第4節 理 科

 

第1款 目 標

1 自然の事象についての関心を深め,真理を探求しようとする態度を養う。

2 自然の事象を実験,観察などを通して考察し,処理する能力と態度を養い,また実験や観察に必要な機械器具を目的に応じて取り扱う技能を高める。

3 自然の事象に関する基本的な事実や原理・法則に関する理解を深め,これらを活用する能力を伸ばし,科学的な創造力を育てる。

4 科学的な自然観を育て,また自然科学が生活や産業に応用されており,人類の福祉に深い関係のあることを認識させる。

 以上の目標の各項目は,相互に密接な関連をもって全体として,「理科」の目標をなすものであり,「理科」の各科目の目標のもととなるものである。

 指導にあたっては,各科目の目標とともに,教科の目標の達成に努めなければならない。

第2款 各 科 目

第1 物 理

 1 目 標

(1) 生活に関係の深い物理的な事象についての関心を深め,すすんでこれらを探究しようとする態度を養う。

(2) 物理的な事象を実験・観察などを通して考察し処理する能力と態度を養う。

(3) 物理的な事象に関する基本的な概念や原理・法則を理解させ,これらを活用する能力を伸ばし,さらにくふう創造する態度を養う。

(4) 物理的な事象を取り扱うのに必要な機械器具を操作する技能を習得させる。

(5) 物理的な見方,考え方が,広く自然の諸現象を科学的に理解する基礎となることを知らせるなどして科学的な自然観を育て,また,物理学が生活や産業に応用されており,人類の福祉に深い関係のあることを認識させる。

 2 内 容

力と仕事

力のつりあい

一点にはたらく力のつりあい,力の合成・分解,作用と反作用

斜面と摩擦

力のモーメント

てこの原理,滑車,偶力

物体の安定

重心,船の安定

仕事

仕事の原理,仕事率

動力の伝達

材料の強さ

弾性変形,塑性変形,破壊,材料のじょうぶな組み合わせ

力と運動

重力

重量と質量,密度

物体の運動

速度,加速度,速度の合成,落下運動

運動の法則

慣性,運動の法則

振り子の運動

円運動

流れから受ける力

エネルギー

熱機関

エネルギーのうつりかわり

熱容量

比熱

熱膨張率

水波と音波

音の性質

光源と明るさ

光の直進

光の反射

光の屈折

光学器械

スペクトル

紫外線と赤外線

物体の色

電流と磁界

電流,電圧,抵抗

電流の熱作用

電力と電力量

磁石の性質

電磁石とその応用

電磁誘導

交流

電子と原子

電子と真空管

電波とラジオ

真空放電

原子の構造

放射性元素

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 指導計画作成にあたっては,指導することを精選し,基本的な事項の指導をじゅうぶんに行なうことができるように配慮する。

(2) 「内容」に示した各事項は,表現に便宜のために順序づけ,まとめてあるが,これは指導の順序やまとまりを示すものではない。指導にあたっては,指導する事項を順序づけ組織だてて適切な指導計画を作成しなければならない。

(3) 指導する各事項については,それらを相互に関連づけ,物理的な考え方を中心にして展開していくように構成することが必要であるが,この際,学問的体系によりすぎることなく地域や生徒の実情などに応じて重点をおく事項を定めるなどし,また,平易に取り扱うことが望ましい。

(4) 単に知識や理解を得させるにとどまらず,その過程において,「物理」の目標とする科学的能力や態度を具体的に習得していくように指導する。

(5) 基本的な事項の指導において,論理的な演えきに傾いて,生徒の経験を無視したり,実生活との結びつきを軽んじたりすることのないように注意し,つとめて,具体的な事象からはいり,帰納的な考え方を重視し,このようにして学習した原理や法則を,実際の応用に結びつけるように指導する。

 なお,この場合生徒の個人差にも適切に対処できるように考慮する必要がある。

(6) 生徒は経験領域が狭いからできるだけ広く実験・観察を通して学習させるようにする。実験・観察は次のような諸点に留意して選定する。

(ア) 重要な原理や法則と結びついた基本的なものであること。

(イ) 特定の事項の実験・観察に片寄ることなく,できるだけ指導する内容の全域にわたるようにすること。

(ウ) 基礎的な量,たとえば長さ,質量,時間,温度,電流,電圧などの測定を含めること。

 なお指導の補助手段としてスライド,映画,テレビ放送などを精選して活用することが望ましい。

(7) 数学的な取り扱いについては,数学科との関連を考慮し,事象に即して平易な数式を用いることができるように指導する。

(8) 基本的な実験法や計量器,機械器具の取り扱いに関する技能については,指導する事項との内容的な関連をじゅうぶんに図り,操作の意味を考えさせるように指導する。

(9) 特に実験・観察などの指導においては,事故の防止にじゅうぶんに留意する。

(10) 2内容の音に関する学習においては,残存聴力などを利用するとともに視覚化することによって,理解を助けたり,深めるようにする。

第2 化 学

 1 目 標

(1) 生活に関係の深い物質や化学現象についての関心を深め,すすんでこれらを探究しようとする態度を養う。

(2) 物質や化学現象を実験・観察などを通して考察し処理する能力と態度を養う。

(3) 物質や化学現象に関する基本的な事実,概念,法則などを理解させ,これらを活用する能力を伸ばし,さらにくふう創造する態度を養う。

(4) 物質や化学現象を探究するのに基礎となる平易な化学的操作に関する技能を習得させる。

(5) 自然の諸現象を,物質とその変化という立場から見ることなどによって科学的な自然観を育て,また,化学が生活や産業に広く応用されており,人類の福祉に深い関係のあることを認識させる。

