第1 目 標
1 被服・食物・すまいなどに関する初歩的,基礎的な知識・技能を習得させ,日常生活に役だつようにする。
2 被服・食物・すまいなどに関する仕事を通して,時間や労力,物資や金銭を計画的,経済的に使用し,生活をいっそう合理的に処理することができるようにする。
3 健康でうるおいのある楽しい家庭生活にするように,被服・食物・すまいなどについて創意くふうする態度や能力を養う。
4 家庭生活の意義を理解させ,聴覚の障害を克服し,家庭の一員として家庭生活をよりよくしようとする実践的態度を養う。
家庭科は,第4学年までにおける家庭生活についての経験や学習の発展に即応し,組織的,実践的な指導を行なうため,第5学年から置かれるものである。
上に掲げた目標は,相互に密接な関連をもつものてある。目標1は,家庭科で指導すべき中心的なねらいであり,目標2および3は,目標1のねらいを具体的,重点的に示したものであって,この指導にあたっては家庭科の特性上,常にその根底において目標4が考慮されなければならない。
第2 各学年の目標および内容
〔第5学年〕
1 目 標
(2) 布と糸や針を用いて簡単な日常用いる身のまわりのものを作らせ,製作に関する初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせるとともに製作の喜びを味わわせる。
(3) 食事のしたくやあとかたづけのしかたを習得させ,進んで手伝おうとする態度を養うとともに,日常の食事作法を身につけさせる。
(4) 日常の食物の栄養について理解させ,調理の初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせる。
(5) すまいの掃除や整理・整とんに関する初歩的な知識や技能を身につけさせ,気持ちよく住まおうとする態度を養う。
(6) 家族の一員として自分の役割を知り,家庭の仕事に協力し,楽しい家庭生活を営もうとする態度を養う。
A 被 服
イ 自分にふさわしい衣服の形・色などについて考える。
ウ 日常の身なりを整えるように努める。
エ ボタン・スナップなどの正しいつけ方を実習する。
オ ほころびのなおし方を実習する。
イ もめんの下着などの簡単な洗たくの実習をし,実践するように努める。
(ア) 洗たくにふさわしい身じたくを知る。
(イ) 洗たく用具の種類と使い方を知る。
(ウ) 洗剤の種類,用いる分量,用い方について知る。
(エ) 洗い方,しぼり方,干し方およびたたみ方を知る。
イ ブラシの使い方を知る。
ウ 自分の衣服のたたみ方を実習する。
エ 自分の日常着の整理・整とんのしかたを考える。
イ 使用の目的に適した形や大きさ,調和のとれた形を考える。
ウ 製作用具の種類やそれぞれの使い方,扱い方を知る。
エ 寸法の取り方,決め方,縫いしろの決め方,取り方を知る。
オ 手縫いの基礎として,なみ縫い,まつり縫い,本返し縫い,半返し縫い,玉むすび,玉どめ,すくい返しどめ,および重ねつぎができる。
カ アップリケ・チェーンステッチ・アウトラインステッチ・クロスステッチなどから選んで,簡単なししゅうをする。
キ 仕事を計画的に手順よく進めるようにする。
ク 製作の楽しさや,製作品を使うことの喜びを味わう。
イ 家族が気持ちよく楽しく食事をすることができるように,くふうする。
ウ 食器やふきんの取り扱い方,洗い方,しまい方を衛生的にする。
エ 食事の場や台所を清潔に保つように努める。
イ 栄養的な基礎食品群について知る。
イ 調理用具の種類と使い方,簡単な手入れのしかたを知る。
ウ 調理に必要な計量器の使い方を知る。
エ 材料の見分け方について調べる。
オ 燃料やこんろの安全で合理的な使い方を知る。
カ 調理用具・食器などを安全に能率的に配置する。
キ 食品・調理用具・食器などを衛生的に取り扱う。
ク 調理するものの目的や,栄養の効果などを考えて,食品を洗ったり,切ったり,加熱したり,味をつけたり,盛りつけたりするしかたができる。
ケ 廃棄物を衛生的に処理する。
コ 計画に従って手順よく仕事を進める。
サ 仕事を協力して能率的に進める。
