第1節 各教科の目標、内容ならびに指導計画作成および学習指導の方針
1 目標および内容
(2) 養護学校中学部の各教科の目標および内容の取り扱いにあたっては、生徒の発達、経験、障害の種類と程度、能力差等を考慮しなければならない。
(1) 指導計画の作成にあっては、中学校学習指導要領第2章に示された内容のうち、学習の著しく困難もしくは不可能なものについては、これを除くこともやむを得ないが、その場合、目標を逸脱しないように配慮しなければならない。
(2) 指導計画の作成および学習指導にあっては、特に生徒の経験領域を広めるように配慮しなければならない。
(3) 学習指導にあたっては、生徒の特別な能力や技能の発見に努め、それらを助長し練摩するように配慮しなければならない。
第2節 国 語
2 指導計画の作成および指導にあたっては、進度の遅れや生徒の学力差を考えて、内容の選定や配列にじゆうぶん配慮するとともに、効果的な指導法をくふうすることがたいせつである。
3 言語障害を有する生徒の指導にあたっては、話すことについて生徒のもっている不安を除くように配慮し、簡潔に要点を表現する能力を高めるように努め、指導の能率化を図るために、教材教具等の補助手段についてもくふうすることがたいせつである。
4 書くことに障害を有する生徒の指導にあたっては、障害に応じた用具を選択くふうするなどして、的確に表現する能力や態度を身につけさせることがたいせつである。
5 文学作品の鑑賞や創作活動の指導にあたっては、生徒の情緒の安定を図り、積極的な生活態度を養うことがたいせつである。
第3節 社 会
2 指導にあたっては、生徒の社会的経験の不足を補うために、実地観察や見学等を行なうほか、つとめて視聴覚教材を利用することが必要である。
3 わが国や世界の現状をじゆうぶん理解させて、生徒の視野を広げ、正しく自己をみつめさせるとともに、特に社会への適応性を高めるように留意することがたいせつである。
4 歴史等における人物の取り扱いにあたっては、身体障害者で文化の向上や社会の発展のために貢献した人々の業績にも注意して指導し、生徒の自覚に資することが望ましい。
第4節 数 学
2 生徒は数量生活に関する経験が比較的乏しいので、指導にあたっては、つとめてその生活経験と関連させ、数学を積極的に生活に活用する態度を養うことが必要である。
3 指導にあたっては、効果的な教材、教具を活用して理解を深めるとともに、つとめて観察や実測を重んずることがたいせつである。
4 筆記、計量等に困難を伴う生徒に対しては、障害に応じた用具や方法を選択くふうするなど指導上の配慮をすることが望ましい。
第5節 理 科
2 指導にあたっては、進んで実験、観察する態度を養い、事実に基づいて論理的に考えたり、処理したりする能力を深めるようにすることがたいせつである。
3 実験、観察に必要な機械、器具については、生徒の障害や危険防止の見地からよく研究くふうし、その選択と取り扱いに特に留意しなければならない。
4 自然と人間生活との結びつきについての認識を深め、生活の中から問題をとらえて、科学的、合理的に処理する態度と能力を養うことがたいせつである。
第6節 音 楽
2 表現活動の指導にあっては、常に合唱、合奏など全体活動の中で、個人差に応じて各自の能力を発揚できるように配慮しなければならない。
3 歌唱指導にあたっては、言語障害のある者や音域の狭い者には、歌いやすい音域に移して、指導することが必要である。
4 器楽指導にあたっては、障害に応じた楽器を選択し、各自の技能をじゆうぶん発揮できるようにするとともに、全体としてまとまったものになるように編曲して指導することが必要である。
第7節 美 術
2 各種の材料、用具などの使用に慣れさせ、製作にあたっては、その過程を重視するとともに、中途で放棄しないねばり強さを養うことがたいせつである。
3 日常生活の中で、できるだけ自然に親しませ、色や形に関する経験や美術作品の鑑賞の機会を多くもたせて、美的感覚を養うことが必要である。
4 個人製作から発展して、つとめて共同製作を重んじ、互いに協力し、助け合う態度を養うことがたいせつである。
5 製作の前後の準備、整とんを正しく行なう習慣をつけ、素材や用具および作品をたいせつに取り扱う態度を養うことが必要である。
第8節 保健体育・機能訓練
1 保健体育
