第1 目 標
造形活動を通して,美的情操を養うとともに,創造的表現の能力をのばし,技術を尊重し,造形能力を生活に生かす態度を育てる。
このため,
2 絵であらわす,彫塑であらわす,デザインをする,工作をする,鑑賞することにより,造形的に見る力や構想する力をのばす。
3 造形活動に必要な初歩的な技法を理解させるとともに,造形的に表規する技能を育てる。
第2 各学年の目標および内容
1 目 標
(2) 飾る,知らせる,使うなどのために,かいたりつくったりさせて,目的に合わせて造形することに興味をもたせる。
(3) 色や形などに対する関心をもたせる。
(4) 簡易な材料や用具の扱いに慣れさせる。
(5) かいたりつくったりしたものを見ることに関心をもたせる。
A 絵 画
イ 自分のかきたいことを,思いのままにかくこと。
ウ 身辺の興味あるものをかくこと。
イ 自分なりにかき方をくふうすること。
(4) 簡単な版画であらわすことに慣れさせる。
イ 紙その他扱いやすい材料で簡単な版をつくり,版画にすること。
イ つくるものの形や大きさを考えてつくること。
イ 紙や小枝など,身近な材料を使ってつくること。
イ 自他の区別がはっきりするようなしるしなどをかいたりつくったりすること。
イ 好きな形を選んだり,箱その他身近な材料で自由な組み立てをつくったりすること。
ウ 好きな色で配色したり,色名をおぼえたりすること。
イ 自分の考えでつくることを主とし,必要に応じて,紙の切り方や折り方などを理解してつくること。
イ どのようにしたらよく動くかを考えてつくること。
ウ 画用紙を切ったり,折ったり,曲げたりして,簡単な家などをつくること。
イ はさみやのりなどの使い方に慣れること。
イ 友だちの作品を見て話し合うこと。
(3) 親しみやすい絵画や彫刻などの作品に関心をもたせる。
(2) 工作においては,児童のすなおな着想を重んじ,むずかしい機構や技法を押しつけることなく,簡易な材料や用具を経験させて表現の意欲を高めることが必要である。
(3) 鑑賞においては,児童の目にふれやすい教室のなかや廊下などに適切な作品資料を掲示することなどを配慮することが必要である。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 飾る,知らせる,使うなどのために,かいたりつくったりさせて,目的に合わせて造形することへの関心を高める。
(3) 色や形などの違いによって,感じが違うことに気づかせ,色や形などに対する関心を高める。
(4) 身近な材料や用具を使って,かいたりつくったりすることができるようにする。
(5) かいたりつくったりしたものを見ることに関心をもたせるとともに,そのよさに気づかせる。
A 絵 画
イ あらわしたいことをしっかりかくこと。
ウ 身辺の興味あるものをかくこと。
イ あらわし方をくふうして思ったとおりにかくこと。
(4) 簡単な版画であらわすことができるようにする。
イ 紙その他簡易な材料でくふうして版をつくり版画にすること。
イ つくるものの感じがでるように,形や大きさを考えてつくること。
イ 紙その他身近な材料の使い方をくふうしてつくること。
イ 行事に関連した知らせることなどを,かいたりつくったりすること。
イ 形の違いとその感じに気づいて好きな形を選んだり,箱その他身近な材料で自由な組み立てをつくったりすること。
ウ 色あいの違いを見わけ,好きな配色を選んだりつくったりすること。
イ 自分の考えでつくることを主とし,必要に応じて,紙の曲げ方,立て方,接合などの方法を理解してつくること。
イ どのような材料やつくり方でよく動くかを考えてつくること。
ウ 紙を切ったり,曲げたり,はりつけるなどして,簡単な家などをつくること。
イ はさみ,ものさし,のりなどを使ってつくること。
イ 友だちの作品を見て話し合うこと。
(3) 身近な絵画や彫刻などの作品に親しませる。
(2) 彫塑においては,粘土をじゅうぶんに与えて大きくつくらせ,へらなどを用いず手づくりを通して材料の量の感じをとらえさせることが必要である。
(3) 工作においては,児童自身の考えやくふうをだいじにするとともに,内容のDの(3)のイに示す「ものさし」の使用など,材料や用具の経験が進むとともに,必要な技能を少しずつ身につけさせることが必要である。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 飾る,知らせる,使うなどの目的に合わせてくふうし,見通しをつけてつくることができるようにする。
