第1 目 標
1 具体的な社会生活の経験を通して,自他の人格の尊重が民主的な社会生活の基本であることを理解させ,自主的,自律的な生活態度を養う。
2 家庭・学校・市町村・国その他いろいろな社会集団につき,集団における人と人との相互関係や,集団と個人,集団と集団との関係について基礎的なことがらを理解させ,社会生活に適応し,これを改善していく態度や能力,国際協調の気持ちなどを養う。
3 生産・消費・交通その他重要な社会機能やその相互の関係について,基本的なことがらを理解させ,進んで社会的な協同活動に参加しようとする態度や能力を養う。
4 人間生活が自然環境と密接な関係をもち,それぞれの地域によって特色ある姿で営まれていることを,衣食住等の日常生活との関連において理解させ,これをもとに自然環境に対応した生活のくふうをしようとする態度,自分たちの住んでいる地域や国土に対する愛情などを養う。
5 人々の生活様式や社会的なしくみ,文化などのもつ意味を身近な生活との関連において考えさせ,それらが歴史的につくられてきたことに気づかせ,先人の業績やすぐれた文化遺産をたいせつにする態度,正しい国民的自覚をもって国家や社会の発展に尽くそうとする態度などを養う。
上に掲げた社会科の目標は,相互に密接な関連をもつものであるが,特に,社会科はわが国における民主主義の育成に対して重要な教育的役割をになう教科であるとともに,児童の自主的,自律的な生活態度や能力を伸ばす上に重要な意味をもつ教科であるから,各学年における具体的な学習が,主として目標2から5までのいずれかにかかわる場合においても,常にその指導の根底には目標1が考慮されなければならない。
社会科は,社会生活に対する正しい理解を得させることによって,児童の道徳的判断力の基礎を養い,望ましい態度や心情の裏づけをしていくという役割をになっており,道徳教育について特に深い関係をもつものである。したがって,社会科の指導を通して育成される判断力が,道徳の時間において児童の道徳性についての自覚としていっそう深められ,この自覚がふたたび社会科における学習に生きてはたらくように指導することが望ましい。
以下に示す各学年の目標は,次のような児童の発達段階に応じた社会科の特性を考慮したものである。すなわち,低学年では,児童の生活経験がまだ狭少で,家庭,寄宿舎,学校などの主として直接に経験できる範囲のものに限られている。
したがって,第1・2学年における社会科の指導の方向としては,まず,学級,学校環境への順応,適応を出発点として,児童の日常生活における身近な諸経験を整理,発展させながら,身のまわりの社会生活への関心を育て,同時に集団の一員としての自主的,自律的な生活態度の芽ばえを育てることが重点である。
第3・4学年においては,児童の生活経験はしだいに拡大し,言語の能力の基礎もようやく身につきはじめるとともに,知的,社会的発達も,ある程度向上する。したがって,この段階における社会科の指導の方向としては,自分たちの住んでいる地域の人々の生活と自然環境に目を向けさせ,その相互関係や生活の今昔の違いなどの初歩的な理解を得させることを通して,時間的,空間的意識の芽ばえを育て,集団生活への適応と社会生活に対する正しい見方,考え方の基礎を養うことが重点である。
第5・6学年においては,児童はすでに相当程度に経験や生活範囲も拡大し,言語の使用能力も相当程度発達しているため,物事の因果関係を知ろうとしたり批判的に思考する力も芽ばえ,また,自主的,自律的な行動もしだいにみられるようになる。したがって,この時期における社会科指導の方向としては,自分たちの生活の歴史的背景,自然環境,他地域との依存関係などの基礎的な理解を通して,日常生活の身近なことがらでも,国全体,または世界の国々と関係をもっていること,また,過去の先人たちの努力の結果であることに気づかせ,正しい社会観の芽ばえをつちかうことが重点である。
第2 各学年の目標および内容
〔第1学年〕
1 目 標
(2) 学校や家庭など,その他身近な生活におけるいろいろなきまりや行事,施設などに関心をもたせる。
(3) 学校や家庭などにおける人間関係に目を開かせ,集団生活に慣れさせる。
(2) 順番を守ったり,仲よくしたりすると,みんなと楽しく遊べる。