 2 内 容

物質を構成する粒子

原子

分子

イオン

化学式

元素記号

組成式

分子式

構造式

原子価

元素の周期律

酸,アルカリ,塩

酸の水溶液

おもな酸の性質

アルカリの水溶液

おもなアルカリの性質

中和と塩

塩の水溶液

電気分解と電池

電解質

電気分解

電池

気体と沈殿の生成

おもな気体の性質

気体と水溶液からの気体の発生

水に溶けやすい塩と溶けにくい塩

沈殿ができる反応

酸化と還元

金属の酸化

金属酸化物の還元

無機化学工業

おもな金属と化学工業

おもな非金属と化学工業

有機化学工業

石炭・石油と化学工業

繊維・樹脂などと化学工業

エネルギー資源

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 指導計画作成にあたっては,指導する事項を精選し,基本的な事項の指導をじゅうぶんに行なうことができるように配慮する。

(2) 「内容」に示した各事項は,表現に便宜のために,順序づけ,まとめてあるが,これは指導の順序やまとまりを示すものではない。指導にあたっては,指導する事項を順序づけ組織だてて適切な指導計画を作成しなければならない。

(3) 指導する各事項については,それらを相互に関連づけ,化学的な考え方を中心にして展開していくように構成することが必要でるあが,この際,学問的体系によりすぎることなく,地域や生徒の実情などに応じて重点をおく事項を定めるなどし,また,平易に取り扱うことが望ましい。

(4) 単に知識や理解を得させるにとどまらず,その過程において「化学」の目標とする科学的能力や態度を具体的に習得していくように指導する。

(5) 生活や産業(特に化学工業)との関連を考慮して指導するようにする。実際の応用例などを取り扱うときは,細部や特殊な事情にふれないようにする。

(6) できるだけ広く実験・観察を通して学習させるようにする。実験・観察は次のような諸点に留意して選定する。

ア 重要な事実,法則などと結びついた基本的なものであること。

イ 特定の事項の実験・観察に片寄ることなく,できるだけ指導する内容の全域にわたるようにすること。

ウ 物質の分離,計量および加熱,簡単な実験装置の組み立てなどを含めること。

 なお,指導の補助手段として,スライド,映画,テレビ放送などを精選して活用することが望ましい。

(7) 化学式および化学反応式の種類は,内容で触れたものの程度にとどめ,それらの化学的な意味をじゅうぶんに理解させるようにする。また,「有機化学工業」の項では,構造式を取り扱ってもよい。

(8) 基本的な実験法や計量器,機械器具の取り扱いに関する技能については,指導する事項との内容的な関連をじゅうぶんに図り,操作の意味を考えさせるように指導する。

(9) 特に実験・観察などの指導においては,中毒,爆発,火災などの事故の防止にじゅうぶんに留意する。

第3 生 物

 1 目 標

(1) 生物や生物現象についての関心を深め,すすんでこれらを探求しようとする態度を養う。

(2) 生物や生物現象を実験・観察などを通して考慮し処理する能力と態度を養い,あわせて機械器具を操作する技能を習得させる。

(3) 生物や生物現象に関する基本的な事実・原理などの理解を深め,これらを活用する能力を伸ばすとともに,科学的な創造力を育てる。

(4) 人体の構造・機能についての事実や原理の理解を深め,健康の基礎となる事項を科学的に考慮する能力を養う。

(5) 生物の有機性および生物相互あるいは生物と環境との相関についての理解を深めて自然界の調和を認識させることなどによって科学的な自然観を育て,また,生物学が生活や産業に応用されており,人類の福祉に深い関係のあることを認識させる。

 2 内 容

植物の構造と機能

葉の構造,蒸散,光合成,茎の構造,茎の通道,根の構造,根の吸収,植物の吸収

人体の構造と機能

カエルのからだの構造,人体の構造,食物と栄養,腐敗と発酵,消化器の構造,消化と吸収,血管と心臓,血液の循環

血液とリンパ,呼吸器とそのはたらき

排出器とそのはたらき,骨格と筋肉,関節の構造と筋肉運動,中枢神経と末しょう神経の構造,反射,目の構造とはたらき,耳の構造とはたらき,鼻と舌,皮膚,内分泌

生物の成長とふえ方

生物の成長,細胞の分裂,無性生殖,有性生殖,発生

遺伝の変異

遺伝する形質と遺伝しない形質,変異,遺伝のしくみ,品種の改良

生物の進化

進化の事実,進化の説明

生物の系統と分類

生物の系統,生物の分類

生物の利用と保護

生物の利用,生物資源の保護と育成,生物資源の開発

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 指導計画の作成にあたっては,指導する事項を精選し,基本的な事項の指導をじゅうぶんに行なうことができるように配慮する。

