第1款 目 標
事象を数学的にとらえ,論理的に考え,統合的,発展的に考察し,処理する能力と態度を育成し,また,社会において数学の果たす役割について認識させる。
このため,
1 数学における基本的な概念,原理・法則などを理解させ,より進んだ数学的な考え方や処理のしかたを生み出す能力と態度を養う。
2 数学における基本的な知識の習得と基本的な技能の習熟を図り,それらを的確かつ能率的に活用する能力を伸ばす。
3 数学的な用語や記号を用いることの意義について理解を深め,それらによって数学的な性質や関係を簡潔,明確に表現し,思考を進める能力と態度を養う。
4 事象の考察に関して,適切な見通しをもち,抽象化し,論理的に思考する能力を伸ばすとともに,目的に応じて結果を検討し,処理する態度を養う。
5 体系的に組み立てていく数学の考え方を理解させ,その意義と方法について知らせる。
第2款 各 科 目
第1 数 学 一 般
1 目 標
(2) 数学が社会において役だつことについて知らせ,数学を実際に活用する態度を養う。
集合についての理解を深め,集合の考えで,概念を理解したり,問題を考察したりすることができるようにする。
ウ 個数の求め方
nPr,nCr
平面図形および空間図形の性質や関係について,図形の計量の立場から考察するなどして理解を深め,それらが実際に応用されることを知らせる。
イ 三角比などによる図形の考察
ウ 用語および記号
弦,sin,余弦,cos,正接,tan
具体的な事象を通して,関数のとる値の変化のしかたを,グラフに表わしたり,変化率の考えで考察したりすることができるようにする。
関数は,y=ax2+bx+c,y=ax3の程度とする。
イ 用語および記号
微分係数
調査,観察などによるデータの処理,確率実験などを通して,統計的な見方や考え方を伸ばす。
イ 簡単な標本調査
ウ 用語および記号
試行,事象
命題および命題の合成や相互関係について,論理とスイッチ回路との関係を知らせるなどを通して理解を深める。
イ 命題の相互関係
ウ 用語および記号
対偶
具体的な事がらに即して,いくつかの量の組を一つの数学的な対象として考察することができる例として,ベクトルと行列を理解させる。
イ 行列の意味とその演算
ウ 用語および記号
ベクトル,行列
具体的な事がらについて,線形計画の考えを理解させ,二変数の場合について解決することができるようにする。
イ 二変数の一次式のとる値の最大・最小
計算や思考の手順を分析,系列化し,流れ図に表わすことができるようにする。
イ 流 れ 図
(2) 内容の*(6)のうちの行列については,主として2×2行列を取り扱うものとする。
(3) 内容の*(8)については,電子計算機を利用できる場合には,さらにプログラムを作成し,実際に計算機にかけ結果が求められるようにする。
(4) 内容の指導に当たっては,学習が平易に進められるように特に留意し,生徒が興味・関心をもつように実用的な面を多く取り入れるとともに実験,実習などを通して学習させるようにする。
第2 数 学 Ⅰ
1 目 標
(2) 図形について座標を用いる方法を理解させ,基本的な図形の性質や関係を考察する能力を養う。
(3) 写像の概念を理解させ,また,基本的な関数の特徴を理解させる。
(4) 確率についての基本的な概念,法則などの理解を深め,簡単な事象の確率を求める能力を伸ばす。
A 代数・幾何
実数とその演算についての理解を深める。また,整式と有理式が演算に関してそれぞれ整数,有理数と類似の構造をもつことに着目するなど,式についての見方を深めるとともに,簡単な整式,有理式を計算することができるようにする。
イ 整式・有理式とそれらの演算
二次式,三次式(a3±b3の程度)の因数分解を含む。
ウ 用語および記号
整式,分数式,有理式
方程式と不等式の基本的な概念および解法の原理の理解を深め,それらを活用する能力を伸ばす。また,方程式の解が存在するように数の範囲を拡張することを理解させ,数の概念についての理解を深める。
(イ) 複素数
(ウ) 方程式と因数定理
a+b/2≧√ab(a≧0,b≧0),|a+b|≦|a|+|b|(a,bは実数)の程度とする。
(イ) 数係数の二次不等式
判別式,虚数,i,複素数
平面上のベクトルの意味ならびにベクトルについての加法,減法および実数との乗法の演算について理解させる。
イ ベクトルの加法,減法および実数との乗法
ウ べクトルの有向直線上への射影
エ ベクトルの成分表示
オ 用語および記号
べクトル,零べクトル,単位ベクトル,有向線分,成分
平面図形とその式についての理解を深め,それを用いて,図形の性質や関係を考察することができるようにする。
