第1 目 標
1 自然に親しみ,その事物,現象についての興味をもち,事実を尊重し,自然から直接学ぼうとする態度を養う。
2 自然の環境から問題を見いだし,事実に基づき,筋道を立てて考えたり,くふう・処理したりする態度と技能を養う。
3 生活に関係の深い自然科学的な事実や基礎的原理を理解し,これをもとにして生活を合理化しようとする態度を養う。
4 自然と人間の生活との関係について理解を深め,自然を愛護しようとする態度を養う。
目標1については,学校で経験させることを出発点として自然に直接触れさせ,事実を尊重する客観的な態度を養うようにする。学校での指導にあたっては,児童がはじめて経験することであるというような用意で計画するようにする。
主客未分化的,自己満足的な見方からはやく脱皮させるためには,ごく身近な自然の事物・現象を見たり扱ったりして,客観的な物の見方,考え方を育てるようにする。
目標2については,第1・2学年では自然の環境に感嘆することがあっても問題をもつことが少なく,また,それを解決するために深く探究することがおろそかになりがちである。だんだんとはっきりした問題をとらえ,筋道をたてて解決するように導くことがたいせつである。
ともすると直感で物事を解決する傾向があるから,だんだんと客観的な見方,考え方をもとにして,筋道の通った考え方で処理することができるようにする。処理のしかたについては,さわるとか,においをかぐとか等の幅の広いしかたを活用し,自主的,自発的にするように導く。
目標3については,身近なことがらから,自然科学的な事実を意識するようにし,やがて,事物・現象の背後にひそむ原理にまで及んで,それらをもとにして豊かな思考ができるように,知識を確実にする。
児童は,ともすると直観的な判断から非合理的な態度をとることが見られがちである。筋道の通った考え方をもとにして,合理的な態度をとるように導く。
目標4については,感情が豊かでなかったり,経験が少なかったりすることが原因となって,生物をむやみにこわがったり,いじめたりすることがある。飼育や栽培,園芸的な栽培などを指導することによって,生物に愛情を感じさせるようにし,やがて生物を愛護し,自然と人間の生活との関係を考慮し,自然の保護や利用のしかたについての関心を深めるように導く。
第2 各学年の目標および内容
〔第1学年〕
1 目 標
(2) ごく身近な自然の環境について興味や関心をもち,自分で見たり,考えたり,扱ったりするように導く。
(3) 主として遊びのかたちを通して,ごく簡単な自然科学的な事実に気づき,これらに関連のある事物・現象を正しく見たり考えたり,扱ったりしようとする気持ちを育てる。
(4) 学校や家庭などで育てている草花や動物に接したり,世話を手伝ったりすることに喜びをもつようにする。
(ア) 春・夏・秋に咲く草花を観察し,いろいろなものかあることに気づき,校庭の草花に親しむ。
(イ) あさがお・ひまわりのような粒の大きな種子をまき,まいた種子に水を与えて発芽をまち,発芽や育つ様子を見守り,世話の手伝いをして,それらをいたわったり,たいせつにしたりする。
(ウ) 春にまいた草花の開花の様子を観察し,その色や形などの違いに気づく。
イ 虫などを観察する。
(ア) ばった・かたつむりなどの親しみやすい動物を捜し,それらの居場所や,活動の様子に関心をもつ。
(イ) 取った虫や,かたつむりなどを観察し,色や形,運動のしかたなどに気づく。
ウ 飼っている動物の観察と,世話の手伝いをする。
(ア) うさぎ・にわとり・小鳥などのような親しみやすく飼いやすい動物にえさを与えたり,運動させたりして興味と関心を深め,これをかわいがるようにする。
エ 自分のからだのつくりと,はたらきに関心を深める。
(ア) 自分や友だちのからだのつくりを観察して,からだは頭・胸・腹・手足に分かれていることに気づく。
(イ) 頭・目・口・耳・手・足などのからだのそれぞれの部分のはたらきに気づき,それらをたいせつにするようにする。
(ア) 天気には,晴れ・曇り・雨・雪などがあり,また,風が吹く日もあることに気づく。
(イ) 天気を簡単な絵記号で記録することができるようになる。
イ 土地の様子に興味をもつ。
(ア) 砂場や箱に入れた砂で,山・川・池などの土地の様子を作る。
(ア) 風車・風輪(かざわ)などのような,風の力で動く簡単なおもちゃを作り,それがよく動くように作り方をくふうする。
(イ) 作ったおもちゃを風に当てたり,うちわであおいだりして,その動く様子が風の向きや強さによって違うことに気づく。
イ 影のでき方を調べる。
(ア) 影踏みや影絵遊びなどから,太陽や電燈などの光を物でさえぎると,光源の反対側に影のできることに気づく。
(イ) 影の濃さは,ガラスや水のような物と,厚紙や木のような物とでは違いのあることに気づく。
ウ 鏡に映る文字や絵に関心をもつ。
(ア) 鏡に文字や絵など映して,文字や絵などの向きが違って見えることに気づく。
エ 氷の張る場所に関心をもつ。
(ア) 野外や校庭で氷の張っている様子を観察して,場所により,氷の張りやすい所,張りにくい所のあることに気づく。
(2) 花だんの草花の世話では,指導者とともに栽培することが望ましい。観察したことをことばで表現させることはむずかしいので,絵にかかせるのもよい。その絵も他の生活事象と結びつけて,日記の一部にするのもよい。
(3) 虫などを観察する場合には,観点を指示して効果を高めるようにする必要がある。
(4) 内容(1)の「からだについての関心」のような人体に関する学習は,生命保全についての関心を高めるためにもたいせつで,保健と関連を図って指導にあたるようにする。
(5) 内容(2)のア「天気の観察」は,そのときの特徴のある事象を同時に記録するなどして,観察と記録とに興味をもたせるくふうが必要である。
(6) 内容(3)のようなおもちゃで遊ぶときは,身近な乗り物などについても興味や関心をもたせるようにするのもよい。
(7) 内容の文中「気づく」とあるのは,児童の自発活動によって,実際のものについて,観察したり,考えたりなどして,みずから納得することをさしている。したがって,教師が話などにより,結果だけを教え込むような指導は避けなければならない。このことは,第2学年以上においても同様である。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 身近な自然の環境から疑問を見いだし,これを解決しようとしていろいろくふうし,見たりためしたりすることによって,自然の事物・現象の目だった特徴がとらえられるようにする。