(3) 色や形などの特色に気づかせ,対称やくり返しなどの感じがわかって,かいたりつくったりすることができるようにする。
(4) 材料や用具の特色や扱い方を理解して,かいたりつくったりすることができるようにする。
(5) 児童の作品や身のまわりの造形品を見たり使ったりさせて,そのよさを感じとらせ,作品に親しむ心を養う。
A 絵 画
イ 主題がわかるように,あらわし方をくふうしてかくこと。
イ かきたいものやまわりのものをよく見てかくこと。
イ かき方と順序を考えてあらわすこと。
(5) 簡単な版画であらわす力をのばす。
イ 紙その他の材料で版をつくり,版画にすること。
イ 大まかな形から部分の形につくり進むなど,自分なりの計画でつくること。
イ 線材,面材などの材料の使い方をくふうしてつくること。
イ 装飾に適した配色,形の組み合わせの効果に関心をもって飾ること。
イ 目だつ色を選び,形や材料を考えてつくること。
イ 対称やくり返しなどの感じがわかり,それを生かして表現すること。
ウ 色あいの違い,色の寒暖,中性色など,色の性質に気づいて表現すること。
イ つくる順序を考え,必要に応じて,簡単な絵や図をかいてつくること。
イ 動くしくみをくふうしてつくること。
ウ 画用紙やあき箱などで,家や橋などをつくること。
イ 定規,コンパス,切り出し小刀などを使ってつくること。
イ あらわし方の違いを比較すること。
(3) 絵画や彫刻などの作品に親しませ,必要に応じて,話し合いができるようにする。
(2) 内容のBの(1)の「大づかみなあらわし方」については,感じたことや考えたことを主にして,直接の手ざわりを通した量やかたまりの感じを生かして大きくつくらせ,細部にとだわらずに表現させることが必要である。
(3) 内容のCの(1)については,身のまわりの飾りなどのほか,たとえば,自分でつくったものの飾りや,木の葉や魚などを主題にした自由な飾りなどが考えられる。
Cの(2)の知らせるデザインにおいては,絵や文字を入れてデザインさせるが,ポスターなどの既成概念にとらわれずに表現させるものとする。Cの(3)のイの対称やくり返しなどは,関心をもって表現させる程度で,理論的な扱いにならないようにすることが必要である。
(4) 内容のDの(1)のイについては,Dの(3)のイに示した定規やコンパスの使用とあいまって,開いた箱の形をもとに簡単な図がかける程度とするものとする。
〔第4学年〕
1 目 標
(2) 飾る,知らせる,使うなどの目的に合わせて,色,形,材質,組み合わせなどを考えてつくることができるようにする。
(3) 色や形などの特色を生かし,リズムのある美しさなどの感じがわかって,かいたりつくったりすることができるようにする。
(4) 材料や用具の特色や技法を理解して,かいたりつくったりすることができるようにする。
(5) 児童の作品や身のまわりの造形品を見たり使ったりさせて,その美しさやよさを味わい,作品を好んで見る態度を育てる。
A 絵 画
イ あらわしたいことに基づいて,おおよその見通しを立ててかくこと。
イ かくものの感じがでるように,まわりのものとの関係をよく見てかくこと。
イ 見通しを立て,かき方と順序をくふうしてかくこと。
(5) 彫ることや刷ることを理解して,版画であらわす力をのばす。
イ 材料による彫りの違いや,刷りの効果に気づいて,版画であらわすこと。
ウ 彫刻刀その他の用具の使い方を理解すること。
イ 全体を見ながら計画を立ててつくること。
(3) 粘土のほか,身近な材料を使ってつくる力をのばす。
イ 線材や面材など,材料の特色を生かしてつくること。
イ 配色の効果や計画的な形の組み合わせを考えて飾ること。
イ 色や形に伴う感情,材質や表面のはだざわりの効果を考えながらつくること。
イ リズムのある美しさなどを感じとって表現に生かすこと。
ウ 色の明暗や強弱,色の感情などに関心をもって,計画的に配色すること。
イ 目的によく合う形や大きさなどを考え,必要に応じて,絵や図をかいてつくること。
イ よく走ったり動いたりするようにくふうし,目的に合った形や組み立てを考えてつくること。
ウ 細木や厚紙などの組み合わせや組み立てを考えて,家や橋などをつくること。
イ のこぎり,かなづちなどのほか,接着,緊結のための材料,用具を使ってつくること。
イ 表現のしかたの違いについて比較すること。
(3) 絵画や彫刻,工芸などの作品に親しませ,必要に応じて,作品の特色について話し合いができるようにする。
(2) 内容のBの(1)のイの「計画を立ててつくる」とは,つくる順序を自分なりによく考えてつくることであり,そのためにはできあがりを予想したり,絶えず作品全体をまわりから見たりして,あとの見通しをもたせるようにすることが必要である。