(3) 学校や家庭などには,いろいろな施設や設備,道具などがあり,それらの使い方には,きまりがある。
(4) 学校や家庭などまた近所では,いろいろな楽しい行事が行なわれている。
(5) 自分たちの身近には,郵便やさん,おまわりさん,お百姓さんなどいろいろな人がおり,また,消防署・郵便局などの施設や工場,商店などがある。
(6) 自分たちの周囲には,道路やいろいろなものがあり,みんなできまりを守ってこれらを利用している。
(7) 学校や家庭などでは,自分たちが,病気やけがをしないように先生や両親などが常に気を配ってくれているので注意を守ることが必要である。
児童は,入学以前の時期に言語の活動がきわめて困難であったか,あるいはほとんど言語を習得しないまま入学してくる場合か多いため,知的,社会的発達に遅滞や片寄りが見られがちである。
したがって,この学年の初期においては,まず児童を学級や学校の環境に円滑に順応させ,あわせて,日常生活の基本的な行動様式の基礎を身につけさせ,集団の一員としての自律的な生活態度の芽ばえを養うことを目ざすようにすることが必要である。
(2) しかしながら,しだいにこれらの習慣形成や言語指導が進むにつれて,児童が理解できる範囲において,身のまわりの社会生活や人間関係や事物に目を向けさせ,具体的な生活の中でそれらの事物や人がどんなはたらきをしているか等について関心をもたせるように指導することが望ましい。
(3) 実際の指導にあたっては,児童の興味や関心を軍んじ,意欲をそそる遊びや共同の作業などを通して,児童がいきいきと自発的に学習するように導くことがたいせつである。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 学校や家庭,近隣など,身近な生活におけるいろいろなきまりや行事,施設などの意味について理解させ,みんなが健康でしあわせな生活ができるように苦心が払われていることに気づかせる。
(3) 身近な地形,事物の位置関係,あるいは,家庭などの暮らしに見られる季節的変化などに気づかせる。
(4) 学校や家庭などにおける人間関係に目を開かせ,これらの生活も自分たちの協力やくふうによって,いっそう楽しくなることを考えさせ,集団生活に進んで参加しようとする態度を養う。
(2) みんなで使う道具や,施設の使い方,行事への参加のしかたなど,決められたことをよく守れば,みんなが楽しい学校生活を送ることができる。
(3) そうじや花壇の手入れや,飾りつけ,整とんなどをよくして,家庭や学校などを美しくすれば,気持ちよく勉強したり遊ぶことができる。
(4) 家の職業には,いろいろなものがある。
(5) 家庭などで衣食住の準備や世話をしてくれる人の仕事は忙しく苦労が多い。
(6) 家庭などの仕事には季節や時刻,人手の関係などで特に忙しいことがある。
(7) 家庭などでは楽しい時間や行事をもつよう,いろいろ考えられている。
(8) 学校や社会には,病気やけがを防ぐためのいろいろな行事やきまりがある。
(9) 自分たちの周囲には公園,あき地,遊園地などがあり,遊び場その他に使われているが,その利用のしかたについては,いろいろな注意が必要である。
(10) いろいろな道路や乗り物は,人や物を運ぶはたらきをしているが,その利用には危険を伴うから,登下校などには常に注意が必要である。
(11) 家庭などの衣食住,自分たちの遊びや生活のしかたなどには季節によっていろいろな違いが見られる。
(2) 内容の(1),(4),(5)等については,身近な人たちの仕事に関心をもたせ,自分たちとの関係について考えさせるとともに,職業活動としての仕事にも注意させ,人々の仕事の種類の多様性に気づかせる程度にとどめ,平易に扱うものとする。
(3) 内容の(9),(10)等の学習は,空間的意識の芽を育てようとするものであり,高学年における地理的学習に発展するものとして重要である。しかし,この学年としては,児童の理解力の発達からみて身近な生活に関する具体的な事物に即して,平易に取り扱うことが望ましい。
