1 自他の人格や個性を尊重して,基本的人権や公共の福祉を重んずることが,社会生活の基本であることについての認識を深め,民主主義の諸原則を人間生活に実現しようとする態度とそれに必異な能力を養う。
2 人間の存在や価値についての思索を通して,人間としての自覚を深め,人間生活の向上を図ろうとする自主的な態度を養う。
3 社会生活の歴史的発展過程や地理的条件に関する理解を深めるとともに,政治,経済,社会の機構や機能を理解させて,社会生活の諸問題を正しく判断する能力を育て,健全な批判力をもってこれらに対処しようとする態度を養う。
4 国際関係と世界におけるわが国の地位を理解させ,国民としての自覚を高め,民主的で文化的な国家を建設して,世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする態度を養う。
5 社会に関する問題について,科学的,合理的に研究して自主的に解決していこうとする態度とそれに必要な能力を養う。
以上の目標の各項目は,相互に密接な関連をもって全体として「社会」の目標をなすものであり,「社会」の各科目の目標のもととなるものである。指導にあたっては,各科目の目標とともに教科の目標の達成に努めなければならない。
第1 倫 理・社 会
1 目 標
(2) 人間の心理や行動を社会や文化との関連において理解させるとともに,青年期における身近な問題を通して,人間としての自覚をもたせる。
(3) 人生観,世界観を形成させるために,先哲の人間や社会に対する基本的な考え方のあらましを理解させ,これをみずからの問題に結びつけて考察する能力と態度を養う。
(4) 現代社会について科学的,合理的に理解させるとともに,そこにおける人間関係のあり方について考えさせ,人間や社会や文化の問題について,これを建設的に解決していこうとする態度とそれに必要な能力を養う。
(1) 人間性の理解
人間と文化
西洋の考え方
近代の思想(人間の尊重,合理的・実証的精神・市民社会の倫理などの観点から取り上げる。)
なお,「(2)人生観・世界観」の場合,たとえば幸福,人間の尊重,個と全体,自由と平等,正義と平和など,適当な主題を取り上げて,上記の事項を学習させることも考えられる。
現代社会と文化
現代社会の特質と文化(中間層の拡大,組織の巨大化マスコミュニケーションなど,大衆社会の諸問題を含めて取り扱う。)
地域社会・職域社会(人間関係の改善や職業の倫理を含めて取り扱う。)
国家と国際社会(国民としての自覚や人類愛の精神を含めて取り扱う。)
さらに高等部ホームルームにおける指導とも関連させて,自己形成の必要なことを認識させ倫理的関心を高める。
「倫理・社会」の学習は,「政治・経済」の学習と密接な関連をもつことによって,より具体化されるものであることに留意して指導する。
(2) 指導計画の作成や学習指導にあたっては,生徒の能力,経験と関連づけて指導するようくふうするとともに,難解な思想や論理については,これを平明に解説したりして,理解を容易にさせるよう配慮しなければならない。
(3) 内容に掲げた事項の組織・配列は,そのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては,教科および科目の目標に基づいて,各事項のまとめ方や順序をくふうし,適切な指導計画を作成することが望ましい。
(4) 各事項の指導にあたっては,社会や文化や人間の見方には異なったものがあることを考慮するとともに,広い視野に立って,人間のあり方についての総合的理解を得させるとともにそれらが民主主義の倫理についての理解と実践につらなるものであることに留意する。
(5) 「(2)人生観・世界観」の指導においては,東西の先哲の伝記・著作や言行の一部などを取り上げることも考えながら,具体的に理解させるように指導する。
(6) 「西洋の考え方」の指導においては,西洋の先哲の思想を適宜選んで,その基本的な考え方を理解させる。なお,「キリスト教の考え方」では,たとえば聖書によって,その基本的な考え方を理解させるとともに,近代の思想との関連にも気づかせる。
「東洋の考え方」の指導においては,東洋の先哲の思想を適宜選んで,その基本的な考え方を理解させる。
「日本の考え方」の指導においては,日本の代表的な宗教思想家や学者などを選んで,その基本的な考え方を理解させる。
(7) 「現代の思想」のうち,社会主義には考え方や立場の異なったものがあるので,指導にあたっては,これらの相違にもふれるように留意する。
(8) 「(3)現代社会と人間関係」の指導にあたっては,できれば,その内容に即して,社会科学の研究方法(たとえば,数量的取り扱いなど)にもふれさせることが望ましい。
(9) 政治および宗教に関する事項の取り扱いについては,教育基本法第8条および第9条の規定に基づき,適切に行なうよう特に慎重な配慮をしなければならない。
