第10節 職 業
第1 目 標
1 職業に対する基礎的な知識,技能を習得させる。
2 職業技術の科学的な根拠を理解させ,これを実際に活用する能力を養う。
3 協同と責任を重じる態度を養う。
第2 内 容
1 農 業
A 養 畜
家畜,家きんなどの飼育を通して,養畜の基礎的な知識と技能を習得させ,それらを合理的,能率的に育成する態度を養う。
(実習例) ウサギ,ニワトリ,ブタ,ヤギなど。
B 農耕および園芸
食用作物の栽培を通して,農耕および園芸の基礎的な知識と技能を習得させ,それを合理的,能率的に育成する態度を養う。
(実習例) 食用作物−イネ,ムギ,マメ,イモ類など。
園芸作物−葉菜類,根菜類,果菜類など。
C 農産加工
農産物の加工,貯蔵を通して,加工,貯蔵の基礎的な知識,技能を習得させ,さらに合理的,能率的に行なう態度を養う。
(実習例) 乾燥野菜,つけもの,果じゅう,ジャムなど。
2 工 業
A 木,竹,とう類による工芸
工芸の基礎的な知識と技能を習得させる。
(実習例) 日用品,工芸品の製作。
B 手仕上げ
主として手仕上げ作業について,機械工作の基礎を学習させ,材料と工作法の関連を理解させる。
(実習例) やすりなどによる仕上げ。
3 商 業
A 商事活動
商業事務について,実務的な知識,理解を得させ,それを生活および職業の上に役だてる能力と態度を養う。
購入,販売,取り引き関係書類,物品の受け渡し,代金の決済,店舗の設計と装飾,広告など。
(2) 運送,通信
陸上,海上,航空による旅客,貨物の運送,郵便,電信,電話などの利用。
(3) 保 管
金庫の利用。
(4) 金 融
銀行その他の金融機関の利用,一般の金銭貸借の方法,小切手,手形の利用。
(5) 保 険
各種の損害保険および生命保険の利用。
(6) 有価証券,取引所
株式および公債,社債と投資,証券取引所および取引所の働きと取り引き方法のあらまし。
(7) 企業の形態と組織
会社,組合などの種類と特徴。企業の規模,事業体の内部組織。
B 経 理
簿記の基礎的な知識,技能を習得させ,経理を明確に処理する能力と態度を養う。
記帳の必要性,記帳の一般原則,現金出納帳の記録,預金や貸借の記録,伝票の利用。
(2) 商品売買の記帳
仕入れ帳,売り上げ帳,商品有高帳の記録伝票の利用
(3) 仕訳と勘定科目
仕訳の原則,勘定科目の種類,仕訳帳,元帳の記録。
(4) 決算と財務諸表
帳簿の締め切り,試算表,たな卸し表,貸借対照表,損益計算書の作成。
(5) 税 務
税金の計算,青色申告。
C 計算事務
珠算による計算技術を習得させ,計算事務を能率的に処理し,ものごとを計数的に判断する能力と態度を養う。
加減算,乗除算。
D 文書事務
文書作成および整理に関する技術を習得させ,文書事務の能率を増進する能力と態度を養う。
タイプライティング。
(2) 文書整理
文書の受け付け,発送,整理,保管などの方法。
4 その他
地域や生徒の実態と盲人の特性に応じたいろいろな職業に関する知識と技能を習得させる。
5 指導上の留意事項
イ 農業用の殺虫剤,殺菌剤,除草剤,植物ホルモン,土の化学反応,肥料などについては,調査,測定,観察などによる実験的な取り扱いを加えて指導する。
ウ 農産物の加工・貯蔵の方法には簡易で便宜的な方法や,高度の品質管理のもとに大規模の施設設備を用いて行なう方法などがある。施設設備のないために簡易な方法で指導する場合にも,いたずらに結果を急ぐことを戒めて,特に原料の選定,消毒,温度や湿度の管理,作業工程などを正確に行ない,単なる操作法や技能の習得に陥らないようにし,伝統的な方法などを改善する能力を養うように指導する。
(2) 工業について
(3) 商業について
(ア) 学習指導の順序は必ずしもこの項目の配列の順序によらなくてもよいが,商事活動の全般にわたることが必要である。
(イ) 単に知識として得させるだけでなく,できるだけ実際に役だてるように指導する。
イ 経理について
(ア) 記帳は点字による方法をくふうして実践させるように指導する。
(イ) 勘定科目の種類は基本的なものに重点をおき,決算についても複雑なものは避ける。
(ウ) 税務については,所得税を中心として一般的な税の計算のしかたに重点をおいて指導する。
ウ 文書事務について
(ア) 盲人に適した,文書の整理,保管の方法をくふうして指導する。
(イ) 文書事務に関する一般的な知識を習得させるように留意する。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
1 指導計画作成にあたっては,内容1,2,3および4のうちいずれかを選んでもよいし,また,それらのうちいくつかを関連づけて総合的に取り扱うようにしてもよい。なお,学習のための集団の作り方や,時間割りなどをくふうして,指導が円滑に行なわれるようにする。
2 学習指導においては,生徒の興味や関心の深い具体的なものから順次応用的,総合的なものに及ぶよう留意すること。
3 常に危険の防止に留意させ,安全に関する意識の高揚に努める。このためには服装の整備,学習環境の整理・整とん,作業規律の励行などをゆるがせにしないように指導する。なお,これらのことは農業,工業に関する指導においては特に重要である。