活を営む態度を養う。

　このため，

１　心身の健康や運動についての理解を深めるとともに，適切な運動の実践を通して，健康の保持増進と体力の向上を図る。

２　生活における健康や運動の意義を理解させ，健康で安全な生活を実践する能力や態度を養い，国民生活を健全にし，豊かにしようとする意欲を高める。

第１　体　　育

１　目　　標

(１)　各種の運動を適切に行なわせ，自己の体力に応じて運動を行なう能力や態度を養い，心身の健全な発達を促し，体力の向上を図る。

(２)　運動についての科学的理解に基づき，合理的な練習によって運動技能を高めるとともに，生活における運動の意義についての理解を深め，生活を健全にし，明るくする能力や態度を養う。

(３)　運動における競争や協同の経験を通して，公正，協力，責任などの態度を養い，社会生活における望ましい行動のしかたを身につけさせる。

　Ａ　体　　操

(１)　次の運動によって，身体を部分的，全身的に動かし，基礎的な動きを身につけさせ，柔軟性や調整力を養うとともに，筋力・瞬発力，持久力を養う。
ア　身体の各部位の挙振，屈伸，ねん転，回旋などの運動

イ　歩，走，跳，投捕，押す，引くなどの全身的運動

(２)　自己の体力に応じて，健康の増進や体力の向上のための体操，スポーツの技能や作業の能率を高めるための体操などを構成し，活用することができるようにする。

(３)　体操の特性とそれに基づいた体操の構成のしかたの原則，生活における行ない方を理解させる。

(１)　次の運動によって，器械運動の技能を養い，懸垂，跳躍，転回および平均の能力を高める。
ア　鉄棒を用いた振動，回転の運動

イ　とび箱を用いた腕立てとび越し，腕立て転回の運動

ウ　マットを用いた回転，腕立て転回，倒立の運動

エ　平均台を用いた歩，走，跳，平均の運動

(２)　自己の器械運動の技能に応じて，目標を決め，計画を立て，互いに協力して，安全に運動を行なうことができるようにする。

(３)　器械運動の技能の特性とそれに基づいた練習法を理解させる。

(１)　次の運動によって，陸上競技の技能を養い，走，跳および投の能力を高める。
ア　疾走，持続走

イ　高とび，幅とび

ウ　距離投げ

(２)　自己の走，跳および投の能力に応じて，目標を決め，計画を立て，互いに協力して，安全に運動を行なうことができるようにする。

(３)　陸上競技の技能の特性とそれに基づいた練習法を理解させる。

(１)　次の運動によって，水泳の技能を養い，その能力を高める。
ア　泳　　ぎ

イ　飛び込み

(２)　自己の水泳能力に応じて，目標を決め，計画を立て，互いに協力して，安全に水泳を行なうことができるようにする。

(３)　水泳の技能の特性とそれに基づいた練習法，水泳の事故防止に関する心得を理解させる。

(１)　次の運動によって，格技の技能や規則を習得させ，相手の攻防に応じた試合とその審判ができるようにする。

（柔　道）

ア　基本動作

　　受け身，姿勢と組み方，くずしと体さばき

イ　対人的技能

(ア)　投げわざ

　　　手わざ，腰わざ，足わざ，捨て身わざ

(イ)　固めわざ

　　　おさえわざ

ウ　試　　合

　　試合のしかた，規則および審判

（剣　道）
ア　基本動作

　　構えと体さばき，正面，左右面，小手，胴および突きの打突のしかたと受け方

イ　対人的技能

(ア)　二，三段のわざ，出ばなわざ，払いわざ，ひきわざ

(イ)　すり上げわざ，返しわざ，打ち落としわざ，抜きわざ

ウ　試　　合

　　試合のしかた，規則および審判

(２)　相手を尊重し，礼儀正しく，互いに協力して，計画を立て，安全に練習や試合を行なうことができるようにする。

(３)　格技の技能の特性とそれに基づいた練習法を理解させる。

(１)　次の運動によって，球技の技能や規則を習得させ，相手の攻防に応じたゲームとその審判ができるようにする。

（バスケットボール）

ア　個人的技能

　　パス，ドリブル，シュート，フットワーク

イ　集団的技能

(ア)　速攻，セットオフェンス

(イ)　対人防御，地域防御

ウ　ゲ　ー　ム

　　作戦，規則および審判

（ハンドボール）
ア　個人的技能

　　パス，ドリブル，シュート，フットワーク

イ　集団的技能

(ア)　速攻，セットオフェンス

(イ)　対人防御，地域防御

ウ　ゲ　ー　ム

　　作戦，規則および審判

（バレーボール）
ア　個人的技能

　　パスとレシーブ，サーブ，トス，スパイク

イ　集団的技能

