第10節 音     楽

 

第1款 目    標

 

1 音楽の学習経験を通して,音楽の芸術的な表現や楽器の調律に必要な知識や技術を習得させる。

2 音楽の学習経験を通して,美的感覚を洗練し,創造性に富む音楽の表現や鑑賞の能力を高める。

3 音楽の学習経験を通して得た知識や技能をもって,わか国音楽文化の発展に寄与する態度を養う。

 

第2款 各  科  目

 

第1 音 楽 理 論

 1 目  標

 音楽学習に必要な基礎的な知識や法則を習得させ,理論的に思考する能力を養うとともに,これらを音楽の実践に活用する能力を身につけさせる。  2 内  容 (1) 楽 典

(2) 和声法

(3) 対位法

(4) 楽式論

(5) その他

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 音楽理論の学習においては,常に実習をともなうようにし,また実音と結びつけて取り扱うように配慮する。

(2) 和声法においては,その概論について行ない,課題や楽曲の分析などを通して,利声に関する思考力を育成するように考慮する。

(3) 対位法においては,その概念をはあくさせるようにする。

(4) 楽式論においては,基礎楽式を中心とし,楽曲構成原理の概念をはあくさせるようにする。

第2 音 楽 史

 1 目  標

 日本音楽および西洋音楽の変遷について文化的背景と結びつけながら考察し,各時代における音楽の性格と音楽の文化的意義とを明らかにすることによって,音楽に対する理解を深める。  2 内  容 (1) 西洋音楽史

(2) 日本音楽史

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 単位数に応じて取り扱うべき事項を精選して,古代から現代のものにまでふれることができるように留意する。

(2) 音楽史上の顕著な事項について,その生成の理由や原因,あるいはその歴史的意義をはあくさせるなどして,音楽に対する適正な解釈が与えられるように考慮する。

(3) 日本音楽史の取り扱いでは,わが国の音楽に対する愛情や正しい理解をもたせるように配慮する。

(4) 鑑賞との関連を保ち,レコードなどをじゅうぶんに活用して,学習効果をあげるようにくふうする。

第3 ソルフェージュ

 1 目  標

 リズム,旋律,和声などの聴取や表出の経験を通して,音楽を感得し,正しく表現するための基礎的能力を養う。  2 内  容 (1) 聴 音

(2) 視 唱

(3) 視 奏

(4) その他

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 音楽理諭との関連について留意する。

(2) 聴音,視唱,視奏などは相互に関連を保って行なう。

(3) 聴音は,リズム,旋律,和声について行なう。

(4) 視唱は,リズム練習,音程練習のほかに,速度,強弱,フレージングなどの練習をも行なうようにする。

(5) 視奏は,視唱に準じて行なうが,できればピアノ,弦楽器,管楽器などに分け,それぞれの楽器の特性に応じた指導を行なうことが望ましい。また,移調や拍子の変更などについても練習することが望ましい。

第4 合  唱

 1 目  標

 合唱による協同の音楽経験を通して,各声部の均衡と各声部の融合とを図り,統一ある演奏のための基礎的技能や態度を身につけさせる。  2 内  容 (1) 合 唱

(2) 重 唱

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 合唱は,和声的な構成をもつ楽曲のほかに,対位的な構成をもつ楽曲をも取り扱うように配慮する。

(2) 合唱の基本的態度として,協調性および指揮に順応することのたいせつなことを理解させ身につけさせるようにする。

 なお,生徒の能力に応じて,指揮の体験をさせるようにする。

(3) 重唱は,生徒の必要や能力に応じて履修させ,二重唱,三重唱等種々の形態による経験をさせるようにする。

第5 合  奏

 1 目  標

 合奏による協同の音楽経験を通して,各声部の均衡と全体の調和とを図り,統一ある演奏のための基礎的技能や態度を身につけさせる。  2 内  容 (1) 合 奏

(2) 重 奏

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 合奏は,楽器専門の生徒以外にもいずれかの楽器を選ばせ,合奏の経験をさせるようにする。