(3) 内容のCの(1)については,ガラス窓の飾りなど,光の効果にも気づかせることとし,また,Cの(3)のウの色彩については,明るさの違いという程度にとどめ,明度差などの理論的な扱いにならないようにすることが必要である。
(4) 工作においては,児童の造形活動における積極性を重んじ,内容のDの(1)のイの図示やDの(3)のイの用具などの経験とともに,計画性や技能を高めることが必要である。
(5) 内容のEの(1)の児童の作品の鑑賞については,作者の意図が作品に表現されているかどうかを,特に感情を通してはあくさせることが必要である。
〔第5学年〕
1 目 標
(2) 用途上の目的と機能に合わせて,色,形,材質,構造などを考えて,美しく合理的なものをつくることができるようにする。
(3) つり合いのある美しさや動きなどを理解させ,色や形などの構成をくふうして表現することができるようにする。
(4) 木や針金などの材料,それに伴う工具などの特色や技法を理解してつくる能力を高める。
(5) 児童の作品や身近な造形品,美術作品の特色を理解し,美しさを味わって見る能力や態度を養う。
A 絵 画
イ 構想が表現に活かされるように,効果を考えてかくこと。
イ 形の大小,色の明暗など,あらわし方をくふうしてかくこと。
イ ものの質の感じや画面のまとまりを考えてかくこと。
(5) 木版を主とし,計画を立て,その順序を考えて,版画であらわす力をのばす。
イ 版画の味わいがわかり,効果を考えて版画にすること。
ウ 彫刻刀その他の用具の使い方を経験し,理解すること。
イ 全体と部分のつり合いを見ながら,計画を立ててつくること。
(3) 粘土のほか,必要に応じて,木その他の材料を選んでつくる力をのばす。
イ 線材,面材,塊材などを使用し,形の組み立ての方向や動きを考えてつくること。
イ 単純化も考え,装飾の条件に合った色や形などの組み合わせをくふうしてデザインすること。
イ 知らせる目的に合わせて,色や形,材質などの効果を考えてデザインすること。
イ つり合いのある美しさ,方向や動きなどの感じを生かして表現すること。
ウ 主調色を選んで統一のある配色をしたり,明るさの差による色の明視などに注意を向け,目だつ配色や目だたない配色をしたりすること。
イ 針金を切ったり曲げたり,木を切ったり接合したりしてつくること。
ウ 粘土で器物などを成形し,必要に応じて,焼成のしかたを理解したり,つくったりすること。
エ つくるものの形や大きさの図示は説明的な絵や図を主とし,必要に応じて,図の見方やかき方を理解してつくること。
イ 技法や図示は(1)のイやエに準じ,動力の伝わり方の図示などをしてつくること。
ウ 細木や薄板などの組み合わせや組み立てをくふうして,橋や塔などをつくること。
イ ペンチや糸のこぎりなどの工具を使ってつくること。
ウ 材料の種類や性質に合わせて,接着や緊結をしたり,工具を使用したりする方法を理解してつくること。
イ 色や形の構成のよさや感じの違いについて比較して見ること。
イ 自然の風物をよく見て,その変化のある美しさに気づくこと。
イ 作品の内容や表現のしかたについて,比較したり話し合ったりすること。
(2) 内容のBの(1)のアの「量感や動き」については,手ざわりを通して感じとる粘土のかたまりや重みを量感の基礎とし,動きは空間を占める作品のおもな構成を動きとして見てとる程度とし,これらは,ことばだけの理論にかたよる取り扱いにならないようにすることが必要である。
(3) 内容のCの(3)のウの色彩については,目だつ配色や目だたない配色の違いを知って表現させることとし,明視度や対比などの理論にかたよる扱いにならないようにすることが必要である。
(4) 工作においては,児童自身の考えをたいせつにするとともに,つくるものの計画,表示,つくる順序など,完成までの一貫した過程をふんでつくられるようにすることが必要である。
(5) 内容のEの(3)の美術作品は,たとえば墨絵,絵巻物,版画,彫刻,工芸建築などとし,複製や写真などによるときは,資料を吟味して選んで行なうことが必要である。
〔第6学年〕
1 目 標
(2) 用と美の関係についての理解や造形の技能を高め,美しく合理的なものを計画的につくることができるようにする。
(3) 調和や変化のある美しさなどを理解させ,色や形などの構成をくふうして表現する能力を高める。
(4) 線材や画材などの材料,それに伴う工具などの特色や技法を理解してつくる能力をのばす。