(ア)　サーブに対するレシーブ

(イ)　２攻段撃，３段攻撃とその防御

ウ　ゲ　ー　ム

　　作戦，規則および審判

（サッカー）（男）
ア　個人的技能

　　キック，トラッピング，ドリブル，ヘッディング，タックル，シュート，スローイン

イ　集団的技能

(ア)　ショートパスやロングパスを用いた攻撃

(イ)　スリーバック型，フォアバック型などの防御

ウ　ゲ　ー　ム

　　作戦，規則および審判

（ラグビー）（男）
ア　個人的技能

　　キック，パス，ドリブル，タックル，セービング

イ　集団的技能

(ア)　スクラム，ラインアウト

(イ)　パスによる攻撃，キックによる攻撃およびドリブルによる攻撃とその防御

ウ　ゲ　ー　ム

　　作戦，規則および審判

(２)　チームが相互に協力し，計画を立て，安全に練習やゲームを行なうことができるようにする。

(３)　球技の技能の特性とそれに基づいた練習法を理解させる。

(１)　次の運動によって，ダンスの技能を養い，フォークダンスを踊ることや作品を創作することができるようにする。
ア　フォークダンス

　日本や外国の異なった型の民踊のステップや動作を身につけ，相手に合わせて，楽しく踊ること。

イ　創作ダンス

(ア)　題材の選び方 　自然，生活事象，生活感情などから，個人や集団の動きにふさわしい題材や内容を選ぶこと。 (イ)　表わし方 　個人や集団で表わしたい感じにふさわしく，リズム，強度，身体の動きおよび場所の使い方を変化，発展させ，対比，均衡などの美の構成要素を活用して表現すること。 (ウ)　まとめ方 　表わしたい感じの中核となるフレーズを決め，それにふさわしい形式をくふうし，変化と統一のある美しい作品にまとめること。 (エ)　鑑　　賞 　美しい表現を感じとり，美の構成要素に照らして，内容にふさわしい表現を見分けること。
(２)　グループごとに計画を立て，互いに協力して，練習や発表を行なうことができるようにする。

(３)　フォークダンスの特性と踊り方および創作ダンスの特性と作品のつくり方を理解させる。

(１)　運動の特性と類型

　生理，力学，心理からみた運動の特性，体育，レクリエーションとして行なわれている運動の類型について理解させる。

ア　運動の生理

　　運動と筋肉，神経，呼吸，循環などとの関係を理解すること。

イ　運動の力学

　　運動技能に関連した力，速度，重力などの原理を理解すること。

ウ　運動の心理

　　運動の欲求，運動と情緒，運動と集団の関係，運動技能の上達の過程や競争の場における心理的要因などについて理解すること。

エ　運動の類型

　　体育・レクリエーションとして行なわれている運動の類型を知り，各類型の特性を理解すること。

　なお，登山，キャンプ，スキーなどの野外活動については，野外活動による事故の現状を知り，安全に行なうために必要な知識，基礎技術などについて理解すること。

(２)　生活と運動

　現代生活における体力の意味や運動の必要性，現代社会におけるスポーツの動向およびわが国の体育の現状について知らせ，生活における運動の意義を理解させる。

ア　体力と運動

　　体力のとらえ方，体力の発達とその男女差，体力の発達と運動との関係を知り，生活全体を通じて運動を実践することの必要性を理解すること。

イ　現代生活と運動

　　人口の都市集中，技術革新に伴う作業形態の変化，自由時間のー増加などによる社会生活の変化と体育・レクリエーションの関係を知り，現代生活における運動の必要性を理解すること。

ウ　現代社会におけるスポーツ

　　スポーツの概念，アマチュアスポーツとプロフェショナルスポーツの特質，スポーツ発展の方向などについて理解すること。

エ　わが国の体育

　　わが国における体育・レクリエーションの現状や問題について，諸外国と比較して理解すること。

(１)　内容のＡ，Ｂ，Ｃ，ＤおよびＨについては，それぞれの内容をすべて取り扱うものとする（以下「共通必修」という。）。

　内容のＥ，ＦおよびＧについては，生徒の能力・適性等に応じて，選択して取り扱うものとする（以下「選択必修」という。）。選択必修の場合，男子については内容のＥのうちから１種目およびＦのうちから２種目を，女子については内容のＦのうちから２種目およびＧを，それぞれ選択して取り扱うものとし（以下「第１選択」という。），さらに，男女いずれの場合にも内容のＥ，ＦおよびＧのうちからいずれか適切な種目を自由に選択して取り扱うものとする（以下「第２選択」という。）。

