第6節 図画工作

第1 目  標

1 自然や人工のものに親しませ観察力を養う。

2 ものを作ったり,絵をかいたりなどする造形的な欲求や興味を喚起し,満足させ,情緒の安定を図る。

3 造形活動を通して,造形的感覚を発達させ,創造的表現の能力を伸ばす。

4 造形的な表現や鑑賞を通して,美的情操を養う。

5 造形的な表現を通して,技術を尊重する態度や,積極的に実践していく態度を養う。

6 造形活動の経験を通して習得した技能を生活に生かす態度を養う。

 上に掲げた図画工作科の目標は,相互に密接な関連をもつものであるが,目標1,2は,図画工作科における指導の出発点となり,また,その基底となるものである。

 したがって,各学年における具体的な学習が,主として目標3,4および5のいずれにかかる場合においても,図画工作科の特性上,常にその指導の根底には,目標1,2が考慮されなければならない。目標3,4および5は,それぞれ創造的表現力,美的情操および造形活動における実践的態度について,その目標を掲げたものであるが,各学年における具体的な学習においては,これらのねらいが有機的に結びつけられるとともに,目標6との関連が考慮されなければならない。

 次に示す各学年の目標は,下学年では,まず基礎的指導の上に立って,生活に密着したいろいろなものを観察させるとともに,造形への欲求や興味を起こさせ,活発な造形活動を行なわせて,盲児童の欲求や興味を満足させることに重点を置いて指導し,上学年に進むにつれて,造形的な経験を豊かにし,表現や鑑賞の技能・態度を伸ばすとともに,美と用との両面にわたる造形的な秩序を理解したり,感じとったりすることができるようになることをねらいとして示したものである。

第2 各学年の目標および内容 〔第1学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわりたいという欲求を起こし,いろいろなものにさわることの喜びを味わわせる。

(2) ものや絵を作りたい,かきたい,飾りたいという欲求を喚起し,それを満足させ,表現に対する興味を起こさせる。

(3) 何をどのようにかき,何をどのように作るかについて,ある程度心の中でくふうさせる。

(4) のびのびと表現させ,造形の喜びをもたせる。

(5) 表現材料や用具を扱うことを経験させる。

 2 内  容 (1) 観察する。 ア 遊びや話し合いなどを通して,いろいろなものを自由にさわらせ,さわる喜びとものに対する興味を起こさせる。

イ ものには形・大きさ・重さなどがあることを知らせる(幾何模型や身近なものなど)。

ウ なでる,たたく,押す,ひく,ねじる,ちぎるなどの動作によって適切な観察のしかたを習得させる。

エ 観察力を高めるため指先がよく動くように指導する。

(2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 題を与えてかかせたり作らせたりすることを主とするが,必要に応じて自由に題を選ばせる。

イ 題材は,児童の生活環境から簡単なものを適宜与えたり選ばせたりする。

ウ かき方,作り方は,児童の自然発生的な方法を重んじおしつけることをさけるが,かき方 作り方がわからない場合は,ヒントを与えながら導く。

エ 材料や用具は,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙その他必要に応じていろいろなものを使わせる。

(3) 粘土を主材料として,いろいろなものを作る。 ア いろいろな実物や模型・造形品の形体を観察し,その中から基本的な形を発見させ,こねる,まるめる,伸ばす,曲げる,ひねる,ちぎる,つなぐ,たたく,つまむ,けずる,あなをあけるなどして粘土を使って遊ばせたり,作ったものを使って遊ばせたりする経験もさせる。

