第1章 総 則
第1 盲学校中学部の教育目標
盲学校は,盲者(強度の弱視者を含む。)に対して,幼稚園,小学校,中学校または高等学校に準ずる教育を施し,あわせてその欠陥を補うために,必要な知識技能を授けることを目的としている(学校教育法第71条)。
盲学校中学部における教育については,この目的を実現するために,小学部における教育の基礎の上に立ち,次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
2 社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能,勤労を重んずる態度および個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
3 学校内外における社会的活動を促進し,その感情を正しく導き,公正な判断力を養うこと。
第2 教育課程の編成
1 一 般 方 針
(2) 各盲学校においては,教育基本法,学校教育法,学校教育法施行規則(以下「規則」という。),盲学校学習指導要領中学部編,教育委員会規則等に示すところに従って教育課程を編成するものとする。この場合,各盲学校においては,地域や学校の実態を考慮し,生徒の発達段階,経験および視力またはその他の視機能の障害の状態に即応するように留意しなければならない。
(3) 第2章以下は,おおむね点字により教育を行なうことが適当な者について,目標,内容等を示したものであるから,強度の弱視者のうち,視覚により教育を行なうことが適当な者については,必修教科,選択教科,特別教育活動および学校行事等に関し,この学習指導要領で示す目標,内容の一部を除き,または他の目標,内容を加えて教育課程を編成することができる。この場合にあっては,生徒の視力またはその他の視機能の状態に応じて中学校学習指導要領を参考として編成するものとする。
2 授業時数の配当
区 分 |
第 1 学 年 |
第 2 学 年 |
第 3 学 年 |
|
必 修 教 科 |
国 語 |
175(5) |
140(4) |
175(5) |
社 会 |
175(5) |
175(5) |
140(4) |
|
数 学 |
140(4) |
140(4) |
105(3) |
|
理 科 |
140(4) |
140(4) |
140(4) |
|
音 楽 |
70(2) |
70(2) |
35(1) |
|
美 術 |
70(2) |
35(1) |
35(1) |
|
保 健 体 育 |
105(3) |
105(3) |
105(3) |
|
技 術・家 庭 |
105(3) |
105(3) |
105(3) |
|
選 択 教 科 |
外 国 語 |
105(3) |
140(4) |
140(4) |
職 業 |
70(2) |
70(2) |
70(2) |
|
家 庭 |
70(2) |
70(2) |
70(2) |
|
数 学 |
70(2) |
|||
音 楽 |
35(1) |
35(1) |
35(1) |
|
美 術 |
35(1) |
35(1) |
35(1) |
|
道 徳 |
35(1) |
35(1) |
35(1) |
|
学 級 活 動 |
35(1) |
35(1) |
35(1) |
(2) 上掲(1)の表において,必修教科および選択教科(以下「各教科」という。)のそれぞれの授業時数は,年間の標準授業時数とし,道徳および学級活動の授業時数は,年間の最低授業時数とする。
(3) 上掲(1)の表において,授業時数の1単位時間は50分となっており,かっこ内の授業時数は年間授業日数を35週とした腸合における週当たりの平均授業時数である。
(4) 必修教科の授業時数の計は,第1学年にあっては945単位時間,第2学年にあっては910単位時間,第3学年にあっては840単位時間を,各学年における選択教科の授業時数の計は105単位時間を,また各学年における各教科,道徳および学級活動の授業時数の計は1,120単位時間を,それぞれ下ってはならない。
(5) 各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等に授業時数を配当するにあたっては,下記の事項に注意する必要がある。
イ 特別教育活動のうちの生徒会活動,クラブ活動などや学校行事等については,それらに充てる授業時数は定められていないが,年間,学期,月または週ごとに適切な授業時数を配当するようにすることが望ましいこと。
ウ 各教科の授業時数は,生徒の障害の状態に即応する必要がある場合および数学年の生徒で学級を編制する場合(規則第73条の12第2項で準用する第19条)にあっては,各教科の目標の達成に支障のない範囲において,上掲(1)の表に示す授業時数を増減することができること。
エ 各教科,道徳および学級活動についての各学年の授業は,年間35週以上にわたって行なうように計画すること。
オ 各教科,道徳および特別教育活動についての1週間の時間割りを作成するにあたっては,上掲(1)の表のうち,かっこ内に示した週当たりの平均授業時数を参照し,季節およびその他の事情を考慮し,調和的,能率的な指導を行いうるようにすること。
カ 各教科,道徳および学級活動の授業の1単位時間は,50分とすることが望ましいこと。季節およびその他の事情により,授業の1単位時間を50分未満とする場合は,当該学年において,上掲(1)の表のうちの道徳および学級活動の授業時数ならびに,上記(4)に示す授業時数を下らないようにすること。
なお,授業の1単位時間には教室を移動したり,休憩したりするのに要する時間を含まないものとすること。
キ 上記(1)の表において,第2学年および第3学年にあたっては,道徳および学級活動の授業時数の合計は,1,120単位時間には達しないようになっているが,各盲学校においては,その実情に即応して,各教科,道徳または学級活動のうち必要と思われるものに授業時数を増して配当し,それらの計が,1,120単位時間以上となるようにしなければならないこと。
3 選択教科の運営
選駅教科は,土地の状況ならびに生徒の進路およひ特性を考慮して設けるものとし,その際下記によるものとする。
(2) 盲学校は,個々の生徒について,その進路,特性等をじゅうぶん考慮し,それぞれの生徒に適した選択教科を選択させて履修させるように指導しなければならない。
(3) 選択教科のうち外国語については,英語,その他の現代の外国語のうちいずれか1か国語を履修させることを原則とし,第1学年から履修させることが望ましい。
