第11節 理容・美容

 

第1款 目   標

1 理容師・美容師として理容業・美容業に従事する者に必要な知識,技能を習得させ,これにふさわしい態度と習慣を養成することを目標とし,次の事項の達成を目ざすものとする。

(1) 社会人として,また理容師,美容師としての教養を習得させ,特に理容・美容が社会生活,文化生活に重要な意義をもつことを理解させ,理容師・美容師としての使命を理解させる。

(2) 理容師・美容師に必要な人体生理,衛生,消毒等に関する知識,態度を習得させる。

(3) 理容師・美容師に関する基礎的技術を習得させ,研究的態度と創意くふうの習慣を養う。

(4) 経営,管理に関する基礎的知識を習得させ,物事を合理的能率的に処理する能力と態度を養う。

第2款 各 科 目

第1 衛 生 法 規

 1 目  標

 理容師・美容師として必要な衛生法規の概要を理解させる。

 2 内 容

(1) 法制大意

 法制の意義,法令の種類,衛生法規の特殊性

(2) 衛生行政

 行政の意義,衛生行政,わが国の衛生行政機構

(3) 理容師法・美容師法

 この法律の目的,用語の定義,免許,登録,行政監督,罰則及び業務,その他の事項

(4) 関係法規

 保健所法,伝染病予防法,結核予防法,労働基準法,その他の衛生法規

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) もよりの保健所について実地に調査させ,保健所がどのような活動をするところか,理容または美容の業務とどのように関連するところかを学ばせる。

(2) 理容所,美容所を見学させ,実際の業務内容,理容師法または美容師法との関連を理解させる。

(3) 罰則については行政,司法の両処分を知らせ,法の精神を具体的に明らかにする。

 

第2 生理解剖・消毒法

 A 生 理 解 剖

1 目 標

 人体についての基本的,総合的な知識の習得を目的として,解剖学と生理学の学問的区分にとらわれることなく人体の構造,機能の両面を学ばせ生理解剖学への関心を高める。

2 内 容

(1) 生理解剖総説

 生理学および解剖学の意義,人体構造の概要

(2) 骨格,筋肉系統

 人体の外部の名称,骨格の構造とその機能,筋肉の種類とその機能

(3) 消化器,泌尿・生殖器系統

 消化器の構造とその機能,泌尿,生殖器の構造とその機能

(4) 呼吸器,循環器系統

 呼吸器の構造とその機能,循環器の構造とその機能

(5) 神経,感覚器,内分泌系統

 神経系の種類とその機能,感覚器の種類とその機能,内分泌器官の種類とその機能

3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 適切な人体の模型,標本,スライド,掛図等の視聴覚教材等の活用によって学習の効果を高めること。

(2) 動物の実験,解剖等によりその知識をさらに深めること。

(3) 骨格と食物,栄養と筋肉の関係等についてもじゅうぶん指導すること。

(4) 自己の健康を守り,日常生活の実践をどのようにすればよいか,また健康と日常生活や社会との関係,健康の考え方,保健活動等,理容師・美容師としての立場からじゅうぶん指導すること。

(5) 性別による人体の特徴や,日本人と外国人との違い,人体の美と健康との関係等も指導すること。

 B 消 毒 法

1 目 標

 衛生措置の基準を守ることによって,公衆衛生の維持と増進に寄与することは,この業務に従事する者に課せられた責務であり,消毒が衛生措置のうえできわめて重要であることを理解させ,消毒の方法と,その技術に習熟させる。

2 内 容

(1) 消毒法総論

 消毒の意義,理容,美容の業務と消毒との関係,消毒法の種類

(2) 消毒法各論

 理学的消毒法,化学的消毒法

(3) 消毒の実際

 対象別の消毒方法,各種消毒薬の調製方法,理容所,美容所においての消毒方法

3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 消毒法は実験がたいせつであるので,理論のみに偏しないよう留意することが必要である。

(2) 常に未消毒のものと既消毒のものとの区別を明らかにして一定の容器を定めて置くことや,手指の洗じょうや消毒前後の処置をじゅうぶんにするように指導する。

(3) くし,ふけとり,ブラシ,はさみ,バリカン,かみそり,布片,タオル類の直接皮ふに接する器具の消毒は接客上最も必要なものであるので,そのつど消毒することを忘れない習慣を養うようにすること。また,つば・たんの消毒も接客上必要なことであるので,注意するように指導する。

