第2章 各  教  科

第1節 国     語

第1 目  標

1 日常生活に必要な国語の能力を養い,思考力を伸ばし,心情を豊かにして,言語生活の向上を図る。

2 経験を広め,知識や情報を求め,また,楽しみを得るために,正しく話を聞き文章を読む態度や技能を養う。

3 経験したこと,感じたこと,考えたことをまとめ,また,人に伝えるために,正しくわかりやすく話をし,文章に書く態度や技能を養う。

4 聞き話し読み書く能力をいっそう確実にするために,経験を広め,国語に対する関心や自覚をもつようにする。

 上に掲げた国語科の目標1は,国語科において指導すべき総括的な目標である。目標2および3は,国語科において具体的に指導すべき聞くこと,読むこと,話すことおよび書くことの活動について,その目標を掲げたものであるが,これらの指導にあたっては,常に目標1の達成を目ざすとともに,目標4との関連を考慮して行なわなければならない。

 次に示す各学年の目標は,教科の目標を根底におき,内容において示した指導すべき事項と合わせ,それぞれの学年の具体的な指導のねらいとなる。

 国語の指導は,国語科だけでなく,学校における教育活動の全体を通じて行なわれるものである。したがって,国語科の指導においては,他の各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等などにおける指導と密接に関連させて,国語の学習に関する基本的な事項を取り扱い,言語生活の向上を図るように努めなければならないが,特に盲児童においては,学校生活のみならず,家庭および寄宿舎等における生活とも関連させて,その経験を広め,言語生活を豊かにし,学習意欲の向上を図ることがたいせつである。
 
 

第2 各学年の目標および内容 〔第1学年〕

1 目  標

(1) 聞くこと,話すことによって,生活の内容を豊かにし,学校生活に慣れるようにする。

(2) 相手を意識し,話を注意して聞くようにする。

(3) 気おくれせずに話すことができるようにする。

(4) 文章を読む方法の初歩がわかるようにする。

(5) 文章を読むために必要な点字や記号を身につけ,語句の意味を正しくとらえるようにする。

(6) やさしい読み物に興味をもつようにする。

(7) 書くことに興味をもつようにする。

(8) 文章を書くために点字や記号に慣れるとともに,必要な語句を身につけるようにする。

(9) 言いたいことを文章に書くことができるようにする。

(10) 点字や記号をていねいに書くことができるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア 話すことに慣れ,話の仲間入りをすること。

イ 話し手の声によく注意して,じゃまにならないように聞くこと。

ウ 話の内容をだいたい聞き取ること。

エ 物語や童話などを聞いて楽しむこと。

オ 口を正しくあけ,はっきりした声で話すこと。

カ 何を言おうとしているかが,相手にわかるように話すこと。

キ はっきり返事をすること。

ク 聞き手のほうを向いて話すようにすること。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 指示や説明を聞く。

イ こども向けの短い放送や物語,童話などを聞く。

ウ あいさつをする。

エ 質問をしたり,応答をしたりする。

オ 数人の仲間で話し合う。

 上に示す活動のほか,「動作化をする」なども望ましい。
(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 正しい発音で音読ができること。

イ 点字にさわることに慣れ,両手を正しく使って読むこと。

ウ 切るところに注意してはっきり読むこと。

エ 行を正しくたどり,声を出さないで読むことができること。

オ 拾い読みでなく,語や文として読むこと。

カ 何が書いてあるかを考えて読むこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 身のまわりの簡単な書き物を読む。

イ 児童の日常生活に取材したものを読む。

ウ 知識や情報を与える簡単な文章を読む。

エ 経験を広め心情を豊かにする童話や説話などを読む。

(書くこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 書こうとする気持ちを養うこと。

イ 何を言おうとしているかが,わかるように書くこと。

ウ 点字用紙のはさみ方が正しくできること。

エ 正しい点筆の持ち方,運び方に慣れること。

オ 点字をまちがわないように,ていねいに書くこと。

カ ますあけを理解し,それに慣れること。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 話し合いによって共同で文章を作る。

イ 文や短い文章を聞いて書く。

ウ 身近なことで興味をもったことを文章に書く。

 上に示す活動のほか,「文字や語句を組み合わせて文を作る」「録音などを聞いて文章を書く」なども望ましい。
B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 発音に気をつけ,また幼児音を使わないこと。