イ 作るものは,人物・動物・遊び道具・器物・野菜・くだものなどの中から,題を与えて作らせたり,好きなものを自由に選ばせて作らせる。

ウ 作り方は,遊戯的,自然発生的な方法を主とし,粘土の取り扱いに慣れさせる。

(4) 模様を作る。 ア 小石・貝がら・積み木など材質がかたく,さわりやすいものを並べたり,積み重ねたりして模様を作らせる。

イ 三角・四角・円などの基本形を並べて模様を作らせる。

ウ 形を知ったり,形を組み合わせたりすることの楽しみを味わわせる。

エ 線・三角・四角などの簡単な平面図形をかかせる。材料や用具については(2)のエに準ずる。

(5) いろいろなものを作る。 ア 作るものは,器物・器具・遊び道具・乗り物その他いろいろなものとし,これらの中から,色紙・点字用紙・画用紙その他身辺にある自然材料や人工材料を使って,自由に作らせたり,題を与えて作らせたりする。作るものは,平面・立体とする。

イ 作り方は,児童の自然発生的なものを主とする。作るものによっては,作り方の順序,方法を知らせるものもあってよい。

ウ 紙の切り方,折り方,曲げ方,のりのつけ方などの方法を習得させる。

エ はさみの使い方に慣れさせる。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項はそれぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合して学習内容を組織して指導する。

(3) 表現の学習においては,もっぱら表現意欲を盛んにすることに重点を置き,表現の喜びを味わい,好んで表現するようにさせる。特に表現方法の指導を急ぎ,表現意欲の減退をきたすことのないように留意する必要がある。

(4) 鑑賞の指導は,観察,表現活動に付帯して行なうようにする。

(5) 機会をとらえて,共同製作させてもよいが,この学年の程度では個々の児童の作ったものを集めて,一つのまとまりとする程度である。

(6) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(7) 内容(3)の観察の対象物は,両方の手のひらにはいる程度の大きさで単純なものがよい。

(8) 内容(5)の人工材料として積み木類を使用させるのもよい。

(9) 内容(1)〜(5)を通して,手先の感覚訓練をする必要がある。

(10) 盲児童は,造形活動にあたって,自然発生的な動作がじゅうぶん行なえない場合が多いので,この点留意して適切に指導することがたいせつである。

〔第2学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわりたいという欲求を起こし,いろいろなものの形や地はだを知ろうとする態度を養う。

(2) ものや絵を作りたい,かきたい,飾りたいという欲求を喚起し,それを満足させ,表現に対する興味を起こさせる。

(3) 何をどのようにかき,何をどのように作るかについて,ある程度心の中でくふうさせる。

(4) のびのびと表現させ,造形の喜びと自信をもたせる。

(5) 表現材料や用具を扱うことを経験させる。

(6) 表現には自由な表現と,用途をもっている役に立つ表現とかあることを知らせる。

 2 内  容 (1) 観察する。  第1学年の内容をさらに深める。 (2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 題を与えてかかせたり,作らせたりすることを主とするが,必要に応じて自由に題を選ばせる。

イ 題材は,児童の生活環境から簡単なものを適宜与えたり選ばせたりする。

ウ かき方,作り方は,児童の自然発生的な方法を重んじ,各自の持ち味を生かし,それぞれ違った個性の絵を,のびのびと作るようにし,それがおのずから創造的な表現になるようにさせる。

エ 材料や用具は,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙・毛糸・布,木の葉・花・小石・砂など,自然物その他必要に応じていろいろなものを使わせ,しだいに材料の使い方に慣れさせる。

(3) 粘土を主材料として,いろいろなものを作る。 ア いろいろな実物や模型・造形品の形体を観察し,その中から形の大まかな特徴をつかませて,ねる,まるめる,伸ばす,曲げる,ひねる,ちぎる,つなぐ,たたく,つまむ,けずる,あなをあけるなど,のびのびとくふうすることも経験させる。

イ 作るものは,人物・動物などの彫塑的なもの,遊び道具・乗り物・器物などのような工芸的なものにつながるもの,その他幻想的なものなどとし,これらの中から題を与えて作らせたり,好きなものを自由に選ばせて作らせたりする。