(3) 遊びや作業などの活動を通して,簡単な自然科学的事実に気づき,これに関連した新しい事実の正しい見方,考え方,扱い方ができるようにする。
(4) 育てやすい草花や身近で興味のある動物の世話をさせ,それらをかわいがり育てるように導く。
また,自分たちの手や足のつくりとはたらきに気づき,手足を清潔にするように導く。
(ア) 春と秋に,花だんに,作りやすい草花の種子をまいたり,球根を植えたりして,種類によって,まいたり植えたりする時期や方法に違いがあることに気づく。
(イ) まいたり植えたりした種子や球根の芽ばえや育ち方が,種類によって違うこと,よく育てるためには,よく日が当たるようにし,ときどき水をやらなければならないことに気づく。
(ウ) 雑草を抜いたり,水を与えたりなどの手入れや,世話ができるようになる。
イ 四季おりおりの野山のありさまを観察する。
(ア) 春・夏・秋に野山に出て,野山の草木・虫・鳥などの種類や様子を観察し,それぞれの季節の自然に親しむ。
(イ) 野山で草つみ・花つみ・花束つくりなどをして遊んだり,草を集めて花だんやはちに植えたりして,種類によって,花・葉・茎などが違うことに気づく。
ウ 飼っている動物の観察と,世話の手伝いをする。
(ア) きんぎょやふな,めだかなどをガラスの水そうに入れて,えさを与え,その食べ方や泳ぎ方に気づく。きんぎょなどには,大きさ・色・形の違ったものがあることに気づく。
エ くだものの色・形の違いや,しるの色の変化を調べる。
(ア) みかん・かき・りんごなどのくだものを観察して,色・形,内部の様子の違いに気づく。
(イ) みかんなどを絞ってしるをとり,これらであぶりだしをして遊び,しるの色や様子,あぶりだしをしたときの色の変わり方に気づく。
オ 手や足のつくりとはたらきに関心を深める。
(ア) 手・足のつくりを観察して,手・足には,つめ・ゆびがあり,曲げたり,伸ばしたりすることができることに気づく。
(イ) 手・足を清潔にするようになる。
(ア) 晴れ・曇り・雨・雪などの天気には,よく晴れている,少し曇っているなどのように,それぞれ程度の違いのあることに気づく。
(イ) 日によって暑さ・寒さなどが違うことに気づく。
イ 日なたと日かげの違いを比べる。
(ア) 日なたと日かげの明るさや暖かさを比べ,その違いに気づくとともに,日なたと日かげでは,生物の様子や氷・霜などの様子などに違いのあることに気づく。
ウ 土地の高低や形に関心を深める。
(ア) 学校の近くの山・丘・池・川などを観察し,土地には高い所や低い所などがあることに気づく。
(ア) 身近にある材料で噴水を作る。
(イ) 噴水の水の上がり方は,水源の高さや,水の出口の太さなどによって違うことに気づく。
イ 影の形・大きさ・濃さについて調べる。
(ア) 影の形・大きさ・濃さは,物と電燈や,スクリーンとの距離,または,物の置き方によって変わることに気づく。
ウ 鏡に当たった光の反射に関心をもつ。
(ア) 鏡を使って光当て遊びなどをして,光のきまった所に当てるには,鏡の向け方をくふうしなければならないことに気づく。
エ 氷の性質に関心をもつ。
(ア) 氷が水に浮くことや,氷や雪が溶けて水になる様子などに気づく。
オ 磁石のはたらきに関心をもつ。
(ア) 磁石を使って砂鉄集めをしたり,くぎをつけたりして,磁石には,砂鉄やくぎなどをよく引きつける所と,よく引きつけない所のあることに気づく。
(2) 内容(1)のイ「四季の野山」は,地域によって必ずしも同じではないから,適当な場所を選ぶ必要がある。草花を観察させる場合には,花だけでなく,葉の形,葉のつき方などにも注意させると効果的である。
(3) 内容(1)のエ「あぶりだし」のように,学習の進行中に変化があらわれるような場合には,事前に絵カードなどを用いて変化の現われることに注意する。
(4) 内容(1)のオ「手や足のつくり」では,常に自発的に清潔に注意するようにしむけることがたいせつである。
(5) 内容(3)のア「噴水の上がり方」のような実験的な扱いは,図や表を用意して結果を推理することができるようにするとよい。
(6) 内容(3)のオ「磁石のはたらき」では,遊びの発展として,第3学年の内容である磁石が引きつけるもの,引きつけないものに及んでもよい。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 身近な自然の環境から疑問をとらえ,これを解決しようとして,いろいろくふうして,見たりためしたりして考え,いろいろな事物・現象の共通点や相違点に気づくようにする。
(3) 作業や製作などを通して簡単な自然科学的事実に気づくようにし,これをもとにして,新しい事実がうまく扱えるようにする。
(4) 生物の飼育・栽培を通して,生物をかわいがり育てるように導く。
また,目・口・耳・鼻を観察して,つくりの大要に気づかせ,それぞれの部分のはたらきに関心をもつように導く。
(ア) 春と秋に,花だんに,ひゃくにちそう・けいとう・やぐるまぎく・さんしきすみれなどの種子をまいて,種類によってまいたり植えたりする時期や方法に違いのあることを知る。
(イ) まいた種子の芽ばえや育ち方が種類によって違うこと,よく育てるために,日がよく当たるようにしたり,ときどき水をやったり雑草を抜いたりしなければならないことに気づく。
(ウ) 苗の植えかえをし,植物には植えかえると,じょうぶに育つものがあることを知る。
(エ) 種子を取って,一つの種子から多くの種子ができることに気づく。これらの種子を翌年のために,保存することができる。
イ 四季おりおりの野山のありさまを観察する。
(ア) 四季おりおりに野山に出て,野山の草木・虫・鳥などの種類や様子を観察し,それぞれの季節の自然の印象を深める。
(イ) 四季おりおりの野山の草を集めて,花だんやはちに植えたり,押し花・押し葉にしたり,木の葉・木の実でこまを作ったりする間に,種類によって花・実・茎・葉などが違うことに気づく。
(ウ) 秋から冬にかけて葉が色づいて落ちる木と,そうでない木のあることや,草の地上の部分はたいてい枯れてしまうことなどに気づく。
