第7節 家   庭

第1 目  標

1 被服・食物・すまいなどに関する初歩的,基礎的な知識・技能を習得させ,日常生活に役だつようにする。

2 被用・食物・すまいなどに関する仕事を通して,時間や労力,物資や金銭を計画的,経済的に使用し,生活をいっそう合理的に処理することができるようにする。

3 健康でうるおいのある楽しい家庭生活にするように,被服・食物・すまいなどについて創意くふうする態度や能力を養う。

4 家庭生活の意義を理解させ,障害を克服し家族の一員として家庭生活をよりよくしようとする心構えや実践的態度を養う。

 家庭科は,第4学年までにおける家庭生活についての経験や学習の発展に即応し,組織的,実践的な指導を行なうため,第5学年から置かれるものである。

 上に掲げた目標は,相互に密接な関連をもつものである。目標1は,家庭科で指導すべき中心的なねらいであり,目標2および3は,目標1のねらいを具体的,重点的に示したものであって,この指導にあたっては家庭科の特性上,常にその根底において目標4が考慮されなければならない。

第2 各学年の目標および内容

〔第5学年〕

 1 目  標

(1) 日常の身なりを整えたり,被服を清潔に保ち,正しくしまつしたりする初歩的な知識・技能を身につけさせる。

(2) 布と糸や針を用いて簡単な日常用いる身のまわりのものを作らせ,製作に関する初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせるとともに,製作の喜びを味わわせる。

(3) 食事のしたくやあとかたづけのしかたを習得させ,進んで,手伝おうとする態度を養うとともに,日常の食事作法を身につけさせる。

(4) 日常の食物の栄養について理解させ,調理の初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせる。