(10) 生徒の手記や作文などの利用,年鑑,新聞などの資料や統計の検討・利用,討議,読書,社会調査,見学などを適宜実施することにより,学習効果をあげるように努める。また,教材として適切なスライド,テレビ,映画などを精選してこれらを効果的に活用することが聖ましい。
1 目 標
(2) 政治・経済・社会の機構や機能について,それらがわれわれの生活と密接に結びついていることを理解させ,またよりよい国家・社会実現のために民主主義をどのように発展させたらよいかについて考えさせる。
(3) 近代文化の発達によって政治,経済,社会の各方面に大きな進歩が見られるとともに,多くの問題が生じていることを理解させ,それらの問題に対処していくためには,どのようにすればよいかについて考えさせる。
(4) 国と国との関係は,相互に対等の立場で尊敬し合い,その主権を互いに尊重することによって,はじめて平和な関係を維持できるものであることを理解させ国際的視野に立って他国民と協力し,世界の平和の確立に貢献しようとする態度を養う。
(5) 確実な資料を選んで,これを正しく利用し,いろいろな問題について先入観や偏見をもたず,公正な判断を得ようとする態度や能力を養う。
(1) 民主政治の組織と運営
日本国憲法の基本となる諸原則(基本的人権の尊重,平和主義,国民主権,三権分立,代議員制,議院内閣制,天皇の地位など)
政治のはたらきと国民の生活との関係
政党と国民との関係
政治と世論
企業・金融・物価・景気の変動などと生産・流通・消費などとの関係。
協同組合・証券取引・保険など
家計と生産との結びつき
国や地方の財政と国民経済との関係(予算・租税・公債)
国民所得と生活水準
わが国の主な産業と貿易
わが国の産業構造の特色
世界におけるわが国民経済の地位
国際社会の現実(国と国,国家群と国家群との間に領土・政治・経済・文化・民族などに関連して,さまざまな問題があること。)
条約国際法
国際協力機関
国際連合やユネスコなどの専門機関の組織と活動のあらまし
わが国文化のよい伝統の継承と未来の文化の創造
(2) 内容に掲げた事項の組織,配列は,そのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては教科および科目の目標に基づいて,各事項のまとめ方や順序をくふうし,適切な指導計画を作成することが望ましい。
(3) 単に政治,経済に関する基礎的知識の習得だけに終わることなく,それを社会生活に活用する能力を養うとともに,現実の諸問題に深い関心をもたせるよう導き,これらに対する公正な判断力や健全な批判力を養うように指導する。
(4) 政治に関する事項の取り扱いについては,教育基本法第8条の規定に基づき,適切に行なうよう慎重な配慮をしなければならない。
(5) 政治に関する事項の指導においては,特に民主政治の長所を理解させるとともに,その陥りやすい欠陥にも気づかせ,国民ひとりひとりが政治の実際について責任を感じ,政治をよくするための知識や態度をみがくことがたいせつであることを認識させる。
(6) 経済に関する指導にあたっては,経済用語の単なる解説に終わったり,いたずらに細かな事項の学習に深入りさせたりすることなく,大要を理解させるように努める。
(7) 現代の諸問題に関する指導においては,問題を総合的に考察させるために「社会」の他の科目の内容と有機的に関連させることに留意する。なお,単に現代社会の欠陥の指摘に終わることなく,これまでの努力と進歩の跡をも認め,できるだけ客観的に取り扱うことがたいせつである。
(8) 各種の資料や統計などを活用し,また,調査,見学などを適宜実施することにより学習効果をあげるように努める。また教材として適切なスライド,テレビ,映画などを精選して,これらを効果的に利用することが望ましい。
1 目 標
(2) 歴史における各時代の概念を明確につかませ,歴史の移り変わりを総合的に理解させるとともに,それぞれの時代のもつ歴史的意義を理解させ,各時代が今日のわれわれの社会生活にどのように影響しているかを考えさせる。
(3) わが国の社会と文化が,われわれの祖先の努力の集積によって発展してきたことを理解させ,また,それにともなって国民の生活が,しだいに向上してきたことを考えさせる。
(4) わが国の学問,思想,宗教,芸術などの文化遺産についてそれが生みだされた時代との関連を通じて理解させ,親しみ尊重する態度を育て,さらに新しい文化を創造し発展させようとする意欲を高める。
(5) 日本史の発展を常に世界史的視野に立って考祭させ,世界におけるわが国の地位や,文化の伝統とその特質を理解させることによって,国際社会において日本人の果たすべき役割を自覚させて国民的心情の育成をはかる。
(6) 正確な史実に基づき,種々の学習活動によって,歴史的思考力や公正な判断力を養い,真実を追求しようとする態度を育てる。