(4) 内容の(10)についての学習では,特に交通のきまりに関心をもたせることに重点をおき,安全教育を徹底する機会として,道徳等と関連づけて指導することが望ましい。また,体育科における危害予防の指導との関連を図るようにする。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 人々の生命・財産を守るための各種の仕事や,その意味について具体的に理解させ,自分たちが日常安心して生活できるようなしくみが考えられていることに気づかせる。
(3) 身近な地形,事物の位置関係や場所的相違,あるいは家庭などの暮らしに見られる季節的変化,事物の新旧の違いなどを観察,理解させ,空間や時間についての意識を育てる。
(4) 学校や家庭,その他身近な生活において,多くの人々が,いろいろな仕事を受け持っていることに気づかせ,これらの人々に対する親しみの気持ちを育てる。
(2) どんな職業の家庭でも,他の人の作った物資を買って生活している。
(3) 近所の人々は,互いに協力して,不時の災害に備えたり共同施設の改善を図ったりなどして,安全で住みよい環境をつくる努力をしている。
(4) 人々は,田畑を耕して米や野菜を作り,山では木を切り,海では魚をとる仕事をしている。
(5) 店の人々は,生活に必要ないろいろな品物を仕入れて売っている。
(6) 工場では,大ぜいの人々が,生活に必要ないろいろな品物を機械を使って作りだしている。
(7) 交通・運輸の仕事に携わっている人々は,安全にしかも早く人や物を運ぶために努力している。
(8) 郵便局などで働いている人々は,郵便や電報が確実に早く相手に届くよう努力している。
(9) 警察官,消防官,医師などは,盗難,けが,火災,病気等の不幸からみんなの生活を守るための仕事をしてくれている。
(10) これらの人々の仕事の特色は,いつでも仕事にとりかかれるように用意しており,時にはその仕事に生命の危険が伴うことなどである。
(11) 人々は,いろいろくふうして,土地を田や畑にしたり,道路にしたりなどして,暮らしに役だてているが,その様子は場所によって違っている。
(12) 道路や建物などには,古いものと新しいものがあり,また,道路工事が行なわれたり,新しい建物ができたりなどして,近所の様子も変わっていく。
(13) 家庭などの衣食住,あるいは,近所の人々の生活や仕事には季節によってさまざまな違いが見られる。
(2) 特に内容の(4),(6)については,地域によっては,それぞれの働く人々の様子を実際に観察したり,調べたりすることの困難な場合もあろう。しかし,そのような場合でも,視聴覚教材・教具の利用,その他の方法によって,これを有効に学習させるようにくふうしなければならない。
(3) この段階の児童は,ようやく学校環境にも慣れ,言語の能力の基礎が身につきはじめ,適応力も向上してきているが,さらに社会科の指導の中で共同の作業や製作,グループや役割の分担などを通して,進んで集団生活に参加する態度や能力を養うように留意しなければならない。
〔第4学年〕
1 目 標
(2) 自分たちの住んでいる地域で,人々が行なっている重要な諸活動の相互の関係のあらましを理解させ,公共施設や資源をたいせつにする態度を養う。
(3) 天候と人々の仕事が関係をもっている事実や,自分たちの生活が遠い地方の人々とも関係をもっている事実,人々の使う道具や機械が進んできている事実などの一端を理解させ,空間や時間についての意識を深める。
(4) 世の中では,多くの人々が,それぞれ仕事を分担しあっている事実を理解させ,これらの人々に対する協力や感謝の気特ちを育てる。
(2) 店の人々は生産者と消費者とをつなぐ役割を果たしているが,問屋や市場から品物を仕入れる仕事その他にいろいろなくふうをしている。
(3) 自分たちの住んでいる地域の人々の仕事や暮らしには,電信,電話や各種の交通機関などによる他地域との通信,往来,物資の輸送等もたいせつなはたらきをしている。
(4) 人々は郵便・電報などを利用して,よその土地の人々と必要な連絡をしているが,郵便局などで働いている人々は,それらが確実に速く相手に届くよう努力している。
(5) 自分たちの住んでいる地域では,みんなの健康を守ったり,火災や水害などの災害を防いだりするために,保健所,診療所,消防団,水防団などをつくって,さまざまな活動を行なっている。
