第2節 社  会

第1 目 標

 地理,歴史および政治・経済・社会などに関する学習を通して,社会生活についての理解と認識を養い,民主的,平和的な国家・社会の形成者として必要な資質の基礎をつちかう。

このため,

1 広い視野に立って,わが国土に対する認識とわが国の歴史に対する正しい理解を深め,その基礎の上に,わが国の公民としての基礎的教養をつちかうとともに個人の尊厳と人権の尊重が民主的な社会生活の基本であることを自覚させて,国家・社会の進展に進んで寄与しようとする態度を養う。

2 世界におけるわが国の役割を理解させて,国民としての自覚を高めるとともに,国際理解を深め,国際協調の精神を養い,世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする態度を育てる。

3 経済・社会・文化などが急速に変化発展している日本や世界の現状に目を開かせ,さまざまな情報に対処し,確実な資料に基づいて公正に判断しようとする態度とそれに必要な能力の基礎をつちかう。

 

第2 各分野の目標および内容 [地理的分野]  1 目 標 (1) 日本や世界のさまざまな地域についての学習を通して,地理的な見方や考え方の基礎をつちかい,わが国に対する広い視野に立った認識を養うとともに,国土を高度かつ合理的に利用することがたいせつであることを理解させ,わが国の発展に努力しようとする態度を育てる。

(2) 地理的事象には,地方的特殊性と一般的共通性があることに気づかせ,それらを生み出した地理的諸条件について考察させるとともに,各地域やそこに住む人々の生活を正しく理解するための基礎をつちかう。

(3) 日本や世界には大小さまざまな地域的まとまりがあり,それらが相互依存の関係にあることを理解させるとともに,国際社会における日本の役割を考えさせ,国家および世界の一員としての自覚を深める。

(4) 自然および社会的条件と人間との関係は,人間の活動によって絶えず変化し,それに伴って地域も変貌(へんぼう)していることを理解させる。また,自然に対しては,これを適切に開発し保全することがたいせつであることを理解させる。

(5) 地理的事象に直接触れて正しく考察すること,地図・統計その他の資料を適切に取り扱うこと,地図や図表を描くこと,報告をまとめることなどに必要な能力を育てる。

 2 内 容 (1) 身近な地域 野外の観察と調査,地域の特色と変化,他地域との関連の学習を通して,地理学習に対する興味や関心を高め,地理的な見方や考え方の基礎を得させることを主眼とし,加えて,生徒が生活している土地に対する理解と関心を深め,広い視野に立ってその発展に努力しようとする態度を養う。

ア 野外の観察と調査

 身近な地域における地理的事象の中から,直接見聞するのに適したものを重点的に取り上げて,観察や調査をさせ,それらの結果を報告にまとめさせる。野外に出る際には,5万分の1以上の縮尺の大きな地図を携行させ,身近な地域における地理的事象が地図上にどのように表現されているかを理解させて,読図の楽しさを味わわせる。また,生徒の自主的な活動を促し,みずから発見したり考察したりする喜びを体験させて,地理的な見方や考え方を啓発する。 イ 地域の特色と変化  野外の観察や調査の際に取り上げた地理的事象を手がかりにして,身近な地域の自然,開発,産業,交通,人口,居住などの大要に触れ,地域の特色のあらましを理解させる。また,たとえば産業構成の変化や人口の増減・移動など,最近の代表的な事例を取り上げて,地域は絶えず変化していることに気づかせ,その意味について考えさせる。 ウ 他地との関連  物資や人口の移動のように,比較的容易に観察したり調査したりすることのできるものを取り上げて,身近な地域の特色は,その地域内の条件だけで成立したものではなく,他地域との関連によることも少なくないことを理解させる。
(2) 日本とその諸地域

 国土のなりたち,国土の自然,位置と歴史的背景,自然の特色,資源の開発と産業・交通,人口と居住,諸地域の結びつきの学習を通して,日本の位置,領域,人口分布,自然の多様性などの大要を把握(はあく)させ,諸地域の特色や地域相互の関連,ならびに各地域が日本全体において果たしている役割を理解させる。また,各地域の変化や当面しているおもな地理的諸問題について考察させ,将来の動向に対しても関心をもたせる。

ア 国土のなりたち  日本の位置,領域の特色と変化,人口分布のあらましなどを取り上げて,わが国土の現状を大観させ,国土がさまざまな地域からなりたっていることについての認識,および諸地の特色についての理解を深めるための基礎をつちかう。 イ 国土の自然  日本の地形,気候,植生,日本をめぐる海洋,自然の災害などを取り上げて,日本の自然の特色を全体的に把握させるとともに,地によってさまざまな差異がみられることを理解させる。 ウ 位置と歴史的背景  各地域の地理的位置の変化,開発の歴史などに関する事がらのうち,その地域の現在のおもな地理的事象の成立や特色を把握するための手がかりとなるものを取り上げて,そのあらましを理解させる。 エ 自然の特色  各地域の地形や気候などのうち,その地域の生活,産業,自然の災害などと深い関係をもっている事象を取り上げて,地域の自然の特色を理解させる。その際,自然に対する人間のはたらきかけが,しだいに積極的になってきたことに着目させながら,自然のもつ意義を考えさせる。 オ 資源の開発と産業・交通  各地域のおもな産業,各種の資源の分布とその開発状況などを取り上げて,それらをなりたたせている地理的諸条件や,それらが地域において果たしている役割について考察させ,地域の特色を理解させる。また,産業や文通の発達に伴う地域の変化,都市や農村の当面している諸問題にも着目させ,産業の発展と地域社会の生活の向上についての関心を高める。 カ 人口と居住  各地域の人口の分布・増減・移動,おもな都市の発達と機能などを取り上げて,産業や交通と結びつけて考察させ,都市化が進むにつれて人口分布に著しいかたよりが現われてきたことに着目させるとともに,それに伴う問題にも関心をもたせる。 キ 諸地域の結びつき  おもに,物資や人口の移動現象などを取り上げて,各地域は,その地域内だけでなく,広く他地域と結びつきながら,日本の一部としての役割を果たしていることを理解させる。その際,各地域の結びつきやそれぞれの役割は,産業や交通の発達に伴って変化していることに着目させる。 (3) 世界とその諸地域

 生活舞台としての地球,世界の自然,位置と歴史的背景,自然の特色,住民と人口,資源の開発と産業,世界の結びつきの学習を通して,地球とその上で営まれている世界の人々の生活を大観させ,その多様性に着目させる。また,世界の諸地域における産業の特色,地域相互の関連,おもな地域または国が世界の中で果たしている役割などを理解させる。その際各地域の変化や動向,当面している地理的諸問題にも関心をもたせ,それらの中から学ぶべきものを得ようとする態度を育てる。