(2) 点字の五十音,濁音,よう音,促音,長音などが,ひととおり読み書きできること。

(3) 点字の簡単な記号を読み,また書くこと。

(4) ひとますあけ,ふたますあけに注意して書くこと。また句とう点にあたるところを注意して読むこと。

3 指導上の留意事項 (1) この学年においては,児童の話し聞く生活を土台として,読み書く生活へと導いていく。そのためには,自分のこと,家族,友人,教師のこと,その他さわったこと,聞いたこと,したことなどのうち特に興味のあることを中心として,聞くこと,話すことの基礎的な態度や技能を養いながら,読むこと,書くことの学習に進むようにする。

(2) 点字の指導は,初期においてじゅうぶんさわって知ることの訓練を経てからはいるようにする。また,点字の構造を考えて,識別しやすい点字を興味ある身近なことばにして読みの指導からはいり,やがて書けるようにする。

(3) 盲児童は経験領域が狭いため,語いも少なく,概念もあいまいであるから,できるだけ多く聞かせたり,話させたり,さわらせたりして語いを豊富にし,概念を正確にするように努める。

(4) 盲児童は見えないため口形がわからず,発音が不正確になりがちであるから,発音指導には特に留意する。

〔第2学年〕

1 目  標

(1) 聞くこと,話すことの基礎的な態度を身につけるようにする。

(2) 人の話を聞くことに慣れるようにする。

(3) 楽な気持ちではっきり話すことができるようにする。

(4) 読むことに親しませ,読みの基礎的な能力を身につけるようにする。

(5) 読むために必要な点字,記号,ますあけや語句を確実に身につけ,また,語句の範囲を広げるようにする。

(6) やさしい読み物を自分から進んで読むようにする。

(7) 進んで文章を書こうとする態度を育てる。

(8) 文章を書くために必要な点字や記号,ますあけに注意し,また,語句の範囲を広げるようにする。

(9) 訴えたいことや,知らせたいことを,文章に書くことができるようにする。

(10) 点字や記号を正しく書くことができるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと.読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア みんなといっしょに聞いたり話したりすること。

イ 注意を集中して聞くこと。

ウ 話されていることの順序に従って聞くこと。

エ 人が話しているときは,だまって聞き,途中でほかのことに話を移さないこと。

オ 落ち着いてはきはきと話すこと。

カ 口を正しくあけて,みんなに聞こえるようにはっきり話すこと。

(2) 次の項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 質問をしたり,応答をしたりする。

イ 会話をする。

ウ 話し合いをする。

エ さわったことや聞いたことなどの説明をする。

オ 経験したことや童話などを話す。

カ 放送や録音などを聞く。

 上に示す活動のほか,「動作化をする」なども望ましい。

(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 切れ目に注意して,正しい発音で読むこと。

イ 書いてあることをだいたい読み取ること。

ウ 語や文として読むことに慣れること。

エ 文章に即して書いてあるとおりに読み取ること。

オ 順序をたどって意味をとること。

カ 好きなところやおもしろいところを抜き出すこと。

キ 読むために必要な点字や記号,ますあけを理解し,語句を増すこと。

 上に示す指導事項のほか,「教科書以外の点字本を読むこと」に興味をもたせるようにし,「学級文庫の利用のしかたがわかること」などについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 身のまわりの書き物を読む。

イ 児童の日常生活に取材したものを読む。

ウ 知識や情報を与える説明的な文章を読む。

エ 経験を広め心情を豊かにする童話,説話,詩などを読む。

(書くこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 進んで書こうとすること。

イ 知らせたいことが相手にわかるように書くこと。

ウ できごとの順序をたどって書くこと。

エ 書いたものを読みなおす習慣をつけること。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 身近なできごとについて文章を書く。

イ 文や短い文章を読んで書く。

ウ 書いたものを発表しあう。

エ 簡単な文を聞いて書く。

 上に示す活動のほか,「語句を組み合わせて文を作る」なども望ましい。

B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 発音にいっそう気をつけること。

(2) 点字や記号の読み書きがひととおりできること。

(3) ひとますあけ,ふたますあけが正しく書け,行かえなどのきまりを知ること。

(4) 落ち着いて,きれいに正しく書く習慣をつけること。

(5) ていねいなことばと,普通のことばのあることに気づくこと。

3 指導上の留意事項  この学年では,第3学年以後の学習が有効に行なわれるように第1学年からの学習をいっそう徹底させ,低学年としての学習の一応のまとめをすることが必要である。 〔第3学年〕

