第6節 美    術

 

第1 目  標

1 絵画や彫塑などの表現や鑑賞を通して,美術的な表現意欲を高め,創作の喜びを味わわせる。

2 色や形などに関する学習を通して,美的感覚を洗練し,美術的な表現能力を養う。

3 わが国および諸外国のすぐれた美術作品を鑑賞させ,自然に親しませて,美術や自然美を愛好する心情や鑑賞する力を養う。

4 美術の表現や鑑賞を通して,情操を豊かにするとともに,美術的な能力を生活に生かす態度や習慣を養う。

 以上の目標の各項目は,相互に密接な関連をもって,全体として美術科の目標をなすものであるから,指導にあたっては,この点を常に考慮しなければならない。

 

第2 各学年の目標および内容

〔第1学年〕

1 目  標

2 内  容

 A 表  現

(印象や構想などの表現)

 印象や構想などの表現を,以下写生による表現と構想による表現とに分けるものとする。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 写生による表現の指導においては,対象を観察し,対象物から受けた感動をとらえて表現する能力を養う。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 構想による表現の指導においては,外界の対象や生活経験,物語,詩などをもとにし,記億,想像,空想などを自由に表現する能力を養う。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 小学部における学習経験の基礎の上に,第1学年においては,構想による表現の指導にやや重点おくものとする。

(色や形などの基礎練習)

 形体,色彩,材質感などによる構成練習を通して,調和の感覚を訓練し,絵画,彫塑などにおける表現やデザインの基礎的な能力を高めることを主とする。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 第1学年においては,基礎的で,比較的容易なものを扱い,生徒の興味と関心をよび起こさせる。

(美術的デザイン)

 デザインの指導においては,使用目的およびそれに関連するいろいろの条件を考えて,創造的な活動を行ない,美的に総合して物を作り上げる能力を養う。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 デザインの対象となるものは広い範囲に及ぶが,ここにいう美術的デザインの内容として扱うものは,工的技術を主とした,建築や工業的デザインを除いた分野のものとし,デザインの能力とみられる物の配置配合,環境の改善美化もここに加えて指導するものとする。第2学年および第3学年の場合も同じとする。

 第1学年においては,生徒の経験や興味を生かし,次のような身近なものについてのびのびとデザインをさせる。

 B 鑑  賞

 主として表現の指導に関連して,自然や人工の美を観察,鑑賞させ,また絵画,彫刻などの名作に親しませる。

3 指導上の留意事項

 

〔第2学年〕

1 目  標

2 内  容

 A 表  現

(印象や構想などの表現)

 第1学年における学習経験の基礎の上に,写生による表現を主とし,構想による表現も指導する。

(色や形などの基礎練習)

 第1学年の内容として示したものをさらに深め,形体,色彩,材質感などの総合的な練習も行なわせる。

(美術的デザイン)

 デザイン上の諸条件を考え,条件に適応して,次のようなもののデザインをさせる。

 B 鑑  賞

 わが国および東洋諸国の絵画,彫刻,建築,工芸などの作品の鑑賞を通して,伝統的な作品のよさや美しさを楽しむとともに,美術文化への関心をもたせる。

3 指導上の留意事項

 

〔第3学年〕

1 目  標

2 内  容

A 表  現

(印象や構想などの表現)

 第2学年2A(印象や構想などの表現)の学習経験の基礎の上に,写生による表現を主とし,構想による表現も指導し,これらの表現の深さを増すように指導する。

(色や形などの基礎練習)

 第2学年2A(色や形などの基礎練習)の内容として示したものをさらに深めさせる。

(美術的デザイン)

 デザインの諸条件を第2学年2A(美術的デザイン)に示したよりもさらに深く理解し,条件に適応し,かつ創造的価値の高いものになるように次のもののデザインをさせ,また,その表示の能力も伴うように指導する。

 B 鑑  賞

 次の鑑賞などを通して美術文化への関心を高める。

3 指導上の留意事項  

第3 指導計画作成および学習指導の方針

1 各学年の内容は,A表現とB鑑賞の二つの領域に大別し,A表現はさらに,印象や構想などの表現,色や形などの基礎練習および美術的デザインの三つに分けてある。したがって指導計画の作成や指導にあたっては,それぞれの特性を生かすとともに相互の有機的な関連を図るように心がけなければならない。

2 指導する事項の扱いにおいては,美術の性格上,生徒の発達段階に応じて同一の事項でもこれを質的に高めていくべき性格のものもあるから,この点に留意しなければならない。

3 各学年の2A(印象や構想などの表現)中の表現題材については,指導計画を作成するにあたって,全学年を通して,生徒の発達段階などを考慮して適切な計画を立てなければならない。

4 選択教科としての美術の時間においては,各学年の内容において示したものを深めるという取り扱いをする。深めるべき内容としては,すべての領域にわたって行なうのもよく,また,生徒の特性に応じて,(印象や構想などの表現)や(美術的デザイン)の面に重点をおいてもよい。

5 指導計画作成にあたっては,特に技術・家庭科との関連を図ることが必要である。

6 指導計画作成にあたっては,学佼の施設設備の状況,付近の風景,季節などを考慮して年間計画などを作成して,指導を計画的に行なうことが必要である。

7 指導する事項の取り扱いや指導法については,教師の興味に偏することなく,多面的になってくる生徒の必要や要求に応ずるようにくふうすることがたいせつである。

8 指導を有効に進めるためには,美術に関する各種の図版,スライドなどの資料を精選して,なるべく多く準備することが望ましい。

9 美術館,博物館,美術展覧会などの見学などに便利のよい地域や機会があるときは,適当にこれらを利用することが望ましい。

10 次に示すものは,必修教科としての美術の年間最低授業時数に対する各領域の授業時数のおよその割合である。

第1学年

第2学年 第3学年