なお,進路,特性等により外国語を深く学習しようとする生徒に対しては,第3学年において,これを175単位時間以上履修させることが望ましい。
(4) 進路,特性等により数学をさらに深く学習しようとする生徒に対しては,第3学年において,選択教科の数学を履修させることが望ましい。
(5) 選択教科音楽または美術については,生従の進路,特性等に応じて履修できるようにすることが望ましい。
4 特 例
また,宗教の時間と道徳の時間とを合わせて設けている私立の盲学校にあっては,宗教の授業時数をもって道徳の授業時数の一部に代えることができるものとする。
(2) 非常変災,伝染病等により,臨時に授業を行なわない場合で,上掲2の(1)の表のうちの道徳および学級活動の授業時数ならびに上記2の(4)に示す授業時数を補うことができないようなやむを得ない事情があるときは,これらの授業時数を下ることができる。
(3) 精神薄弱等他の心身の故障をあわせ有する生徒に係る教育課程については,特に必要がある場合は,特別の教育課程によることができることとなっている(規則第73条の11第1項)。
第3 指導計画作成および指導の一般方針
1 盲学校においては,下記の事項に留意して,各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等について,相互の関連を図り,全体として調和のとれた指導計画を作成するとともに,発展的,系統的な指導を行なうことができるようにしなければならない。
(2) 第2章に示す各教科(選択教科のうちの職業および家庭を除く。)の内容に関する事項は,上記第2の1の(3)に示す場合を除き,いずれの盲学校においても原則として取り扱うことを必要とするものである。各盲学校において特に必要と認められる場合には,第2章に示していない事項を加えて指導することをさまたげるものではない。しかし,いたずらに,指導する事項を多くしたり,程度の高い事項を取り扱ったりして,学年別の目標や内容の趣旨を逸脱し,または,生徒の負担過重とならないよう慎重に配慮すること。
(3) 選択教科のうちの職業および家庭については,下記の事項に留意して指導計画を作成し,職業生活および家庭生活に関する基礎的な知識と技能を習得させるようにするものとすること。
イ 第2章に示された職業および家庭については,土地の状況や学校の事情,指導する分野などに即応し,第2章に示されていない内容についても指導することができるし,また授業時数や土地の状況,学校の事情,指導する分野などに即応して各分野ごとの内容のいずれかに重点をおいて指導することもできること。
(4) 第2章に示す各教科の学年別の内容に掲げる事項の順序は,特に示す場合を除き,そのまま指導の順序を示すものではない。
各盲学校においては,各事項のまとめ方や順序をくふうして指導するようにすること。
(5) 歩行に関する指導は,小学部の基礎の上に立ち基本的事項を保健体育で行なうほか,他の各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等の教育活動の全体を通じて行なうものとすること。
(6) 政治および宗教に関する事項の取り扱いについては,それぞれ教育基本法第8条および第9条の規定に基づき,適切に行なうように配慮しなければならないこと。
(7) 生徒が心身の状況によって履修することが困難な各教科は,その生徒の心身の状況に適合するよう課さなければならないことになっている(規則第73条の12第2項で準用する第26条)。各盲学校においては,このような生徒については特別な配慮をしなければならないこと。
(8) 数学年の生徒で編制する学級において,特に必要がある場合は,各教科について,所定の目標の達成に支障のない範囲において,その学年別の順序によらないことができること。
2 各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等の指導を能率的,効果的にするためには,下記の事項について留意する必要がある。
(2) 学習の目標を生徒にじゅうぶんはあくさせること。
(3) 生徒の生活経験の不足を補い,これを拡充するように努めること。
(4) 生徒の興味や関心を重んじ,自主的,自発的な学習をするように導くこと。
(5) 生徒の個人差に留意して指導し,それぞれの生徒の個性や能力をできるだけ伸ばすようにすること。
(6) 生徒の調和的な心身の発達,歩行能力の向上,視覚以外の感覚の訓練に努めること。
(7) 強度の弱視者については,保有する視覚を活用することなどによって,できるだけ視知覚の向上を図るように努めること。
(8) 学級および学校における好ましい人間関係を育て,教室内外の整とんや美化に努めるなど学習環境を整えるようにすること。
(9) 教科書,その他の教材・教具などについて常に研究し,その活用に努めること。また,学校図書館の資料や視聴覚教材等については,これを精選して活用するようにすること
(10) 学校医との連絡を密にし,教育活動全体を通じて,医学的配慮を加えるようにすること。特に,目の衛生と健康に留意すること。
(11) 指導の成果を絶えず評価し,指導の改善に努めること。
第4 道 徳 教 育
学校における道徳教育は,本来,学校の教育活動全体を通して行なうことを基本とする。したがって,道徳の時間はもちろん,各教科,特別教育活動および学校行事等の学校教育のあらゆる機会に,道徳性を高める指導が行なわれなければならない。
道徳教育の目標は,教育基本法および学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち,人間尊重の精神を一貫して失わず,この精神を,家庭,学校その他各自がその一員であるそれぞれの社会の具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造,民主的な国家および社会の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成することを目標とする。
道徳の時間においては,各教科,特別教育活動および学校行事等における道徳教育と密接な関連を保ちながら,これを補充し,深化し,統合し,またはこれとの交流を図り,生徒の望ましい道徳的習慣,心情,判断力を養い,社会における個人のあり方についての自覚を主体的に深め,道徳的実践力の向上を図るように指導するものとする。
道徳の時間における指導は,学級担任の教師が担当することを原則とする。