ア 生活舞台としての地球  地球の大きさ,水陸の分布と大陸相互の位置関係,地表における人口分布の大要,おもな国の関係位置などを取り上げて,人間の生活舞台としての地球に関する基礎的な理解を養う。その際,世界の全図や部分図と地球儀を対比して,縮尺の小さな地図に対する正しい見方を育てるとともに,地球に関する理解を具体的で身についたものにする。 イ 世界の自然  世界の大気候,植生,大地形,海洋など取り上げて,人間の生活と関係の深い自然意義や,その地域的差異の大要を理解させる。 ウ 位置と歴史的背景  各地域の地理的位置の変化,探検・調査や開発の歴史,国家の成立その他の政治上の大きな変化などに関する事がらのうち,その地域の現在のおもな地理的事象の成立や特色を把握するための手がかりとなるものを取り上げて,そのあらましを理解させる。 エ 自然の特色  各地域の地形,気候,植生,海洋などのうち,その地域の生活や産業と深い関係をもっている事象を取り上げて,地域の自然の特色を理解させる。その際,最近における自然の利用,開発と,それに伴う地域の変化,わが国では見られない自然の特異な様相なども適宜取り上げて,自然に対する理解を深めさせる。 オ 住民と人口  各地域における住民の民族構成や分布の大要,生活様式にみられる特色,人口の分布・増減・移動などを取り上げて,地域の生活の特色を理解させる。その際,生活様式については,衣食住,交通手段,宗教,風習のような具体的な事象に着目せ,人口については,開発の歴史や産業の発達状況と結びつけて考察させる。なお,地域によっては,人種や民族にするむずかしい問題があることに気づかせる。 カ 資源の開発と産業  各地域のおもな産業,おもな資源の分布とその開発の状況などを取り上げて,それらをなりたたせている地理的諸条件や,それらが各地域で果たしている役割について考察させるとともに,産業の変化や発展の動向に着目させ,資源とその開発をめぐる国際関係にも関心をもたせる。なお,おもな地域については,さらに,交通・貿易の現状やおもな都市が果たしている機能なども取り上げて,資源の開発や産業の発展と結びつけて考察せ,地域の特色を理解させる。 キ 世界の結びつき  世界のおもな地域間の交通・貿易の現状を取り上げて,交通機関の発達によって世界の時間的距離がしく短縮され,また,産業や貿易の発達によって諸地域の間の経済関係がますます密接になっていることを理解させるとともに,世界の貿易が当面している問題に関心をもたせる。 (4) 世界の中の日本

 世界との結びつき,国土の利用の学習を通して,日本や世界の諸地の学習によって養われた目で日本を全体的に見直し,わが国土に対する認識を深めさせるとともに,より豊かで住みよい国土の建設を進めるためには,国土を高度かつ合理的に利用することや,世界との結びつきをいっそう密接にすることがたいせつであることを理解させる。

ア 世界との結びつき  わが国の産業の特色,交通・貿易による世界との結びつきなどを取り上げて,わが国の産業の今後の課題に触れ,わが国の発展のためには,産業や貿易をいっそう振興させることがたいせつであることを理解させる。また わが国の産業や貿易が国際分業の中で果たしている役割について考察させるとともに,複雑な国際関係の中で当面している問題に関心をもたせる。 イ 国土の利用  わが国のおもな工業地域や農業地域の分布,人口の密集地域と希薄地域などを取り上げて,わが国土が産業交通,居住などのうえでどのように利用されているかを理解させる。また,その特色や動向を,世界の諸地の場合と比較して考察させるとともに,たとえば工業地域の偏在,かたよった人口分布などに起因する多くの問題に当面していることに着目させ,国民の生活を向上させるためには,国情に即した総合的な計画のもとに,国土利用の高度化と合理化を進めなければならないことを認識させる。
 3 内容の取り扱い (1) 内容の(1),(2),(3)および(4)は,この順序に取り扱うことが望ましい。

なお,(2)および(3)に充てる授業時数は,それぞれ,地理的分野に充てられた授業時数のおよそ5分の2程度とすることが適当である。

(2) 内容に示した各事項は,内容の取り上げ方の観点を示したものであり,また,相互に関連し,かつ深め合う関係にあるので,取り扱う際には,相互の関係に留意するとともに,取り上げる事象が多くなりすぎないようにじゅうぶん配慮する必要がある。なお,各地域については,それぞれの地域の特色を明確に把握できるような事象を重点的に取り上げるようにしなければならない。

(3) 内容の(1)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。

ア 特別な事情のないかぎり,地理的分野の最初に取り扱うこと。ただし,この段階では取り扱らことがむずかしい事象や問題については,生徒に気づかせる程度にとどめ,学習が進むにつれて適宜取り上げること。なお,日本や世界について学習する際にも,他地域との比較や関連などの学習によって,身近な地域に対する理解を深めさせること。

イ 身近な地城の範囲については,生徒の生活に最も密接な関係のある範囲を中心にするとともに,取り上げる地理的事象によって弾力的に取り扱うこと。

(4) 内容の(2)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア 日本の地区分については,従来広く使われてきたいわゆる8地方区分に必ずしもこだわることなく,指導の観点や学校所在の地方の事情に従って適切に決めること。その際,たとえば阪神から東海を経て南関東にいたる工業地帯,あるいは首都圏のような地域区分をも考慮して,それらの地の特色を等質地城および機能地域の両面から考察させるようにすること。

イ 内容の(2)のアおよびイは,ウからキにわたる指導の導入として,最初に取り扱うこと 。

ウ 内容の(2)のアについては,内容の(1)で取り扱う「身近な地域」は多数あるが,国土を全体的にみると,まとまりをもったより広いいくつかの地域からなりたっていること,また機能のうえでは,中心都市とこれに密接な関連をもった地域から構成されていることを考えさせること。

エ 内容の(2)のイおよびエについては,わが国は四面環海の海洋国であり,海洋の開発港湾や臨海工業用地の造成などには恵まれた条件をもっていること,自然の災害は多いが,たとえば台風のもたらす雨は,一面ではたいせつな水資源となっていることなどに着目させ,自然を環境,特に資源や災の面から考えさせて,正しい自然観を育てるようにすること。

オ 各地域の変化や動向,およびそれらに伴う問題については,日本を全体的にながめたうえで,適切な事象を精選し,生徒の発達段階にふさわしい取り扱いをするとともに,広い視野に立って,よりよい国土の建設に協力しようとする態度を養うようにすること。

(5) 内容の(3)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア 世界の地域区分については,細分に過ぎることは避けなければならないが,日本と政治・経済・文化などの面で関係の深い国や国際社会で主要な地位を占めている国については,国別に取り扱うこと。

イ 内容の(3)のアおよびイは,ウからキにわたる指導の導入として,最初に取り扱うこと。

ウ 内容の(3)のカの資源の開発については,はげしい国際競争が依然として続いているが,国際協力もしだいに行なわれるようになったことに気づかせること。なお,資源は,すぐれた科学技術によって有効に利用することがたいせつであることを理解させること。

エ 外国の事象については,視聴覚教材を活用したり,縮尺の大きな地図を利用するなどして,適切な取り扱いをくふうし,生徒に正しく考察させ的確な印象をもたせるようにすること。

オ どの地域を取り扱う際にも,日本との比較や関連に着目させること。

(6) 内容の(4)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア 内容の(4)のアおよびイの両者を密接に関連させながら取り扱い,世界を背景にし,世界とのつながりにおける日本の姿を明らかにすること。

イ 取り上げる事項については,内容の(1),(2)および(3)で取り扱った事項を活用して,具体的に指導するとともに,むだな重複を避けること。

ウ 地理的分野の学習のしめくくりとして,わが国の産業の今後のあり方に関心をもたせるとともに,公民的分野への円滑な移行,特にその内容の(3)のエおよびオとの関連を考慮すること。