ウ 作り方は,遊戯的,自然発生的な方法を主とし,粘土の取り扱いに慣れさせる。

(4) 模様を作る。 ア 木や草の葉,その他の実物で,形や地はだが違うものをいろいろ集め,それらを並べたり,はりつけたりして模様を作らせる。

イ 同じ形の基本形を組み合わせたり,大小を考えて並べたりして模様を作らせる。

ウ 形や地はだの違いを知ったり,それらの組み合わせによる模様作りの楽しみを味わわせる。

エ 線・三角・四角・円などの簡単な平面図形をかかせる。材料や用具については(2)のエに準ずる。

(5) いろいろなものを作る。 ア 作るものは,器物・器具・建築物・乗り物・遊び道具・おもちゃの類・人物・動植物などとし,これらの中から,色紙・画用紙・点字用紙・中厚紙その他身辺にある自然材料や人工材料を使って,好きなものを選ばせたり,題を与えて作らせたりする。作るものは,平面・立体とする。

イ 作り方は,自然発生的な方法を主とする。しかし,作るものによっては,多少見通しをつけ,作る方法を考えて作らせる。

ウ 紙の切り方,折り方,曲げ方,接合,組み立ての方法などを習得させる。

エ はさみ・ものさしなどの使い方に慣れさせる。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項はそれぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合して学習内容を組織して指導する。

(3) 表現の学習においては,もっぱら表現意欲を盛んにすることに重点を置き,指導方法の適切を図るように留意する必要がある。

(4) 鑑賞の指導は,観察,表現活動に付帯して行なうようにする。

(5) 機会をとらえて共同製作をさせる。この学年の程度では初めから計画を立て,仕事を分担して一つのものを作りあげるという共同製作は困難であるから,個々の児童の作ったものを集めて一つのまとまりのあるものにする程度である。

(6) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(7) 内容(3)の観察の対象物は,両方の手のひらにはいる程度の大きさがよい。

(8) 内容(1)〜(5)を通して,手先の感覚訓練をする必要がある。

(9) 盲児童は,造形活動にあたって,自然発生的動作がじゅうぶん行なえない場合が多いので,この点留意して適切に指導することがたいせつである。

〔第3学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわってその特性を知る能力を養う。

(2) ものや絵を作ったり,かいたりする活動において,少しずつ表現が確かになるように導き,表現力を養う。

(3) 何をどのようにかき,何をどのように作るかについて,構想力を養う。

(4) のびのびとした創造的表現を通して,造形の喜びと自信をもたせる。

(5) 使用する表現材料や用具の範囲を広め,材料を取り扱う体験を豊かにさせる。

(6) 表現の技術について関心をもたせ,形や材質などの処理がたいせつであることを注意する方向に導く。

(7) 自由な表現力を養うとともに,用途上の目的をもつ表現をも経験させる。

 2 内  容 (1) 観察する。 ア ものに興味をもち,ものにさわってその形・大きさ・重さ・地はだなどを知るだけでなく,その用途や名称などがわかるようにする。

イ ものとものとを比較して観察し,形や大きさ,重さ,かたさなどを考えるようにする。

ウ 観察力を高めるために指先がよく動くようにする。

(2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 自由に題を選んでかいたり,作ったりすることを主とするが,必要に応じて題を与える。

イ 題材は,人物・動物・植物などとし,児童の生活領域が広まるにつれ,その範囲を広める。

ウ かき方,作り方は,児童の自然発生的な方法を主とするが,少しずつ見通しをつけさせたり,個性的,創造的な表現ができるようにさせる。

エ 材料や用具は,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙類・糸・布・ひも類その他必要に応じていろいろなものを使わせ,しだいに各材料・用具が使えるようにさせる。

(3) 粘土を主材料として,いろいろなものを作る。 ア いろいろな実物や模型・はく製・標本その他の造形品を観察し,その中から形の特徴をつかませ,その表現をくふうさせる。

 表現方法としては,ねる,まるめる,伸ばす,曲げる,ひねる,たたく,つなぐ,つみ重ねる,型を押すなどがある。

イ 作るものは,人物・動物など彫塑的なもの・遊び道具・乗り物・器物などのような工芸的なものにつながるもの,その他幻想的なものなどとし,これらの中から,自由に題を選ばせて作らせたり,題を与えて作らせたりする。

