第8節 家 庭
第1款 目 標
1 衣食住保育その他の家庭生活に関する知識と技術を習得させる。
2 家庭消費の意義を知り,消費者としての立場と責任を理解し,国民経済に貢献する態度を養う。
3 家庭を経営する者としての立場から家庭生活の改善向上を図り,進んで地域の家庭生活の改善を図る能力や態度を養う。
第2款 各 科 目
第1 家庭一般
1 目 標
(1) 家庭経営の立場から家庭生活全領域にわたる知識理解を深め,食物,被服,住居ならびに保育などの基礎的技術を総合的に習得させ,特に食生活に重点をおいて家庭生活の改善向上を図る実践的態度を養う。
(2) 家庭生活の重要性を認識し,家庭の幸福と健康の維持増進を図る能力と態度を養う。
(3) 衣食住その他の家庭生活を科学的,能率的,経済的に運営する能力と態度を養う。
(4) 保育における家庭環境と生活指導の重要性を理解し,乳幼児保育についての知識と技術を習得させるとともに,それらを基礎として正しい児童観を養う。
2 内 容
(1) 家庭生活と家庭経営
ア 家庭生活の意義
イ 家庭経営の意義
(2) 計画的な経済生活
ア 予算生活
(ア) 収入と支出 (イ) 予算と決算
(ウ) 家計簿記
イ 購入と消費
(ア) 購入法 (イ) 合理的な使用法
(3) 能率的な家庭生活
ア 生活時間の計画
(ア) 生活時間調査 (イ) 生活時間の計画
イ 家事労働の能率化
(ア) 家事労働の特徴 (イ) 家事労働の能率的な方法
(4) 食生活の経営
ア 栄養と献立
(ア) 年齢別・性別・労働別栄養所要量 (イ) 食品の栄養価
(ウ) 栄養の充足・し好と献立
イ 家族の献立
(ア) 家族構成と献立 (イ) 食物費の適正
(ウ) 調理の能率化
ウ 日常の食品
(ア) 炭水化物性食品 (イ) 脂肪性食品
(ウ) たんぱく質性食品 (エ) 無機質の給源となる食品
(オ) ビタミンの給源となる食品 (カ) 強化食品
エ 食品の選択と取り扱い
(ア) 衛生的な食品の選び方 (イ) 食品の洗浄と消毒
(ウ) 調理操作による食品成分の損失 (エ) 食物の保管
オ 調理
(ア) なま物 (イ) しる物・飲み物
(ウ) ゆで物・あく抜き (エ) あえ物・酢の物
(オ) 煮 物 (カ) 蒸し物
(キ) 焼き物 (ク) いため物
(ケ) 揚げ物 (コ) 寄せ物
カ 食生活の合理化
(ア) わが国の食糧事情 (イ) 家族の栄養改善
(ウ) 台所の改善
(5) 衣生活の経営
ア 被服の機能
イ 衣服計画
(ア) 衣生活の現状 (イ) 被服材料の選択
(ウ) 被服整理 (エ) 家族の被服計画
ウ 家族の被服製作
(ア) 個性にあったデザイン (イ) 型紙の活用法,用布の裁断
(ウ) 日常着の縫製
エ 衣生活の合理化
(6) 住生活の経営
ア 住居の機能と各室の配置
イ 住居の能率
(ア) 能率的な生活様式 (イ) 施設・設備と能率
ウ 住居の衛生と安全
エ 住居の管理と美化
(7) 乳幼児の保育
ア こどもの健全な成長と家庭
(ア) こどもの要求と適応 (イ) こどもと家庭環境
イ 乳幼児の心身の発達
(ア) 乳幼児の身体発育とその特徴 (イ) 乳幼児の精神発達とその特徴
ウ 乳幼児の食物と被服
(ア) 乳児の栄養 (イ) 幼児の栄養
(ウ) 幼児食の献立と調理 (エ) 乳幼児の被服
エ 乳幼児の生活指導
(ア) 基本的習慣 (イ) 遊び・児童文化財
オ 育児と結婚
(8) 家庭生活の改善向上
ア 改善を要する問題
イ 改善向上の方法
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 家庭生活の実態と地域の実情に即して実践的に指導する。
(2) 食生活の経営においては,献立作成の能力を養うとともに調理実習に重点をおくが,手法のみにとらわれず調理理論を理解させる。
(3) 衣生活の経営においては被服計画に重点をおき,被服製作の内容は地域の実情や家庭環境を考慮して選択させる。
(4) 住生活の経営においては,能率的で快適な住居のくふうを図るように指導する。
