第1款 目 標
運動の合理的実践を通して,心身の調和的な発達を促すとともに,個人および集団の生活における健康や運動についての理解を深め,これらに関する問題を自主的に解決する能力や態度を養い,国民生活を健全にし,豊かにしようとする意欲を高める。
この目標は,「保健体育」の「体育」と「保健」の両科目のもととなるものである。指導にあたっては,両科目の目標とともに教科の目標の達成に努めなければならない。
第2款 各 科 目
第1 体 育
1 目 標
(2) 運動についての科学的な理解に基づき,合理的な練習によって,運動技能を高めるとともに,生活における運動の意義についての理解を深め,生活を健全にし,豊かにする能力や態度を養う。
(3) 運動における競争や協同の経験を通して公正な態度を養い,自己の最善を尽くし,相互に協力して,個人や集団の目標の実現に向かって努力する能力や態度を養い,社会生活における望ましい行動のしかたを身につけさせる。
A 徒 手 体 操
イ 上肢(し)の運動(屈伸,挙振,回旋)
ウ くびの運動(屈,転,回旋)
エ 胸の運動(伸屈)
オ 体側の運動(屈,倒)
カ 背腹の運動(屈,倒)
キ 胴体の運動(転,回旋)
イ 各部位の運動は,その方法や形のみにとらわれず,リズミカルな動きを重視する。
(3) 盲学校においては,特に固癖の予防きょう正,疲労の回復に活用させるようにする。
(1) 懸垂運動
振り上がり
け上がり
ともえ
腕立て前(後)転
振りとび
横とび越しおり
開(閉)脚とび越しおり
2〜3種目の連続
腕立てとび越し(斜め,あおむけ)
なわとび(短なわ,長なわ)
後転(開脚,伸膝(しつ))
腕立て前(側)転,倒立前転
2〜3種目の連続
(1) 懸垂運動
懸垂振り
さか上がり
前回りおり
腕立て前(後)転
腕立てとび越し(開,閉脚)
腕立て横とび越し(正面,あおむけ)
なわとび(短なわ,長なわ)
補助倒立前転
2種目程度の連続
跳−片足とび,両足とび
回転−1/2回転,1回転
支持姿勢−片足支持,腕と足との支持
上がり方−腕立て懸垂の姿勢から上がる,腕立てとび上がり
おり方−とびおり,腕支持でおりる。
(2) 正しい補助の方法を理解し,互いに協力し合って行なう。
(3) 適切な準備運動を行ない,安全に注意して練習する。
(2) 懸垂,跳躍,転回,平均の各運動のうちからそれぞれ数種目を選択し,簡易な規則で競技を行なわせてもよい。
(3) 懸垂,跳躍,転回,平均の各運動のうちから2種目以上を選択する場合には,異なった種類のものを選び,同じ種類のものに片寄らないようにする。
(4) 指導にあたっては,用具の整備,点検を行なうとともに,生徒の能力および技能の発展段階などを考慮し,特に安全に注意する。
次の走と跳の運動のうちから,男子はそれぞれ2種目以上,女子はそれぞれ1種目以上,投の運動のうちから1種目以上を選択する。
(2) 準備,審判のための役割を決め,責任をもってそれをなしとげる。
(3) 互いに協力し合って練習する。
(4) 投てきでは,特に他の人に傷害を与えないようにする。
イ 投の運動では,男子は主として砲丸投げ,女子は主としてソフトボール投げを取り扱うようにする。
ウ 投てき種目を指導する場合には,特に安全に関する練習上の約束を決め,それを厳守させる。
(3) 視力および視機能の障害に応じて助走の指導を行なうこともできる。
1 次の運動の技能や規則を習得し,正規の規則に準じた試合ができるようにする。
(すもう)
(2) 前さばきの技能(あてがい,しぼり込み,巻きあげ,はねあげ,巻き返しなど。)
(3) 押し,寄りの技能
(4) 投げの技能(すくい投げ,巻き落とし,うわ手投げ,出し投げなど。)
(5) 試合およびそれに必要な規則
(2) 投げわざ
イ 浮き腰,大腰,つり込み腰,払い腰,はね腰
ウ ひざ車,ささえつり込み足,大内刈り,大外刈り,小内刈り,出足払い,送り足払い
イ 横四方固め,かみ四方固め
(2) 礼儀正しく,常に自己の最善を尽くして練習や試合をする。
(3) 服装や練習場所を清潔にし,安全に留意して行なう。
イ 押し,寄りの技能は個々に取り扱うだけでなく,これらの技能を適宜組み合わせて練習させる。