ウ 作り方は,自然発生的な方法を主とし,必要に応じて材料の扱い方,簡易な用具を用いての表現の方法を徐々に会得させる。

(4) 模様を作る。 ア 用途上の目的をもたない自由構成に対する興味を高めるとともに,用途をもったものの装飾や模様に対する興味を起こさせる。

イ 紙や布その他地はだの感じが違うものを組み合わせて模様を作らせる。また,粘土に自然物・人工物などを型押しをして模様を作らせる。

ウ いろいろな形を並べたり組み合わせたりして模様を作らせ,また,点字板や図画板を使って模様を作らせる。

(5) いろいろなものを作る。 ア 作るものは,児童の生活に役だつもの,作ることに興味をもつもの,組み立てのおもしろさに重点を置くもの,基礎的な感覚訓練に役だつものなどとし,これらの中から,紙・布その他身辺にある諸材料を使って,自由に選んで作らせたり,題を与えて作らせたりする。

イ 作り方は,ものによって違うが,自然発生的な方法によって作る場合と,だいたいの見通しをつけ,作り方の順序や方法を考えて作る場合とがある。

ウ 各種の紙の扱い方,その他身辺にある材料を扱う技術の初歩を習得させる。

エ ものさし・定木・コンパス・図画板・切り出し小刀などの使い方を練習させる。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項はそれぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合して学習内容を組織して指導する。

(3) 表現する意図をもっていても,それをどのように作るかについてわからない場合には,表現方法についての適切な指導をする。

(4) 鑑賞の指導は,観察,表現活動に付帯して行なうようにする。

(5) 機会をとらえて共同製作をさせる。共同製作は,ものにより個々の作品を集めて一つのまとまりのあるものとする場合と,初めから計画を立て仕事を分担して構成する場合とがある。この学年では後者の場合にはごく初歩的なものでよい。

(6) 色についてはおもな色の名まえを覚えさせる。

(7) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(8) 内容(3)の観察の対象物は,大きすぎたり,また小さすぎたりしないこと。

(9) 内容(4)の指導において,作る模様は用途をもたない自由構成のものでよいが,できた結果を何かに利用させることに心を向けさせるよう留意して指導する。

(10) 内容(1)〜(5)を通して,手先の感覚訓練をする必要がある。

〔第4学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわってその特性を知る能力を養う。

(2) ものや絵を作ったり,かいたりする活動において,漸次計画的に表現するように導き,表現力を養う。

(3) 何をどのようにかき,何をどのように作るかについての手順を考えさせ,構想力を養う。

(4) 自己の創造的表現の特色に気づかせるようにし,表現に対する誇りと自信をもたせる。

(5) 使用する表現材料や用具の範囲と種類を増し,材料や用具を取り扱う体験を豊富にする。

(6) 表現の技術について注意を向けさせ,形や材質などの違いや処理について関心をもたせる。

(7) 自由な表現力を発展させるとともに,用途上の目的をもつ表現についても,漸次その力を伸ばす。

(8) 造形品をさわったり使ったりして,もののよさが味わえるように導く。

 2 内  容 (1) 観察する。  第3学年の内容をさらに深める。 (2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 自由に題を選んでかいたり,作ったりすることを主とするが,必要に応じて題を与える。

イ 題材は,人物・動物・植物などとし,児童の生活領域の広まるにつれ,その範囲を広める。

ウ かき方,作り方は,児童の自然発生的な方法を主とするが,いくぶん計画性をもたせて,先の見通しをつけさせたり,また少しずつ個性的,創造的な表現のできるようにさせる。

エ 材料や用具は,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙類・糸・布・ひも類・木竹類・びょう・くぎ類その他必要に応じていろいろなものを使わせ,各材料・用具が使えるようにさせる。