(5) 乳幼児の保育においては,心身の発達は乳児に重点をおき,生活指導は幼児を中心とし,実習,観察,見学などの方法を取り入れて指導する。
(6) それぞれの事項において家庭関係を具体的に指導する。
(7) ホームプロジェクトおよび学校家庭クラブの意義を理解させ,その活動について基礎的な指導を行ない,学習効果をあげるようにする。
(8) 常に聴覚の障害からくる自己中心の動作をきょう正させ,家族関係およびその生活を円満に実践させるよう指導する。
(9) 視聴覚教材等をじゅうぶんに利用して理解をたすけ,実習効果をあげるよう指導する。
第2 被 服
1 目 標
(1) 日常家庭生活に必要な被服に関する知識と技術を習得させる。
(2) 衣生活を保健・衛生・活動・休養の実用的立場や,被服材料の性能に関する科学的見地から理解させる。
(3) 被服の選択・製作・整理等を科学的,能率的,経済的に処理する能力と態度を養う。
(4) 家庭経済,衣料事情,服飾,儀礼および服装の推移等から見て適当な衣生活を理解し,これを実践する態度を養う。
2 内 容
(1) 被服の役割
ア 保健衛生と被服
イ 着用目的に応じた被服の適用方法
(2) 被服材料
ア おもな被服材料とその用い方
イ わが国の衣料事情
(3) 意匠
ア 服装美とその要素 イ 個性とデザイン
(4) 被服製作
ア 用途に応じた型・デザイン イ 材料の選定
ウ 型紙,型紙の製作および活用法用布の裁断
エ 縫製
(例) ワンピースドレス・ひとえ長着・ツーピースドレス・作業服・こども服・長着・はおるもの・スーツ・休養着・乳児服・寝具類など
(5) 被服整理
ア 洗たく イ しみ抜き
ウ 手入れ・保存
(6) 手芸
ア 編み物 イ 刺しゅう
ウ 染色 エ 織物
オ その他
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 被服材料,被服整理等は,実験・実習によって指導するように留意する。
(2) 被服製作,手芸については,地域の状況や履習単位の多少によって適当な製作品を選択し,基礎的な技術を習得させる。
(3) 火気・針・薬品等の取り扱いに注意して,事故の防止に努める。
(4) 職業人としての知識と技術を習得し,業務に従事する技術者としての態度を養う。
第3 食 物
1 目 標
(1) 家庭生活に必要な食物に関する知識と技術を習得し,食生活の改善向上を図る実践的態度を養う。
(2) 家族の年齢その他個人の要求に適合する献立作成の能力を習得させる。
(3) 日常食その他の基本的な調理の技術を習得させる。
2 内 容
(1) 栄養素の機能
ア 炭水化物の分類とその代謝 イ 脂肪の分類とその代謝
ウ たんぱく質の分類とその代謝 エ 必須(ひっす)アミノ酸とたんぱく価
オ 無機質の種類とその生理機能 カ ビタミンの種類とその生理機能
(2) 消化と吸収
ア 食物の味,食欲 イ 消化と消化酵素
ウ 吸収と排出 エ 消化吸収率
(3) 特殊栄養
ア 母性栄養 イ 小児栄養
ウ 老人栄養
(4) 加工食品・市販調理食品
ア 穀 類 イ いも類
ウ 豆 類 エ 油肪類
オ 獣鳥肉類 カ 魚貝類
キ 乳卵類 ク 野菜類
ケ 果実類 コ 海草類
サ きのこ類 シ 調味料・香辛料・し好品
ス 市販調理食品
(5) 食品衛生
ア 食中毒 イ 腐敗
ウ 食品添加物 エ 食品衛生監視
(6) 献立
ア 妊婦・授乳婦の献立 イ 小児の献立
ウ 老人の献立 エ 朝・昼・夕の栄養配分
(7) 調理
ア 日常食 イ べんとう料理
ウ 行事食 エ 簡単な客ぜん料理
オ 病人食
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 理論は単なる理論として遊離することなく,実生活と関連させ,食生活向上の意欲を起こさせ,それを実行するように指導する。
(2) 調理実習においては献立を考慮し,調理実験と関連をもたせて指導する。
(3) 視聴覚教材,見学などを適宜取り入れて,学習をいっそう効果的になるように指導する。
(4) 実習にあたっては,器具および火気の取り扱いや,衛生にじゅうぶん注意して,事故の防止に努める。