ウ 投げの技能は安全なものを選び,押し,寄りの変化として指導する。
エ 練習や試合において,手刀,けん突き,向こうげり,頭髪をつかむ,頭突き,のどわ,指取り,張り手,さばおりなどの禁じわざを用いないようにさせる。
オ 中学部ですもうを履修しなかった生徒には,基本動作,前さばき,押し,寄りの技能などをじゅうぶん身につけさせてから,投げの技能を指導するようにする。
イ 投げわざの指導にあたっては,既習のわざを利用した連絡わざも取り扱うようにする。
ウ しめわざと関節わざについては,技能の上達した者についてのみ指導するようにする。
エ 中学部で柔道を履修しなかった生徒には,受け身およびくずしと体さばきなどの技能をじゅうぶんに身につけさせてから,投げわざや固めわざを指導するようにする。
男 子
ハンドボール
バレーボール
卓 球
サッカー
ベースボール
以上の運動種目から3種目以上
ハンドボール
バレーボール
卓 球
ベースボール
以上の運動種目から2種目以上
(バスケットボール)
イ 作戦および規則
(2) はげしく競う場合でも平静さを失わず,相手の立場を尊重して公正にプレーする。
(3) 審判の判定にすなおに従う。
(4) 急激なプレーに適応できるように準備運動をじゅうぶんに行ない,規則を守り,安全に運動を行なう。
イ 球技の指導にあたっては傷害防止の立場からも特に留意する。
人工呼吸法
(2) 予定した距離は泳ぎきるように努力する。
(3) 競泳を計画し,各自の役割を果たす。
(4) 水泳の一般心得や水泳場の遵守事項を守って安全に泳ぐ。
(5) 水の汚染を防止するように協力する。
(6) 自己の泳力を過信して無理な泳ぎをしない。
(7) からだの調子が悪くなったときは,指導者に告げてから休む。
(2) 足の動作その他の基本動作の練習は,授業の初めや終わりなどに適宜行なわせる。
(3) 初心者に対しては,別に計画を立てて指導する。
(4) 近くの海などを使用して泳法を実施する場合は,競泳的な種目にかえて遠泳に適する泳法を選び,その泳法に習熟させ,長く泳ぐような練習計画を立ててもよい。
(5) クロール,平泳,横泳のうち,いずれか一つに習熟させることが望ましい。
1 次のダンスの技能を習得し,フォークダンスを楽しく踊れたり,美しい作品がつくれるようにする。
(フォークダンス)
(2) それぞれの民踊に応じ,ステップや動作を相手に合わせてリズミカルにできるようにする。
労働のリズム,音楽によせて,人間の感情
(2) 役割や配役を分担し,責任をもって果たす。
(3) 題材および内容や表わし方についてグループで決定し,協力して一つのものを完成する。
(4) 創作の手順を理解し,グループ内または他のグループと協力して練習する。
(5) 目標を知り,計画をもって学習を進め,また発表会を計画して,じょうずに運営する。
(6) 互いに作品を批判し合って美意識を高める。
(2) フォークダンスは,現在および将来のレクリエーションとして,生活に活用されるように内容や指導の方法をくふうする。
(3) フォータダンスは,できるだけ男女いっしょに学習させるようにする。
(4) フォークダンスと舞踊創作の指導時数の割合は,各学校の実情に応じて適宜配分する。
(5) 舞踊創作は,美的原理の理解に基づいてよい作品ができるようにする。また,広く社会の舞踊に対しても理解を深めるように指導する。
なお,登山,キャンプ,スキーなどの野外活動に関しては,特に安全のために必要な自然に対する知識,計画の立て方なども取り扱う。
(2) 各領域の運動種目の選択にあたっては,学年の発達段階を考え,低学年では身体の発達を促進させるような種目,高学年では将来の生活に取り入れやすい種目に重点をおくようにする。
(3) 適当な水泳場がなく,水泳を実施することができない場合には,これを欠くことができる。
(4) 指導計画の作成や指導にあたっては,それぞれの運動の特性,生徒の健康状態,体力,視力およびその他の視機能の障害の状態,運動の経験,男女の特性を考慮するとともに,施設,用具なども考慮する。また特別教育活動や学校行事等と関連させて自発的,積極的な学習が行なわれるようにすることが望ましい。