(エ) 早春の野山に出て,草木の芽ばえを観察したり,つみ草をしたりして,春の自然の印象を深める。
ウ 虫などを取って観察する。
(ア) ばった・こおろぎ・ありなど親しみやすい動物を捜し,それらの居場所や活動の様子に気づく。
(イ) 取った虫を観察し,色や形,運動のしかたなどに気づく。
エ 顔のつくりとはたらきに関心を深める。
(ア) 顔には,目・口・耳・鼻があり,それらのつくりとはたらきに気づく。
(イ) 目・口・耳・鼻を清潔にしたり,たいせつにしたりするようになる。
(ア) 夏になると暑くなり,入道雲が出たり,夕立がきたり,晴れの日が続いたりすることに気づく。
(イ) 冬になると,寒くなり,雪が降ったり氷が張ったりして,晴れや雪の日が続いたりすることに気づく。
イ いろいろな石などの様子に関心をもつ。
(ア) 石ころを集め,色・形で分けたり,石並べなどをしたりして,石の色や形に関心をもつ。
ウ 月のいろいろな形に関心をもつ。
(ア) ときどき月を観察したり,その形を絵にかいたりして,月は三日月・半月・満月などいろいろな形に見えることに気づく。
(ア) はねをついたり,身近な材料ではねを作って飛ばしたりして,はねの種類や形などによって,飛び方に違いのあることに気づく。
イ こまの回り方を調べる。
(ア) よく回るこまをくふうして作る。
(イ) こまは,心棒のつけ方や,こまの重さ・形によって,回り方が変わることに気づく。
ウ 落下さんの飛び方を調べる。
(ア) 身近な材料を使って,簡単な落下さんを,いろいろくふうしながら作る。
(イ) 落下さんの糸目やおもりを調節して遊び,風の向きやかさのひろがり方によって落下さんの飛び方に違いのあることに気づく。
エ 磁石の性質を調べる。
(ア) 磁石は紙やセルロイド,ビニルなどを隔てても,砂鉄やくぎなどを引きつけるはたらきのあることに気づく。
(イ) 磁石で身のまわりのいろいろな物を調べ,磁石が引きつける物と引きつけない物がある事に気がつく。
(ウ) 磁石を使うおもちゃや遊びをくふうして,磁石のはたらきに興味をもつ。
オ せっけんの溶け方やシャボン玉のでき方を調べる。
(ア) シャボン玉を吹いて,その大きさや色に興味をもち,吹き方や飛ばし方をくふうする。
(イ) 水の中にせっけんを少しずつ溶かし,そのたびにシャボン玉を吹いてみて,せっけん水の濃さによって,シャボン玉がうまく吹けたり吹けなかったりすることに気づく。
(2) 内容(ウ)のウ「親しみやすい動物」については,いた場所,近くの植物,食べるものなどについても注意させるのがよい。
(3) 内容(1)のエ「顔のつくりとはたらき」では,特に視力検査などを通して,目をたいせつにするように指導し目の清潔と保護について注意を喚起するようにする。なお,乳歯の抜けかわる時期でもあるから,歯の衛生についても留意することが望ましい。
(4) 内容(2)のイ「石ころ集め」は適当なかわらが近くにない場合には,遠足を利用したり,近所で見られる石を集めたりして学習させるようにすることが望ましい。
(5) 内容(2)のウ「月の観察」は天体を夜間観察する最初であるから,家庭または寄宿舎での学習のしかたについて詳しく指導し,児童の負担が重くならないように留意する。三日月から満月までの観察は,そのつど指示を与えるようにする。
(6) 内容(3)の各項に示されるような,遊びを通しての学習は,ややもすると遊びに熱中するあまり,観察や操作のねらいからはずれて,単なる経験として終わりがちである。どんなことがわかったか……など,学習のねらいを明確に認めさせることがたいせつである。
(7) 内容(3)のオ「シャボン玉」の学習に用いる管のように, 口につけて吹くものの扱いは,衛生に注意することがたいせつである。
(8) 内容文中「知る」とあるのは,児童が観察・実験などを通して学習するのを本体とするけれども,さらに,教師が知識として与える面が必要な場合を意味している。したがって,児童にじゅうぶん活動させないで,教師が,はじめから教え込むことは避け,その知識も児童が納得できるように程度を考えて,無理のない指導をすることがたいせつである。このことは,第4学年以上においても同様である。
〔第4学年〕
1 目 標
(2) 身近な自然の環境から疑問をとらえ,これを解決しようとして,いろいろくふうして,見たりためしたりして考え,いろいろな事物・現象の共通点や相違点に気づくようにする。
(3) 作業や考察などを通して,簡単な自然科学的事実に気づき,これをもとにして,新しい事実がうまく扱えるようにする。
(4) 生物の飼育・栽培,野外観察などにより,いろいろな生物の生活の様子を知り,広く生物をかわいがるようにする。
(ア) 春に,ダリア・グラジオラスなどの球根を植えて球根の芽ばえや育ち方が違うことに気づき,秋に球根を掘り上げて,多くの球根ができることに気づく。また,掘り上げた球根を翌年のために保存することができるようになる。
(イ) 学校園に,秋にあぶらなや,えんどうなどの種子をまき,続けて世話をするとともに,著しい変化を記録することができる。
(ウ) 草や木で,さし木・株分けを行ない,植物にはさし木・株分けでふやすことのできるものがあることを知る。
(エ) 球根などの水栽培をし,根や芽が出る様子や,葉・つぼみ・花の様子を観察記緑して,球根の中に養分のあることに気づく。
(オ) 草花などに霜よけをしたり,これらを簡単なフレームなどの中に入れたりして,草木の中には冬の寒さを防いでやる必要のあるもののあることを知る。
イ 田畑の虫の生活に関心をもつ。
(ア) 田畑の虫を観察したり,採集したりして,虫には多くの種類があり,その種類によって,すんでいる場所や食べるもの,活動の様子の違うことに気づき,作物を害する虫のあることを知る。
(イ) 田畑で採集した虫をびんや箱に入れてえさを与え,食べる様子を観察するとともに,それらの虫の生活について興味を深める。
ウ 池や小川の生物を観察する。
(ア) 池や小川で,魚・虫・貝などいろいろな動物を観察したり採集したりして,それぞれの動物のすむ場所や活動の様子に気づく。
(イ) 池や小川で採集したいろいろな動物を水草とともに水そうに入れて観察し,それぞれの形や泳ぎ方などについて違いのあることに気づく。
エ 花・葉・実のしるの色や,その変化を調べる。