1 目  標

(1) 必要な場合,相手や場に応じて,聞いたり,話したりすることに慣れるようにする。

(2) 聞くことの基礎的な能力や態度を身につけるようにする。

(3) 話すことの基礎的な能力や態度を身につけるようにする。

(4) ある程度すらすらと読むことができるようにする。

(5) 読むために必要な語句を増し,点字や記号,ますあけをいっそう確実にする。

(6) いろいろな読み物を読もうとする態度を育てる。

(7) かなり長い文章を書くことができるようにする。

(8) 文章を書くために必要な語句や点字,記号,ますあけなどをいっそう確実に身につけるようにする。

(9) 自分の考えや感じを,文章に書こうとする態度を育てる。

(10) 点字や記号をいっそう正しく書くことができるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア わからないときには聞き返すこと。

イ 要点を聞き取ること。

ウ 自然な態度で話すこと。

エ 適切な大きさの声で話すこと。

オ 順序に従って話すこと。

カ 大事なことを落とさずに話すこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 質問をしたり応答をしたりする。

イ 会話をする。

ウ 話し合いをする。

エ 説明をする。

オ 経験したことや物語,童話などを話す。

カ 放送や録音などを聞く。

 上に示す活動のほか,「劇化をする」なども望ましい。
(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 正しくくぎって適当な速さで読むこと。

イ 長い文章を終わりまで読むこと。

ウ 要点をおさえて読むこと。

エ 読み取ったことについて感想をもつこと。

オ わからない語句をみつけ出すこと。

カ 読み取ったことを他人に伝えて楽しむこと。

キ 教科書以外の点字本を読む習慣をつけること。

 上に示す指導事項のほか,「学級文庫の利用のしかた」がわかることなどについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。

ア 児童の日常生活に取材したものを読む。

イ 知識や情報を与える説明,解説などを読む。

ウ 経験を広め心情を豊かにする童話,物語,伝記,詩,脚本などを読む。

(書くこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 書こうとするものをよく確かめて書くこと。

イ 書こうとすることがらをはっきりさせてから書くこと。

ウ かなり長い文章を書くこと。

エ 必要に応じて継続して書くこと。

オ 大事なことを落とさずに書くこと。

カ 書いたことは必ず読み返し,まちがいがあれば書きなおすこと。

キ 書くことを楽しむようにすること。

ク 点字や記号を正しく,ていねいに,ますあけに気をつけながら書くこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 日常生活や学習のことを書く。

イ いろいろな行事やできごとを書く。

ウ 手紙を書く。

エ 観察したことや,学級のできごとを書く。

 上に示す活動のほか,「学級の新聞や文集を作る」なども望ましい。
B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 発音に気をつけて,はっきり話すようにすること。

(2) 点字や記号が,いっそう正しく読み書きできるようにすること。

(3) 語句への関心を増すこと。

(4) 文の中の意味の切れ目や,ことばのかかり方に注意すること。

3 指導上の留意事項 (1) この学年では,聞くことや,読書の範囲が広がり,語句の習得が著しく伸びる時期であるから,その点を考慮して,新しい語句を身につけさせるように指導することがたいせつである。

(2) この学年の後半においては,点字の読み書き能力が上昇する時期に向かうので,読み書きの機会を多くするなど,指導上の配慮が必要である。

〔第4学年〕

1 目  標

(1) どういう聞き方や話し方がよいかが,わかるようにする。

(2) 注意して聞き,聞いたことを生活に役だてることができるようにする。

(3) 話題を豊かにするようにする。

(4) 正確に読むとともに,読む速さを増すことができるようにする。

(5) 読むために必要な語句をいっそう増すようにする。

(6) 読む量をふやし,読み物の範囲を広げるようにする。

(7) ある程度整った文章を書くことができるようにする。

(8) 文章を書くために必要な点字の能力を高め,語句を増すようにする。

(9) 文章を書く意欲を高め,目的をはっきりさせて書くことができるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア 自分ばかり話さないこと。

イ 聞いたことをまとめること。

ウ 進んで話し合いに参加すること。

エ 落ち着いた態度で話すこと。

オ 考えをまとめながら話すこと。

カ 意味のまとまりごとにくぎりをつけて話すこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 会話をする。