(1) わが国の原始・古代
動揺する世界
(2) 内容に掲げた事項の組織・配列はそのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては,教科および科目の目標に基づいて,各事項のまとめ方や順序をくふうするとともに生徒の生活経験や関心等も考慮して適切な指導計画を作成することが望ましい。
(3) 時代区分は,指導上の観点によっていろいろなものが考えられるが,細かな時代区分だけにとらわれて,大きな時代の流れや,その時代の社会の特色を見失わないように留意する必要がある。
(4) 近現代史の学習においては,世界的事象の扱いに特に留意することが必要である。
(5) じゅうぶんな準備がある場合には,たとえば第2学年および第3学年を通して日本史」および「世界史」の内容を学習させるなどの指導計画を作成し,実施することもできる。この場合には,科目の目標および内容ならびに指導計画作成および指導上の留意事項にそった指導でなければならない。
(6) 指導にあたっては,次の諸点に留意する必要がある。
イ 身近な資料やスライド,写真,テレビ,映画,図鑑などを活用して歴史的事象の具体化に努め,さまざまな学習活動をくふうして学習をいっそう効果的にさせることが望ましい。
ウ 人名・地名・年代などの基礎的事項を精選して基本的事項の理解にとどめ,宗教,思想,学問などの文化の高度な内容や,複雑な社会構造などの学習に深入りしないように留意する。また,特に人物の取り扱いを重視するが,その際には,絶えず歴史的背景と結びつけて正しく理解させることが必要である。
エ 討議,見学,読書,調査,その他種々の学習活動を展開して生徒の自発的学習意欲を高めることが望ましい。
オ 郷土の発展の跡を実地調査させたり,遺跡,遺物を見学させることによって,わが国の歴史の発展を具体的にはあくさせ,郷土との関連についても理解させるように努める。
カ 「わが国の原始・古代」に関する事項の指導においては,社会組織などに深入りしたり,考古学的な興味だけにとらわれて,これらに多くの時間を費やさないように特に留意する必要がある。
キ 「日本の近代化」に関する事項のうち,科学や文化の取り扱いではいたずらに細かな史実の列挙に陥らないように留意し,明治時代の特色を全体としてつかませるように配慮することが必要である。
ク 「二つの世界大戦と日本」に関する事項の指導にあたっては,国内政治の動きと第二次世界大戦にいたる国際関係の変転に重点をおくものとする。また,この大戦について人類の不幸と世界の平和についても考えさせることがたいせつである。
1 目 標
(2) 世界史の発展にみられる各時代の概念のあらましを理解させ,それぞれの時代のもつ歴史的意義を理解させる。
(3) 近代史の学習に重点をおき,特に民主主義の成立と発展,近代産業の形成,国際関係の推移,近代文化の成長などについて理解させる。
(4) 人類の歴史の発展には,民族,時代および地域によってそれぞれ特殊性があるとともに,その底には共通な人間性のあることを理解させる。
(5) 各時代における社会と文化は,それぞれの時代における人々の努力の集積によって発展してきたことを理解させ,歴史の発展における個人や集団の役割について認識させる。
(6) 学問,宗教,芸術などの文化遺産を,それらが生み出された時代との関連を通して理解させ,これを尊重して,新しい文化を創造し発展させようとする意欲を高める。
(7) 国際社会において日本人の果たす役割について認識させ国民的自覚を高め,国際協力を進め,世界の平和を確立し,人類の福祉を増進しようとする態度を養う。
(8) 正確な史実に基づき,種々の学習活動によって,歴史的思考力や公正な判断力を養い,真実を追求しようとする態度を育てる。
(1) 文明の成立と古代国家の発展
原始社会と文明の発生
ギリシャ文明とローマ文明
古代インド文明,中国古代文明
中世ヨーロッパの社会
中央集権国家への動き
フランス革命,産業革命の進行,科学の進歩と近代文化の発達
列強のアジア進出
ベルサイユ体制と民族独立運動
世界恐慌と全体主義のだい頭
第二次世界大戦
アジア・アフリカ諸民族の独立
現代の文化,国際平和と国際協力
(2) 内容に掲げた事項の組織・配列はそのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては,教科および科目の目標に基づいて,各事項のまとめ方や順序をくふうするとともに生徒の生活経験や関心等も考慮して適切な指導計画を作成することが望ましい。
(3) 時代区分は,指導上の観点によっていろいろなものが考えられるが,細かな時代区分だけにとらわれて,大きな時代の流れや,その時代の社会の特色を見失わないように留意する必要がある。
(4) 近・現代史の学習においては,日本史との関連を特に密にしむだな重複を省くとともに,適切な時間を充ることが望ましい。