(6) 自分たちの住んでいる地域の中には,田畑や森林の多い所,住宅,商店,工場などがそれぞれ集まっている所などかあり,その様子は場所によって違う。
(7) 自分たちの住んでいる地域の人々は,学校,公民館,図書館,公園などの公共施設を利用して,生活の向上に役だてている。
(8) 天候の変化は,人々の仕事にいろいろな影響を与えるが,特にあらしなどで田畑が荒らされたり,交通・通信機関などが止まったりすると,その復旧には多くの苦労が伴う。
(9) 自分たちの住んでいる地域の人々はいろいろな職業に携わっているが,その中には,他の地域に働きに行く人もある。
(10) いろいろな仕事をする人の使う道具や機械を見ると,便利になってきたものが多い。
(11) 働く人たちは,仕事や身なりは違っていても,それぞれたいせつな仕事を受け持っており,それらの人々のおかげで,みんなが楽しく生活することができる。
特に聾(ろう)学校は,児童の家庭と学校とが同一の地域社会に必ずしも属していない場合が多く,そのため,児童の日常生活に最も密接な地域とは,おもに学校または寄宿舎などを中心とした地域となる場合が多い。また,取り扱う地域的範囲も,児童の経験や能力などの発達段階によって違ってくるから,単元構成や指導の実際にあたっては,この点じゅうぶん留意しなければならない。
(2) 内容の(10)取り扱いについては,内容の(3),(4),(5),(8)等に関する具体的な学習の中で,児童に理解しやすく,できれば実際に比較観察することのできる道具や機械の事例を取り上げていくのが望ましい。時代の順を追って,これらの変遷を扱うような学習を行なう必要はない。
(3) 内容の(11)の取り扱いにおいては,仕事によって,人々の服装が違っていることに注意させるだけでなく,服装や仕事で職業の貴賤(せん)を区別しないような,正しい職業観の芽を養うことが必要である。
〔第5学年〕
1 目 標
(2) 自分たちの住んでいる地域の人々の仕事は,その地形,気候,資源,交通条件などと深い関係をもって営まれていくことを観察理解させ,自然環境と人間生活の関係についての関心を高める。
(3) 自分たちの住んでいる地域の生活には,今昔の違い,歴史的な移り変わりがいろいろな姿で見られることを理解させ,先人の努力について考え,これを尊重し,感謝する気持ちを育てる。
(4) 自分たちの住んでいる地域にも今後くふうや改善を要するいろいろな問題があり,人々はその解決のために努力していることを理解させ,地域の発展を願う気持ちを育てる。
(2) 県庁の所在地は,県の政治の中心であるばかりでなく,各種の重要な施設も多いので,自分たちの住んでいる地域の生活も,これと深いつながりをもっている。
(3) 自分たちの住んでいる地域で作られる物資の中には,遠い地方や大都市あるいは外国などへ大量に送り出されて,自分たちの住んでいる地域の人々の生計をささえるもとになっているものもある。
(4) 自分たちの住んでいる地域では,地域の人々によって選ばれた議員や長が,地域全体の人々のために必要な仕事を計画したり,行なったりしている。
(5) 新しい土地や道路の開発,災害の復旧,公共施設の整備などは,一つの地域の力だけでは困難な点もあるので,多くの地域の協力あるいはもっと広い地域や国との協力で進められることが少なくない。
(6) 自分たちの住んでいる地域の人々は,昔から,神社や寺院などを中心として祭りその他の行事を催し,楽しみをともにしてきた。
(7) 自分たちの住んでいる地域の人口や集落の状態,人々の仕事の種類や方法,道路の様子などを見ても,父母や祖父母のこどものころに比べて変わった点が少なくないが,そこには鉄道やバスの開通,道路や港の改修,工場の設置など,人々のいろいろな努力があった。
(8) 自分たちの住んでいる地域の人々の仕事や暮らしは,その土地の地形,気候,資源,交通条件などと深い関係をもっているが,かんがいのための各種の工事を行なったり,協同組合を作ったり,水道を引いたりなどしていろいろくふうをしている。
(9) 自分のことばかりでなく,地域の人々全体のことを考え,みんなが協力しあえば,自分たちの生活も改善される面が少なくない。