(7) 地図については,次の事項を指導する必要がある。 ア 地球の表面を平面上に表現した地図には,面積,形,角,方位などの条件のすべてを満足させるものはないことを理解させるとともに,各種の地図の特色や長所・短所に気づかせること。ただし,むずかしい投影法に立ち入ることなく,地図と地球儀とを比較するなどして,実証的に理解させること。

イ 日本または世界の全図や地方図などの縮尺,方位や地図記号をだいたい読解できるようにさせるとともに,縮尺の大小によって,表現されている内容やその精粗に差があることを理解させること。

ウ 万分の程度の縮尺の大きな地図について,地図記号,地表の起伏の表現法,方位,縮尺の示し方などを理解させ,その地図を現地と照合して読む能力を養うこと。

エ 各種の分布図から,地理的事象やその特色を読み取ることができるようにさせるとともに,地理的事象の所在を地図と結びつけて理解しようとする習慣を養うこと。

オ 簡単な地理的事象を地図に表現する能力を養うこと。

(8) 指導の全般にわたって,地図を読み,かつ描くこと,統計その他の資料を処理し,図表に表現すること,野外の観察と調査その他の学習の結果を報告にまとめることのような,作業的な学習をじゅうぶんに取り入れる必要がある。

 

[歴史的分野]

 1 目 標 (1) 世界の歴史を背景に,広い視野に立って日本の歴史を理解させ,それを通してわが国の伝統と文化の特色を考えさせるとともに,国民としての心情と現在および未来に生きる日本人としての自覚を育てる。

(2) 歴史における各時代の特色を明らかにし,時代の移り変わりを総合的に理解させるとともに,それぞれの時代のも歴史的意義と各時代が今日の社会生活に及ぼしている影響を考えさせる。

(3) 国家・社会および文化の発展や人々の生活の向上に尽くした先人の業績と,現在に伝わる文化遺産を,その時代との関連において理解させて,それらを愛護し尊重する態度を養う。

(4) 歴史にみられる国際関係や文化交流のあらましを理解させるとともに,歴史上のわが国の位置を考えさせ,他民族の文化,伝統などについても関心をもたせて国際協調の精神を養う。

(5) 歴史の事実を正確に把握し,諸事象を歴史的に考察し公正に判断しようとする態度と能力を育てる。また,年表,地図その他の資料に親しみ,それらを活用する能力の基礎をつちかう。

 2 内 容 (1) 文明のおこりオリエントの古代文明,インド・中国の古代文明などの学習を通して,人類の発展に触れ,また,四大河文明が類似した様相を示しながらも,それぞれの地理的条件などによって独自の発展をみせていることに気づかせる。 ア オリエントの古代文明

 民族,風土などにも触れながら,エジプト文明,メソポタミア文明の特色を理解させる。

イ インド・中国の古代文明

 民族,風土などにも触れながら,インド・中国の古代文明の特色を理解させる。

(2) 古代日本の形成とアジア

 日本の国土と民族,縄文(じょうもん)文化,弥生(やよい)文化,大和(やまと)朝廷と古墳文化,帰化人の役割などの学習を通して,人々の生活が農耕を中心に発展し,やがてアジアの形勢とも関連をもちながら,しだいに古代の日本が形成されていったことを理解させる。

ア 日本の国土と民族  アジアにおける日本列島の地理的条件を明らかにするとともに,人々が,早くからこの国土の中で生活を営んでいたことを理解させる。 イ 縄文文化・弥生文化  それぞれの文化の特色を考えさせるとともに,農耕を中心とする社会生活の発展の意義を理解させる。  大和朝延と古墳文化 
     はじめ群小勢力の分立状態にあった社会が,しだいに大和朝廷によって統一されていったことを理解させとともに,古墳文化の特色を理解さ    当時の人々の生活の様子を考えさせる。
エ 帰化人の役割  中国や朝鮮の動きに触れながら,帰化人が儒教,仏教,技術などの大陸文化の伝来に果たした役割を考えさせるとともに,それによって日本の文化や社会生活が,急速に発展していったことを理解させる。
(3) 古代日本の進展とアジア

 アジアの形勢,聖徳太子と飛鳥(あすか)文化,大化の改新と律令(りつりょう)制,奈良(なら)の都と天平(てんぴょう)文化,遣唐使の派遣などの学習を通して,広く当時のアジアの形勢のあらましを理解させるとともに,当時の人々が隋・唐の文物制度を自主的に摂取して,国家を築いていったことを考えさせる。

ア アジアの形勢  隋・唐を中心に当時のアジアの様子のあらましを理解させる。その際,唐文化のもつ国際的な性格に着目させる。 イ 聖徳太子と飛鳥文化  当時のわが国の内外の事情に触れながら,聖徳太子の政治理想やその業績を理解させるとともに,飛鳥文化の特色を考えさせる。 ウ 大化の改新と律令制  律令制定の意義に触れながら,国家の基礎がしだいに築かれていったことを理解させる。 エ 奈良の都と天平文化  奈良の都の様子や,律令政治の地方への浸透を理解させるとともに,天平文化の特色を考えさせる。 オ 遣唐使の派遣  日本と中国との国際関係に触れながら,遣唐使派遺の意義を考えさせるとともに,留学者などの払った努力や苦心を理解させる。 (4) 古代日本の推移

 平安の都と仏教の改革,摂関政治,武士のおこり,国風文化などの学習を通して,律令政治の再建を経て摂関政治に及び,さらに院政へと推移していったあらましを理解させる。

ア 平安の都と仏教の改革  人心の一新や律令政治の再を目ざして京都に都が移されたことを理解させるとともに,仏教の改革や唐風文化にも触れる。 イ 摂関政治  藤原氏を中心とする摂関政治のありさまと,それがやがて院政へと推移していったあらましを,荘園(しょうえん)の発達にも触れて理解させる。 ウ 武士のおこり  律令政治の乱れに伴って武士がおこり,しだいに力を強めていったことを理解させるとともに,平治の乱以後の平氏の政治にも触れる。 エ 国風文化  公家(くげ)社会の爛熟(らんじゅく)や遣唐使の停止などもあって国風文化が栄えたことや,国風文化の特色を考えさせるとともに,それが後の日本の文化の基礎になったことに気づかせる。 (5) 武家政治の成立

 鎌倉(かまくら)幕府の政治,武士の生活,鎌倉時代の文化,蒙古(もうこ)襲来などの学習を通して,鎌倉幕府が成立し,しだいに武家政治が公家政治に代わって発展していったことを理解させる。

ア 鎌倉幕府の政治  平氏が減び鎌倉幕府が開かれたことを理解させるとともに,武家と公家の二元的な政治が行なわれながら,しだいに武家政治が強化されていったことに着目させる。 イ 武士の生活  武士が農村に土着して農業の経営にもあたり,質実剛健の生活を営んでいたことに関心をもたせる。 ウ 鎌倉時代の文化  平安末期の社会の様子や日本と宋(そう)との文化の交流にも触れながら,新仏教の興隆を理解させるとともに,鎌倉時代の文化の特色を考えさせる。 エ 蒙古襲来  大陸における蒙古民族の活動に触れながら,蒙古襲来のありさまを理解させるとともに,それがその後の幕府政治に及ぼした影響を考えさせる。 (6) 武家政治の推移