(3) 彫塑を作る。 ア いろいろな実物や模型・はく製・標本その他の造形品を広く観察し,形や材質,部分の特徴をつかませ,その表現をくふうさせる。

 粘土などの基礎的加工技術のほか,他の材料と組み合わせたり,心材を使用する初歩的なことや彫塑製作をするのに必要な用具の扱いにも慣れさせる。

イ 使用する材料は,粘土類など可塑材料を主とする。

ウ 児童の心にあるものの自由表現と,観察による表現との二つの方法により,自由に題を選ばせて作らせたり,題を与えて作らせたりする。

エ 作り方は,まる彫りを主とする。なお,材料の選び方や製作の技法については,必要に応じて徐々に会得させる。

(4) デザインをする。 ア いろいろな表現材料を用いて,用途上の目的をもたない自由構成を主とし,必要に応じて,工作で作るもののデザインや,身辺にあるものの装飾をさせる。

イ 感覚を通して,リズム・対称・つりあい・くりかえし・変化と統一などの美しさが少しずつわかるようにさせる。

ウ デザインは,平面的なものを主とし,立体的なものも経験させる。

(5) いろいろなものを作る。 ア 作るものは,児童の生活に役だつもの,感覚の訓練,基礎的な構成の練習をめざすものと,作ることに興味あるものなどとし,これらの中から,各種の紙・竹・木・針金・粘土その他身辺にあるものを使って,自由に選ばせて作らせたり,題を与えて作らせたりする。

イ 見通しをつけて,作る順序や方法を考えさせ計画的に作ることをいくつかのものについて経験させる。

ウ 各種の紙・粘土・竹・木・針金などの扱い方,その他必要な初歩的な技術を習得させる。

エ ものさし・定木・コンパス・図画板・切り出し小刀その他工作用具の使い方と手入れのしかたを練習させる。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項はそれぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合して学習内容を組織して指導する。

(3) 表現する意図をもっていても,その表わし方がわからない児童には徐々に表現方法の指導をする。

(4) 鑑賞の指導は,観察,表現活動に付帯して行なうようにする。

(5) 機会をとらえて共同製作をさせる。

(6) 学習によって得た力をなるべく身近な生活に適用させる機会を与える。

(7) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(8) 内容(2)の指導にあたり,児童のかいたり,作ったりする想念を心の中にたくわえさせるためには,観察や生活経験から得たものを想念としてとらえ,これを育てるようにさせる。また,いろいろのものからヒントを得て,それを自分のものとして発展させるよう指導する。

(9) 内容(3)の観察の対象物は,大きすぎたり,また小さすぎたりしないこと。

(10) 内容(5)においては,デザイン学習と特に関連して作るものの計画,製作の順序方法を考えさせるようにすること。

〔第5学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわって,その特性を理解する能力を養う。

(2) ものや絵を作ったり,かいたりする活動において,計画的に表現する力を高める。

(3) 何をどのようにかいたり,作ったり,飾ったりし,何のためにするかについての構想力を,漸次高める。

(4) 自己の創造的表現の特色に注意させ,表現に対する誇りと自信をもたせる。

(5) 表現材料の種類を増し,用具の範囲を拡充して,それを扱う体験を深める。

(6) 表現の技術について注意し,形・材質・材料のもつ地はだの感じやそれらの組み合わせによってできる構成について,関心をもたせる。

(7) 自由な表現力を発展させるとともに,用途上の目的をもつ表現力を高め,両者の違いについて理解させる。

(8) 造形品をさわったり,使ったりして,もののよさを味わわせるとともに,作品をたいせつにする態度を養う。

 2 内  容 (1) 観察する。 ア さわる対象は,身近なものから徐々に範囲を広め,ものの名や形・材質・構造・用途などを理解させる。

イ さわったものを互いに比較し,どのくらい大きいか,どのくらい重いか,また,地はだの違いなどを知る能力を養う。

ウ ものとものとの関係,ものの大きさの変化,ものの動きなどの観察力を養う。

(2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 各自の心の中にある想念や,外界の物体を観察しながら,それを絵で表現する。自由にかいたり作ったりすることを主とするが,話し合いで題を決めたり,題を与えてかかせたり,作らせたりすることもある。