(4) 理容師,美容師は危険な刃物や薬物を用いて技術を行なうものであるから,外傷,出血,火傷,熱傷,薬傷等に対する応急処置について指導しておくことが必要である。

第3 伝染病・細菌・公衆衛生

 A 伝染病・細菌

1 目 標

 伝染病の予防についての責務を果すために心得ておかなければならない知識を習得させ,これを実践する態度を養う。

2 内 容

(1) 細菌学概説

 病原微生物の種類とその特徴,病原微生物の生活現象,人間と病原微生物との関係

(2) 疫学概説

 法定伝染病と,届出伝染病,感染と発病,免疫と予防接種,伝染病予防の原則

(3) 急性伝染病

 呼吸器系伝染病とその予防,消化器示伝染病とその予防,媒介伝染病とその予防,その他の急性伝染病とその子防

(4) 慢性伝染病

 結核とその予防,トラホームとその予防,性病とその予防,らい,その他の慢性伝染病,その他の主要慢性疾患とその予防

3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 学習全般を通じて,各種の統計,新聞その他の資料などを利用して図表に表わしたり,保健所,病院等を見学して,具体的事例に即して指導する。

(2) 細菌の標本の観察,あるいは掛図を用いるなどの方法によって細菌に関する理解を深める。

(3) 地域における伝染病発生の状況について調べさせ,各種伝染病発生の自然的,社会的条件について考察させる。

 B 公 衆 衛 生

1 目 標

 理容業・美容業と公衆衛生との関係がきわめて密接なものであり,公衆衛生の維持と増進について責務があることを理解させ,とくに環境衛生についての知識を得させる。

2 内 容

(1) 公衆衛生概説

 公衆衛生の意義,公衆衛生の歴史,保健所の機能,わが国公衆衛生の現状,公衆衛生と衛生教育

(2) 環境衛生

 環境衛生の意義,空気・日光・水・衣食住等の衛生

(3) 予防衛生

 栄養,口腔衛生,精神衛生と優生保護

3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 理容師・美容師は,公衆衛生の知識を得るとともに,特に社会の衛生環境を改善していく責任をもっているものであるから,その精神と態度をじゅうぶん培うように配慮する。

(2) 医師,保健婦,食品衛生監視員,環境衛生監視員の仕事の内容等についても指導する。

(3) 衛生の思想,知識が乏しいため不衛生,不注意から伝染病が発生した実例を具体的に指導する。

(4) 消毒法や伝染病学とも関係する部分が多いので指導計画の作成については,よくこれらの関連を図る。

第4 皮 膚 科 学

 1 目 標

 皮膚とその付属器官の構造,機能,衛生及び疾病について学ばせ,傷害,疾病などにより皮膚および毛髪などの附属機関に衛生上好ましくない結果を招くおそれのあることを認識させ,その発病の防止のために必要な態度と能力を身につける。

 2 内 容

(1) 皮膚の解剖と生理

 皮膚の構造,皮膚の機能,皮膚の発生と老衰

(2) 皮膚の付属器官

 毛髪の構造とその種類,毛髪の機能とその衛生

その他の皮膚の付属器官と皮膚色素

(3) 皮膚の衛生

 皮膚と毛髪の手入れ,皮膚とその環境,皮膚とその栄養

(4) 皮膚の疾患

 皮膚病の病理と手当,皮膚病の種類,伝染する皮膚病の予防,創傷伝染病とその予防

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 皮膚に関する事項を指導するにあたっては,実験・観察等により具体的に学習させること。

(2) 皮膚や毛髪の生理と衛生的処置についてはとくに公衆衛生学と消毒法と関連させて学習効果を高めるようにすること。

第5 香 粧 品 化 学

 1 目 標

 薬品の合理的な取り扱いの方法に習熟させ,香粧品の化学的性質を理解させこれを正しく使用するために必要な事項を身につけさせる。

 2 内 容

(1) 化 学

 溶液,濃度,酸,塩基,中和及び電離,コロイド,金属・水・合成樹脂

(2) 香粧品化学総論

 香粧品の定義とその分類,香粧品の原料

せっけん,化粧水,クリーム,おしろい,着色料,美爪料,ポマード,頭髪用香水,チック

(3) 香粧品化学各論

シャンプー,頭髪香水,整髪料,パーマネントウエーブ用製品,染毛剤,脱毛剤

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 理論と併行して,なるべく実験や観察を行なう機会を多く与え理解を深めさせる。