 建武の新政,室町幕府の政治,日明(にちみん)貿易,農村と都市,室町時代の文化,群雄の割拠などの学習を通して,建武の新政から室町幕府の滅亡までの時代の推移のあらましを理解させる。

ア 建武の新政  鎌倉幕府の統制の乱れや社会の変動を背景にして,建武の新政が行なわれたことを理解させる。 イ 室町幕府の政治  南北朝の争乱に触れるとともに,室町幕府の性格や幕府政治のありさまを理解させる。 ウ 日明貿易  勘合(かんごう)貿易や日本人の海外発展に触れて,日明貿易のありさまを理解させるとともに,それが日本に及ぼした影響を考えさせる。 エ 農村と都市  鎌倉時代からの農業の発達,農民の生活の向上と新しい村づくりに着目させるとともに,守護大名の強化や土一揆(いっき)などによって室町幕府が動揺し,やがて応仁(おうにん)の乱が起こったことを理解させる。また,港町・門前町などの都市の形成や,都市における町衆の自治的な活動にも着目させる。 オ 室町時代の文化  東山文化を中心に室町時代の文化の特色を理解させるとともに,都の文化が地方に普及していったことや,文化の庶民化に気づかせる。 カ 群雄の割拠  各地の戦国大名がしだいに実力をもつようになり,競って領国政治の集権化や産業の開発に努めたことなどを理解させるとともに,社会的にも新しい胎動のあったことに着目させる。 (7) ヨーロッパ世界の形成

 ヨーロッパの形成,イスラム世界との交渉,ヨーロッパ人の海外発展などの学習を通して,ヨーロッパ世界のなりたちや東西交渉のあらましに触れ,世界の各地がしだいに結びついていったことを理解させる。

ア ヨーロッパの形成  ギリシア文化・ローマ文化に触れ,それがキリスト教文化とともに,やがてヨーロッパ世界の基盤になったことを理解させる。 イ イスラム世界との交渉  ヨーロッパ世界とイスラム世界との交渉のあらましを,イスラム世界の風土や発展に触れながら理解させる。 ウ ヨーロッパ人の海外発展  ルネサンス,宗教改革に触れ,新航路が発見されたころからヨーロッパ人が海外に発展していったことを理解させる。なお,その後のオランダ・イギリスの発展にも気づかせる。 (8) 天下統一の歩み

 ヨーロッパ人の来航,織田(おだ)・豊臣(とよとみ)の統一事業,桃山文化などの学習を通して,日本人がはじめてヨーロッパ文明に触れた事情を考えさせるとともに,戦国の世が織田・豊臣の両氏によって統一されていったことを理解させる。

ア ヨーロッパ人の来航  鉄砲やキリスト教の伝来が,日本の政治,社会,文化などに大きな影響を及ぼしたことを理解させる。 イ 織田・豊臣の統一事業  織田信長,豊臣秀吉によって,集権的な武家政治が確立していったありさまを理解させるとともに,躍動的なこの時代のもつ歴史的意義を考えさせる。 ウ 桃山文化  南蛮(なんばん)文化などの受容にも触れながら,当時の時代的背景の中で武将や町衆によって,前代の文化を継承しつつ新しく創造された桃山文化の特色を考えさせる。 (9) 幕藩体制の確立

 江戸幕府の成立,日本人の海外発展と鎖国,武士の社会と生活などの学習を通して,江戸幕府の成立前後にかけて日本人の海外発展がめざましかったことや,その後鎖国の実施や国内体制の整備などもあって,しだいに封建制度が確立していったことを理解させる。

ア 江戸幕府の成立  徳川家康によって,江戸幕府が成立したことを考えさせるとともに,幕府の大名に対する統制のありさまを理解させる。 イ 日本人の海外発展と鎖国  江戸初期の対外関係の推移や日本人の海外発展の様子を理解させるとともに,禁教と鎖国の進行を総合的にとらえさせ,その結果にも触れる。 ウ 武士の社会と生活  身分制度の確立,儒教の奨励,農民への統制,交通の整備,城下町の発達などに触れて当時の社会や生活のありさまを理解させるとともに,幕府と藩による支配が確立していった様子に着目させる。 (10) 幕府政治の進展

 幕政の推移,農村の発展と広がる商圈,元禄(げんろく)文化,享保の改革などの学習を通して,幕府の文治政策への移行から享保の改革までの政治,社会・経済の推移のあらましを理解させる。

ア 幕政の推移  幕府の文治政策が積極的に進められ,諸藩の整備,儒教の影響などもあって平穏で安定した社会が続いたことを理解させる。 イ 農村の発展と広がる商圏  幕府や諸藩の勧農策,農業技術の発達,農民の努力などによって農村が発展していったことを理解させるとともに,貨幣経済の発展に伴う産業の発達,商圏の拡大などがみられたことに着目させる。なお,消費の増加に伴い,町人の勢力が増大していったことに触れる。 ウ 元禄文化  新興の町人の台頭などを背景に元禄文化の特色を考えさせるとともに,学問・教育その他の文化がしだいに武士や町人に普及していったことや,庶民文化が創造されていったことに気づかせる。 エ 享保の改革  経済上の変化に伴い,幕府の財政や武士の生活が苦しくなっていったことに気づかせるとともに,幕藩体制を安定させるために享保の改革が行なわれたことを理解させる。 (11) 幕藩体制の動揺

 農村の動揺と寛政の改革,新しい学問と化政文化,天保の改革と諸藩の改革などの学習を通して,寛政の改革から天保の改革までの政治,社会・経済の推移のあらましを考えさせるとともに,幕藩体制が動揺していった事情や,社会の新しい動きがみられたことを理解させる。

ア 農村の動揺と寛政の改革  商品経済の発達に伴う社会の変化や,あいつぐ天災・飢饉(ききん)などによって農村が動揺したことを考えさせるとともに,それに対応した寛政の改革のありさまを理解させる。 イ 新しい学問と化政文化  国学,洋学などの研究が盛んになったことを理解させ,それらが後世に及ぼした影響を考えさせる。また,化政文化の特色を考えさせるとともに,民間行事も盛んとなり,庶民の教育もいっそう普及していったことに着目させる。 ウ 天保の改革と諸藩の改革  財政の窮乏,百姓一揆の頻発(ひんぱつ)など内外の困難な状況の中で,天保の改革が行なわれたことを理解させるとともに,そのころから農村の工業の発達がみられ,諸藩の中には財政の改革に成功したところもあって,そこに新しい動きがみられたことに着目させる。 (12) ヨーロッパ世界の発展

 近代民主政治の成立,産業革命と民主政治の発達,近代ヨーロッパの科学と文化などの学習を通して,わが国の鎖国のころから明治の初めのころまでにおける,ヨーロッパ世界の発展のあらましを理解させる。

ア 近代民主政治の成立  イギリスの革命,アメリカの独立,フランス革命に触れながら,それぞれの国情に応じて,近代民主政治の基礎が築き上げられていったことを理解させる。 イ 産業革命と民主政治の発達  イギリスの産業革命を中心に,科学の発達と諸発明,資本主義社会の成立のあらましを理解させるとともに,産業革命が社会生活に及ぼした影響や,産業革命の進行が民主政治の発達と関連をもっていたことに気づかせる。 ウ 近代ヨーロッパの科学と文化  近代のヨーロッパでは,科学や文化の著しい発達がみられたことを理解させる。 (13) 欧米諸国のアジア進出