イ 話し合いをする。

ウ 説明をする。

エ 報告をする。

オ 経験したことや物語,童話などを話す。

カ 放送や録音などを聞く。

 上に示す活動のほか,「劇化をする」なども望ましい。

(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 読むために必要な点字や記号を確実に理解し,読む速度を速めること。

イ 黙読に慣れること。

ウ 文章を段落ごとにまとめて読むこと。

エ 読み取ったことについて話し合うこと。

オ 必要なところを,細かい点に注意して読むこと。

カ わからない語句を文脈にそって考えること。

キ 知るため,楽しむために本を読むこと。

 上に示す指導事項のほか,「学校図書館の利用のしかたがわかること」や「点字図書館の利用のしかたがわかること」などについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 児童の日常生活に取材した日記または手紙,記録または報告などを読む。

イ 知識や情報を与える説朋,解説,報道などを読む。

ウ 経験を広め心情を豊かにする童話,物語,伝記,詩,脚本などを読む。

(書くこと)  (1) 次の事項について指導する。 ア 書こうとすることがらをまとめてから書くこと。

イ 段落を考えて書くこと。

ウ 中心点をおさえて書くこと。

エ ますあけや記号を正しく使い,点字をいっそう正しく書くこと。

オ 書いたあとは必ず読みなおし,必要なところを書きなおすこと。

カ 正しい転写のしかたを知ること。

 上に示す指導事項のほか,「メモをもとにして書く習慣をつけること」などについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 日常生活や学習のことを書く。

イ いろいろな行事やできごとを書く。

ウ 読書や研究の記録を書く。

エ 手紙を書く。

 上に示す活動のほか,「学級の新聞や文集を作る」なども望ましい。

B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 正しい発音で話すようにすること。

(2) 点字をいっそう正しく速く書くようにするとともに,記号(アルファベットを含む。)を理解し正確に使えるようにすること。

(3) 語句の組み立てについて注意を向けること。

(4) 文の中の意味の切れ目やことばのかかり方にいっそう注意すること。

(5) 文章の常体,敬体の違いを理解すること。

(6) 全国に通用することばと,その土地でしか使われないことばの違いを理解すること。

 上に示す指導事項のほか,「全国で通用することばで文章を書いたり,また,話をしたりするように努めること」も望ましい。

3 指導上の留意事項 (1) 第3学年に引き続いて読書の力が目だって伸びる時期でもあるから,いろいろな読み物に親しませて,経験を広め心情を豊かにするように努める。また,聞くこと,話すことの活動を通して話題を豊かにするように努める。

(2) 点字の読み書き能力は,この学年で一応の完成を図るようにすること。

〔第5学年〕

1 目  標

(1) 相手や場を考えて聞いたり話したりできるようにする。

(2) 聞く態度と技能をいっそう伸ばすようにする。

(3) 話す態度と技能をいっそう伸ばすようにする。

(4) 調べるために読むことができ,また,味わって読むことができるようにする。

(5) わからない語句の意味を自分で調べたり確かめたりすることができるようにする。

(6) 読み物の範囲を広げ,読み物を自分で選択することができるようにする。

(7) 文章を書く技能を伸ばし,かなり自由に書くことができるようにする。

(8) 文,文章の組み立てや語句の使い方に注意して書くことができるようにする。

(9) 文章を書く必要性を意識し,それに応ずることができるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア 絶えず相手や場を意識して話題からそれないように話すこと。

イ 注意を集中して聞き,話し手の意図をとらえること。

ウ 率直な態度で聞くこと。

エ 相手にわかるように心がけて話すこと。

オ 主旨のはっきりした話し方をすること。

カ よい放送を選んで聞いたり,よい録音などをつとめて聞く態度を育てること。

 上に示す指導事項のほか,「原稿をもとにした説明をすること」「聞いたことをメモにとること」などについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 話し合いや会議に参加する。