(5) 児童の作品や身近な造形品,美術作品などの特色を理解し,美しさを鑑賞する能力を育てるとともに,文化財を尊重する態度を養う。
A 絵 画
イ 構想をもとにして,効果を考え見通しを立ててかくこと。
イ 精密な描写,大づかみな描写など,あらわし方をくふうしてかくこと。
イ ものの質や量の感じに気づいて,あらわし方をくふうしてかくこと。
(5) 木版を主とし,計画を立て,その順序に従って,版画であらわす力をのばす。
イ 版画の味わいや特色を理解し,効果的にあらわすこと。
ウ 版画の材料や用具を,順序よく使ってあらわすこと。
イ 全体と部分の調和や,表面のはだざわりを考えてつくること。
(3) 材料使用の効果を考え,表現の意図に合わせて,適切な材料を選んでつくる力をのばす。
イ 線材,面材,塊材などを使って,変化やまとまりのある構成を考えてつくること。
イ 目的に応じた材料を選び,その特色を生かしてデザインすること。
イ 色や形,材質などの効果を考えて構成し,材料を選んでデザインすること。
イ 調和や統一と変化のある美しさなどを感じとって表現すること。
ウ 標識などの色や形の機能的な使用を理解したり,色の性質の違いを生かして調和のとれた配色をしたりすること。
イ 線材や面材を切ったり曲げたり,接合したりしてつくること。
ウ 粘土で計画的に器物などを成形し,必要に応じて,焼成のしかたを理解したり,つくったりすること。
エ つくるものの図示は説明的な絵や図を主とし,必要に応じて,図の見方やかき方を理解してつくること。
イ 技法や図示は(1)のイやエに準じ,動力の伝わる機構の図示などをしてつくること。
ウ 細木や薄板などの組み合わせや組み立てをくふうして,計画的に橋や塔などをつくること。
イ 木や金属の材料に用いる工具の技法を理解してつくること。
ウ 接着や緊結の方法を合理的に考え,じょうぶなものをつくること。
イ 色や形の構成の特色やよさについて比較して見ること。
イ 自然の風物やその変化の美しさがわかること。
イ 作品の内容や表現のしかたについて,比較したり,話し合ったりすること。
(2) 内容のBの(2)の「彫塑的なあらわし方」については,児童がものを見たり想像したりして,感じたことや考えたことを,粘土などの材料で,空間を意識しつつ立体的なものに表規するものとする。
(3) 内容のCの(3)のウにおいては,道路標識その他の標識,図書や道具の色による分類などの身近な例で,配色や形の構成の目的を考え,色や形の性質や感じを生かしたはたらきのある表現であることを感覚的に理解させるとともに,色彩に対する関心を生活に生かす態度を養うことが必要である。
(4) 工作においては,つくるものを考え,参考になる作品や資料を調べて,着想を発展させ,表示し,材料を準備し,つくる順序を決め,機能や構造を検討しながらつくるというように,着想から完成までの一貫した過程をふんで行なうことができるようにすることが必要である。
(5) 内容のEの(3)の美術作品は,たとえば絵画においては写生的なもの,構想的なもの,幻想的なものなどというように,作品の傾向を考えて示したり,表現の形式を考えて示したりすることが必要である。
第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い
A(絵画)およびB(彫塑)…………………40%
C(デザイン)………………………………15%
D(工作)……………………………………40%
E(鑑賞)……………………………………5%
ただし,鑑賞の指導は,第4学年までは,主として他の各領域の表現活動に付帯して行なうものとする。
2 各領域の内容は,それぞれ孤立することなく,相互に関連させて指導する必要があり,なかでもデザインと工作は,たとえば,デザインし,つくり,使うなどの一貫した指導を行なうなど,特にその関連を考えて指導することが必要である。
3 各学年において適当な機会をとらえて共同製作を学習させるようにするものとする。特に,個々の児童のかいたりつくったりしたものを集めて一つのまとまりのあるものができる程度の低学年と,相互の関連を考えながら計画し分担して一つの大作を完成させることができる高学年との間には,かなりの差異があることを考慮して,児童の発達に即した指導計画を立てて行なうことが必要である。
4 造形活動に適した身近な材料,用具は数多いが,特に各学年の各領域で使用させ,初歩的な技法を指導する材料,用具については,多種類にわたることをさけ,各学年の内容において示したおもな材料,用具について,重点的な指導を行なうように計画することが必要である。