(5) 身体機能や基礎的運動能力などの測定を行ない,生徒に自己の体力の現状をはあくさせるとともに,これらを指導のための資料として活用し,学習効果を高めるようにする。
(6) 各運動の指導にあたっては,指導のねらいや運動の特性に応じ,単に運動技能の指導のみに陥ることなく,必要な内容が片寄りなく学習されるように考慮する。
(7) 専門教育を主とする学科については,生徒の日常生活や学習環境などをじゅうぶん考慮し,運動の片寄りを防ぎ,職業による固癖を予防するなど,生活との調和を考えて,計画し指導する。
(8) 体育理論の指導は,体育の全体計画の中に位置づけ,できるだけ各運動の指導と関連を図るとともに,保健や他教科との図連を図り,それらの学習成果を有効に利用して指導する。
(9) 各運動の指導にあたっては,病弱者,身体虚弱者および肢体不自由者などに対しては,学校医と連絡をとり,その程度に応じて適切な指導をする。
(10) 姿勢や歩行に関する指導は,中学部の基礎の上に立ち基本的事項を体育の分野で行なうほか,保健の分野や他の教科,特別教育活動および学校行事等の指導とも関連を図って行なう。特に歩行指導については各生徒が安全歩行,ひとり歩きの自信と能力を高めるよう配慮する。なお,歩行に関する指導計画を立てる際は各生徒の視力およびその他の視機能の障害の状態や個人差などに即応するよう留意する。
(11) 集団行動については,各運動の指導と関連させ,その必要性を理解させて適切に指導する。
1 目 標
(2) 労働について保健の立場から理解させ,これに基づいて健康生活を計画し実践する能力と態度を養う。
(3) 公衆衛生について系統的に理解させ,集団の健康を増進し,国民保健の発展に寄与する態度と能力を養う。
(1) 人体の生理
(イ) 恒常性の維持
(ウ) 神経調節,化学調節
(エ) 拮(きつ)抗作用
(イ) 馴(じゅん)化
(ウ) 限度と至適条件
(イ) 貯蔵物質と貯蔵器官
(イ) 老 化
(イ) 全体性の維持と生活
(ウ) 生活の構造と調和統一
(イ) 内因と外因
(イ) 症 状
(イ) 治 療
(ウ) 後遺症
(エ) 死
(イ) 対人関係の複雑化
(ウ) 自我の確立
(イ) 行動の生理学的基礎
(ウ) 青年期における身体と精神との関連
(イ) 適応の機制
(ウ) 不安と葛藤(かっとう)
(エ) 欲求の充足と不満
(イ) 適応の個人差
(ウ) 個人差の判定
(エ) 家族関係と社会的適応
(イ) 神経症・精神病・精神薄弱
(イ) エネルギー代謝
(ウ) 疲労と作業の合理化
(エ) 労働適性
(イ) 職業病
(イ) 婦人と労働
(ウ) 農業と労働
(イ) 災害による損失
(ウ) 機能欠損とその後措置
(エ) 災害防止
(イ) 作業条件と休養・睡眠
(ウ) 作業条件・作業環境と栄養
(エ) 家事労働の合理化
(イ) 保健管理
(イ) 母子衛生・家族計画・国民優生
(ウ) 栄養改善
(エ) 環境改善
(オ) 公衆衛生と社会保障・社会福祉
(イ) 公衆衛生の発展
(2) 特別教育活動,学校行事等との関連を密にし,自発的,積極的な学習が行なわれるようにする。
(3) 学校における保健管理との関連を考慮して,これを学習に取り入れるとともに学習の効果のあがるようにする。
(4) 家庭や地域社会における保健問題の解決に資するようにする。
(5) 人体の生理,精神衛生,公衆衛生などの学習においては,性教育を考慮し,成熟と男女の性別,月経・妊娠出産の生理,結婚と健康などについて指導する。この学習にあたっては,性の純潔に関する道徳を高めることをねらいとして,男女の性別を考慮して指導する。
(6) 人体の病理,労働と健康・安全,公衆衛生などの学習においては,中毒とその予防の指導を考慮する。
(7) 精神衛生については,主として精神的健康の立場から取り扱うようにする。
(8) 労働と健康・安全,公衆衛生などの学習においては,法令の指導におわらぬよう考慮する。
(9) 労働と健康・安全の学習においては,生徒の日常の生活経験をもとにして,学習の効果のあがるようにする。
(10) 学習指導に際しては,実習・調査・見学などを活用し,学習の効果のあがるようにする。