二点間の距離,線分の分点
イ 直線と一次方程式
平行関係,垂直関係
ウ 円の方程式
エ 簡単な二次方程式の表わす曲線
x2/a2+y2/b2=1,xy=k(kは定数)のグラフをかくことにとどめる。
オ 不等式と領域
領域は,直線,円などで限られる簡単なものとする。
カ 用語および記号
象限,だ円(長円)
写像の意味およびその合成と逆写像について理解させ,また,関数を写像としてとらえることができるようにする。
イ 写像の合成,逆写像
ウ 写像としての関数
エ 用語および記号
写像,合成(写像に関するもの),逆写像
二次関数など簡単な関数の特徴について理解させる。
イ 指数関数,対数関数の意味
ウ 用語および記号
累乗根,指数法則,底,指数関数,対数,対数関数,logax
正弦,余弦および正接の意味を理解させ,三角形の辺と角との間の基本的な関係を考察できるようにする。また,三角関数の意味とその周期性を理解させる。
イ 三角形の辺と角との間の基本的な関係
ウ 三角関数とその周期性
エ 用語および記号
正弦,sin,余弦,cos,正接,tan,一般角,動径,ラジアン,三角関数,周期,周期関数
確率の概念の理解を深め,確率についての基本的な法則および事象の独立・従属について理解させ,簡単な事象の確率を求めることができるようにする。
イ 条件つき確率,事象の独立
ウ 用語および記号
試行,事象,余事象,排反,条件つき確率,独立,従属,階乗,n!,nPr,nCr
集合および命題とその合成,相互関係についての理解を深める。
イ 命題の合成,相互関係
ウ ‘すべてのxについてpである。',‘あるxについてpである。'の意味とそれらの否定
エ 用語および記号
直積,A×B,対偶,必要条件,十分条件,同値
(2) 内容のAの(3)のウの射影については,それを記号化した扱いはしないものとする。(3) 内容のBの(1)については,平面上の平行移動,対称移動(座標軸または直線y=xに関するものの程度)を含むものとする。
(4) 内容のBの(2)のアのうちの二次関数の逆関数については,y=√ax+bの程度とする。
(5) 内容のBの(2)のイについては,対数計算は取り扱わないものとする。
(6) 内容のDは,他のA,B,Cの内容と密接な関連を図って指導することが必要である。
第3 数 学 Ⅱ A
1 目 標
(2) 微分法の基本的な概念,法則などを理解させ,簡単な整関数の範囲で,それらを用いる能力を養う。また,積分の意味について理解させる。
(3) 確率の概念の理解を深め,統計的な見方や考え方を深める。
(4) 電子計算機について,その機能と問題解決に利用できることを知らせる。
A 代数・幾何
行列とその演算について理解させ,基本的な一次変換の例とそれが行列によって表現できることを理解させる。
イ 行列の演算
加法,減法,実数との乗法,乗法
ウ 基本的な一次変換
エ 用語および記号
行列,ー次変換
微分係数と導関数の意味を理解させ,四次までの整関数の範囲で,導関数を求めたり,それを応用したりすることができるようにする。また,積分の意味を明らかにする。
イ 導関数とその計算
関数の和・差の導関数
ウ 導関数の応用
接線,関数値の増減,速度など
エ 積分の意味
オ 積分の計算と簡単な応用
カ 用語および記号
区間,増分,⊿x,極限値,lim,微分係数,導関数,f'(x),y',dy/dx,極大,極小,極値,不定積分,積分定数,
確率の概念の理解を深めるとともに,確率分布の考えや統計的な推測の考え方を理解させる。
イ 統計的な推測の考え方
ウ 用語および記号
乱数表,確率分布
計算や思考の手順を分析,系列化し,流れ図に表わすことができるようにする。
イ 流 れ 図
(2) 内容のDの(1)については,電子計算機を利用できる場合には,さらにプログラムを作成し,実際に計算機にかけ結果が求められるようにする。
(3) 「数学ⅡA」を2単位で履修させる場合には,内容のA,BおよびCについて,それぞれに示す各事項の中から適宜選択して取り扱うものとする。ただし,内容のDに示す各事項はすべて取り扱うものとする。
第4 数 学 Ⅱ B
1 目 標
(2) 座標およびべクトルの概念を空間にまで拡張し,それらについての理解を深め,図形の性質を考察する能力を養う。
(3) 行列を通して,いくつかのものの組を一つのものとしてとらえ,数学的に表現するしかたを理解させ,それを用いる能力を養う。
(4) 二項定理や数列を通して,数学的帰納法や帰納的定義について理解させる。
(5) 微分法の基本的な概念,法則などを理解させ,簡単な整関数の範囲で,それらを用いる能力を養う。また,積分の意味について理解させる。