(ア) 花や葉を紙や布にのせ,その上からたたいて,その形を染め出したり,花や葉や実のしるを絞って,紙や布を染めたりして,花や葉や実の色に興味をもつ。
(イ) 花や実のしるに水や酢を加えたりして,色の変わり方に違いのあることに気づく。
オ 自分の歯について関心を深める。
(ア) 歯を観察して,その形や大きさ,むし歯とよい歯などの違いのあることに気づく。
(イ) 乳歯は抜けかわること,抜けかわった歯は二度と抜けかわらないことや,歯のはたらきを知り,歯をたいせつにするようになる。
(ア) 天気には,よく晴れている,少し曇っているなどのように,それぞれ程度の違いのあることに気づく。
(イ) 毎日の天気の様子を簡単な記号で2〜3週間記録し,暑さ・寒さや天気は,日によって変わり,また,一日のうちでも変化のあることに気づく。
(ウ) 吹き流しやテープなどを利用して,風の向きや強さなどがいろいろと変わることに気づく。
イ 雨水のゆくえに関心をもつ。
(ア) 地上に降った雨水を観察し,雨水は低いほうに流れて土を掘ったり,押し流したりすることに気づく。
(イ) 土や砂に水をかけ,水がしみこんでいく様子を観察して,地上に降った雨水の一部は地下にしみこむことを知る。
(ウ) 雨が降り続いたあとの小川や池などを観察して,川や池などの水がふえたり濁ったりしていることから,雨水の一部は川や池に流れこんだり低い所にたまったりしていることを知る。
ウ 太陽を観察し,その動きに関心をもつ。
(ア) 太陽を色の濃い下じきや色ガラスを通して観察し,太陽はいつもまるく見えることを確かめる。
(イ) 太陽は毎日東から出て西にはいることに気づくとともに,これをもとにして,東西南北の方角を知る。
(ウ) 立木や棒などの影の動きに興味をもち,影は,朝・昼・夕としだいに西から東へ動いていることから,影の動くのは,太陽が刻々動くためであることに気づく。
(ア) 簡単にできる水車を作り,それがよく動くようにくふうしてみる。
(イ) 水車に水をあて,その回り方が水の速さやあて方で変わることに気づく。
イ 物の浮き沈みに関心をもつ。
(ア) ちゃわんやさらのような形のものは,水に浮かべる場合,その置き方によっては,水に浮かんだり沈んだりすることに興味をもつ。
(イ) 油粘土などで船を作って水に浮かべ,水に沈むものでも,形によっては,浮く場合があることに気づく。
ウ やじろうべえのつりあいを調べる。
(ア) やじろうべえを作り,うまくつり合うようにくふうしながら,そのつりあいに興味をもつ。
(イ) やじろうべえのうでの良さやうでのつけ方,つけるおもりの重さを変えると,つりあいの変わることに気づく。
エ ゴム風船やボールなどで,空気のはたらきに関心をもつ。
(ア) ふくらましたゴム風船の口を開いて放すと飛ぶことに興味をもち,風船をふくらませる程度によって,飛び方に違いがあることに気づく。
(イ) ふくらましたゴム風船を水中に押し入れたり,水中で風船の口を開いたりして,手ごたえのあることや,あわの出ることに気づく。
(ウ) ボールにたくさん空気を押し込むと,よくはずむようになることに気づき,空気をつめて使うものはどんなものがあるか考える。
オ 音の出方に関心をもつ。
(ア) はじいたりたたいたりすると,ものがふるえることに気づく。
(イ) 太鼓などがふるえているときには,音が出ていることを知る。
カ ゴムやばねを利用したおもちゃをくふうする。
(ア) ゴムやばねなどの弾力を利用した簡単な動くおもちゃを作り,よく動くようにくふうし,ゴム・バネなどの弾力が動力としてはたらくことに気づく。
(2) 内容(1)のイ「田畑の虫」では,そのころの作物の種類や生育の様子にも注意を向けさせ,また観察のために田畑を荒らさないように指導することがたいせつである。
(3) 内容(1)のウ「池や小川の生物」については,海に近い所では潮干狩りなどを利用し,この内容と関係のある海辺の生物についても学習させることが望ましい。また,これらの生物を飼う場合には,見やすい状態でしかも自然に近い条件で飼育するようにする。
(4) 内容(1)のエ「花・葉・実のしるの色」では,簡単な器具類の操作ができるように指導する。
(5) 内容(1)のオ「自分の歯」では,鏡などを利用して自分の歯について観察させると同時に,歯をたいせつにする必要を理解させる。そして,個個の歯よりも,歯全体としてのはたらきを中心にして指導し,保健と関連して歯のみがき方なども,ここで指導することが考えられる。
(6) 内容(2)のア「天気の変化」では,児童が興味を失わないで,しかも自主的に観察を続け,それを記録するのに大きな負担を感じさせないような適切な配慮が必要である。
(7) 内容(2)のウ「太陽の観察」では,先に学習した影のでき方と関連して,影が西から東へ動く事実から,光源である太陽が東から西へ移動することに気づかせるように指導する。
(8) 内容(3)のア「水車の回り方」では,児童が製作する上に,材料や構造が工作能力に無理のないように配慮することが必要がある。
(9) 内容(3)のエ「空気のはたらき」では,むりに空気の比重や浮力といったことばで解明しようとしないで,手ごたえの事実で強く印象づけるようにする。
(10) 内容(3)の力「ゴムやばねの利用」では,ゴムやばねなどの弾性を利用して動力とするおもちゃをくふうさせ,弾性についての関心を深める程度でよい。ゴムの弾性についての数量的な取り扱いは中学部にゆずる。
(11) 観察・実験では,児童が興味をもって活動できるようにする。ともすれば教師が初めから教え込むという態度になりがちであるが,これは厳に避けるべきである。
(12) 温度計・虫めがねなどの観察に使う道具や,アルコールランプ・試験管などの実験に使う道具は,必要と児童の能力とに応じて,適宜扱うことができるようになることがよい。
〔第5学年〕
1 目 標
(2) 自然の環境から問題を見いだし,これを解決しようとする意欲を高め,解決の方法を考え,それを事実に即して確かめることができるようにする。
(3) 学校や家庭などにおける生活の中で得られる事実をもとにして,それらの基礎となる自然科学の原理が理解できるようにする。
(4) 身近な自然の事物・現象を利用することに喜びをもたせ,自然物をたいせつにし,これをみだりにいためたり荒らしたりしないようにする。