第4 保 育
1 目 標
(1) こどもの心身発達の理解を深め,その生活指導についての知識と技術を高め,健全な成長を図る能力と態度を養う。
(2) 正しい児童観を養い,常にこどもの現実をはあくして,健全な人間形成を助成する能力と態度を養う。
2 内 容
(1) 妊娠と分べん
ア 妊娠と摂生 イ 分べんと産じょく中の摂生
(2) 乳幼児の心身発達
ア 身体発育と生理 イ 精神発達
(3) 乳幼児の栄養
ア 乳幼児の栄養 イ 幼児期の栄養
ウ 調乳,離乳食の献立・調理
(4) 乳幼児の生活指導
ア 養護 イ 生活習慣
ウ 精神衛生 エ 保育の協同化
(5) 乳幼児の病気とその予防および看護
ア 乳幼児の死亡率 イ 乳幼児のかかりやすい病気
ウ 予防 エ 看護
(6) 育児法の改善
(7) 児童と社会
ア 児童観の発達 イ 児童の福祉
ウ 青少年不良化の問題
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 「家庭一般」で重点的に扱った項目は重複しないように指導する。
(2) 家庭や近隣,保育施設における実習や視聴覚教材等の利用などにより効果があがるように指導する。
第5 家庭経営
1 目 標
(1) 物資,金銭,労力,時間を有機的,総合的に使用して家庭生活を運営する知識と技術を習得させ,その充実向上を図る態度を養う。
(2) 家族の心理や特徴を理解し,その要求や関心を配慮して,家庭生活を円滑に運営する能力と態度を養う。
(3) 家族の職業や所得に応じて,家庭経済を計画的に運営し,その安定と向上を図るための知識と技術を習得させ,さらに家庭経済と国民経済との関連を理解させる。
(4) 物資の購入や使用を通して,消費者としての社会的立場を自覚させ,その合理的な方法を習得させる。
(5) 時間を計画的に使用し,家庭生活の能率化を図り,余暇を善用して生活の向上を図る能力と態度を養う。
2 内 容
(1) 家 族
ア 家族関係 イ 家庭生活と職業
ウ 家庭生活と法律 エ 日常の作法
(2) 家庭経済
ア 収入と生活費 イ 経済計画
ウ 家計簿記 エ 物資の購入の消費の合理化
オ 貯蓄・保険 カ 家庭経済と国民経済
(3) 労力と時間の管理
ア 労働と休養・余暇 イ 労力と時間の使用計画
(4) 住居の改善
ア 住居の環境衛生 イ 住居の設計
ウ 施設・設備と装飾 エ 住宅問題
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 家庭経営の原理を,衣食住の実践的な活動を通して理解させるように指導する。
(2) 地域社会の家庭経営の実態をはあくし,その改善向上を図るように指導する。
(3) 宿泊して家庭経営の実習を行なうのもよい。
第6 被服材料
1 目 標
(1) 被服材料,使用目的に適した被服地の選択などについての知識理解を得させる。
(2) 被服材料の鑑別法,試験法の技術を習得させ,被服生活を合理的に営む態度を養う。
2 内 容
(1) 被服繊維
ア 繊維の分類 イ 天然繊維
ウ 化学繊維 エ 繊維の性能,鑑別法
(2) 糸
ア 構造,種類,太さ イ 製造法
ウ 性 能
(3) 織 物
ア 種類および用途 イ 組織と組織法
ウ 製造法 エ 加工法
(4) 編み物
ア 種類および用途 イ 構 造
ウ 製造法
(5) レース
ア 種類および用途 イ 製造法
(6) 皮革,擬革,ゴムおよび合成樹脂
ア 皮革の種類と製造法 イ 擬革,ゴム,その他
(7) わが国の衣料事情
(8) 使用目的に適した被服地の選択
ア 被服地の保健・衛生的性能 イ 被服地の実用的性能
ウ 繊維製品の品質表示 エ 被服地の選択
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 実験・実習を重視して,視聴覚教材等を利用したり,見学などによる具体的指導をするように留意する。
(2) 薬品・器具の取り扱いに注意して,事故の防止に努める。
第7 被服経理
1 目 標