(2) いたずらに楽器数を増すことよりも,合奏の基本的な態度や基礎的技能が積み重ねられ身につくように,体系をもった指導計画を立てるようにする。

(3) 生徒の能力に応じて,指揮の体験をさせるようにする。

(4) 重奏は,生徒の必要や能力に応じて履修させ,二重奏や三重奏等種々の形態による経験をさせるようにする。

第6 声  楽

 1 目  標

 声楽に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 声楽A

(2) 声楽B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 声楽Aは,声楽を専門とする生徒を除く者のうちで,声楽に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(2) 声楽Bは,声楽を専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(3) 生徒の身体的発達をじゅうぶんに考慮し,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成し,いたずらに高い技術を求めるようなことのないように注意する。

(4) 演奏が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(5) 美しい声,よい声,また正しい発音で歌えるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるように考慮する。

(6) 発声器官に関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第7 ピ ア ノ

 1 目  標

 ピアノ演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) ピアノA

(2) ピアノB

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) ピアノAは,ピアノを専門とする生徒を除くすべての生徒が履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(2) ピアノBは,ピアノを専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(3) ピアノA,ピアノBともに,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成し,いたずらに練習曲の進度を早めるなど,生徒の関心のみにとらわれないように留意する。

(4) ピアノBの指導では,伴奏の経験をさせるように考慮する。

(5) 美しい音,よい音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるように考慮する。

(6) 演奏技術が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(7) ピアノに関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第8 弦 楽 器

 1 目  標

 弦楽器の演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 弦楽器A

(2) 弦楽器B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) この科目で取り扱う弦楽器は,バイオリン,ビオラ,チェロ,ダブルベース,ハープを主とし,その他のものは,適宜加えてもよい。

(2) 弦楽器Aは,弦楽器を専門とする生徒を除く者のうちで,弦楽器に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(3) 弦楽器Bは,弦楽器を専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(4) 弦楽器A,弦楽器Bともに,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成し,いたずらに練習曲の進度を早めるなど,生徒の関心のみにとらわれないように留意する。

(5) 美しい音,豊かな音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるように考慮する。

(6) 演奏が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(7) 弦楽器に関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第9 管 楽 器

 1 目  標

 管楽器の演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 管楽器A

(2) 管楽器B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) この科目で取り扱う管楽器は,木管楽器にあっては,フルート,オーボエ,クラリネット,バスーン,金管楽器にあっては,ホルン,トランペット,トロンボーンを主とし,サキソフォーンやチューバなどを加えてもよい。

(2) 管楽器Aは,管楽器を専門とする生徒を除く者のうちで,管楽器に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(3) 管楽器Bは,管楽器を専門とする生徒を対像とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(4) 管楽器A,管楽器Bともに,生徒の身体的発達を考慮し,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成する。

(5) 美しい音,豊かな音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるように考慮する。

(6) 演奏が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(7) 管楽器に問する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第10 打 楽 器

 1 目  標

 打楽器の演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 打楽器A

(2) 打楽器B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) この科目で取り扱う打楽器は,小太鼓とティンパニを主とし,他の打楽器は,適宜扱ってよい。

(2) 打楽器Aは,打楽器を専門とする生徒を除く者のうちで,打楽器に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(3) 打楽器Bは,打楽器を専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(4) 打楽器A,打楽器Bともに,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成する。

(5) 正しいリズム,美しい音,豊かな音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるように考慮する。

(6) 演奏が常に音楽の解釈と結びついて,より音楽的な表現へと向かうように配慮する。

(7) 打楽器に関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第11 こ  と

 1 目  標

 こと演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) ことA

(2) ことB

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) ことAは,ことを専門とする生徒を除く者のうちで,ことに対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(2) ことBは,ことを専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(3) ことA,ことBともに,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成し,いたずらに練習曲の進度を早めるなど,生徒の関心のみにとらわれないように留意する。

(4) 美しい音,よい音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性か高まるように考慮する。

(5) 演奏技術が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(6) ことに関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第12 三  弦

 1 目  標

 三弦演奏に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な表現ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 三弦A

(2) 三弦B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 三弦Aは,三弦を専門とする生徒を除く者のうちで,三弦に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(2) 三弦Bは,三弦を専門とする生徒を対象とする内容で最低6単位を履修させるようにする。