また,人のからだのつくりの大要に気づくようにする。
(ア) あぶらなのようなつくりの見やすい花を観察して,花は,がく・はなびら・おしべ・めしべなどからできていることを知る。
(イ) えんどう・つつじなどの花を観察して,花びらの数・形・並び方などよく似た花があることに気づく。
(ウ) つつじ・あぶらななどの花には,花粉があることに気づく。
(エ) へちまの種子をまき,続けて世話をするとともに,著しい変化が記録できる。
(オ) へちまには,実のできる花と実のできない花とがあることに気づく。
(カ) へちまの水取りをし,根から上がった水が茎の上方にのほることを知る。へちまの実の内部を観察し,その筋を利用することを知る。
イ 植物の種子のつくり,散り方を観察する。
(ア) 花だんや野山で普通に見られる植物の開花結実などの期日には,違いのあることに気づくとともに,草木の種子の散り方に気づく。
(イ) 花だんや野山で集めた種子の外形を観察し,種子の大きさ・形・色などには違いのあることに気づく。
ウ かえるの育つ様子を観察する。
(ア) かえるの卵やおたまじゃくしなとを飼育し,成長に伴うからだの著しい変化を観察記録して,その育ち方に気づく。
(イ) かえるには,いろいろな種類があることを知り,それらのすむ場所や運動のしかたなどに気づく。
エ 虫のからだのつくりを調べる。
(ア) ちょう・がなどのからだのつくりを比較観察し,からだの区分や,目・ひげ・はね・足などの共通点に気づき,これらがこん虫であることを知る。
オ 人のからだのおよそのつくりを調べる。
(ア) からだを外部から観察して,筋肉・骨組みなどのおよそのつくりに気づき,それらのはたらきによって運動のできることを知る。
(イ) 内臓諸器管のおよその形や位置とはたらきを知って,それらをたいせつにするようにする。
(ウ) 姿勢を正しくすることがたいせつなことに気づく。
(ア) 春,梅雨のころ,夏,台風のころ,秋,冬に天気の様子を観察して,かすみ・梅雨・雷・入道雲・夕立・にじ・台風・霜・雪など,季節による特徴のある気象現象や,日ざしの違いに気づく。
(イ) 季節により,暑さ・寒さに違いのあることに気づく。
(ウ) 四季おりおりの雲を観察して,いろいろな形があることに気づき,夏は入道雲,秋はすじ雲など,季節によって多く見られる雲のあることを知る。
(エ) 1年の終わりに,季節ごとの観察記録をまとめ,季節の移り変わりについて理解を深め,季節の特徴を知る。
イ 土の性質を調べる。
(ア) 粘上・砂・黒土などの粒・色・手ざわり,また,水のしみこむ様子や粘り気などを観察して,これらの性質に違いのあることに気づく。
(イ) がけや切り通しなどで,土や岩石を観察したり,柔らかい岩石を砕いたりして,土は岩石から変わったものであることを知る。
ウ かわらの様子とそこにある石を調べる。
(ア) かわらの様子を観察して,かわらには石の多い所,砂や粘土の多い所などかあることに気づく。
(イ) 石を集め,形・色・大きさ・かたさなどにいろいろあることに気づくとともに,簡単な標本を作ることができる。
エ 月を観察し,その形の変化や動きを調べる。
(ア) 月の形を写生して,月の表面には明るいところと,うす暗いところとあることに気づく。
(イ) 毎日,同じ時刻に月を観察して,月の位置や形は,少しずつ変わっていくことに気づく。
(ウ) 月はいつも同じ形には見えないが,一つのまるいものであることを知る。
(エ) 三日月・半月・満月などの動きを観察して,月も東から西へ動いていることを知る。
(ア) 紙玉でっぽうなどを作り,たまがよく飛ぶようにくふうし,押し縮められた空気の力に気づく。
(イ) 水でっぽうを作って遊び,水がよく吸い込まれたり,押し出されたりするしくみをくふうする。
(ウ) 水が吸いこまれたり,押し出されたりするしくみに気づき,水を遠くへ飛ばすように押し方や傾け方などをくふうする。
イ グライダーの作り方や飛ばし方をくふうする。
(ア) わりばし・厚紙など,身近な材料でグライダーを作り,はねの形やつける位置,つりあいなどを考えて,よく飛ぶようにくふうする。
ウ 音の伝わり方に関心をもつ。
(ア) 金属・木の棒などのはしをはじいたりたたいたりすると,振動が伝わってくる。このことから音の伝わり方を知る。
エ 鏡を組み合わせて物の映り方を調べる。
(ア) 1枚の鏡の傾きや位置をいろいろに変えて,後方や,上下のものが映せるようになる。
(イ) 2枚以上の鏡をいろいろ組み合わせて,物の映り方が変わる様子を観察する。
(ウ) 鏡をうまく組み合わせて,万華鏡や潜望鏡をくふうして作り,その映り方に興味をもつ。
オ 虫めがねのはたらきを調べる。
(ア) 虫めがねで物を見ると,大きく見えることに気づき,虫めがねの使い方に慣れる。
(イ) 虫めがねを目から離して,遠くの物を見ると,物がさかさまに小さく見えることに気づく。
(ウ) 虫めがねに日光を当てると,影の中に明るい所ができ,虫めがねを動かして,これを小さくすると,黒い紙などが焦げることに気づく。
カ 物の温度について調べる。
(ア) 水と湯に温度計を入れて,温度計の示す液の高さがそれぞれ違うことに気づき,その高さを目もりで読めば,水と湯の温度がわかることを知る。
(イ) 物の冷たさや暖かさの程度は,温度計を使えば正しく調べられることを知り,温度計の初歩的な扱いができるようになる。
キ 氷をつくって,そのでき方を調べる。
(ア) 水そうの中に氷と食塩とを入れて混ぜ,この中に温度計を入れて,氷だけのときよりも温度が下がることに気づく。
(イ) 上記の寒剤を入れたガラスの器などの外側が曇ったり,霜のようなものがついたりすることに気づく。
(ウ)寒剤の中に水を入れた試験管をさしこみ,水か冷えて氷になるときの様子に気づく。
ク 磁石の性質を調べる。
(ア) 磁石には,N,Sの極があることを知り,同し極はしりぞけあい,違う極は引きあうことに気づく。
(イ) 縫い針などを磁石でこすって,それが磁石になることに気づく。
(ウ) 磁石を自由に動くようにささえると,南北をさすことに気づく。
(エ) 磁石(コンパス)を使うと,方位を知ることができることに気づき,磁石の使い方を知る。
ケ 豆電球の点燈のしかたを調べる。
(ア) 乾電他・豆電球・ソケット・導線などを使って豆電球を点燈して,乾電他には十と一の極があることを知り,両極と豆電球を導線でつなぐと点燈することに気づく。