 アジアの王朝の盛衰,アジアの植民地化と欧米諸国の日本への接近などの学習を通して,アジアのおもな王朝の盛衰のあらましに触れながら,欧米諸国によるアジアの植民地化と日本への接近のありさまを理解させる。

ア アジアの王朝の盛衰  オスマン=トルコ,ムガールおよび清(しん)の盛衰に簡単に触れながら,それらが欧米諸国の進出によって,変容を余儀なくされていったことに気づかせる。 イ アジアの植民地化と欧釆諸国の日本への接近  産業革命によって資本主義経済の発展したイギリスが,インドを植民地化し,中国に浸透していったありさまを理解させる。また,ロシアとアメリカがアジアヘ進出してきたことに触れ,両国がイギリス,フランスなどとともに,日本の開国を促したことに着目させる。 (14) 明治維新

 開国と幕府の減亡,諸制度の改革,富国強兵・殖産興業,文明開化などの学習を通して,明治維新が,内外の複雑な情勢の中で,政府や国民の努力によって比較的短期に実現したことを理解させるとともに,それが近代日本の成立と発展に果たした役割や,維新当時の人々が,わが国の独立の確保と発展のために払った苦心を考えさせる。

ア 開国と幕府の滅亡  幕政の批判,黒船の来航,尊王攘夷(じょうい)運動など,内外の複雑な情勢の中でわが国が開国に踏みきり,やがて江戸幕府が滅んで王政復古が行なわれたことを理解させる。 イ 諸制度の改革  廃藩置県,身分制の廃止,地租改正,領土の画定(かくてい)など,次々と諸改革が行なわれたことを理解させるとともに,それらが近代日本の発展に果たした役割や意義を考えさせる。 ウ 富国強兵・殖産興業  日本の工業が外国の技術を導入しながら官営によって育成され,政府の富国強兵策などによって近代工業がしだいに発達していったことを理解させる。なお,近代的な交通・通信などの整備や北海道の開拓にも触れる。 エ 文明開化  欧米の思想・文化,技術,諸制度などを積極的にとり入れて,封建的な旧弊を改め,先進国に追いつこうと努力したことを理解させるとともに,学制頒布(はんぷ)や当時の人々の風俗,生活のありさまに触れる。 (15) 立憲政治の成立

 藩閥政治と自由民権運動,大日本帝国憲法の制定,議会政治の発展などの学習を通して,わが国がしだいに近代的な政治形態を整えていったことを理解させるとともに,議会政治の実現と発展には,多くの人々の努力と苦心が重ねられたことを考えさせる。

ア 藩閥政治と自由民権運動  藩閥政治に対抗し,民撰(みんせん)議院設立を目ざした自由民権運動が起こり,それがしだいに広がっていったことを理解させるとともに,西南の役の後,言論による運動が展開されたことに着目させる。 イ 大日本帝国憲法の制定  大日木帝国憲法が制定された事情とこの憲法の特色を理解させるとともに,アジアで最初につくられた憲法であったことに気づかせる。 ウ 議会政治の発展  はじめ藩閥政府と政党との激しい対立が続けられながら,議会政治がしだいに発展していったことを理解させるとともに,政党の発達のありさまに触れる。 (16) 近代日本の発展

 国際情勢と対外政策,近代産業の発展と社会の変動,近代文化の形成,条約改正などの学習を通して,明治の初期以来,わが国が複雑な国際関係の中で,政治,社会・経済,文化などの発展をもとにして国家組織を確立し,しだいに国際的地位を高め近代国家として発展していったことを理解させる。また,急速に列強に追いつこうとしたことから,そこに多くの問題が生じてきたことに気づかせる。

ア 国際情勢と対外政策  大陸や日本をめぐる国際環境を明らかにしながら,各国間の利害関係を理解させるとともに,日清戦争,日露戦争が起こった事情を,明治政府の対外政策や国民感情などとも関連させて考えさせる。なお,その後の明治の末期から大正の初期にかけての朝鮮や中国の動きに触れる。 イ 近代産業の発展と社会の変動  日清・日露戦争のころから近代産業が飛躍的に発展し,資本主義経済の基礎が固まっていったことを理解させるとともに,農村や都市において社会問題が起こってきたことに着目させる。 ウ 近代文化の形戊  これまでとは違った新しい学問と教育,科学と文化などが形成されていったことを理解させるとともに,伝統的な文化を再認識しようとする動きのあったことに気づかせる。 エ 条約改正  明治の初期以来,産業・経済の発展,生活の向上,文化の発展などをもとに,長い期間にわたって,不平等な条約を改正するための外交的努力が払われたことを理解させるとともに,当時の世論と国民の努力や苦心を考えさせる。 (17) 両大戦間の世界と日本

 第一次世界大戦と戦後の国際協調,政党政治の成立と流動する社会,科学の発達と文化の大衆化,欧米諸国の動向,資主義経済の変動と日本,アジアの情勢と日華事変,第二次世界大戦と日本などの学習を通して,第一次世界大戦から第二次世界大戦の終結までの国際情勢の変転と,それに対処するわが国の動きや国内の政治,社会・経済,文化,生活の推移のあらましを理解させる。

ア 第一次世界大戦と戦後の国際協調  第一次世界大戦のありさまや日本の参戦に触れるとともに,国際連盟の成立,軍縮会議の開催などを中心に,第一次世界大戦後における各国の世界平和への熱意と,国際協調への動きを理解させる。その際,国際関係の複雑さやきびしさにも関心をもたせる。 イ 政党政治の成立と流動する社会  政党内閣の誕生,国民大衆の政治的自覚,民本思想の普及などを,時代的背景や世界の動向と関連させて考えさせる。その際,都市や農村の社会問題に触れて,流動する社会のありさまに着目させる。 ウ 科学の発達と文化の大衆化  大正時代から昭和の初期にかけての科学の著しい発達と,国民文化の成長,文化の大衆化を理解させるとともに,それが明治時代の開化・啓蒙(けいもう)的なものと違っていることに気づかせる。 エ 欧米諸国の動向  ロシア革命とその後のソビエト連邦,イタリア,ドイツ,アメリカ合衆国およびイギリス連邦の動向に触れ,欧米諸国における政治・経済体制の著しい変化に着目させるとともに,それらが,その後の国際関係に大きな影響を及ぼしたことに気づかせる。 オ 資本主義経済の変動と日本  第一次世界大戦中の好景気の後,関東大震災があり,昭和を迎えると,世界恐慌などがあいついで起こって経済が混乱し,社会に大きな問題が発生してきたことを理解させるとともに,政党の堕落,軍部の政治への介入がみられ,大陸進出が行なわれたことを考えさせる。 カ アジアの情勢と日華事変  中国をめぐる国際情勢や日華事変のあらましを理解させるとともに,この事変を中心とする日本と中国との関係を考えさせる。 キ 第二次世界大戦と日本 第二次世界大戦勃発(ぼっぱつ)前後の世界情勢のあらましを知らせるとともに,戦時中の国民の生活に触れながら,敗戦に至るまでの事情を理解させる。 (18) 新しい日本と世界