イ 説明をする。

ウ 報告をする。

エ 発表をする。

オ 朗読をする。

カ 放送や録音などを聞く。

キ 電話やマイクロホンなどを使って話す。

 上に示す活動のほか,「劇などをする」なども望ましい。

(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 点字の読みをいっそう速く確実にすること。

イ 味わって読むため,他人に伝えるために,声を出して読むこと。

ウ 書き手の意図や文章の主題をとらえること。

エ 自分の生活や意見と比べながら読むこと。

オ 調べるために読むこと。

カ 自分の読書のしかたを反省して,その向上を図ること。

 上に示す指導事項のほか,「点字の辞書が使えること」などについて指導することも望ましい。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 児童の日常生活に取材した日記または手紙,記録または報告,感想などを読む。

イ 知識や情報を与える説明,解説,報道などを読む。

ウ 経験を広め心情を豊かにする物語,伝記,詩,脚本などを読む。

(書くこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 主旨のはっきりした文章を書くこと。

イ 必要に応じて文章を詳しく書いたり,簡単に書いたりすること。

ウ 段落のはっきりした文章を書くこと。

エ すいこうすること。

オ 書式に従って書くことに慣れること。

カ 点字や記号がいっそう速く確実に書けること。

キ 転写に慣れること。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 記録を書く。

イ 手紙を書く。

ウ 物語などのあらすじなどを書く。

エ 感想を書く。

 上に示す活動のほか,「詩などを書く」「物語などを脚本に書きかえる」なども望ましい。

B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 転写がまちがいなくできるようにすること。

(2) 普通文字(ローマ字を含む。)について,そのあらましを知るとともに,点字に対する関心をいっそう深めること。

(3) 語句には使い方のうえで,いろいろの種類があることに気づくこと。

(4) 文における主語,述語の関係,修飾の関係に注意し,また文と文との接続,文章における段落相互の関係などにも注意を向けること。

(5) 全国に通用することばで書くようにすること。

3 指導上の留意事項 (1) この学年では,話し手や書き手の意図を正確に聞き取ったり,読み取ったりする学習に力をそそぐとともに,自分の表現しようと思う主旨をはっきりさせて,話したり書いたりできるようにする。

(2) この学年では転写がより正確に早くできるように指導する。

(3) ことばに対する関心を高め,ことばづかいをよくしていこうとする意識を育てる。

〔第6学年〕

1 目  標

(1) 聞くこと話すことによって生活を高め充実していくようにする。

(2) 判断しながら聞くことができるようにする。

(3) 効果的に話すことができるようにする。

(4) 目的に応じていろいろな読み方ができるようにする。

(5) 読むために必要な語句の範囲を広げ,その量を増すようにする。

(6) よい読み物を選んで読む習慣をつける。

(7) 目的に応じていろいろな文章を書く能力を身につけて,生活に役だてることができるようにする。

(8) 文章の組み立てや語句の使い方についてくふうするようにする。

(9) 書くことによって表現意欲や思考力を高めるようにする。

2 内  容 A 聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと

(聞くこと,話すこと)

(1) 次の事項について指導する。 ア 人の言うことを尊重して聞くこと。

イ 必要なことをメモし,話の要旨や意図を確実にとらえるように努めること。

ウ 事実と意見を区別して聞き分けたり,自分の意見と比較しながら聞くように努めること。

エ 話の順序をきめて相手にわかりやすいように話すこと。

オ 相手や場にふさわしい話し方をすること。

カ 正しいことばづかいで話すこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 話し合いや会議に参加する。

イ 説明をする。

ウ 報告をする。

エ 発表をする。

オ 朗読をする。

カ 放送や録音などを聞く。

キ 電話やマイクロホンなどを使って話す。

 上に示す活動のほか,「劇などをする」「校内放送をする」なども望ましい。

(読むこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 読み物の内容と,読む目的に応じて,それに適した読み方をすること。

イ 書かれていることの中の事実と意見を判断しながら読むこと。

ウ 文章の組み立てや,叙述に即して正確に読むこと。

エ 文章を味わって読むこと。

オ 要点を抜き出したり,全体を要約したりすること。

カ どんな本がよいかを見分け,よい本を選んで読み,また,語句を増すこと。

キ 点字の読みをいっそう速く確実に身につけること。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 児童の日常生活に取材した日記や手紙や記録,または,報告,感想などを読む。