イ 題材は,児童の生活領域に応じて,その範囲をしだいに広めるとともに,特色ある場面も選ばせる。

ウ かき方,作り方は,児童各自の持ち味を発展させ,しだいに計画的,意識的に創造的表現ができるようにさせる。

エ 表現の結果について反省し,作品のよしあしについていくらかの判断ができるようにさせる。

オ 材料や用具として,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙類・糸・布・ひも類・木竹類その他各種のものを使いこなす力を増し,かいたり,作ったりするものの表現意図によって,適当なものを選べるようにする。

(3) 彫塑を作る。 ア いろいろな実物や模型・はく製・標本・日用品を含む造形品などの観察を深め,形や材質,部分の特徴などをつかませ,その表現をくふうさせる。また,製作のために必要な用具に慣れさせる。

イ 使用する材料は,粘土類など可塑材料を主とし,やわらかい石材や木材・硬土など彫り刻んで造形するものも用いる。

ウ 児童の心にあるものの自由表現と,観察による表現との二つの方法により,自由に題を選んで作らせたり,題を与えて作らせたりする。

エ 作り方は,まる彫りを主とし,必要に応じて浮き彫りも試みさせ,製作の技法については徐々に会得させる。

(4) デザインをする。 ア 自分で使うものや環境のデザインなど,用途をもったものを主とし,生活領域の広まるのに従って扱う範囲を広める。ただし,感覚訓練や着想を育てるための用途をもたない自由構成のデザインもさせる。

イ 感覚を通して,対象・つりあい・リズム・大小強弱その他の対照,だんだん小さく,だんだん強くなどの変化の美しさがわかるようにさせる。

ウ 平面・立体両様のデザインを経験させる。

エ デザイン構成の方法,表現の方法などは,児童の必要と要求に応じて少しずつ指導する。また,経験を通してデザインのもつ美的あるいは機能的秩序を少しずつ理解させ,作品のよしあしの判断ができるようにさせる。

(5) 役に立つものを作ったり,構成の練習をしたりする。 ア 作るものは,生活上役に立つもの,構成上興味あるものなどとし,これらのものの中から,各種の紙・布・粘土・竹・木・針金その他身辺にある材料を使って作らせる。役に立つものを作る場合は,美と用との関係について初歩的な理解をさせる。

イ 作るものを頭に浮かべて構想し,具体的な計画に基づき材料を選び製作の順序方法を検討して作る経験をさせる。その間におのずから,いろいろな作り方を体得させる。

ウ 木材の切り方,削り方,接合方法,針金の切り方,曲げ方などの初歩を会得させる。粘土の成形,その他必要な初歩技術を習得させる。

エ ものさし・定木・コンパス・図画板,簡易な木工用具や金工用具その他必要な用具の使い方と手入れのしかたを練習させる。

(6) 機構的な玩(がん)具・模型の類を作る。 ア 作るものは,ゴム・ばねその他動力を利用した玩(がん)具・模型の類の中から,適当なものを選ばせて作らせる。

イ 使用材料は(5)に示したものに準ずる。

(7) 造形品を鑑賞する。 ア 鑑賞するものは,児童の作品や身近な造形品などとする。

イ 必要に応じて鑑賞に関係のあることがらを理解させる。

ウ 作品鑑賞の態度を養う。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項は,それぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合して学習内容を組織して指導する。

(3) 機会をとらえて共同製作をさせる。

(4) 学習によって得た力をなるべく生活に適用する機会を与える。たとえば,身辺にあるものの整理,地図の作製,学校行事等に関係あることなど。

(5) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(6) 内容(2)の指導にあたって,かいたり作ったりする想念を心の中にたくわえるためには,感覚を鋭くして,環境を注意深く観察したり,また,あらゆるものからヒントを得てそれを自分のものとして発展させるためのくふうをさせる。