　なお，第２選択の場合，学校や地域の実態を考慮し，すもう，弓道，レスリング，なぎなた，テニス，卓球，バドミントン，ソフトボール，スキー，スケートなどからも選択することができる。

(２)　内容のＡの(１)については，徒手だけでなく，器具を用いたり，組みになったりする運動も適宜加えて取り扱うようにする。

(３)　内容のＢについては，懸垂，跳躍，転回および平均の能力を高めるため，示されたもの以外の適当な器械・器具を用いた運動を行なうことができる。

(４)　内容のＡ，ＢおよびＣについては，男女の特性に応じて各運動を取り扱うよう配慮する。

(５)　内容のＤについては，次の事項について配慮するものとする。

ア　(１)については，泳がないで助ける場合の救助法なども含めて取り扱うこと。

イ　泳ぎの未熟な生徒については，初歩的な泳ぎから取り扱うこと。

ウ　適切な水泳場がない場合は，水泳を欠くことができるが，その場合でも(３)の内容は取り扱うようにすること。

(６)　内容のＢ，ＣおよびＤについては，既習の運動技能に重点をおいて取り扱うようにする。

(７)　内容のＥについては，次の事項について配慮するものとする。

ア　柔道の投げわざ，固めわざについては，わざの連絡変化についても取り扱うこと。

イ　柔道の固めわざについては，生徒の技能の程度に応じて，関節わざ，しめわざを取り扱うことができること。

ウ　柔道の投げわざのうち，捨て身わざについては，浮きわざ，ともえ投げを取り扱うこと。

エ　高等学校において初めて柔道および剣道を履修する生徒には，基本動作をじゅうぶん身につけさせるようにすること。

オ　定時制の課程においては，生徒の生活の実態や学習環境などの条件からみて適切でない場合は，格技を欠くことができること。

(８)　内容のＦのラグビーについては，生徒の技能の程度や運動場の状態を考慮して，安全に留意して取り扱うようにする。

(９)　内容のＥ，ＦおよびＧのなかで，（男）あるいは（女）と示されている事項は，それぞれ主として男子あるいは女子に対して指導するものとする。

(10)　内容のＡの(３)，Ｂの(３)，Ｃの(３)，Ｄの(３)，Ｅの(３)，Ｆの(３)およびＧの(３)については，知的理解事項として取り扱うものとする。その授業時数は，「(13)」の表のＨの授業時数のうちから充てるものとする。

(11)　内容のＡからＧまでの指導においては，集団行動について適切に取り扱うようにする。

(12)　視党障害者，聴覚障害者，肢（し）体不自由者，病弱者および身体虚弱者については，その状態に応じて指導するよう配慮するものとする。

(13)　内容のＡからＨまでのそれぞれに割り当てる授業時数は，全学年を通して，次の表に示す割合を標準とし，学校や生徒の実態に即して適切に定めるものとする。ただし，全日制の課程の普通科の男子において，11単位以上履修させる場合には，第１選択の格技に20％を充てるようにする。
　

	性別 内容	男　　　子				女　　　子
共 通 必 修	Ａ　　体　　　　　操	30〜40％
	Ｂ　　機　械　運　動
	Ｃ　　陸　上　競　技
	Ｄ　　水　　　　　泳
選 択 必 修	Ｅ　　格　　　　　技	第 １ 選 択	15〜20％	第 ２ 選 択	10〜15％			第 ２ 選 択	10〜15％
	Ｆ　　球　　　　　技		20〜30％			第 １ 選 択	20〜30％
	Ｇ　　ダ　　ン　　ス						15〜20％
共 通 必 修	Ｈ　　体　育　理　論	10％