衣生活および被服の製作・整理等を計画的,能率的,科学的にする知識と技術を与え,衣生活の改善向上を図る実践的態度を養う。
2 内 容
(1) 衣生活の改善
ア 被服材料の現状と選択 イ 被服形態の現状と改善
ウ 被服製作・整理の現状と改善
(2) 被服計画
ア 被服計画の基準 イ 家庭生活と被服計画
ウ 被服製作の能率化
(3) 被服の手入れと保存
ア 洗たく イ しみ抜き
ウ 手入れ,保存 エ 手入れ,保存の能率化
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 洗たくの際,各被服材料に適当な洗たく液の温度,洗剤,洗い方,干し方,仕上げなど,実験・実習によって指導する。
(2) 洗たく・しみ抜き用具や,その配置,用い方については,実物によって実生活に即した指導をする。
第8 意 匠
1 目 標
(1) 服装美についての認識を深め,被服デザインの原理と方法を理解させ,これを実際に活用できる能力を養う。
(2) 被服の変遷について理解させ,被服デザインと今後の服装のくふう改善に役だたせる。
2 内 容
(1) 服装美
(2) デザインの意義
(3) デザインの基礎
ア 形 態 イ 色 彩
ウ 材 質
(4) 個性とデザイン
ア 体形とデザイン イ 性格とデザイン
(5) 流行と個性
(6) デザインの表現と実習
(7) 服装の推移
ア 日本の服装 イ 西洋の服装
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 実習を重んじ,被服デザインの実際にあたって,着る人の個性・環境などにふさわしいデザインを適切に選び,あるいはくふうできるように具体的に指導する。
(2) 視聴覚教材等を活用するなど,なるべく具体的に指導する。
第9 被服製作
1 目 標
衣生活を保健衛生,活動,休養の実用的立場を基礎として,日常の被服を能率的かつ経済的に製作する技術を習得させる。
2 内 容
(1) 和服製作
ア 各種和服の特徴 イ 材料の選び方
ウ 形,各部の名称 エ 寸法
オ 布の積もり方,地直し カ がら合わせ
キ 裁ち方 ク しるしのつけ方
ケ 縫い方 コ 仕上げ,着方
サ 手入れ,しまい方 シ 和服の改善について
(例) ひとえ長着・帯・あわせ長着・各種改良着・下着類・寝具類・はおるものなど。
(2) 洋服製作
ア 各種洋服の性格
イ 体型によるスタイル,デザインの選び方
ウ 目的に応じたスタイル,デザインの選び方
エ 型紙製作,ならびに活用のしかた
オ 布の積もり方,縫いしろのつけ方,地直し,裁ち方
カ 仕立て方
キ 仕上げ,着方
ク 個性と布味の生かし方
ケ はぎれおよび更生品の応用,くふう
コ 手入れ,しまい方
(例) 婦人服・男子服・こども服・下着類・作業服・スポーツ服・帽子類など。
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 部分縫い,その他の方法で基礎枝術の習熟を図り,実物製作によって製作技術の徹底を図る。
(2) 単位数に応じて,材料や型を変えて実習し,応用力を養う。
(3) 火気・針などの取り扱いに注意して,事故の防止に努める。
第10 手 芸
1 目 標
編み物・ししゅう・染色・織物の基礎技術を習得させ,服飾手芸,室内装飾に対する関心を高め,情操を豊かにする。
2 内 容
(1) 手芸の一般的知識
ア 手芸の意義 イ 手芸の種類
ウ 服飾手芸と室内装飾
(2) 編 み 物
ア 材料と用具 イ 各種編み方
ウ 意匠図案 エ 毛糸編み
オ レース編み
(3) ししゅう,その他
ア 材料・用具 イ 基礎手芸
ウ 意匠図案
(4) 染 色
ア 染料の種類,性質 イ 染料の用い方
ウ 染 色
(5) 織 物
ア 織物の性質 イ 機械の操作
ウ 材料と目的の関係 エ 織方の種類・意匠・図案
3 指導計画の作成および指導上の留意事項
(1) 実習においては,意匠,技法に自由な創作ができるように指導する。
(2) 火気・薬品などの取り扱いに注意して,事故の防止に努める。
(3) 視聴覚教材等の利用につとめ,理解をたすけるよう指導する。