(7) 内容(3)の観察の対象物は,大きすぎたり,また小さすぎたりしないこと。

(8) 内容(5),(6)の身辺にある材料としては,糸・毛糸・紙ひも・ビニル管などがある。

(9) 内容(5),(6)においては,計画を図で表わすのは困難であるので,ことばで計画を表現したり,計画を発表しあえるよう指導する必要がある。

〔第6学年〕

 1 目  標

(1) ものにさわってその特性を理解する能力を養う。

(2) ものや絵を作ったり,かいたりする活動において,計画的に表現する力をいっそう高める。

(3) 何をどのようにかいたり,作ったり,飾ったりし,何のためにするか,どんな感動を表わすかについて,構想力を高める。

(4) 自己の創造的表現について自覚し,表現に対する誇りと自信をもたせる。

(5) 表現材料や用具の範囲,種類を拡充し,材料・用具を取り扱う体験をいっそう深める。

(6) 表現の技術について注意し,形,材質,材料のもつ地はだの感じ,それらの組み合わせによってできる構成の美しさを理解させる。

(7) 自由な表現力をいっそう高めるとともに,用途上の目的をもつ表現力をいっそう高め,それぞれの表現が違った価値のあることを理解させる。

(8) 作品のよしあしを判断できるようにし,鑑賞する能力を養う。

 2 内  容 (1) 観察する。  第5学年の内容をさらに深める。 (2) 絵をかいたり作ったりする。 ア 各自の心の中にある想念や,外界の物体を観察しながらそれを絵で表現する。自由にかいたり,作ったりすることを主とするが,話し合いで題を決めたり,題を与えてかかせたり作らせたりすることもある。

イ 題材は,児童の生活領域に応じて,その範囲をしだいに広めるとともに,特色ある場面も選ばせる。

ウ かき方,作り方は,児童各自の持ち味を発展させることを根底とし,必要に応じて,技法的なものも加える。

エ 表現の結果について反省し,作品のよしあしについて,いくらかの判断ができるようにさせる。

オ 材料や用具としては,図画板・点筆・点字用紙・各種の紙類・糸・布・ひも類・木竹類その他各種のものを使いこなす力を増し,かいたり,作ったりするものの表現意図によって,適当なものを選べるようにする。

(3) 彫塑を作る。 ア いろいろな実物や模型・はく製・標本・日用品を含む造形品などの観察を深め.形や材質,部分の特徴などをつかませ,その表現をくふうさせる。また,製作のために必要な用具に慣れさせる。

イ 使用する材料は,粘土類など可塑材料を主とし,やわらかい石材や木材・硬土など彫り刻んで造形するものも用いる。

ウ 児童の心にあるものの自由表現と観察による表現との二つの方法により,自由に題を選ばせて作らせたり,題を与えて作らせたりする。

エ 作り方は,まる彫りを主とし,必要に応じて浮き彫りも試みさせ,製作の技法を会得させる。

(4) デザインをする。 ア 用途をもったもののデザインを主とし,生活領域に応じてしだいに扱う範囲も広める。ただし,感覚訓練や着想を育てるための用途をもたない自由構成のデザインもさせる。

イ 感覚を通して,対称・つりあい・リズム・大小強弱その他の対照,だんだん小さく,だんだん強くなどの変化の美しさがわかるようにさせる。

ウ 平面・立体両様のデザインを経験させる。

エ デザイン構成の方法,表現の方法などは,児童の必要と要求に応じて少しずつ指導する。また,経験を通してデザインのもつ美的あるいは機能的秩序をだんだん理解させ,作品のよしあしの判断ができるようにさせる。