(3) 三弦A,三弦Bともに,確実に基礎的な技術が身につくように指導計画を作成し,いたずらに練習曲の進度を早めるなど,生徒の関心のみにとらわれないように留意する。

(4) 美しい音,よい音が作り出せるような技術の指導とともに,音楽的な感覚や感受性が高まるよう考慮する。

(5) 演奏技術が常に音楽の解釈と結びついて,より高い表現へと向かうように配慮する。

(6) 三弦に関する知識を得させ,技術の裏づけとなるような指導も考慮する。

第13 作  曲

 1 目  標

 作曲に関する知識や技術を習得させ,それらを活用して,芸術的な創作ができる能力を養う。  2 内  容 (1) 作曲A

(2) 作曲B

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 作曲Aは,作曲を専門とする生徒を除く者のうちで,作曲に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修をせるようにする。

(2) 作曲Bは,作曲を専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(3) この科目で扱われるものは,和声法,対位法,楽式論などの理論のほかに,自由な創作をも含める。また,生徒の能力や進度に応じて管弦楽法やフーガ作法なども,適宜取り扱うことがでぎる。

(4) 理論の学習にあっては,単なる知識として終わることなく,常に実音を通して実感に訴えて行なう。

(5) 作曲に必要な創造力や構成力の基礎となる感覚と感受性を高めるとともに,あらゆる機会をとらえて創作意欲を刺激するように留意する。

(6) いろいろな楽器や声に関する理解を深め,創作についての広い経験をもたせるように配慮する。

第14 調律理論

 1 目  標

 調律に関する他の科目の基礎として楽器の構造や調律の原理および楽器修理に必要な知識を理解させ,これを実際に応用する能力を養う。  2 内  容 (1) 楽器の構造        (2) 調律の原理

(3) 楽器の修理        (4) その他

 3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 楽器の構造は,ピアノその他の楽器について理論的にその機能を理解するよう指導する。

(2) 調律の原理は,調律に必要な音響学,力学などを応用して,正確な調律ができるように留意する。

(3) 楽器の修理は,楽器の破損,摩滅した部品などが修理できるよう材料の選択,工作法などについても指導する。

第15 楽 器 史

 1 目  標

 東洋・西洋の楽器の変遷および各時代の楽器についてその構造,音階,調律法などを理解させ,現代の調律に対する理解を深める。  2 内  容 (1) 東洋楽器         (2) 西洋楽器  3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) この科目の指導にあたっては,「音楽史」との関連に留意する。

(2) 東洋楽器は,日本,中国の楽器の変遷と音階の変化などに重点をおいて指導する。

(3) 西洋楽器は,西洋楽器の歴史的背景,変遷,ピアノ・オルガン等の構造,音階,調律の変化などについて学ばせ,現代の音階に至るまでの過程などをはあくさせるようにする。

第16 調律実習

 1 目  標

 調律に関する技術や態度を実験的,体験的かつ総合的に学習させる。  2 内  容 (1) 調律A          (2) 調律B  3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) 調律Aは,調律を専門とする生徒を除く者のうちで,調律に対する興味や関心をもつ者が選んで履修する内容で,最低3単位を履修させるようにする。

(2) 調律Bは,調律を専門とする生徒を対象とする内容で,最低6単位を履修させるようにする。

(3) 調律の実習は主としてピアノについて行ない,必要に応じてハーモニカ,オルガン等についても指導することが望ましい。

(4) この科目の指導にあたっては,「調律理論」および「楽器修理実習」との関連に留意する。

(5) 指導にあたっては,できるだけ楽器製作所等の見学・実習を計画するよう配慮する。

第17 楽器修理実習

 1 目  標

 楽器の破損,摩滅を修復するための知識と技術を習得させる。  2 内  容 (1) ピアノの修理       (2) その他の楽器の修理  3 指導計画作成および指導上の留意事項 (1) この科目の指導にあたっては,「調律理論」および「調律実習」との関連に留意する。

(2) ピアノの修理は,破損,摩滅などの部品の取り替えや修理に重点をおいて指導する。

(3) その他の楽器の修理は,リード楽器その他について,(2)に準じて指導する。

(4) 指導にあたっては,いろいろな楽器の保全についても留意する。