 占領下の改革日本国憲法の制定,アジア・アフリカ諸民族の独立,いわゆる冷たい戦争,国民生活と経済復興,日本の独立と国際連合への加入などを中心に,敗戦後の混乱期にあって,国民が苦難をのりこえ新しい日本の建設に努力したことや,科学技術の急速な進歩,国際平和確立への努力,世界の中の日本の進展のあらましを大観させる。

また,わが国の歴史をふりかえりながら,現在および未来に生きる日本人としての意欲と自覚を高めるとともに,特に原子力時代といわれる今日では,戦争を防止し,民主的で平和な国際社会を実現することが,わが国民にとっても,また人類全体にとっても,重要な課題になっていることを考えさせる。

 3 内容の取り扱い (1) 内容(2)のイの縄文文化・弥生文化の取り扱いに当たっては,考古学などの諸科学の成果を活用する。また,内容の(2)および(3)の古代日本に関する事項の取り扱いに当たっては,神話や伝承も取り上げそれらが,記紀を中心に集大成され記録されたことを説明しながら,当時の人々の信仰やものの見方などに触れさせることが必要である。

(2) 内容の(7),(12)および(13)における世界の歴史に関する事項の取り扱いに当たっては,その学習が直接または間接に,わが国の歴史の学習に役だつように,範囲,程度などをじゅうぶんに考慮することが望ましい。

(3) 内容の(9)から(11)および(14)から(18)までにおける江戸時代から昭和にかけての諸事項については,各時代の諸事象を広く国際情勢にも触れながら取り扱い,わが国の歴史に対する正しい理解を得させるように指導する必要がある。

(4) 内容の(18)の第二次世界大戦後の歴史に関する事項の取り扱いに当たっては,特に公民的分野における指導との関連を考慮し,歴史的分野においては,世界の動きを背景に,日本の歴史の大きな流れが大観できるように簡潔に取り扱うとともに,日本の歴史における重要な事項の前後関係を明らかにする必要がる。

(5) 内容の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。

ア 目標を達成するのに必要な,基本的で発展的な指導事項を重点的に選び,枝葉末節にわたる細かな事がらや程度の高い事項は避けるようにすること。

イ 時代区分については,指導上の観点などによっていろいろのものが考えられるが,適宜大きな区分にまとめるなどして,大きな時代の流れやその時代の特色を見失わないようにすること。

ウ 郷土の史跡その他の遺跡や遺物を見学させて,わがの歴史の発展を具体的に知らせ,郷土とわが国の歴史の発展との関連を考えさせるとともに,文化遺産を愛護し尊重する態度を育てるようにすること。

エ 地理的事象にも関心をもたせ,可能な範囲で歴史的事象がみられた地域の風土もしくは環境に触れて,空間的なものへの関心を高めること。また,地域によって制約はあるが,歴史像を浮かび上がらせるため,たとえば,都市や集落,道路,地割,城跡などの地域の歴史的景観を把握させること。なおその際,現在までの変化に気づかせるようにすること。

オ 人物の指導については,郷土の人物を含めて二,三の人物を重点的に取り上げ,適切な時間を設けて指導すること。その際,取り上げた人物の持っていた意図や願い,判断と行為および努力や苦心を,時代的背景の中で理解させ,人物と時代的背景との関連を考えさせるようにすること。なお,史実と俗説との混同を避けるようにすること。

(6) 指導の全般にわたって,次の事項に留意する必要がある。 ア 生徒の歴史に対する興味や関心を高め,歴史意識,思考力などのいっそうの伸長を図ること。

イ 物語や,身近な資料,年表,地図などを活用して,歴史的事象の具体化に努めること。

ウ 歴史に関する読み物や伝記を読む習慣を身につけさせること。また,必要に応じて年表,報告文などを作成させたりするなどして,歴史をみずから考えてみようとする態度や,考えたことをまとめる能力の基礎をつちかうこと。

 

[公民的分野]
 1 目 標 (1) 個人の尊厳と人権の意義,特に自由・権利と責任・義務の関係を正しく認識させて,民主主に関する理解を深めるとともに,国民主権をになう公民として必要な基礎的教養をつちかう。

(2) 家族,地域社会,国家その他の社会集団は,相互に密接に関連していること,また,個人の幸福は,社会や国家の発展と深い関係があることを認識させて,個人の役割についての理解を深め,社会や国家の発展に尽くそうとする態度を育てる。

(3) 科学技術の高度の発達,産業・経済の急激な発展に伴って,社会生活は大きく進歩したが,同時に多くの問題を生じていることに着目させ,広い視野に立ってそれらに対処し進んで改善していこうとする態度や能力の基礎をつちかう。

(4) 各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことによって平和を維持・増進できることを認識させ,自国を愛し,その平和と繁栄を図り文化を高めることがたいせつなことを自覚させるとともに,国際理解を深め,国際協調の精神を養い,世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする態度を養う。

(5) 統計その他の資料に親しみ,社会的事象を確実な資料に基づいて,さまざまな角度から分析・総合し,事実を正確にとらえることによって,公正な判断を得ようとする自主的な態度や能力の基礎をつちかう。

 2 内 容 (1) 家族生活

家族集団とその機能,家族制度,家族生活の課題の学習を通して,家族の社会集団としての特色を明らかにするとともに,家族制度について理解させ,健全な家族生活が社会の発展をささえるものであることを認識させる。また,現代のわが国の家族生活をめぐる諸問題に着目させ,健康で文化的な家族生活を営むためには,家族員相互の理解と協力がたいせつであることを理解させるとともに,経済や政治のはたらきが深い関係のあることに気づかせる。

ア 家族集団とその機能  人間は本来社会的存在であることを認識させるとともに,家族の制度や生活様式は,時代と場所によって異なるにしても,家族集団は,血縁で結ばれた最も普遍的で基礎的な社会集団であることを理解させ,いこいの場としての家庭,人間形成の場としての家庭,経済生活の単位としての家庭などの観点から,家族集団の機能についての理解を深める。 イ 家族制度  改正前の民法のもとにおける「家(いえ)」の制度,日本国憲法の制定と民法の改正,親族・婚姻・親子・扶養・相続など現行民法の家族についての規定のあらまし,家族の構成と形態などの学習を通して,個人の尊厳と両性の本質的平等を原理とする現在の家族制度について理解させる。その際,戸籍や出生・婚姻その他の届け出の意義にも触れる。 ウ 家族生活の課題  健全な家族生活が社会の発展の基礎であることや現代社会における家族集団のもつ意義の重要性について理解させ,家族生活の向上には,家族員の責任の自覚と協力に基づく望ましい人間関係の確立が必要であることを考えさせるとともに,家庭生活に関する技術の向上による生活の能率化,消費生活の合理化,健全な家計の維持,余の善用などがたいせつであることを理解させる。また,消費者保護の推進,住宅・生活環境施設の整備,家庭に対する社会的保護など,経済や政治のはたらきが家族生活の向上にとって重要な意味をもっていることに気づかせる。 (2) 社会生活