イ お茶の入れ方,飲み方,菓子やくだものの食べ方を実習する。
ウ 来客に対する茶菓やくだもののすすめ方を実習する。
イ そうじに適当な身じたくについて考える。
ウ すまいの各部の清掃のしかたを知り,実践するように努める。
エ そうじ用具の種類やその使い方,しまい方,および手入れのしかたを知る。
オ ぞうきん・ちりとり・くず入れなどのような簡単なそうじ用品を作ったり,または,修理加工したりする。
イ 自分の持ち物の整理・整とんのしかたについて,類別・使用に便利な置き方,使用度数による置き場所,整とんの美しさなどを考えてくふうする。
ウ 室内や家のまわりの整理・整とんのしかたをくふうする。
エ 調和のある物の置き方を考える。
オ 整理箱または整理袋を作って活用するように努める。
イ 自分の家庭における仕事の種類や分担の様子を調べる。
ウ 家族としての望ましいあり方を考える。
エ 家庭生活を維持向上するために,自分のとる態度について考える。
イ 来客の取り次ぎ,接待のしかたを実習する。
ウ 適切なあいさつや動作ができるように訪問のしかたを実習する。
(2) Bの(3)の調理の実習は,年間2回程度行なうことにする。
(3) B(4)のイ,ウは,Dの(2)と関連させて,取り扱うようにする。
(4) C(1)のオは,A(4)の台ふき以外に製作,修理加工するものの例をあげた。
(5) Dの(1)は,A,B,Cの内容を指導する際に,いろいろな角度から理解させるように配慮する。
〔第6学年〕
1 目 標
(2) 簡単な被服や,布・糸利用の日用品をくふうして製作し,被服に関する基礎的な知識・技能を身につけさせる。
(3) 日常食の栄養的な取り方について理解させ,調理に関する初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせるとともに,調理を能率的に安全にしようとする態度を養う。
(4) 食事のもつ社交的意義を知り,望ましい態度で食事ができるようにする。
(5) 健康で合理的なすまい方をくふうし,すまいの美化やすまい方の改善に関心をもたせ,これを実行する態度を養う。
(6) 家庭の機能を理解し,家族と協力して,家庭生活の向上を図り,時間や労力,物資や金銭を合理的に使用する態度を養う。
A 被 服
イ 気温に応じた被服の調節のしかたについて知る。
ウ 活動に便利な衣服について考える。
エ 調和のとれた着方や持ち物の調和についてくふうする。
イ 運動服,簡単な上着などのような衣服の洗たくを実習する。
(ア) 布地の種類に応じた洗剤の選び方,用い方,合理的な洗い方を知る。
(イ) 洗い場の高さ,洗たく用具の能率的な置き方などをくふうする。
ウ アイロン仕上げを実習する。
(ア) 布地の種類とアイロンの温度との関係を知る。
(イ) アイロンの扱い方,かけ方,しまい方を知る。
エ 墨,どろ,果じゅう,絵の具,しょうゆ,油,えりあかなどのしみやよごれの簡単な取り方について知る。
オ 防虫や防湿に適した容器,防虫剤の種類や使い方を調べ,被服を保存する方法を知る。
イ 被服を長持ちさせるようにくふうする。
ウ 被服の補充について,既製品を選んで買う,更生利用,手製のくふうなどの方法について考える。
イ 製作の目的を明らかにし,仕事を計画的に手順よくする。
ウ 用途に適した布やその他の材料を選び,ととのえる。
エ 使用の目的に適した形や大きさ,調和のとれた形をくふうする。
オ 製作用具の使い方,扱い方に慣れる。
カ 裁ち方をくふうする。
キ 手縫いの縫い方に慣れる。
ク ミシンの扱い方,踏み方がわかり,ミシンで縫うことができるようになる。
ケ かき染め,はん染めなどの簡単な染色をする。
イ 1日に必要な食物のおおよその量を知る。
ウ 献立を作って食事をすることの必要なわけを知る。
イ 鮮度・品質・費用などを考えて材料を選ぶ。
ウ 調理台・流しなどの高さや配置は仕事の能率に関係のあることを知る。
エ 調理するものの目的や,栄養の効果などを考えて食品を洗ったり,切ったり,加熱したり,味をつけたり,盛りつけたりするしかたができる。