オ デザインの意味を作品を通して理解させ,デザインと絵や工作との違いについて,いくらかわかるようにさせる。

(5) 役に立つものを作ったり,構成の練習をしたりする。 ア 作るものは,生活上役に立つもの,構成上興味あるものなどとし,これらのものの中から,各種の紙・布・粘土・竹・木・針金・板金その他身辺にある材料を使って作らせる。役に立つものを作る場合は,美と用との関係について理解させる。

イ 作るものを頭に浮かべて構想し,参考品などをみたりして構想を発展させ,やや精密な計画に基づき,材料や用具を選び製作の順序方法を検討して作る経験をさせる。その間にいろいろな作り方を体得させる。

ウ 木材の切り方,削り方,接合のしかた,針金・板金の切り方,曲げ方,接合のしかたなどの初歩を会得させる。粘土の成形,その他必要な技術を習得させる。

エ ものさし・定木・コンパス・図画板,簡易な木工用具や金工用具その他必要な用具の使い方と手入れのしかたについて練習させる。

(6) 機構的な玩(がん)具・模型の類を作る。 ア 滑車・べルト機構・歯車機構その他簡単な機構やゴム・ばねその他の動力を利用した玩(がん)具・模型の類などの中から,適当なものを選ばせて作らせる。

イ 使用材料は(5)に示したものに準ずる。

(7) 造形品を鑑賞する。 ア 鑑賞するものは,児童の作品,身近な造形品,児童にわかりやすい彫刻および工芸品などとする。

イ 必要に応じて鑑賞に関係のあることがらを理解させる。

ウ 作品鑑賞の態度を養う。

 3 指導上の留意事項 (1) 内容(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7)については,その一部に偏することのないように留意する。

(2) 内容に示す各事項はそれぞれ孤立することなく互いに関連して学習させ,また,適宜分合し学習内容を組織して指導する。

(3) 機会をとらえて共同製作させる。

(4) 学習によって得た力をなるべく生活に適用させる機会を与える。たとえば,学校園や校庭の整備,教室の整理や装飾,自分の持ち物,家庭用品や学校備品の簡単な修理など。

(5) 内容(2)には,かく絵とはって作る絵,およびこれらの組み合わせによる絵とがある。

(6) 内容(2)の指導にあたっては,かいたり,作ったりする想念を心の中にたくわえるためには,感覚を鋭くして,環境を注意深く観察したり,また,あらゆるものからヒントを得てそれを自分のものとして発展させるためのくふうをさせる。

(7) 内容(3)の観察の対象物は,大きすぎたり,また小さすぎたりしないこと。

(8) 内容(5),(6)においては,計画を図で表わすのは困難であるので,ことばで計画を表現したり,身近な材料でひな型を作らせることも必要である。

第3 指導計画作成および学習指導の方針 1 内容に示した事項は,学年が進むにつれてしだいに多くなっている。これは高学年に至るほど指導の内容を分析的に細かく取り上げてあるためである。したがって,特に低学年の指導にあたっては,高学年において取り上げてある事項が未分化的に含まれているものと解して,その学習をすすめるよう考慮する必要がある。

2 内容中題材や材料などについて例をあげてあるが,それらは必ずしも全部学習させなければならないというものではない。材料・施設その他学校の実情に応じて取捨選択してよいし,また,図画工作科の指導目標にかなったものであるならば,その地方特有のものを課してもよい。しかし,その内容が一部に偏することのないように留意することがたいせつである。

3 各学年の内容には,自由に題を選ばせてかかせたり,作らせたりするところがあるが,これらはただ「好きなものを作れ」といって放任するのではない。その指導にあたっては指導の目標を確認し,一つの学習から次の学習への移行が発展的になされ,全体として学習が体系的なまとまりのある経験となるよう計画されなければならない。

4 作品の評価にあたっては,視覚による基準をあてはめることのないように留意する。

5 指導の適切を図るために実物・作品・模型・日用品などの造形品の資料をじゅうぶんに準備し,有効に利用することが望ましい。

 また,危険をともなう用具・機械などの取り扱いに際しては,安全の保持にじゅうぶん留意することがたいせつである。