(5) じゅうぶんな準備がある場合には,たとえば第2学年および第3学年を通して「日本史」および「世界史」の内容を学習させるなどの指導計画を作成し実施することもできる。この場合には,科目の目標および内容ならびに指導計画作成および指導上の留意事項にそった指導でなければならない。
(6) 指導にあたっては,次の諸点に留意する必要がある。
イ 身近な資料やスライド,写真,テレビ,映画,図鑑などを活用して歴史的事象の具体化に努め,さまざまな学習活動をくふうして学習をいっそう効果的にさせることが望ましい。
ウ 人名,地名,年代などの基礎的事項を精選して基本的事項の理解にとどめ,宗教,思想,学問などの文化の高度な内容や,細かな史実の列挙を避け,複雑な社会構造,それぞれの国の特殊性や複雑な様相などの学習に深入りしないように留意する。また,特に人物の取り扱いを重視するが,その際には絶えず歴史的背景と結びつけて正しく理解させることが必要である。
エ 討議,見学,読書,調査,その他種々の学習活動を展開して生徒の自発的な学習意欲を高めることが望ましい。
オ 内容(4)の指導にあたっては,第二次世界大戦に至る国際関係の変転に重点をおくものとする。大戦については人類の不幸と世界の平和についても考えさせることがたいせつである。
1 目 標
(2) 郷土,日本の諸地域,世界の諸地域における生活には,地方的特殊性と一般的共通性とがあることを明らかにし,それらが成立した自然的,歴史的,社会的の条件やその意義を総合的に考えさせ,他地域の人々を偏見や先入観にとらわれないで,正しく理解しようとする態度を育てる。
(3) 現代社会は世界各地域相互の生活がますます密接になってきたことを理解させるとともに,これらの各地域における生活を世界的視野に立って考えさせ,国家および世界の一員としての自覚を高め協調の精神を養う。
(4) 自然環境そのものはあまり変化しないが,人間の自然に対するはたらきかけのしかたは,科学・技術の進歩によって発展するものであることを理解させる。また,自然をいっそう利用して人間の生活を向上させるためには,自然を深く理解しその愛護に努めるとともに,適切な利用と開発の方法を創意しくふうすることがたいせつであることを理解させる。
(5) 野外観察や調査などを行ない,地理的事象に直接ふれ,それを正しく観察したり考察したりする態度や能力を養う。
(6) 地図を読み,描き,これに親しませ,また,統計その他の資料を正しく取り扱わせて,いろいろな事象の実態,特色,傾向などを読み取る能力を育てる。
(1) 郷 土
人間生活と自然との関係
郷土の地理的諸問題
資源の開発と産業・交通
集落・人口
日本の産業・交通・貿易
住民と人口
資源の開発と産業
主要国の国がらとその国際的地位
政体,国民の民族構成,国民性,わが国との関係
世界の資源と産業
世界の情勢と日本の地位
また,「理科」の「地学」,職業に関する教科・科目その他の高等部の他の教科・科目などとの関連にも留意する。
(2) 内容に掲げた事項の組織・配列は,そのまま指導の順序やまとまりを示すものではない。各学校においては,教科および科目の目標に基づいて,各事項のまとめ方や順序をくふうし,適切な指導計画を作成することが望ましい。その際,指導する事項が相互に関連づけられ,生徒の思考がしだいに発展していくように構成することが必要である。
(3) 「(2)日本の諸地域」および「(4)世界の諸地域」の学習指導に配当する時数は,それぞれ年間最低授業時数のおよそ1/3程度とすることが適当である。
(4) 「(2)日本の諸地域」「(3)全体としての日本」,「(4)世界の諸地域」および「(5)全体としての世界」は,相互に関連し,かつ深めあう関係にある。また「(1)郷土」に関する理解は,日本や世界に関する事項を学習することによって,いっそう深めることがたいせつである。
(5) 地理的分野の学習が列挙的,平板的な知識の習得に終わることのないようにするため,指導する事項を精選し,適切な指導法をくふうして,地理的思考力を養うことがたいせつである。
(6) 地図については,読図に関する基礎的事項として指導するだけではなく,内容の各事項に関連させ,その取り扱いに習熟させる。
(7) 内容の各事項の指導を通して,常に日本の問題に関連させて考察する態度を育てるとともに,世界および日本の地誌的理解を深める。
(8) 指導計画の一部として野外調査のための時間を設けて実施する。その場合,形式的な取り扱いに流れたり,また過大な計画に陥ったりすることのないように,じゅうぶん留意する。
(9) 地図のほか,地球儀,空中写真などや,統計,新聞,紀行文その他の資料を有効に使用し,教材として適切なスライド,放送,映画などを精選し活用して,地理的事象を具体的に理解させる。また,討議,見学その他さまざまの学習活動を通して,学習をいっそう深めることがたいせつである。