A 代数・幾何
平面幾何について,数学における公理の意味と公理的構成について理解させる。
イ 平面幾何の構成
ウ 用語および記号
公理
座標とベクトルの概念を空間へ拡張し,それらを理解させ,基本的な図形を式に表わすことができるようにする。また,ベクトルが,平面においても,空間においても,ともに同じ考えに基づいていることを理解させる。
点の座標,二点間の距離,線分の分点
イ 空間におけるベクトル
ウ 空間におけるベクトルの加法,減法および実数との乗法
エ ベクトルの内積
オ 直線,平面および球の方程式
カ 用語および記号
内積
行列とその演算について理解させ,連立一次方程式が一つの方程式として表わされることや一次変換と行列との関係について理解させる。
イ 行列の演算
加法,減法,実数との乗法,乗法
ウ 連立一次方程式
エ 一次変換
平面上で,原点を動かさない一次変換を扱う。
オ 用語および記号
行列,逆行列,A−1,一次変換,加法定理(三角関数に関するもの)
二項定理や数列を通して数学的帰納法について理解させる。また,簡単な数列について,その特徴をとらえさせ,帰納的に定義するしかたとその意義を理解させる。
イ 簡単な数列
等差数列,等比数列など
ウ 数学的帰納法,帰納的定義
エ 用語および記号
二項定理,数学的帰納法,数列,一般項,等差数列,公差,等比数列,公比,Σ
微分係数と導関数の意味を理解させ,簡単な整関数の範囲で,導関数を求めたり,それを用いたりすることができるようにする。また,積分の意味を理解させ,それを簡単な整関数の範囲で応用できるようにする。
イ 導関数とその計算
関数の和・差・積の導関数
ウ 導関数の応用
接線,関数値の増減,速度など
エ 積分の意味
オ 積分の応用
面積,体積など
カ 用語および記号
区間,増分,⊿x,極限値,lim,微分係数,導関数,f'(x),y',dy/dx,極大,極小,極値,不定積分,積分定数,
(2) 内容のAの(2)のエについては,直線,平面および球の方程式を導く程度とする。
(3) 内容のAの(3)のイのうちの乗法については,2×2行列までを取り扱うものとする。
(4) 三角関数の加法定理は,内容のAの(3)のエまたはAの(2)のエなどに関連して取り扱うものとするが,それを導く程度とする。
(5) 内容のAの(3)のエなどに関連して,群の考えについて知らせることもさしつかえない。
(6) 内容のAの(4)のウのうちの帰納的定義については,その定義のしかたとその意義を理解させることをおもなねらいとし,それから数列の一般項を求めることは簡単なものにとどめるものとする。
(7) 内容の指導に当たっては,Aの(4)のイなどの適切な事項に関連してアルゴリズムについて指導し,計算や思考の手順を明確に理解させ,かつ,それを秩序だてて表現できるように配慮するものとする。
第5 数 学 Ⅲ
1 目 標
(2) 初等的な関数についての理解を深め,微分法と積分法の概念,法則などの理解を深める。
(3) 確率分布の概念を理解させ,統計的な見方や考え方を伸ばす。
A 解 析
基本的な無限数列について,極限の考えを理解させ,無限等比級数の意味を理解させる。
無限等比級数を含む。
イ 用語および記号
収束,発散,∞,無限等比級数
簡単な初等的な関数の範囲で,導関数を求めたり,それを応用したりすることができるようにする。
直観的に扱う。
(イ) 関数の商の微分法
y=xn(nは整数),y=ax+b/x+c,y=ax+b/x2+1の程度とする。
(ウ) 合成関数・逆関数の微分法
y=xk(kは有理数),y=√ax+b,y=√a2−x2の程度とする。
(エ) 三角関数の導関数
(オ) 指数関数・対数関数とそれらの導関数
y=eax,y=log(ax+b)の程度とする。
(カ) 第二次導関数
(イ) 近 似 式
自然対数,e,第二次導関数,f"(x),y",d2y/dx2,平均値の定理,変曲点
積分法について理解を深め,簡単な初等的な関数の範囲で,積分を求めたり,それを応用したりすることができるようにする。また,微分方程式の意義について知らせる。
部分積分法については,簡単な関数について一回の適用で求められるものにとどめ,また,置換積分法については,ax+b=t,x=a sinθと置き換える程度とする。
(イ) いろいろな関数の積分
(イ) 微分方程式の意味
dy/dx=ky(kは定数)の程度の微分方程式を解くことを含む。
部分積分法,置換積分法,微分方程式
母集団と標本の考えおよび確率分布の意味を明らかにし,二項分布と正規分布について理解させる。
イ 確率分布
確率変数の平均,分散,標準偏差を含む。
ウ 二項分布,正規分布
エ 用語および記号