(2) 「内容」に示した各事項は,表現に便宜のために順序づけまとめてあるが,これは指導の順序やまとまりを示すものではない。指導にあたっては,指導する事項を順序づけ組織だてて適切な指導計画を作成しなければならない。

(3) 指導する各事項についてはそれらを相互に関連づけ,総合的に考察できるように構成し,学習を通してまとまった理解が得られるように指導する。

(4) 生物の構造と機能の学習については,有機的,統一的に生物を見るように扱い,その生命現象に対する関心を深めるように指導する。

(5) 単に知識や理解を得させるにとどまらず,その過程において「生物」の目標とする科学的能力や態度を具体的に習得していくように指導する。

(6) 基本的な事実,原理などの指導にあたっては,具体的な生物的事象とのつながりや帰納的な考え方を重視して指導するとともに,それの応用に関する事項を適宜に取り入れ,生活や産業との関連に留意する。

(7) できるだけ広く実験・観察を通して学習させるようにする。実験・観察は,次のような諸点に留意して選定し,指導する。

ア 重要な事実,原理などと密接に関連を持つ実験・観察であること。

イ 特定の事項の実験・観察に片寄ることなく,できるだけ指導する内容の全域にわたるようにすること。

ウ 季節との関連に留意し,季節に応じた適切な時期に実験・観察ができるように計画し指導するとともに,その地域の生物の特徴に留意し,これらを有効に指導に取り入れるようにすること。

エ スライド,映画,テレビ放送などを精選して活用し,実験・観察の効果を高めるようにすること。

(8) 機械器具の取り扱いについては,指導する事項との関連を図り,操作の意味を考えさせるように指導する。

(9) 動物体の構造や機能についての指導にあたって,カエル,ニワトリ,ウシなどの代表的な種類について取り扱い人体に関する理解をより的確なものにするように指導する。

(10) 生命の尊重と,生物の保護,開発の重要性を認識させるように指導する。

第4 地 学

 1 目 標

(1) 地学的な事象についての関心を深め,すすんでこれらを探究しようとする態度を養う。

(2) 地学的な事象を実験・観察などを通して考察し処理する能力と態度を養う。

(3) 地学的な事象についての基本的な事実や原理・法則などの理解を深め,環境に適応して生活を合理化しようとする積極的な態度を養う。

(4) 自然の事象を,その相互の関係や長い時間的変化の観点から総合的にはあくさせ,自然界の変化,調和などを認識させるなどして科学的な自然観を育て,また,地学が生活や産業に応用されており,人類の福祉に深い関係のあることを認識させる。

 2 内 容

気象

気温の変化,気温変化の原因

湿度の変化,雲と霧,降水

気圧と風,天気図,日本の天気,天気予報

鉱物の種類と性質

造岩鉱物,鉱物の性質,鉱床

地球

地球の形と大きさ,緯度と経度

水陸分布,陸地の高低

海底の地形,海流,大気圏

地球の内部

地球の運動,季節と暦(太陽日,太陽時と標準時などにふれる)

月とその運動,潮の干満

日食と月食

太陽と太陽系

太陽の表面,太陽系の構造

惑星の見かけの運動,流星

恒星

色,光度,星座,銀河系と宇宙

地表の歴史

地層の整合,不整合,化石

地質時代と生物

日本列島の地質時代,日本の地質構造

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 指導計画作成にあたっては,指導する事項を精選し,基本的な事項の指導をじゅうぶんに行なうことができるように配慮する。

(2) 「内容」に示した各事項は,表現の便宜のために順序づけまとめてあるが,これは指導の順序やまとまりを示すものではない。指導にあたっては,指導する事項を順序づけ組織だてて適切な指導計画を作成しなければならない。

(3) 指導する各事項については,それらを相互に関連づけ,地学的な考え方を中心にして展開していくように構成し,学習を通して,まとまった理解が得られるように指導する。

(4) 単に知識や理解を得させるにとどまらず,その過程において,「地学」の目標とする科学的能力や態度を具体的に習得していくように指導する。

(5) 基本的な事実,原理などの指導においても,具体的な地学的事象とのつながりや,帰納的な考え方を重視して指導する。

(6) できるだけ広く実験・観察を通して学習させるようにする。実験・観察は,次のような諸点に留意して,選定し,指導する。

ア 重要な事実,原理などと密接な関連をもつ実験・観察であること。

イ 特定の事項の実験・観察に片寄ることなく,できるだけ指導する内容の全域にわたるようにすること。

ウ その地域の地学的な自然環境の特徴に留意し,これを有効に指導に取り入れるようにすること。

エ スライド,映画,テレビ放送などを精選して活用し,実験・観察の効果を高めるようにすること。

(7) 機械器具の取り扱いについては,指導する事項との関連を図り,操作の意味を考えさせるように指導する。

(8) 地学的な事象の相互の関連に留意し,これらをできるだけ総合的に取り扱うようにするとともに,適宜に自然の災害とその防止および資源の利用にふれ,その重要性を認識させるように指導する。