職業と生活,地域社会の生活,地方自治と住民,社会生活と文化の学習を通して,社会についての基礎的な理解を深めるとともに,社会生活における個人の役割とそのあり方について考えさせる。特に,科学技術の高度の発達,産業・経済の急激な発展に伴う社会生活の著しい変化と新しい問題の発生とに着目させ,それらに対処して社会生活を向上発展させようとする意欲と態度を育てる。

ア 職業と生活  職業は,家計を維持し,個人と社会を結ぶ役割を果たすだけでなく,個性・能力を生かとともに,社会的分業の一部を分担することによって社会に貢献し社会生活をささえるものであることについての学習を通して,職業の社会的意義を理解させる。また,勤労が国民の権利であるとともに義務であることや,職業選択の自由が保障されていることの意義についてもその理解を深め,正しい勤労観や職業観の基礎を育てる。その際,職業教育や職業訓練に関する機関および公共職業安定所のあらましにも触れる。

 また,職業分化の傾向の増大,織化や機械化の進んだ職場の特色,労働組合の意義および労働基準法の精神について理解させる。なお,余暇の活用による個人の生活の充実などがたいせつであることを考えさせる。

イ 地域社会の生活  都市と村落における社会生活の特色と相互の結びつき,都市の過密化と住宅・交通・犯罪・公害などの都市生活の問題点,および急速な都市化に伴う村落社会の変容とその問題点などの学習を通して,地域社会の基本的な機能や現代の社会生活の特色を理解させ,地域社会の将来について考えさせる。

 また,地域開発のあり方やその地域の人々の生活への影響などに着目させ,地域社会の問題も,より広い視野から解決することが必要であることを理解させる。

ウ 地方自治と住民  民主政治の基盤としての地方自治の意義,日本国憲法と地方自治,地方公共団体のしくみとはたらき,公共施設と住民の生活,地方税と地方財政,住民の権利と義務などの学習を通して,地方自治についての理解を深める。また,地方自治の一般的な問題点とともに,自分の住んでいる地方公共団体の現状にも触れ,地方自治の発展に寄与しようとする住民としての自治意識の基礎を育てる。 エ 社会生活と文化  学問,芸術,宗教などの社会生活における意義や機能を理解させ,文化が社会生活を向上させる源泉であることを認識させる。

 また,現代文化には,商品化や大衆化などの傾向をはじめとして,多くの特色と問題点があることに着目させるとともに,マスコミュニケーションの発達とその機能を理解させ自主的な判断をもってこれを受け入れることが必要であることを認識させる。

さらに,文化の継承と創造の観点がら教育の機能を理解させ,わが国文化のよい伝統を継承しながら,同時に,普遍的にしてしかも個性豊かな文化を創造しようとする意欲と態度を養う。

(3) 経済生活

家計と企業,価格と金融のはたらき,財政の役割,日本経済の状と課題,日本経済と世界経済の学習を通して,資本主義経済の特色を理解させるとともに,国民経済の調和のとれた発展とその成果が国民の福祉の増大に結びつくことによって経済生活が豊かになることを理解させる。また,日本経済と世界経済の結びつきを認識させ,日本経済を発展させ経済生活を向上させようとする意欲と態度を養い,公民として必要な経済的教養の基礎をつちかう。

ア 家計と企業  家計の収支,貯蓄や保険,生産のしくみ,家計と企業の結びつきなどの学習を通して,国民経済における家計や企業の位置と役割を理解させるとともに,資本主義経済の生産の特色を認識させる。その際,生産者と消費者が,市場によって結びついていることに着目させ,流通のしくみとはたらきについても考えさせる。 イ 価格と金融のはたらき  価格の決定とそのはたらき,貨幣の役割,物価の動きなどについて学習させ,価格や物価をめぐる問題についての理解を深める。また,金融のしくみとはたらき,日本銀行の役割などの学習を通して,金融機関が貯蓄と投資を結びつけていることや,日本銀行がさまざまな政策によって,物価や景気を調整する重要な役割を果たしていることを理解させる。 ウ 財政の役割  予算,租税,公債などの学習を通して,財政本来の役割を明らかにするとともに,経済の発達に伴う社会政策的役割や国民経済の調整の役割などについても理解させ,財政のあり方が,国民経済にとって重要なはたらきをしていることを認識させる。また,上記のア,イの内容とも関連させて,今日の資本主義経済の特色を理解させる。その際,財政における租税の役割を認識させ,納税の義務と納税者の権利についての理解を深める。 エ 日本経済の現状と課題  国民所得の動き,技術革新による生産の増大,景気の変動,消費構造や産業構造の変化などの学習を通して,第二次世界大戦後の日本経済の復興とその後の急速な成長,それに伴う経済構造や生活水準の変化のあらましを理解させる。

また,物価の安定,労働力の活用,流通の近代化,社会資本の整備,国土の高度の利用などに関する課題や人口問題,農業問題,中小企業問題などがあることを理解させる。

 さらに,国民生活の向上のためには,生産の集中が進む中での消費者保護,住宅・生活環境施設の整備,公害の防除,雇用と労働条件の改善,社会保障制度の充実などを図り,経済の発展と国民の福祉の増大とが結びつくことが必要であることを理解させる。その際,個人や企業などの社会的責任についても考えさせる。

オ 日本経済と世界経済  日本の貿易,国際収支の動きなどの学習を通して,日本経済の発展には,世界経済の動きに応じ,国際収支の安定を図りながら,貿易の拡大を目ざすことがたいせつであることを理解させる。また,先進工業国との経済競争はきびしいものであることや発展途上の国々の経済発展に協することもたいせつであることなどを認識させるとともに,国際的な経済協力のあらましに触れる。その際,世界には資本主義経済のほかに,社会主義経済をたてまえとする諸国があることやその特色についても理解させる。
(4) 国民生活と政治

日本国憲法の基本的原則,人権の尊重と法の支配,議会制と権力分立,選挙と政党,国際政治と平和の学習を通して,すべての人が,自由で豊かな生活をすることができるような社会や国家を建設し,さらに進んで世界の平和と人類の福祉に献しようとする意欲と態度を養い,民主権をになうにふさわしい公民として必要な政治的教養の基礎をつちかう。

ア 日本国憲法の基本的原則  日本国憲法が西欧近代民主政治の影響を受けていること,また大日本帝国憲法を全面的に改正したものであることなどに触れながら,基本的人権の尊重,国民主権および平和主義の基本的原則を理解させる。また,日本国および日本国民統合の象徴としての天皇の地位と天皇の国事に関する行為について理解させる。なお,日本国憲法が国の最高法規であることの認識を深める。 イ 人権の尊重と法の支配  すべての人に自由で豊かな生活を保障するためには,人権が尊重されなければならないことを認識させ,人権は法の支配によって保護されることを明らかにするとともに,国民が法を守ることがたいせつであることを理解させる。また,人権の内容については,生命・自由についての権利,政治的権利,社会的経済的権利などがあることを理解させる。なお,国民は不断の努力によって,自由および権利を保持しなければならないこと,また 国民はこれを濫用してはならないのであって,常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負っていることを理解させるとともに,人権尊重の実をあげるためには,人間愛と寛容の精神が必要であることを考えさせ,人権に関する正しい意識を育てる。その際,世界人権宣言にも触れ,人権についての理解を深める。 ウ 議会制と権力分立  国会,内閣,裁判所,国の政治と地方自治との関係などの学習を通して,議会制,権力分立制,議院内閣制などの意義と精神について理解させる。その際,多数決の原理とその運用のあり方についての理解を深める。また,政治のはたらきが,国民の福祉の増進を目ざしてしだいに拡大する傾向がみられることに着目させ,政治と国民生活との結びつきがいっそう深まってきたことを明らかにする。 エ 選挙と政党  選挙制度のあらまし,政党と国民との関係,政治と世論との関係などの学習を通して,議会制による民主政治によって,国民生活の向上を目ざすには,明るく正しい選挙を通じて国民の総意を政治に反映させることが必要であること,また,それは健全な政党の発達にもかかっていることを理解させる。