(5) すまいの清掃や整理・整とんに関する初歩的な知識や技能を身につけさせ,気持ちよく住まおうとする態度を養う。

(6) 家族の一員として自分の役割を知り,家庭の仕事に協力し,楽しい家庭生活を営もうとする態度を養う。

 2 内  容

A 被  服

(1) 身なりの整え方を理解させる。

ア 日常着の正しい着方について,下着や上着の種類,着る順序,姿勢との関係などを知る。

イ 自分にふさわしい衣服の形,色などについて考える。

ウ 日常の身なりを整える。

(2) 衛生的な被服の着方を理解させ,簡単な洗たくができるようにする。

ア 衛生的な下着の選び方について,地質,色,形,大きさなどから考える。

イ もめんの下着などの簡単な洗たくの実習をし,実践するように努める。

(ア) 洗たくにふさわしい身じたくを知る。

(イ) 洗たく用具の種類と使い方を知る。

(ウ) 洗剤の種類,用いる分量,用い方について知る。

(エ) 洗い方,しぼり方,干し方およびたたみ方を知る。

(3) 簡単な被服の手入れや,しまつのしかたができるようにする。

ア 被服の手入れやしまつのしかたを調べる。

イ ブラッシの使い方を知る。

ウ 自分の衣服のたたみ方を実習する。

エ 自分の日常着の整理・整とんのしかたを考える。

(4) 布と糸や針を用いて,日常用いる台ふきおよび袋類を作らせる。

ア 製作するものの目的や用途に適した布やその他の材料の選び方,ととのえ方を知る。

イ 使用の目的に適した形や大きさ,調和のとれた形を考える。

ウ 製作用具の種類やそれぞれの使い方,扱い方を知る。

エ 寸法の取り方,決め方,縫いしろの決め方,取り方を知る。

オ 手縫いの基礎として,なみ縫い,玉むすび,玉どめ,すくい返しどめおよび重ねつぎができる。

カ 手縫いのほかにミシン縫いがあることを知る。

キ 装飾の一つとして,アップリケなどのししゅうがあることを知る。

ク 仕事を計画的に手順よく進めるようにする。

ケ 製作の楽しさや,製作品を使うことの喜びを味わう。

B 食  物

(1) 日常の食事のぜんだてやあとかたづけのしかたを理解させ,進んでそれらを実行するようにさせる。

ア 日常の食事のぜんだてやあとかたづけを,衛生的,能率的にするしかたを考えて実習する。

イ 家族が気持ちよく楽しく食事をすることができるように,くふうする。

ウ 食品やふきんの取り扱い方,洗い方,しまい方を衛生的にする。

エ 食事の場や台所を情潔に保つように努める。

(2) 食物の栄養について理解させる。

ア 食事についての栄養的な意義について考える。

イ 日常食品の栄養素について調べる。

ウ 栄養的な基礎食品群について知る。

(3) 野菜の生食,ゆで卵,青菜の油いためなどの簡単な調理を実習させる。

ア 調理にふさわしい身じたくをする。

イ 調理用具の種類と使い方,簡単な手入れのしかたを知る。

ウ 調理に必要な計量器の使い方をくふうする。

エ 材料の見分け方について調べる。

オ 燃料やこんろの安全で合理的な使い方を知る。

カ 調理用具・食器などの安全で能率的な配置を考える。

キ 食品・調理用具・食器などを衛生的に取り扱う。

ク 調理するものの目的や,栄養の効果などを考えて,食品を洗ったり,切ったり,加熱したり,味をつけたり,盛りつけたりするしかたができる。

ケ 廃棄物を衛生的に処理する。

コ 計画に従って手順よく仕事を進める。

サ 仕事を協力して能率的に進める。

(4) 日常の食事作法を身につけさせる。

ア これまでの経験をもとにして,日常の食事の望ましいしかたについて考える。

イ お茶の入れ方,飲み方,菓子やくだものの食べ方を実習する。

ウ 来客に対する茶菓やくだもののすすめ方を実習する。

C す ま い

(1) すまいの清掃の正しいしかたを理解させ,簡単なそうじ用品を作らせ,進んで清掃を実行するようにさせる。

ア すまいを清掃することの必要について,衛生上,精神上などから考える。

イ そうじに適当な身じたくについて考える。

ウ すまいの各部の清掃のしかたを知り,実践するように努める。

エ そうじ用具の種類やその使い方,しまい方および手入れのしかたを知る。

オ ぞうきん,ちりとり,くず入れなどのような簡単なそうじ用品を作ったり,修理加工したりする。

(2) すまいの整理・整とんのしかたを理解させ,実践させるようにする。

ア すまいを整理・整とんする必要について考える。

イ 自分の持ち物の整理・整とんのしかたについて,類別,使用に便利な置き方,使用度数による置き場所,整とんの美しさなどを考えてくふうする。

ウ 室内や家のまわりの整理・整とんのしかたをくふうする。

エ 調和のある物の置き方を考える。

オ 整理箱や整理袋の活用を考える。

D 家  庭

(1) 家庭の一員としての役割を認識させて,責任を果たすようにさせる。

ア 家族はそれぞれどんな立場や役割をもっているかを調べる。

イ 自分の家庭における仕事の種類や分担の様子を調べる。

ウ 家族としての望ましいあり方を考える。

エ 家庭生活を維持向上するために,自分のとる態度について考える。

(2) 応対や訪問のしかたができるようにする。

ア 来訪者に対する適切な応対について考える。

イ 来客の取り次ぎ,接待のしかたを実習する。

ウ 適切なあいさつや動作ができるように訪問のしかたを実習する。

 3 指導上の留意事項

(1) A(1)は,自分の身なりに関心をもち,ほころびや繕う箇所などがあったら,繕ってもらうようにする。

(2) A(1)のアは,正しい着方や姿勢について特に留意して指導する。

(3) A(1)のイは,衣服にはいろいろな形,色などがあることを知らせ,自分にふさわしい形,色などについて指導する。

(4) A(1)のウは,ボタン,スナップなどがどのように使われているかを理解させる。

(5) A(4)のウ,エは,盲児童に適したものさし,針,糸通しなどを利用する。

(6) A(4)のカのミシンについては,手縫いと比較しながら,知識として理解する。

(7) Bの(2)は,特に理科との関連を考える。また,(3)の調理の実習は,年間2回程度行なうことにする。

(8) B(3)のエは,材料の見分け方は盲児童に適した方法をくふうする。

(9) B(3)のキは,はし以外に手を使用することが多いので,特に手の清潔には注意する。

(10) Bの(4)は,簡単な配膳,はしの使い方,食事のしかたなどに留意して指導する。

(11) B(4)のイ,ウは,Dの(2)と関連させて,取り扱うようにする。

(12) C(2)のオは,身近にある箱や袋を利用したり,市販の整理袋,整理箱を活用させる。

(13) Dの(1)は,盲児童は,ややもすると家族の一員であることの自覚を失いがちであり,特に寄宿舎等で生活をする児童にこの傾向が強いので,この点留意して適切に指導することがたいせつである。