オ 調理用具や調理に必要な計量器の使用に慣れる。
カ 燃料やこんろの安全で合理的な使用に慣れる。
キ 食品・調理用具・食器などを清潔に取り扱い,廃棄物は衛生的に処理する。
ク 調理にふさわしい身じたくをし,仕事を協力して計画的,能率的にする。
イ 明るい清潔な食事の場を作り,楽しく会食するしかたを実習する。
イ 涼しく住むために,気温と湿度との関係,通風,日よけ,必要な家具・用具などを知り,くふうする。
ウ 暖かく住むために,日当たり,暖房のしかた,へやの適当な温度・換気,暖房用具の種類・特徴・使い方などを知り,くふうする。
エ 必要な明るさが得られるように,採光のしかたをくふうし,また,照明器具の種類・特徴・使い方を知る。
オ 安全に住めるように災害予防に関心をもち,その簡単な方法を調べる。
イ 室内の美化について考え,雑誌入れ・花びんしき・壁掛け・カーテン・のれんなどのような簡単な実用品や装飾品をくふうし製作する。
イ 家の仕事のしかたについて,能率的,計画的にすることをくふうする。
ウ 規則正しく生活して,余暇を利用し,生活を楽しくすることをくふうする。
エ 金銭の使い方について,じょうずな買い物のしかたを考えたり,金銭の収支の記録のしかたを実習する。
(2) A(4)のケの染色は,カバー類の製作,または,C(2)のイの実用品・装飾品の製作に関連させて実習させる。
(3) Bの(2)の調理の実習は,年間2回程度行なうことにする。また,Bの(3)はBの(2)と関連して取り扱うようにする。
(4) Cの(1)は,生活に生かす方法を具体的に考えさせ,実践できるようにする。
(5) Dの(1)は,A,B,Cの内容を指導する際に,いろいろな角度から考えさせ,実践しようとさせるように配慮する。
1 指導計画の作成について,次の事項を考慮する。
指導計画の作成にあたっては,これらの内容を児童の家庭生活や寄宿舎の生活などの経験を考え,生活的なまとまりをもたせ,相互に有機的関連をもって指導できるようにする。その際,地域および学校や寄宿舎などの事情を考え,さらに季節との関連などを考慮して,児童の生活経験を生かすとともに,学習に対する興味や必要感を起こさせるようにする。
(2) 題材は,常に児童の家庭生活や寄宿舎の生活などの実際的な必要や問題に基づいて選び,実習・製作・操作・応用などの実践的な学習を通して指導する。知識や理解を主とした内容も,教師の一方的な講義に終わることなく,児童の興味・必要・経験などに基づき,家庭や寄宿舎などの実際的な仕事と結びつけて指導しうるように,題材の作成をくふうする。
(3) 被服・食物・すまいなどに関する技能の発展的系統をよく吟味して,その基本的なものから,順序を追って発展的に指導できるようにする。
(4) この段階の男女の児童の家庭生活における仕事の分但の違いや興味の違いなどの特性に応じ,むりのないようにする。
(5) 他の教科や道徳などの指導との関連をじゅうぶんに考慮する。家庭科は教科の特性上,他の教科や道徳などの指導との関係がきわめて密接であるから,指導計画の作成にあたっては,関連する内容の取り扱いについてよく検討する。
(6) 規則正しく生活したり,余暇を利用して生活を楽しくしたり,じょうずな買い物のしかたをくふうしたりするなど,日常の家庭生活や寄宿舎の生活などの実際的な能力を身につけるよう特に配慮する。
(7) 衣食住の知的理解に関する学習においては,特に実習や見学などの機会を多くし,また視聴覚教材を用いたりして具体的に経験させて,言語による理解の困難を補い,理解させるようにする。
(8) 製作・実習の機会を多くし,家庭生活を進んで改善しようとする意欲と態度を養うよう特に配慮する。
3 学習は作業を伴うことが多いから,実際の指導にあたっては,学校の施設・設備をじゅうぶんに活用するように,くふうすることが必要である。なお,学習活動においては危険を伴う用具・機械などを取り扱う場合が多いので,安全の保特にじゅうぶん注意する。4 学習指導においては,教科の特性上,家庭または寄宿舎における生活環境との関連を図ることが特にたいせつである。