第2章 各 教 科
第1節 国 語
第1 目 標
1 生活に必要な国語の能力を高め,思考力を伸ばし,心情を豊かにして,言語生活の向上を図る。
2 経験を広め,知識を求め,教養を高めるために,話を確実に聞き取り,文章を正確に読解し,あわせてこれらを鑑賞する態度や技能を身につけさせる。
3 経験したこと,感じたこと,考えたことをまとめ,人に伝えるために,わかりやすく効果的に話し,正しく書写し,的確に文章に書き表わす態度や技能を身につけさせる。
4 ことばのはたらきを理解させて,国語に対する関心や自覚を深め,国語を尊重する態度や習慣を養う。
以上の目標の各項目は,相互に密接な関連をもって,全体として国語科の目標をなすものである。2,3,4について指導する場合には,常にその根底に1を考慮していなければならない。また,4は,2,3と関連づけて指導することが必要である。
第2 各学年の目標および内容
〔第1学年〕
1 目 標
(2) 聞くこと,話すことの基礎的な技能を身につけさせるとともに,誠実に聞き,話す態度を養う。
(3) 読むことの基礎的な技能を身につけさせるとともに,読み物に親しむ態度を養う。
(4) 文章を書くことの基礎的な技能を身につけさせるとともに,進んで文章に書き表わす態度を養う。
(5) 点字を正しく,きれいに書くことができるように努めさせる。
(6) ことばの正しい使い方を知って,正しい理解と表現ができるようにさせる。
2 内 容
A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと
(聞くこと,話すこと)
イ 相手を尊重しつつ,進んで話し合いに参加すること。
ウ 話し合いの筋をたどり,話の主題からはずれないように,聞いたり,話したりすること。
エ 常に向上しようとする意欲をもって聞くこと。
オ 必要な用件やことがらを確実に聞き取ること。
カ 話題を広く求め,場に適切な材料で話すこと。
キ 相手にわかりやすいように,話の組み立てを明確にして話すこと。
ク 朗読のしかたをくふうしたり,朗読を味わって聞いたりすること。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 経験したこと,感じたこと,考えたことなどの発表や報告をしたり,聞いたりする。
ウ 考えたこと,読んだこと,調べたことなどの発表や説明をしたり,聞いたりする。
エ 即読をしたり聞いたりする。
(3) 指導にあたっては,劇,校内放送,放送,録音機または電話などを適宜利用した学習をさせることを考慮する。
(読むこと)
イ 辞書,参考書などの利用のしかたを理解すること。
ウ 文学作品などに親しみ,また,楽しんで読書しようとする態度を身につけること。
エ 説明的な文章の要点を正確につかむこと。
オ 文章の主題や要旨をつかむこと。
カ 段落相互の関係を読み取ること。
キ 文章を読み,ものの見方や考え方についての問題をとらえること。
ク 情景や人間の心情が書かれている箇所を読み味わうこと。
ケ 語句の意味を文脈の中でとらえること。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 説明,論説などを読む。
ウ 詩歌,随筆,物語,伝記,小説,脚本などを読む。
(3) 指導にあたっては,身近にある掲示,広告,中学部生徒向きの新聞,雑誌などを利用して,いろいろな文章に慣れさせることを考慮する。また,科学に関して書いた文章,民俗や祖先の生活に取材した文章,人生に対する希望や励ましや障害を克服して強く生きる力などを与える作品,人間の心情や自然の姿を身近に感じさせるような作品,古典をわかりやすく書きかえた文章,やきしい翻訳作品などを用いることを考慮する。
なお,(2)に掲げられた事項に該当する活動については,特に録音による指導を考慮する。一般に録音は「聞くこと」の活動事項に入れられるものであるが,点字本の不足を補い,あるいは点字本に代わる意味で録音を利用する意義は大きい。その場合(1)の指導事項のほとんどが適用される。したがって,その各項目の「読む」を「聞く」に置き換えて指導することが望ましい。
このことについては第2学年および第3学年においても同様である。
(書くこと)
イ あらかじめ文章をよく考えてから書く態度や習慣を身につけること。
ウ 自分の書いた文章を繰る態度や習慣を身につけること。
エ 必要な要件やことがらを落ちなく文章に書くこと。
オ 要点を明確に書くこと。
カ 文脈に即して,語句を適切に使い分けること。
キ 点字の表記のしかたに注意し,くぎり符号などを正しく使うこと。
ク 点字を正しくきれいに書くとともに,正しい書写の態度を伸ばすこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 経験したこと,感じたこと,考えたことなどを書く。