(14) Dの(2)は,盲児童は,特に応対や訪問の際の礼儀に欠けていることが多いので,機会あるたびに指導する。

〔第6学年〕

 1 目  標

(1) 日常生活において目的に応じた被服の着方や被用の手入れができ,被服生活を計画的に営むようにさせる。

(2) 簡単な被服や布・糸利用の日用品をくふうして製作し,被服に関する基礎的な知識・技能を身につけさせる。

(3) 日常食の栄養的な取り方について理解させ,調理に関する初歩的な知識や基礎的な技能を身につけさせるとともに,調理を能率的に安全にしようとする態度を養う。

(4) 食事のもつ社交的意義を知り,望ましい態度で食事ができるようにする。

(5) 健康的で合理的なすまい方をくふうし,すまいの美化やすまい方の改善に関心をもたせ,これを実行する態度を養う。

(6) 家庭の機能を理解し,家庭と協力して,家庭生活の向上を図り,時間や労力,物資や金銭を合理的に使用する態度を養う。

 2 内  容

A 被  服

(1) 目的に応じた被服の着方ができるようにする。

ア 衣服の暖かい着方,涼しい着方について,衣服の材料,形,色,重ね方などを知る。

イ 気温に応じた被服の調節のしかたについて知る。

ウ 活動に便利な衣服について考える。

エ 調和のとれた着方や持ち物の調和についてくふうする。

(2) 被服の日常の手入れについて,繕い,洗たく,アイロンかけなどができるようにし,また保存のしかたを理解させる。

ア 運動服,簡単な上着などのような衣服の洗たくを実習する。

(ア) 布地の種類に応じた洗剤の選び方,用い方,合理的な洗い方を知る。

(イ) 洗い場の高さ,洗たく用具の能率的な置き方などをくふうする。

イ アイロン仕上げを実習する。

(ア) 布地の種類とアイロンの温度との関係を知る。

(イ) アイロンの扱い方,かけ方,しまい方を知る。

ウ 布のいたみに応じた繕い方として,かぎざきの繕い,穴の繕いおよび布の弱った部分の繕いについて知る。

エ 墨,どろ,果じゅう,絵の具,しょうゆ,油,えりあかなどのしみやよごれの簡単な取り方について知る。

オ 防虫や防湿に適した容器,防虫剤の種類や使い方を調べ,被服を保存する方法を知る。

(3) 自分の被服生活を計画的にするようにさせる。

ア 自分に必要な被服の種類や数を調べ,計画的に使用することができる。

イ 被服を長持ちさせるようにくふうする。

ウ 被服の補充について,既製品を選んで買う,更生利用,手製のくふうなどの方法について考える。

(4) カバー類のような簡単な被服や,布・糸利用の日用品をくふうして作らせる。

ア 必要に応じたものをくふう製作する。

イ 製作の目的を明らかにし,仕事を計画的に手順よくする。

ウ 用途に適した布やその他の材料を選び,ととのえる。

エ 使用の目的に適した形や大きさ,調和のとれた形をくふうする。

オ 製作用具の使い方,扱い方に慣れる。

カ 裁ち方をくふうする。

キ 手縫いの基礎として,まつり縫い,半返し縫い,本返し縫いができ,手縫いの縫い方に慣れる。

B 食  物

(1) 栄養的な食物の取り方を理解させる。

ア 栄養的な食品の選択や組み合わせ方を知る。

イ 栄養,費用,季節,好みなど考えて,献立を作らなければならないことを知る。

ウ 日常食の簡単な献立を作る。

エ 献立した食物のおおよその量を知る。

(2) ごはん,みそしる,目玉焼き,こふきいも,サンドイッチ程度の簡単な日常食の調理を実習させる。

ア 材料をととのえる時間を知る。

イ 鮮度,品質,費用などを考えて材料を選ぶ。

ウ 調理台,流しなどの高さや配置は仕事の能率に関係あることを知る。

エ 調理するものの目的や,栄表の効果などを考えて食品を洗ったり,切ったり,加熱したり,味をつけたり,盛りつけたりするしかたができる。

オ 調理用具や調理に必要な計量器の使用に慣れる。

カ 燃料やこんろの安全で合理的な使用に慣れる。

キ 食品・調理用具・食器などを清潔に取り扱い,廃棄物は衛生的に処理する。

ク 調理にふさわしい身じたくをし,仕事を協力して計画的,能率的にする。

ケ 自分の家の台所に関心をもち,安全,衛生,能率などについて考える。

(3) 日常の食事作法や会食のしかたを身につけさせる。

ア 皆とともに望ましい態度で食事をするしかたを実習する。

イ 明るい清潔な食事の場をつくり,楽しく会食するしかたを実習する。

C す ま い