(イ) 乾電他と豆電球の回路にスイッチをつないで豆電球を点滅させて,回路の一部が離れていると電気が通らないことに気づく。
(ウ) 乾電池と豆電球の回路に,金物・紙・木などを入れて,豆電球の点燈のしかたを調べ,電気を通しやすいものと通しにくいものがあることに気づく。
コ 物の溶け方を調べる。
(ア) 食塩やほう酸を使ってうがい水を作り,食塩は水に溶けやすいが,ほう酸は水に溶けにくいことに気づく。
(イ) ほう酸を水や湯に溶かして比べ,その溶け方が,水の暖かさによって違うことに気づく。
(ウ) 湯に溶けたほう酸の液を冷やすと,湯がさめるにつれて,液中にほう酸が小さな粒となって出てくることに気づく。
(エ) 濃い食塩水(飽和溶液)を10倍ないし20倍にうすめて,うがい水をつくることができるようになる。
(オ) マッチやアルコールランプの扱い方を知り,安全に使うことができるようになる。
サ 青写真の感光紙の色の変わり方に関心をもつ。
(ア) 青写真の感光紙を太陽の光に当てると色の変わること,光の当て方によって,感光紙の色の変わり方に違いのあることに気づく。
(イ) 感光紙の上に花や葉などや,絵や字を書いた薄い紙などをのせて日光に当てると,その物の形が写し出されることに興味をもつ。
(ウ) (イ)のように光を当てた感光紙は,水で洗えば,さらに光を当てても変色しないようになることを知る。
(2) 内容(1)のカ「人のからだ」の,筋肉・骨組みなどのおよそのつくりとは,からだを見たり,さわったり,動かしたりしてわかる程度でよく,骨については,頭の骨・あばら骨・背骨・腰の骨・手足の骨などがわかる程度でよい。
(3) 内容(2)のア「天気の特徴」について,季節の著しい変化が見られるくらいの時期(2〜3週間)にとどめるのがよい。観察の開始の時期は,長期予報などを参考にして変化の多そうな時期を選ぶようにする。
(4) 内容(2)のイ「土の性質」と,内容(1)のア「学校園の世話」とは関係が深いから,その点を考慮して指導する必要がある。
(5) 内容(2)のエ「月の形」は,天体を夜観察するのであるから,特に家庭における学習のしかたについて懇切に指導し,児童の負担が過重にならないように注意しなければならない。
(6) 内容(3)のウ「音の伝わり方」では,ピアノの上に手をおいたり,おんさをたたいて耳にふれさせたりして,音は発音体から伝わって来ることを中心に扱うのかよい。
(7) 内容(3)のカ「物の温度」では,今まで感覚的にとらえてきた冷温の程度を客観的に温度計でとらえる最初で,内容(2)のア「四季の天気」に関連して,だんだんと気温も温度計でとらえるようにすることが望ましい。温度計の正しい取り扱いは必要感をじゅうぶん感じさせて導入するのがよい。
(8) 内容(3)のク「磁石の性質」では,磁石には,いろいろの形のものがあるが,どれも同じ性質をもっていることを知らせる。また,方位については,磁石(コンパス)を使って実際に束・西・南・北をはからせ,それが確実にわかるようになってから,八方位におよぶのがよい。
(9) 内容(3)のケ「豆電球」では,豆電球・電池がそれぞれ1個の場合の点燈のしかたを取り扱い,2個以上は第6学年で扱う。ここでは電気の流れについて理解を深めるように導く。
(10) 虫めがね・マッチ・アルコールランプなどの実験観察に必要な器具の正しい扱い方を指導するだけでなく,必要に応じてこれらを使用させ,その扱い方に慣れさせるよう指導することがたいせつである。
〔第6学年〕
1 目 標
(2) 自然の環境の中にある問題を見いだし,解決の方法をいろいろ考えて,事実に即して確かめ,処理できるようにする。
(3) 日常生活の中で経験できる事実をもとにして,自然科学的な基礎的原理を理解し,これを生活にあてはめてみるように導く。
(4) 自然の事物や現象についての理解をもとにして,自然と人間の生活との関係に気づくようにし,自然を愛護しようとする態度を養う。
また,人のからだの成長や正常なはたらきに気づくようにし,人の栄養についても理解させる。
(ア) じゃがいも,または,さつまいもなどの栽培のしかたを知り,これを栽培して,その生育の様子に気づく。
(イ) 植物には,じゃがいもなどのように,いもでふえるもののあることに気づく。
イ 飼っている動物の世話をし,その育ち方や習性を調べる。
(ア) にわとりやうさぎなどのような飼いやすい動物がうまく育つように世話をし,育ち方,えさの種類,著しい習性について知る。
ウ 川や池の水草やもについて,その種類やつくりを調べる。
(ア) 観察や採集によって,池や沼には,うきくさのような水面に浮いているもの,くわい・はすのように葉や茎の一部は水面に出ているが,根を水底の地中におろしているもの,きんぎょものように水中に生育するものなどかあることを知る。
(イ) 水辺・水面・水中に生育する植物の葉や茎を観察して,それぞれの著しい特徴に気づく。
(ウ) うきくさを水そうに入れておき,それが分かれてふえることや,日当たりなどによってふえ方に速いおそいがあることに気づく。
エ 虫を飼育したり,観察したりして,その一生の変化を調べる。
(ア) ちょう,またはかいこなどを飼育,観察し,その育つ様子を記録して,卵から幼虫,さなぎを経て成虫となる事実に気づく。
(イ) か・はえの一生の変化や生活の様子を観察して,これをもとにして駆除する方法を考えることができるようになる。
オ 海辺の生物の種類や生活の様子を調べる。
(ア) 海には,潮の満ち干がある事実に気づく。
(イ) 潮のひいた砂浜,潮だまり,または,いそで,貝・うにのように手に入れやすい海浜の動物を観察したり採集したりして,それらにはいろいろな種類のあることや,それらの生活の様子に気づく。
(ウ) 海そうや海浜の植物のはえている様子を観察したり,それらを採集したりして,その性状が野山の植物と違っている点に気づく。
(エ) あさり・はまぐりなどのような二枚貝を観察して,貝がら・ちょうつがい・貝柱・足・入水管・出水管などのあることを知る。
カ 池や川の水の中の小さい生物を観察する。
(ア) 池や川などの水を顕微鏡で見ることにより,水中には,みじんこ・ぞうりむしなどの小さい生物がすんでいることに気づく。
キ 生物の冬越しのしかたを調べる。