ウ 事実を知らせる報告を書く。
エ 感想,感動などを文章に書き表わす。
オ 転写,聴写などの練習をする。
(3) 指導にあたっては,文集,新聞(学校新聞などを含む。),ノートしたものまたは掲示などを利用するとともに,自然や身辺のできごと,学校生活のできごとなどを適宜取り上げて,文章を書くように導くことを考慮する。
B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの学習を通して,ことばに関する次のような指導を行なう。
イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し,文の成分の順序や,その間の照応と統一を考えて,理解し表現すること。
ウ 文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し,段落を考えて,理解し表現すること。
エ 語句をできるだけ豊かにし,その意味と用法を身につけて,適切に用いること。
オ 同音異義語に注意し,文章の中で正しい意味をつかむこと。
備考 1 イ,ウ,エおよびオの事項は,それぞれアの事項と関連させて指導するものとする。
2 イ,ウおよびエの事項は,第1学年および節2学年を通して指導するものであるが,第1学年または第2学年のいずれかの学年に重点をおいて指導してもよい。
(2) 指導にあたっては,具体的な言語経験を通して,ことばのきまりの基本的なものに気づき,それらに基づいて,正しい理解と表現を得るようにさせる。
(3) なお,指導にあたっては,次のような点に留意する。
イ 文の組み立てや文章の組み立てに関連して,接続する語句(接続詞などをいう。)の用法に慣れさせる。
ウ 指示する語句(代名詞などをいう。)のはたらき,また,活用の性質などを具体的な用例を通して確かめるとともに,助詞,助動詞およびこれらと同じようなはたらきをもつ語句による各種の表現形式(たとえば,断定,推量,伝聞などをいう。)の用法に慣れさせる。
エ 一つの語句がいろいろの意味や用法をもち,一つの意味がいろいろの語句で表わされることに気づかせる。また,語感の違いに気づかせ,敬語の用法に慣れさせ,語句の組み立てや,接頭語,接尾語のはたらきなどをわからせる。
オ 話しことばと書きことば,共通語と方言などのそれぞれの違いを考えさせる。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 聞くこと,話すことの技能をいっそう高めるとともに,正確に聞き,話す態度を養う。
(3) 読むことの技能をいっそう高めるとともに,必要なものを選んて正確に読む態度を養う。
(4) 文章を書くことの技能をいっそう高めるとともに,事実に基づき,意見を整理して,文章を明確に書く技能や態度を養う。
(5) 点字を正しくきれいに速く書くことができるようにさせる。
(6) ことばのきまりを理解し,ことばを正しく使い分けることができるようにさせる。
2 内 容
A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと
(聞くこと,話すこと)
イ 会議,討議に参加して,話の進行に適する発言をすること。
ウ 話の中心の部分と付加的な部分とに注意して,話の主題を聞き取ること。
エ 効果的なことばづかいに注意しながら,また,語句の意味を推察しながら聞き取ること。
オ 話題を広く求めるとともに,確かな材料や正しい根拠に基づく責任ある話をすること。
カ 話の主題を明確にし,筋道を立てて話すこと。
キ 文学作品などの朗読をしたり,それを鑑賞したりすること。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 経験したこと,調査したことなどの発表や報告をしたり,聞いたりする。
ウ 考えたこと,研究したことなどの発表や説明をしたり,聞いたりする。
エ 朗読をしたり聞いたりする。
(3) 指導にあたっては,劇,校内放送,放送または録音機などを適宜利用した学習をさせることを考慮する。
(読むこと)
イ 辞書,参考書の利用に慣れること。
ウ 自己の向上のために,適当なものを選んで読む態度を身につけること。
エ 説明的な文章の内容を正確につかみ,要約すること。
オ 文章の主題や要旨を確実につかむこと。
カ 文章の中心の部分と付加的な部分とを注意して読み分けること。
キ 文章から読み取った問題について,ものの見方や考え方を深めること。
ク 文学作品などを,表現に注意して,味わって読むこと。
ケ 語句のもつ意味の範囲,語感などをつかむこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 説明,論説などを読む。