(1) すまいの各場所のはたらきを理解させ,健康なすまい方をくふうさせる。

ア 清潔なすまい方について,簡単な消毒や殺虫のしかた,大そうじの時期・方法・効果,梅雨時の処置などを知る。

イ 涼しく住むために,気温と湿度との関係,通風,日よけ,必要な家具・用具などを知り,くふうする。

ウ 暖かく住むために,日当たり.暖房のしかた,へやの適当な温度・換気,暖房用具の種類・特徴・使い方などを知り,くふうする。

エ 必要な明るさが得られるように,採光のしかたや,照明器具の種類・特徴・使い方を知る。

オ 安全に住めるように災害予防に関心をもち,その簡単な方法を調べる。

(2) 調和のある楽しいすまいをくふうさせる。

ア 調和や能率を考えて,物の配置や飾りつけをくふうする。

イ 室内の美化について考え,雑誌入れ,花びんしき,壁かけ,カーテン,のれんなどのような実用品や,装飾品があることを知る。

D 家  庭

(1) 合理的な生活について考えさせ,これを実践しようとさせる。

ア 家庭の機能について知る。

イ 家の仕事のしかたについて,能率的,計画的にすることをくふうする。

ウ 家庭の生活時間のだいたいを調べて,規則正しい生活をしたり,余暇を利用して生活を楽しくすることなどをくふうする。

エ 金銭の使い方について,じょうずな買い物のしかたを考えたり,金銭の収支の記録のしかたを実習する。

 3 指導上の留意事項

(1) A(1)のエは,盲児童は,自分ではわからないことが多いので,特に留意して指導する。

(2) A(2)のイの材料は,簡単なものとする。

(3) Bの(2)の調理の実習は,年間3回程度行なうことにする。また,(3)は(2)と関連して取り扱うようにする。

(4) Cの(1)は,理科で学習したことをもとにして,生活に生かす方法を具体的に考えさせ,実践できるようにする。

(5) C(2)のイは,既製品の選択や合理的な利用について関心をもたせる。

(6) Dの(1)は,A,B,Cの内容を指導する際に,いろいろな角度から考えさせ,実践しようとするように配慮する。

第3 指導計画作成および学習指導の方針

1 指導計画の作成について,次の事項を考慮する。

(1) 第2に示した内容は,領域ごとの指導を示したものではなく,また指導の順序を示したものでもない。

 指導計画作成にあたっては,これらの内容を盲児童の家庭生活や宿宿舎生活などの経験を考え,生活的なまとまりをもたせ,相互に有機的関連をもって指導できるようにする。その際,盲児童の特性,地域の事情や季節との関連などを考慮し,盲児童の生活経験を生かすとともに,学習に対する興味や必要感を起こさせるようにする。

(2) 題材は常に盲児童の家庭生活や寄宿舎生活などの実際的な必要や問題に基づいて選び,実習・製作・燥作・応用などの実践的な学習を通して指導する。知識や理解を主とした内容も,教師の一方的な講義に終わることなく,盲児童の興味,必要,経験などに基づき,家庭などの実際的な仕事と結びつけて指導しうるように,題材の作成をくふうする。

(3) 被服・食物・すまいなどに関する技能の発展的系統をよく吟味して,その基本的なものから順序を追って発展的に指導できるようにする。

(4) この段階の男女の盲児童の家庭生活,寄宿舎生活などにおける仕事の分担の違いや興味の違いなどの特性に応じ,無理のないようにする。

(5) 他の教科や道徳などの指導との関連をじゅうぶんに考慮する。家庭科は教科の特性上,他の教科や道徳などの指導との関係がきわめて密接であるから,指導計画の作成にあたっては,関連する内容の取り扱いについてよく検討する。

2 技能の指導は,正確に身につけさせることをねらいとする。しかし,単に手先の巧みさだけをねらっているのではなく,学習の過程における注意深さ,どう察やくふう,構想力などの発達をねらっているのである。それゆえ,指導にあたっては,目的をはっきりさせ,学習の意味をよく理解させることが必要である。また合理的に学習させるように指導するとともに,楽しく学習させるようにくふうしたり,完成の喜びを味わわせることがたいせつである。

3 学習は作業を伴うことが多いから,実際の指導にあたっては,学校の施設・設備をじゅうぶんに活用するように,くふうすることが必要である。なお,学習活動においては危険を伴う用具・機械などを取り扱う場合が多いので,安全の保持にじゅうぶん注意する。

4 学習指導においては,教科の特性上,家庭や寄宿舎生活などとの関連を図ることが特にたいせつである。