 なお,民主政治が独裁政治に比べてすぐれていることを理解させるとともに,その陥りやすい欠陥にも気づかせ,主権が国民にあることについての自覚を高め,民主政治を守り発展させようとする意欲と態度を養う。

オ 国際政治と平和  国家の主権,領土(領海,領空を含む。),国際法の意義と役割,国際連合,ユネスコをはじめとする国際連合のおもな専門機関などの学習を通して,国家間の相互の主権尊重と協力,各国民の相互理解と協が平和の維持と人類の福祉の増進にとってたいせつなことを理解させ,国際理解を深め国際協調の精神を育てる。また,第二次世界大戦後の国際政治の推移と現状のあらましや,わが国をめぐる国際関係について認識させ,日本国憲法の平和主義についての理解を深めるとともに,平和と安全の問題について考えさせる。その際,社会主義国家の政治の特色やアジア・アフリカの諸国をめぐる諸問題についても理解させる。なお,核兵器の異常な開発に伴って,ひとたび戦争が起これば,それは人類を破滅におとしいれるおそれがあることを考えさせ,戦争を防止し,平和を確立するための熱意と協力の態度を養う。

 

 3 内容の取り扱い (1) 内容の(1),(2),(3)および(4)は,この順序に取り扱うことが望ましい。

(2) 内容の(1)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。

ア この内容は,公民的分野の導入の役割をも果たすものであることを考慮して,他の内容に結びつくさまざまな問題を適宜提起し,身近な生活に見られる事象も,社会全体のしくみや機能を理解してはじめて的確に把握できることに気づかせるようにすること。

イ 統計その他の資料を活用するなどして,目標の(5)を達成するための基礎をつちかうようにくふうすること。

ウ 内容の(1)のウについては,家族集団における慣習・道徳・法の役割に関しても,これを取り上げ,集団生活における社会規範と秩序の意義について考えさせる。また健全な家族生活の維持のために果たす家庭裁判所の役割にも触れること。

エ 技術・家庭,道徳および特別活動の指導との関連を考慮すること。

(3) 内容の(2)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア 生徒の身近にある事象をとらえるとともに,社会の一般的傾向については,諸資料を利用して具体的に理解させること。その際,間題によっては,適宜外国の事例を引用して視野を拡大させるなどのくふうをすること。

イ 内容の(2)のアについては,特別活動の内容のBの学級指導の1の(4)との関連を考慮すること。

ウ 内容の(4)のイについては,地理的分野の学習の成果をじゅうぶんに活用すること。

エ 内容の(2)のウについては,(4)のウの「国の政治と地方自治との関係」との関連を考慮すること。

オ 内容の(2)のエの文化については,できるだけ具体例をあげて指導し,抽象的な文化論に陥らないように配慮すること。

(4) 内容の(3)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア 地理的分野の学習の成果,および内容の(1)と(2)の既習事項との関連をじゅうぶんに考慮すること。

イ 経済用語の単なる解説に終わったり,細かな事がらや程度の高い事項の学習に深入りしたりすることを避け,産業・経済に関する各種の統計その他の資料を有効に活用して,具体的に理解させること。

(5) 内容の(4)の取り扱いに当たっては,次の事項に留意する必要がある。 ア この内容は,公民的分野の学習の総括であることを考慮し,既習事項の成果をじゅうぶんに活用するようにくふうすること。

イ 単なる政治制度についての学習に終わることのないように配慮すること。

ウ 内容の(4)のウについては,この内容と関連する財政に関する事項を取り扱う必要がある。その際,内容の(2)のウの地方財政や(3)のウとの関連を考慮すること。

エ 内容の(4)のエの「選挙制度のあらまし」については,選挙人名簿についての関心を高めさせるようにすること。

(6) 内容の取り扱いに当たっては,地理的分野,歴史的分野の学習の成果を活用するとともに,これらの分野で育成された態度や諸能力が,さらに高まり発展するように配慮するとともに,特定の内容だけにかたよることなく,内容の全般にわたって指導することが必要である。

(7) 内容の指導に当たっては,よりよい社会の実現をめざす科学的な探究心に裏づけられた建設的な態度を育てるように配慮することが必要である。その際,内容と関連のある現代の諸問題の取り扱いにおいては,単に現代社会の欠陥の指摘に終わることなく,これまでの努力と進歩の跡も認め,できるだけ客観的に取り扱わなければならない。また,時事的なできごとを取り入れることは,内容の理解をいっそう具体的なものにするとともに,現実の社会に関心をもたせ,特に公民として必要な政治的教養の基礎をつちかううえでも効果があるが,その際には,教育基本法第8条の規定に基づき,適切に行なうよう特に慎重に配慮して,生徒の公正な判断力の育成を目ざした指導を考慮することが必要である。

(8) 指導の全般にわたって,各種の統計,年表,年鑑,新聞その他の資料について,その所在に気づかせ親近感をもたせるようにすること,それらに基づいて主体的に考えていく習慣の基礎を養うこと,諸資料の見方,扱い方に慣れさせ有効に活用する能力と,それらを批判的に見る能力の基礎をつちかうことなどを配慮する必要がある。また,必要に応じて見学,調査,視聴覚教材の利用などによって,具体的に理解させることが必要である。

 

第3 指導計画の作成と各分野にわたる内容の取り扱い 1 各分野に充てる授業時数は,それぞれ地理的分野140単位時間,歴史的分野175単位時間,公民的分野140単位時間を標準とする。

2 指導計画の作成に当たっては,地理的分野および歴史的分野の基礎の上に公民的分野の学習を展開するこの教科の基本的な構造にじゅうぶん留意しなげればならない。

3 各分野の学年配当については,第1,第2学年を通じて地理的分野と歴史的分野を並行して学習させ,第3学年において歴史的分野および公民的分野を学習させることを原則とするが,この場合,歴史的分野の学習を第2学年で終了すること,または,第1学年地理的分野,第2学年歴史的分野,第3学年公民的分野の学習をさせることなど,学校の実態に即して適切に定めることができる。

なお,第2学年までに歴史的分野の学習を終了する場合の第2学年の授業時数については,選択教科等に充てる授業時数の運用,1単位時間の定め方などによって,適切な時間を確保するように配慮すること。

4 各分野の指導に当たっては,あらかじめ,生徒の生活経験や生活環境,生徒の地理,歴史,経済,社会などに対する関心や意識の実態などを把握しておくこと,各分野の学習に利用できる校内および地域社会の施設設備や資料の状況を調べておくこと,小学校の社会科ならびに中学校の他の教科,道徳,特別活動との関連について検討しておくことなどが必要である。