(2) 化学薬品の取り扱い方を学ばせ,所定の濃度の溶液の調製に習熱させるように指導する。

(3) クリーム,化粧水およびポマードの調製の実験を行なって理解を深めること。

第6 理 美 容 物 理

 1 目 標

 理容・美容器具の合理的な取り扱いの方法に習熟させて,科学的に考察する態度を養い,あわせて危険防止についての注意を身につけさせる。

 2 内 容

 熱の性質とその作用,光の性質とその作用

 磁気と静電気,電流の性質とその作用直流,交流,電気機械器具

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 理論と併行してなるべく実験を行なう機会を多く与えて理解を深めさせること。

(2) 電気クリッパー,バイブレーター,紫外線放射機,ヘアードライヤーなどの理容・美容技術に応用する電気器具についてそれを分解して構造を学ばせること。

第7 理容理論・実習

 1 目 標

(1) 理容の基礎的技術についての知識を得させ,衛生的,能率的に実践する態度と習慣を養い,くふう創造の能力を身につけさせる。

(2) 理容器具の正しい取り扱い方法と理容の基礎的技術を作業の実際について指導し,これに習熟させる。

(3) すぐれた理容技術は,経験によってのみ得られるものではなく,合理的な方法によっては握されなければならないことを理解させる。

 2 内 容

(1) 理容概論

 理容師の社会的使命,理容の沿革,理容業の経営

(2) 理容器具

 理容用具,バリカン,レーザー,ストラップ,日本かみそり,と石,くし,はさみ,その他理容に必要な器具

(3) 理容技術

 理容の調和と技術前後処置,剃毛技術,ふけ取り技術と洗髪,頭部処置と美顔術,シンジング,アイロン,染毛技術,レーザー,日本かみそりの研磨法,はさみの研磨法,せっけんの塗布法およびスチームタオルのてん包法,剃毛技術の実習,剃毛後の顔面処置法,パック美顔術,剪髪技術の実習,ふけとり技術の実習,洗髪技術の実習,頭部処置法の実習,美顔術の種類とその実習,ヘヤーアイロンの技術の実習,シンジング技術の実習,染毛技術の実習,美爪技術の実習,アイパー技術,スカルプチャーカット,ボンバージュセット

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 理容室の整理整とんはもとより常に能率を高めるための器具,機械の位置の定め方等を研究して指導する。

(2) すぐれた理容室を見学して知識を広めるとともに接客については,具体的に,接客用語や接客態度について指導する。

(3) 理容の理論は実習に即して指導すべき部面が,広範囲をしめているので理論と実習を関連させて,指導計画を作成し,効果をあげるようにする。

(4) 実習の成果を生徒相互に評価させて,技能の向上に役立たせる。

第8 美容理論・実習

 1 目 標

(1) 美容の基礎的技術についての知識を得させ,衛生的,能率的に実践する態度と習慣を養い,くふう創造の能力を身につけさせる。

(2) 美容器具の正しい取り扱い方法と美容の基礎的技術を作業の実際について指導しこれに習熟させる。

(3) すぐれた美容技術は,経験によってのみ得られるものではなく,合理的な方法によっては握されなければならないことを理解させる。

 2 内 容

(1) 美容概説

 美容師の使命,美容の沿革,美容業の経営,美容用具

(2) 美容技術

 美容の調和と頭部処理,セット

ミシンウェーブ,コールドウェーブ,ミシンレスウェーブ

洋髪,日本髪頭部処置法とその実習,セット実習,ミシンウェーブの実習,コールドウェーブの実習,洗髪とゆすぎの実習,マセルウェーブの実習,かつらの取り扱い方,シンジング技術の実習

染毛技術の実習,美顔術の種類とその実習

マニキュアー,ペテキュアーの実習

美容体操の実習

薄化粧と厚化粧および,ほお,くちびる,眼・まつ毛・眉毛等の化粧実習,着付の実習,かみそりの研磨法,はさみの研磨法

 3 指導計画の作成および指導上の留意事項

(1) 美容室の整理整とんはもとより常に能率を高めるための器具,機械の位置の定め方等を研究して指導する。

(2) すぐれた美容室を見学して知識を広めるとともに接客については,具体的に,接客用語や接客態度について指導する。

(3) 美容の理論は実習に即して指導すべき部面が,広範囲をしめているので,理論と実習を関連させて,指導計画を作成し,効果をあげるようにする。

(4) 実習の成果を生徒相互に評価させて,技能の向上に役立たせる。