ウ 詩歌,随筆,物語,伝記,小説,脚本などを読む。
(3) 指導にあたっては,新聞,雑誌などを利用したり,資料の抜粋をさせたり,感想を書かせたりすることを考慮する。また,科学に関して書いた文章,意見や主張を述べた文章,人生に対する希望や励ましや障害を克服して強く生きる力などを与える作品,自然や人生について書いた作品,古典に関心をもたせるように書いた文章,翻訳作品,格言,故事や成語,短くてやさしい文語文などを用いることを考慮する。
(書くこと)
イ はっきりした根拠のある材料を用い,事実を正確に文章に書く態度を身につけること。
ウ 事実と意見とを区別して文章を書くこと。
エ 要旨の明確な文章を書くこと。
オ 段落の切り方をくふうし,筋道を立てて文章を書くこと。
カ 文脈にふさわしい語句を選んで,文章を書くこと。
キ 点字の表記のしかたに慣れ,符号などを適切に使うこと。
ク 目的や必要に応じて,適当に書くこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 研究調査したことなどの説明や報告を書く。
ウ 感想.意見,感動などを文章に書き表わす。
(3) 指導にあたっては,用件や考えたことなどのメモ,手紙,新聞(学校新聞などを含む。),学級日記などを利用するとともに,自然や身辺のできごと,社会のできごとなどを適宜取り上げて,文章を書くように導ことを考慮する。また,書写については,その技能を高め,目的に応じて書くことができるように留意する。
B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの学習を通して,ことばに関する次のような指導を行なう。
イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し,文の成分の順序や,その間の照応と統一を考えて,理解し表現すること。
ウ 文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し,段落を考えて,理解し表現すること。
エ 語句をできるだけ豊かにし,その意味と用法を身につけて,適切に用いること。
オ 同音異義語に注意し,文章の中で正しい意味をつかむこと。
備考 1 イ,ウ,エおよびオの事項は,それぞれアの事項と関連させて指導するものとする。
2 イ,ウおよびエの事項は,第1学年および第2学年を通して指導するものであるが,第1学年または第2学年のいずれかの学年に重点をおいて指導してもよい。
(2) 指導にあたっては,ことばの使い方の相違に気づき,さらに,ことばの使い方を類別整理し,それに基づいて,理解を深め,表現を正すようにさせる。
(3) なお,指導にあたって留意する点については,第1学年の内容のBの(3)に同じとする。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 目的に応じて,聞くこと,話すことの技能を確かにさせるとともに,自主的に聞き,話す態度を養う。
(3) 目的や形態に応じて読むことの技能を確かにさせるとともに,考えながら読む態度や読書の習慣を身につけさせる。
(4) 目的に応じて文章を書くことの技能を確かにさせるとともに,それを生活に役だてようとする態度を身につけさせる。
(5) 点字を書く技能を完成させる。
(6) ことばのきまりを理解させ,ことばを適切に使い分けさせるとともに,国語の特質について気づくようにさせる。
2 内 容
A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと
(聞くこと,話すこと)
イ 会談,討議に参加して,話の主題や意見の展開を整理して聞き,また,適切に発言すること。
ウ 話す人の意見をその根拠を考えながら聞くこと。
エ 話の主題の展開,ことばづかいなどに注意しながら,話す人の真意を確実に聞き取ること。
オ 自分の感情に支配されないで,落ち着いた態度で話すこと。
カ 場にふさわしい話題を選び,適切な材料で裏づけて話すこと。
キ 時間を考慮して,一定の内容を明確にまとめて話すこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 経験したこと,調査したことなどの発表や報告を,大ぜいの前でしたり,それらを聞いたりする。
ウ 考えたこと,研究したことなどの発表や説明を,大ぜいの前でしたり,それらを聞いたりする。
エ 朗読をしたり聞いたりする。
(3) 指導にあたっては,劇,校内放送,放送または録音機などを適宜利用した学習をさせることを考慮する。
(読むこと)
イ 辞書,参考書,新聞,雑誌など,いろいろな資料を適切に利用する態度を身につけること。
ウ すぐれた作品を読み,人生や社会の問題を考えていく態度を身につけること。