乱数表,分散,確率分布,確率変数,二項分布,正規分布
統計的な推測における基本的な考え方について理解させる。
イ 用語および記号
推定,検定
(2) 内容のAの(2)に関連して,平均値の定理については,直観的に扱い,関数値の増減と導関数との関連を明らかにすることにとどめるものとする。
(3) 内容のBの(1)のウのうち,正規分布については,直観的に扱い,Bの(2)に関連してその簡単な利用について知らせる程度とする。
(4) 「数学Ⅲ」を3単位で履修させる場合には,内容のAおよびBについて,それぞれに示す各事項の中から適宜選択して取り扱うものとする。
第6 応 用 数 学
1 目 標
事象をとらえるのに必要な数学的な概念,原理・法則,方法ならびにそれらが職業に関する専門教育において取り扱われる内容との関連を理解させ,数学的に考察し,処理する能力を養う。
2 内 容
ベクトルの概念の理解を深め,また,行列の意味と演算を理解させ,それらの有用性を知らせる。
イ 行列の意味と演算
ウ 一次変換
エ 用語および記号
内積,行列,一次変換
微分係数・導関数や不定積分・定積分の概念を理解させ,簡単な整関数の範囲で,導関数や積分を求めたり,それらを応用したりすることができるようにする。
イ 導関数とその応用
関数の和・差の導関数
ウ 不定積分と定積分
エ 積分の応用
オ 用語および記号
区間,増分,⊿x,極限値,lim,微分係数,導関数,f'(x),y',dy/dx,極大,極小,極値,不定積分,積分定数,
母集団と標本の考えおよび確率分布の意味を知らせ,統計的な推測の考え方を理解させる。
イ 確率分布
ウ 統計的な推測の考え方
エ 用語および記号
乱数表,分散,確率分布,確率変数
等差数列,等比数列について理解させ,それらの簡単な応用ができるようにする。
三角関数の加法定理について理解させる。
asinθ+bcosθの変形を含む。
微分法と積分法についての理解を深め,簡単な初等的な関数の範囲で,導関数や積分を求めたり,それらを実際的な問題に応用したりすることができるようにする。
(ウ) 簡単な部分積分法,置換積分法
ウ 導関数と積分の応用
エ 微分方程式の意味
dy/dx=ky(kは定数)の程度の微分方程式を解くことを含む。
統計的な推測についての理解を深め,確率と統計を実際的な問題に応用するときの考えと方法を理解させる。
計算機とそれによる計算の基礎を知らせる。また,計算機と関連して数値計算を理解させる。
数学が社会的な事象などの処理にも応用できることを知らせる。
(2) 内容のうちの(1),(2)および(3)は合わせて3単位に応ずる基本的な内容であり,「応用数学」を履修させるいずれの学科においても共通に取り扱うことを原則とする。
(3) 内容のうちの*(4)から*(9)までは合わせて4単位に応ずる内容であり,標準単位数または標準単位数より少ない単位数で履修させる場合には,内容の(1),(2)および(3)に加えて,学科の必要に応じ*(4),*(5),*(6),*(7),*(8)および*(9)のいずれかを適宜選択して取り扱うものとする。この場合において,それぞれに示す各事項の一部を欠くことができる。また,*(4)から*(9)までのすべてについて,それぞれに示す各事項の中から適宜選択して取り扱うこともできる。
(4) 内容の指導に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
イ 取り扱う内容によっては,そこで取り上げる定理や法則の意味や応用のしかたなどを理解させることに重点をおき,必ずしも厳密な論理によって展開する必要はないこと。
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取り扱い
1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(2) 「数学ⅡA」または「数学ⅡB」は,いずれも原則として「数学Ⅰ」を履修させた後に履修させ,また,「数学Ⅲ」は,原則として「数学ⅡB」を履修させた後に履修させること。
また,「応用数学」は,原則として「数学I」を履修させた後に履修させること。
(3) 「数学一般」または「数学I」の1科目のみを履修させる場合には,2個学年または3個学年にわたって履修させることが望ましいこと。
(4) 中学校学習指導要領(昭和年44年4月14日,文部省告示第199号)第2章第3節第2の「2内容」に示した用語および記号については,それらを原則として用いるものとすること。
(2) 数の計算に当たっては,必要に応じて,各種の計算機を使用させて,学習の効果を高めるようにすること。