(ア) 冬の野山や校庭などで,植物の地下の茎・いも・根・冬芽などの観察を通して,植物はいろいろな姿で冬を越す事実に気づく。
(イ) こん虫は,その種類によって,卵・幼虫・さなぎまたは成虫のようないろいろの状態で冬を越すことを観察し,あわせて身近に見られるその他の動物の冬の越し方を知る。
(ウ) 春・夏のころ見られた鳥りの中には,秋から冬にかけて見られなくなるものがあり,秋・冬のころになると春・夏のころ見られなかった種類の鳥が見られるようになることを知る。
ク 自分のからだの発育や,からだのおよそのはたらきを調べる。
(ア) 健康診断の測定資料を前学年までのものと比較して,体重・身長など,自分のからだの成長に気づく。
(イ) 鼓動・体温・呼吸などが,運動したときや病気のときには正常時と違うことを知る。
(ウ) 口・目・耳・鼻・皮膚の清潔に注意し,むし歯・トラホームなどの病気にかからないようにする。
ケ 食物に含まれる栄養素のはたらきに関心をもつ。
(ア) 日常の食物は,でんぷん・糖・脂肪・たんぱく質・ビタミン・カルシウム・鉄のような栄養素を含んでいることを知る。
(イ) これらの栄養素は,それぞれ独自のはたらきをもっていて,一つの種類の食物だけでは,栄養を完全にとることはできないことを知る。
(ア) 温度計を正しく操作して,気温が測れるようになる。
(イ) 気温を測り,それが1日のうちでも,また季節によっても変化することに気づく。
(ウ) 地温や水温を測り,気温との違いに気づく。
イ 川の水の流れ方を調べる。
(ア) かわらで,川幅,流れの速さ,水のかさなどを観察して,これらが上流と下流とでは違いがあることを知る。
(イ) 川に木片などを流して,流れの様子を調べ,川の中央と岸とでは流れの速さに違いがあることに気づく。
ウ 川や海の水のはたらきを調べる。
(ア) 川が曲がりくねって流れていることや,大水の前後のかわらの様子の違いなどから,川の水には,川底や岸を削ったり,削りとった石や砂や粘土を運んだり,それらを水底に積もらせたりするはたらきのあることを考えることができる。
(イ) 海岸のがけ・砂浜の様子などから,海水にも川の水と同じようなはたらきがあることを知る。
(ウ) 雨水や川の水のはたらきで,長い間に土地の様子がしだいに変化していくことを知る。
エ おもな星と星座を観察する。
(ア) いろいろな星の明るさを比べ,星は明るさによって1等星・2等星などに分けられていることを知る。
(イ) 北極星・北斗七星・カシオペア座・さそり座・オリオン座など目ぼしい星や星座を観察して,明るさや並び方など,区別のつく特徴に気づき,これらを見分けられるようになる。
(ウ) 季節によって,見える星はいつも同じではないことに気づく。
(エ) 北極星は方角を知るのに役だつことを知る。
(ア) 簡単なてんびんを作り,左右に等しい重さの物をかけたときにつりあうことに気づく。
(イ) 上ざらてんびんのはたらきを知って,正しく使うことができるようになる。
イ 物の浮き沈みについて調べる。
(ア) 同じ体積の水より軽いものは,水の中に押し沈めても浮き上がり,水より重いものは沈むことを理解する。
(イ) 卵などは水の中では沈むけれども,濃い食塩水の中では浮くことに気づく。
ウ てこに関心をもち,その使い方をくふうする。
(ア) 捧をてことして使い,小さな力で重い物を動かす方法をくふうし,てこには,てこをささえる点,力を加える点,加えた力のはたらく点のあることに気づき,これらの点の位置が変わると,同じ大きさの力を加えても,物にはたらく力の大きさが変わる事実を知る。
(イ) はさみ・おしぎりなどは,てこのはたらきを応用した道具であることを知り,その使い方に慣れる。
エ ポンプのしくみとはたらきを調べる。
(ア) 吸い上げポンプや押し上げポンプを扱ったり,簡単なポンプを作ったりして,シリンダー・ピストン・弁・気室などのしくみとはたらきに気づく。
オ 温度の違いによる水の状態の変化を調べる。
(ア) 氷を溶かしたり,水を沸騰させたりして,水(液体)は氷(固体)・水蒸気(気体)に変わることに気づく。
(イ) 水が凍るのは普通0℃,沸騰するのは普通100℃であることを知る。
カ 温度の違いによる物の膨張・収縮を調べる。
(ア) 水・空気・金物などを熱したり冷やしたりして,物は暖まると膨張し,冷えると収縮する事実や,その度合いの違いに気づく。
(イ) 温度計は,温度の高低によって,水銀や,アルコールなどが膨張・収縮することを応用したものであることを知る。
(ウ) 水が氷になったり,氷が水になったりするときには,体積が変わる事実に気づく。
(エ) 水を少量入れた試験管を熱して,試験管にはめたせんを飛ばし,水は水蒸気になると,体積が著しく増すことを知る。
キ 乾電他と豆電球のつなぎ方による明るさの違いを調べる。
(ア) 2個の豆電球を乾電池につなぐとき,直列・並列のつなぎ方によって豆電球の明るさが違うことに気づく。
(イ) 2個の乾電他を豆電球につなぐとき,直列・並列のつなぎ方によって豆電球の明るさが違うことに気づく。
(ウ) 豆電球の明るさが違うのは,豆電球を流れる電流の強さが違うからであることを知る。
(エ) 乾電池に豆電球をつないだときの回路を,簡単な絵や記号を使った配線図で表わしたり,配線図に従って簡単な回路を組み立てたりすることができるようになる。
(オ) 乾電池や豆電球などを使って,簡単な懐中電燈・シグナルなどをくふうして作ることができる。
ク 電磁石のはたらきを調べる。
(ア) 簡単な電磁石を作り,電流を通じると磁石としてはたらき,電流を断つと,はたらかなくなることを確かめる。
(イ) 電磁石は,導線を多く巻いたり,電流を強くしたりすると,磁力が強くなることを理解する。
(ウ) 電鈴などには電磁石が利用されていることを知り,それらのしくみや,はたらきを理解する。
ケ でんぷんを取り,その性質を調べる。
(ア) じゃがいも・さつまいもなどのようないもには,でんぷんが含まれていることを知り,それらからでんぷんを取り出すことができる。
(イ) でんぷんを水に入れて振ったり,これを熱したりして,でんぷんは水に溶けないが,これを暖めるとのりになることに気づく。
(ウ) でんぷん液によう素液を加えると青紫色に変わることから,でんぷんを確かめるには,よう素液を用いればよいことを知る。