(2) この学年で自分たちの住んでいる地域というのは,第4学年で扱った地域よりも広い範囲を含め,児童の経験や能力などの発達段階に即して取り扱うものとする。
(3) 内容の(3)に関連した学習を行なうにあたって,特に他地方へ大量に送り出しているような生産物資のない地域(たとえば,都市の住宅地区など)の学校では,消費物資の面から他地方とのつながりを理解させるような方法を講ずることが望ましい。
(4) 内容の(4)に関連した学習においては,政治や行政組織等に関する程度の高い学習にはしりすぎないように,特に注意する必要がある。地域の人々全体の福祉を目ざし,そのために必要な仕事が,地域の人々の税金などをもとにして行なわれるようなたてまえになっていることを理解させることができればよい。
(5) 内容の(6)および(7)に関連した学習を行なう場合,この学年の児童の能力を考え,歴史的資料(史跡,記念碑なども含む)。についても児童の興味に応じた取り扱いについて配慮する必要がある。
(6) 内容の(8)については,地域によって具体的な取り扱い方が異なってくるが,いずれの場合にも,具体的な観察や事実の認識に基づいて,自然と人間生活との基本的なつながりに目を開かせるようにすべきである。したがって,学習に地図を利用する機会をできるだけ多くし,基礎的な地図記号や方位等についても的確な指導をしておくことが望ましい。
〔第6学年〕
1 目 標
(2) 人々の自然への積極的な働きかけが,現在いろいろな形で行なわれているばかりでなく,先人の努力やくふうを通して今日まで積み重ねられてきたことを理解させ,他地域の人々の暮らし方などに学びながら,自分たちの住んでいる地域の発展に尽くそうとする気持ちを養う。
(3) この国土で営まれているおもな産業の様子や国民生活との関係についてあらましを理解させ,働く人々への関心を高める。
(4) 日常生活の身近なことがらでも,国全体または,世界の他の国々と関係のある場合が多いことや,自分が国民のひとりとして生活していることに気づかせ,国土に対する愛情を養う。
(2) 自然が人間の生活に役だっている一面として,すぐれた自然景観に恵まれた土地があり,その美しさを保護するためにいろいろな努力が払われている場合も少なくない。
(3) 国内には,さまざまな特色をもった地域,たとえば,暖かくて雨の多い土地,冬が長くて雪の多い土地,高地,平地,海岸,離島などがあり,衣食住や生産など,生活の上で人々はいろいろな苦心やくふうをしている。
(4) 自然への働きかけや暮らしのくふうは,大昔の人々の衣食住の様子や生産のしかた,さまざまな用具などにも,いろいろな形で見られ,その様子は現在の自分たちの生活と比較して大きな違いがある。
(5) 自分たちの住んでいる地域の人々は,土地の開拓,用水路・道路の開拓,新しい産業の導入など,自然の制約を克服しながら生産や生活の向上に努めてきたか,このような事例は他の土地にも多く見られる。
(6) 人々の旅のしかたや物資の輸送のしかたは,江戸時代と明治以後とでは道路の発達や新しい交通機関の出現,世の中の変化などに伴って著しく変わり,便利になった。
(7) 自分たちの住んでいる地域を発展させることが,日本の発展の基礎になることを考え,先人の経験を生かして郷土の生活の改善のしかたなどについてくふうすることがたいせつである。
(8) 国民生活をささえる産業としては,農業,工業,水産業,林業,鉱業,牧畜業,商業などがあり,その種類はきわめて多い。
(9) わが国では,気候の条件から,おもに,米の生産が農業生産の中心になっており,毎年の米の生産高の多少が国民生活に大きな影響を与える。
(10) わが国の工業はこれまでいわゆる四大工業地帯を中心に発達してきたが,最近ではこのほかにも新しい工業地域が各地におこり,すぐれた工業製品もしだいに多くなりつつある。
(11) わが国では,多くの工業原料を外国から輸入し,できた製品を海外に輸出して貿易を行なっているので,諸外国との友好関係を保つことがたいせつである。
(2) 内容の(3)に関連した学習においては,それぞれの土地の特色を具体的に理解できるような資料を多く用意しておくこと,自分たちの住んでいる地域の生活との比較や関係などについても,必要に応じて指導することなどがたいせつである。