１　目　　標

(１)　健康な心身と疾病や事故災害の基礎的なことがらについて理解を深め，みずから進んで健康を保持増進し，安全を確保することのできる能力や態度を養う。

(２)　家庭，職場および地域の生活における健康・安全に関することがらについて理解させ，健康で安全な生活を実践することのできる能力や態度を養う。

(３)　国民の健康を守るしくみについて理解させ，国民の健康を高めることに寄与する能力や態度を養う。

(１)　健康と身体の機能

　健康の意義と身体の発達および生理的機能について理解させる。

ア　健康の意義と成立条件
(ア)　健康観の変遷

(イ)　健康とその重要性

(ウ)　健康成立の条件

イ　身体の年齢的変化
(ア)　形態の発育

(イ)　機能の発達

(ウ)　性徴と性器官の機能

(エ)　老　　化

ウ　身体の環境適応の生理
(ア)　身体の恒常性とその維持

(イ)　身体の適応能力とその維持

エ　身体活動の生理
(ア)　行動の生理

(イ)　エネルギー代謝

(ウ)　疲労の生理

(２)　精神の健康

　精神機能，欲求と適応および精神障害について理解させ，健康な精神生活についての理解を深める。

ア　大脳と精神機能
(ア)　大脳の生理機能

(イ)　知能の発達と性格の形成

イ　欲求と適応
(ア)　欲求の種類と欲求不満

(イ)　適応の機制

(ウ)　適応異常

ウ　精神障害と健康な精神
(ア)　おもな精神障害

(イ)　心身相関

(ウ)　健康な精神生活

(３)　疾病とその予防

　疾病の要因および経過とその予防について理解させる。

ア　疾病の要因
(ア)　主因と誘因

(イ)　内因と外因

(ウ)　主体・病因・環境の三要因

イ　疾病の経過
(ア)　疾病の症状

(イ)　疾病の経過と転帰

ウ　疾病の予防
(ア)　抵抗力増強と特殊予防

(イ)　早期発見と早期治療

(ウ)　悪化防止とリハビリテーション

(４)　事故災害とその防止

　事故災害の要因と労働災害や交通事故の現状およびその防止について理解させるとともに，救急処置の技能を高める。

ア　事故災害発生の要因

イ　労働災害

(ア)　労働災害の種類と現状

(イ)　職場における安全管理

ウ　交通事故
(ア)　交通事故の分析と傷病

(イ)　運転者の適性と運転時の生理

(ウ)　交通事故の防止対策

エ　救急処置
(ア)　蘇(そ)生　法

(イ)　中毒の救急処置

(５)　生活と健康

　家庭や職場において健康を保持増進するために必要なことがらについて理解させ，地域の特性と健康との関係について知らせる。

ア　家庭生活と健康
(ア)　結婚と優生

(イ)　家族計画

(ウ)　母子保健

(エ)　医薬品や食品添加物と消費者

(オ)　家庭における健康管理

イ　職業生活と健康
(ア)　職業適性と労働寿命

(イ)　職業病の種類と現状

(ウ)　労働における女性の特性

(エ)　職場における衛生管理

ウ　地域生活と健康
(ア)　都市生活と健康

(イ)　農村，へき地の生活と健康

(６)　国民の健康

　国民保健の現状および公衆衛生活動と保健・医療制度について理解させ，国民の健康の保持増進に積極的に協力することが必要であることを知らせる。

ア　国民保健の現状
(ア)　人口構成の推移と傷病や死亡

(イ)　生命表と平均余命

イ　公衆衛生活動と保健・医療制度
(ア)　疾病予防活動

(イ)　環境衛生活動

(ウ)　栄養改善・食品衛生活動

(エ)　保健・医療制度

(オ)　保健に関する国際的活動

ウ　公衆衛生の進歩と健康な社会づくり

(１)　内容の(２)のウの(ウ)においては，生徒の悩みなどを具体的に取り扱い，精神衛生相談の意義や必要性を理解させるとともに，積極的に相談しようとする態度を育てるようにする。

(２)　内容の(４)のアについては，疫（えき）学的立場から取り扱うものとする。

(３)　内容の(４)のウにおいては，主として道路交通を取り扱うものとする。また，(ア)においては，交通事故発生の際の救急体制，(イ)においては，安全に運転するための運転者の健康管埋についても取り扱うものとし，(ウ)においては，陸上交通のほか，海上交通，航空交通についてもふれるものとする。

(４)　内容の(５)のウにおいては，それぞれの地域に多くみられる心身の健康阻害や医療などの問題を，具体的に取り扱うものとする。

(５)　内容の(５)のウおよび(６)のイの(イ)においては，公害について適切に取り扱うものとする。

(６)　内容の(４)のエの救急処置については，実習を行なうものとする。また(１)のエの(ウ)においては，疲労の測定を実習として取り扱うように配慮する。

(７)　内容の(１)のイの(ウ)，(２)のイの(ア)，(５)のアの(ア)・(イ)・(ウ)，(５)のイの(ウ)，(６)のアの(イ)および(６)のイの(ア)においては，性に関する指導を考慮し，心身発達における男女の特性および男女の相互協力による健全な家庭づくりについて正しく理解することを中心に，効果的に取り扱うものとする。

１　「体育」は，毎学年継続して履修させ，単位数はなるべく均分して配当することを原則とする。

２　「保健」は，全日制の課程については，第１学年および第２学年，定時制の課程については，それに相応する学年において，履修させることが望ましい。