(2) 指導計画の作成にあたっては、学校医との連絡を密にし、生徒の健康状態、肢体不自由の種類と程度、運動能力、運動に対する興味や経験、地域の特殊性などを考慮することが必要である。
(3) 内容の配列にあたっては、生徒の発達段階、機能訓練、特別教育活動・学校行事等の指導内容および季節などとの関連を考慮することがたいせつである。
(4) 生徒の肢(し)体不自由の種類と程度および運動能力によって必要のある場合には、グループに分けることも考慮し、各種の運動が適切に指導できるようにくふうすることがたいせつである。
(5) 球技、陸上競技、水泳などの実技の指導にあたっては、正式なルールにとらわれることなく、生徒の障害の状況に応じて、方法をくふうして課することが必要である。
(6) 生徒の障害に合うようにくふうした運動や競技を通じて、明朗快活にして公正な態度を養うことがたいせつである。
(7) 保健の指導にあたっては、特に自己のからだの状態を理解して障害を克服しようとする意欲を養い、さらに、自己および他人を病気や傷害から守ろうとする態度を養うことが必要である。
イ 機能訓練の意義を理解させ、積極的にこれに参加するとともに、日常生活においてもみずから訓練を行なおうとする態度を養う。
ウ 障害の状態を自覚し、それに即した機能訓練の方法を身につけさせるようにする。
(ア) 基本動作訓練
(ア) 応用動作訓練
上記の内容を実施するにあたっては、次の事項を指導するものとする。
・ 自己の障害を正しく理解させる。
・ 自己の障害を改善するのに必要な機能訓練の意味と方法を理解させる。
・ みずから進んで機能訓練を行なう習慣と態度を養う。
イ 生徒の肢(し)体不自由の種類、程度によっては、補助手段としてマッサージ等を課することができる。
ウ カリエスの生徒など、機能訓練を課することによって、弊害を生ずるおそれのあるものの取り扱いについては専門医の指導を求め、特に慎重を期さなければならない。
第9節 技術・家庭
2 生徒の障害の種類と程度によっては、学習させることの困難な内容もあろうが、施設設備や方法をくふうして、できるだけ全領域にわたって指導し、広く経験を得させることがたいせつである。
3 指導にあたっては、障害に応じた機械、器具、材料を選択くふうし、学習の効果があがるようにするとともに、危険防止については万全の注意を払わなければならない。
4 家庭機械や家庭工作の機械器具などの使用法、修理などについて、基礎的な知識、技能を習得させ、合理的な生活態度を養うように努めることがたいせつである。
5 共同作業を通して、障害の種類と程度および能力に応じた仕事を分担させ、他人と協力し、自己の役割を果たす態度を養うことがたいせつである。
6 製作の指導にあたっては、作品の巧拙よりも製作過程を重視し、中途で放棄することなく最後までやりとおすねばり強さを養うことが必要である。
7 視聴覚教材を利用して、経験の不足を補うとともに、作業の手順や方法などを正しく理解させることが望ましい。
第10節 外 国 語
2 指導にあたっては、英語学習のふんい気を作り出すことに努め、視聴覚教材をじゆうぶん活用するなどして、学習効果をあげるように努めることがたいせつである。
3 言語障害を有する生徒に対しては、発音、抑揚などにあまりとらわれることなく、基本的事項の反復練習や集団による音読などによって学習できるように配慮する必要がある。
4 上肢(し)に障害を有する生徒に対しては、使用する文字や辞書などについて配慮し、学習意欲を失わせることのないようにすることがたいせつである。
第11節 職業に関する教科
2 指導計画の作成にあたっては、個々の生徒の障害の種類と程度に応じて適切な教材を選び、進路指導との関連をじゆうぶん図るようにすることがたいせつである。
3 実習を多くし、実践的な活動を通して学習させるように努めるとともに、片寄った技術の指導におちいらないように留意することがたいせつである。
4 共同作業を通して、障害の種類と程度および能力に応じた仕事を分担させ、他人と協力し、自己の役割を果たす態度を養うことがたいせつである。
5 製作の指導にあたっては、作品の巧拙よりも製作過程を重視し、中途で放棄することなく最後までやりとおすねばり強さを養うことが必要である。
6 視聴覚教材を利用して、経験の不足を補うとともに、作業の手順や方法などを正しく理解させることが望ましい。
7 機械器具や薬品などの使用にあたっては、特に危険防止に万全の注意を払わなければならない。