(3) 内容の(4)に関連した学習においては,日本の歴史上に見られる具体的な人々の生活を取り上げるようにし,人類一般の文明発祥の歴史の学習などにはしらないように留意すべきである。
(4) 内容の(6)に関連した学習においては,その地域的範囲を必ずしも自分たちの住んでいる地域だけに限定することなく,それぞれの時代の交通の特色やその変化などを,児童に最も効果的にはあくさせるようにくふうすべきである。したがって,これらの学習においては,特に視聴覚資料や歴史年表などの活用がたいせつである。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
1 どの程度具体的な指導計画をあらかじめ作成しておくことが効果的であるかは,個々の教師の経験や能力によって異なる。
しかし,社会科の場合は,単元という内容・学習経験の具体的なまとまりをくふうし,これに基づいて指導を進めていくのか原則であるから,少なくとも,
(2) 単元相互の関係。
(3) 各単元における展開のあらすじと所要時間の概略。
2 社会科における単元は,その学年で扱う内容の単なる便宜的区分ではなく,児童がどのような能力や経験をもち,身のまわりの社会的事象をどうとらえ,どのような疑問や問題をもっているか等の実態と教師の指導目標を結びつけて考えたとき,具体的に決定できるものである。
以上のことから,
(2) 学習指導要領に基づいて作成された指導計画に関する地域的参考資料を利用する場合にも,単にこれを機械的に模倣するのでなく,じゅうぶん研究検討を加えたうえ,学級児童の実態に適合した指導計画を作ることが望ましい。
(2) 単元学習の趣旨から考えて,学習の目標を児童自身に効果的にはあくさせるくふうが,特に重要である。それぞれの単元の導入段階などの指導計画や学習指導には,このような配慮がじゅうぶん払われていることが望ましい。
(3) 社会科で行なわれる各種の学習活動のうちには,たとえば見学とか野外調査のように,よく検討し綿密な準備や計画を考えておかなければならないものがある。指導の直前になってあわてて予定を変更したり,漫然と児童を校外に連れ出して時間の浪費に終わることのないように留意すべきである。
(4) 習得した知識の整理をしたり,結論を確かめたりする終末の段階の学習になると,時間が足りなくなって,指導を急いでしまう場合が少なくない。
しかし,この段階は単元学習としても重要なものであるから,このような傾向に陥らないよう,指導計画を作成する際にも,また実際指導にあたっても,じゅうぶん留意すべきである。
(5) 地域の自然的,社会的環境に即して指導計画は編成されなければならないが,特に社会科においては,実地見学や野外調査などを行なう関係上,地域の人々の理解を深め,その協力を得るよう配慮しておくことがたいせつである。
(6) 言語の能力の不足を補うために,できるだけ絵画,スライド,映画,標本,年表,写真,地図,掛け図,統計,分布図,新聞,テレビなど,豊富な視聴覚教材を活用して,有効な学習か行なわれるよう留意しなければならない。
(7) 特に第1・2・3・4学年では,実際の指導においては,教材のわくにかかわらず,関連する内容を総合的に扱う総合学習を行なうことも可能であるが,その場合も,社会科としてねらっている目標がじゅうぶん達せられるよう留意しなければならない。
(8) 特に第4・5・6学年の児童は,児童会,クラブ活動などの特別教育活動にしだいに参加する機会が多くなるので,社会科の指導に適宜取り入れ,これによって相互の学習が有効なものになるよう配慮することがたいせつである。
(9) 実際の指導においては,児童の興味,疑問,要求などを的確にとらえ,これらに即応した弾力性のある指導が望ましいが,特に興味のあるできごとや時事的なことがらなど,児童に親しみ深いものを豊富に効果的に取り入れることが必要である。
(10) 学習にあたっては,共通の問題の解決のため,グループ組織など適宜に設け,協力して自主的に学習を進めたり,集団生活へ積極的に参加したりするような機会を用意することが望ましい。