エ 説明的な文章の内容を速く正確につかむこと。
オ 文章を読んで,主題や要旨をつかみ,それについて自分の意見をもつこと。
カ 文章の論理的な構成がわかること。
キ 作者の意図か表現の上にどのように生かされているかを読み取ること。
ク 文学作品などを読んで,鑑賞し,まとまった感想をもつこと。
ケ いろいろな文体の特徴に注意して読むこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 説明,論説,評論などを読む。
ウ 詩歌,随筆,物語,伝記,小説,脚本などを読む。
(3) 指導にあたっては,実用的な各種の文章に触れて,これらを読み取るようにさせることを考慮する。また,社会や科学などに関して書いた文章,意見や主張を述べた文章,人生に対する希望や励ましや障害を克服して強く生きる力などを与える作品,自然や人生について書いた作品,翻訳作品,現代語訳や注釈などをつけたり書き下したりして理解しやすくした古典などを用いることを考慮し,なお,わが国のことばや文学について考えさせる文章にも触れさせることを考慮する。
(書くこと)
イ 論旨をいくつかの論点に分け,適切な構成によって文章を書くこと。
ウ 必要に応じて,それにふさわしい形態で文章を書くこと。
エ ことばの効果を考えて,使い方をくふうして文章を書くこと。
オ 点字を使いこなすこと。
(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。
イ 研究調査したことなどの説明や報告を書く。
ウ 意見,感動などを文章に書き表わす。
(3) 指導にあたっては,手紙その他の実用的な文章,新聞(学校新聞などを含む。),または生徒会活動やクラブ活動や学級活動などの記録,報告などを利用するとともに,自然や身辺のできごと,社会のできごとを適宜取り上げて,文章を書くように導くことを考慮する。
B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの学習を通して,ことばに関する次のような指導を行なう。
イ ことばの使い分けについて考え,相手と時と場所に応じて,適切に理解し表現するくふうをすること。
ウ 国語は,国民の思考や心情と深い関連をもち,生活の充実や文化の発展に欠くことのできないものであることを自覚し,国語の特質とその問題点について触れること。
(2) 指導にあたっては,常に国語の能力を高め,国語を愛護し,発展させていこうとする態度を養うようにさせる。
(3) なお,指導にあたって留意する点については,第1学年の内容のBの(3)に同じとする。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
1 指導計両を作成するにあたっては,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの内容を,相互に密接に関連させて,片寄りがないようにする。
2 聞くこと,話すことを主とする学習は,計画的に指導し,各学年とも,年間授業時数の1/10以上をこれに充てるようにする。なお,共通語の発音については,小学部における学習を基礎として適宜指導することとする。
3 読み物は,文学作品に片寄らないで,広く各種のものにわたるようにする。なお,古典については,基本的なものに適宜触れさせ,古典に対する関心をもたせるように留意する。
4 書くことのうち,作文を主とする学習は,計画的に指導し,各学年とも,年間授業時数の1/10以上をこれに充てるようにする。
5 点字の学習は特に練習を必要とするものであるから,全学年を通じてじゅうぶん習熟するよう適宜指導する。
6 ことばに関する事項の学習は,具体的な言語経験を通して行なうようにし,機械的な暗記,形式的な文例の学習に陥らないように特に留意して指導する。なお,文語のきまりについては,取り扱う文語文を読むのに必要があれば触れる程度にとどめる。
7 学習指導にあたっては,生徒の必要と興味と能力に応じて,聞き,話し,読み,書く活動に有機的な関連をもたせ,それらの活動が総合的に展開されるようにする。その場合に,目標を明らかにし,内容を充実させることに留意する。
8 話題や文章の選定にあたっては,生徒の発達段階に即応させ,片寄りのないように注意しなければならないが,常に正しく強く生きようとする気持ちを養ない,障害を克服して健全な人生観を育てるのに役立つものを加えるように留意する。
9 国語科は,国語について,基礎的,本質的なものの指導を徹底する任務を有するものであるから,指導する事項を精選して,国語の能力の向上に努めなければならない。また,指導計画の作成や学習指導にあたっては,他の教科,道徳,特別教育活動その他の指導と密接に関連させることが必要である。