(エ) パンやごはんなどによう素液をつけると青紫色に変わることから,これらの食物にはでんぷんが含まれていることがわかる。
(オ) ごはんをかんでいると甘くなることから,でんぷんは,つばのはたらきで砂糖のなかまに変わることを知る。
コ 動植物から取ったあぶらの性質を調べる。
(ア) ごま,または,あぶらななどの種子を押しつぶして,あぶらをしみ出させたり,豚肉などを熱してあぶらを取り出したりすることができる。
(イ) 水にあぶらを入れると,まじらないで上に浮くことから,あぶらは水に溶けないで,水より軽いことに気づく。
(ウ) あぶらの中にしんを立てて火をつけると,燃えることに気づく。
サ たんぱく質の性質を調べる。
(ア) たんぱく質は,卵・肉・牛乳・だいずなどに含まれていることを知る。
(イ) たんぱく質を含んだものを焼くと,特臭を出して変化することに気づく。
(ウ) たんぱく質には,熱したり,酢を加えたりすると固まるものがあることに気づく。
シ 食塩水を水と食塩とに分ける。
(ア) 食塩にごみがまじってしるときには,これを水に溶かしてろ過し,固形物と食塩水に分けることができるようになる。
(イ) 食塩水(または海水)を熱して水分を蒸発させ,食塩を取り出すことができることに気づくとともに,製塩法を知る。
(ウ) 食塩水を熱し,出てきた水蒸気を集めて冷やし,その水を味わって,食塩が含まれていないにとに気づく。
(2) 内容(1)のキ「自分のからだ」では,そのつくりやはたらきの学習をもとにして,正常な人体の状態を理解させ,病状について自己診断し,それを訴えることができるようにする。健康の習慣については,保健と連絡をとって合理的に処理できるようにする。
(3) 内容の(1)のク「食物と栄養素」は,内容(3)のエ「でんぶん」,サ「あぶら」,シ「たんぱく質」との関連を考えて指導することがたいせつである。
(4) 内容(2)の気温・地温・水温の観察結果や記録やその処理については,グラフや表を活用してその理解を深めることがたいせつである。
(5) 内容(2)のエ「おもな星と星座」では,家庭で学習するようになるので,視聴覚資材を活用するなどして,児童が夜星を観察するのに負担にならないよう,学校での取り扱いにじゅうぶん配慮することが必要である。家庭の協力をあおぐことも忘れてはならない。
(6) 内容(3)のウ「てこ」に関する学習は,日常用いられる道具を使い,それを通して具体的な経験を得させ,てこの三点とそれにはたらく力について理解させ,三点間の数量的関係は中学部で扱う。
(7) 化学実験については,器具の破損・安全にじゅうぶん留意して,事故を起こさないように気をつけることがたいせつである。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
1 内容にあげた各事項は,いずれも学校の指導計画に含まれ,指導されるべきものであるが,各事項のまとめ方や,順序は,これによる必要はない。学校において適切な組織・順序をもった指導計画を立てて指導する必要がある。
2 学校の指導計画作成にあたっては,児童の能力や経験,児童が見いだした疑問や問題,教師の指導目標などを考慮して,全体をいくつかのまとまりに組織することが望ましい。
3 内容中(ア),(イ),(ウ)などの事項は,内容の程度や望ましい学習活動を示してある。学習指導にあたっては,その地城の実情や学校の施設設備などに応じ,適切な方法によって,そのねらいを達成するように努めることがたいせつである。
4 内容中にあげた生物の種名や岩石名などは,その例を示したものであるから,地域の生物や地質などを考慮して,それを学習に生かすようにし,また,季節や地域の気象・行事などとの関連に留意し,適切な時期に観察・実験・飼育・栽培などができるように計画する必要がある。
5 児童の発達段階に応じ,その興味関心を発展させ,児童の経験や実生活との結びつきを重んじ,つとめて具体的な事物・現象からはいり実証的,研究的な態度で学習させるようにすることがたいせつである。なお,この場合児童の個人差にも適切に対処できるように考慮する必要があるが,学習可能な事はつとめて扱うようにし,能力や態度については,同じことがらについて反復して積み上げていくようにする。
6 できるだけ広く観察・実験を行なうことが必要であって,観察・実験を行なわないで,単に知識のみに偏することは厳に避けなければならない。そのためには,平素から学習の環境を整備し,自然の事物や現象に接する機会を多くしたり,観察・実験がたやすくできるようにし,児童の学習態度を助長するように指導することが望ましい。
7 理科の学習を通して,直接事物・現象に即して語いを拡充していくようにする。また文字や絵,スライドなどを使うことによって,知識や理解の習得を確実にすることか望ましい。しかし,語いや知識の習得を強調しすぎて,理科学習の本来の目的を失してはならない。
8 観察・観測・飼育・栽培などを継続して行なうために,必要に応して指導の時間を分割したり,野外観察のために半日ないし1日,理科の時間をまとめたりして指導してもよい。
また,長期にわたって計画を立てる必要のあるものも多いから,綿密な配慮のもとに長期計画を立てておくことがたいせつである。
9 学習活動を展開するにあたっては,児童の特質をじゅうぶんに考慮し,常に児童とともに学ぶという態度がたいせつで,特に観点を指示することによって,目標を見あやまらないようすることがたいせつである。
10 第1・2学年では,特に遊びの活動を多く取り入れ,自然に興味を感じさせつつ,いろいろな事物・現象に気づくようにする。また観察するものは,第1・2学年ではなるべく動的なものを扱い,上の学年にいくにしたがって静的なもの,小さいものを扱うことが望ましい。
11 野外観察・実験などにあたり,事故の防止を特に留意すること。不注意あるいは無意識な動作,好奇心による行動,扱い方を理解しないで操作することなどから,けがをしたり,機械器具を破損したりすることを理解させ,理科の時間ばかりでなく,日常生活においても科学的な考え深い行動をとる習慣をつけるように指導する。
12 児童は,経験領域が狭いから,実地の観察を多くしたり,視聴覚教材を利用したりして,生活経験を豊かにするようにする。
13 音の理解を伴う教材,人体の耳の知識についての取り扱いについては,特にくふうして指導する。