イ 知識や情報を与える説明,解説,報道などを読む。

ウ 経験を広め心情を豊かにし,強く生きる力を与えるような物語,詩,伝記,脚本などを読む。

(書くこと) (1) 次の事項について指導する。 ア 目的に応じた書き方を考えること。

イ 文章の組み立てや語句の使い方を考え,効果的に表現しようとすること。

ウ 材料をととのえて書くこと。

エ 書くことの範囲を広げて,ものの見方,考え方を広く深くするように努めること。

オ 点字の書き方をくふうし,いっそう正しく,速く書くこと。

(2) 次の各項目に掲げる活動を通して,上記の事項を指導する。 ア 記録を書く。

イ 報告を書く。

ウ 手紙を書く。

エ 感想や意見を書く。

オ 抜き書きをしたり,要約をしたりする。

 上に示す活動のほか,「詩などを書く」「物語などを脚本に書きかえる」なども望ましい。

B 以上の聞くこと,話すこと,読むこと,書くことにわたって,ことばに関する次のような事項を指導する。 (1) 転写がいっそう速く確実にできるようにすること。

(2) ことばの抑揚の違いに関心をもつこと。

(3) 語の由来などに関心をもつこと。

(4) 文と文との接続,文章における段落相互の関係などに注意すること。

(5) 同音異義語などに関心をもつこと。

(6) 日常よく使われる敬語の使い方に慣れること。

(7) 必要な場合に全国に通用することばで話すこと。

3 指導上の留意事項 (1) この学年では,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことのすべてにわたって,指導に一応のまとまりをつけることが必要である。

(2) 読書の範囲を広げることが必要であるが,その際,聴覚や視覚でとらえ,また,深い思索の世界をうたいあげた各種の作品により多く親しませることが望ましい。
 
 

第3 指導計画作成および学習指導の方針 1 年間計画は,次のような点に留意して立てる。 (1) 前後の学年の目標を見渡して,その学年の特性をよく考え,地域の実情や学級の実態を考慮に入れたうえで,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことのそれぞれに片寄りがないように計画を立てる。

(2) 各学年の内容に示す指導すべき事項および活動に基づき,学習活動を組織する。そのためには,国語科の目標を根底におき,各学年の目標,内容の相互関係をはっきりさせておくことが必要である。

(3) 各学年の内容に示す指導すべき事項や活動は,もし先にその指導の準備をしておくことが有効だと考えられる場合には,その前の学年で,初歩的な形で取り上げ,また,その発展的指導をする必要があると考えられる場合には,そのあとのそれぞれの学年で程度を高めて取り上げてもよい。

(4) ことばに関する事項は聞き,話し,読み,書く活動の中に含めて指導するのを原則とする。しかし,発音とか点字などのように,くり返して練習をさせることが必要なものについては,特にそれだけを取り上げて学習させることができるように計画を立ててもよい。

(5) 学習指導にあたっては,児童の必要と興味と能力に応じて話題や題材を選定し,聞き,話し,読み,書く活動が有機的総合的に展開されるように計画を立てる。その場合に,目標を明確にし,指導の中心をはっきりさせておくことが必要である。

2 話題や題材の選定にあたっては,児童の発達段階に即応させ,次のような観点のもとに片寄りのないように注意する。 (1) 常に正しく強く生きようとする気持ちを養い,障害を克服して健全な人生観の芽ばえを育てるのに役だつこと。

(2) 人間性を豊かにし,他人とよく協力しあう態度を育てるのに役だつこと。

(3) 個性的,独創的精神を養うのに役だつこと。

(4) 道徳性を高め,教養を身につけるのに役だっこと。

(5) 想像や情緒を豊かにし,生活を明るく美しくするのに役だつこと。

(6) 自然や人生に対して正しい理解をもたせるのに役だつこと。

(7) 論理的思考力や科学的態度を養うのに役だつこと。

(8) 国語に対する関心や自覚を深めるのに役だつこと。

(9) 国土や文化などについて理解と愛情を育て,国民的自覚を養うのに役だつこと。

(10) 世界の風土や文化などに理解をもたせ,国際協調の精神や世界的視野を養うのに役だつこと。

3 聞くこと,話すこと,読むこと,書くことのうち,聞くこと,話すことに関しては低学年からじゅうぶんに指導し,小学部の第6学年を終了するまでに,どのような地域においても,全国に通用することばで一応聞いたり話したりすることができるようにする。読むこと,書くことの指導は,学年が進むにつれてしだいに比重を増して第6学年で一応のまとまりをつける。

4 国語科の指導を通して情操を高め,生活を楽しく豊かにすることは,造型的表現活動に制約を受けている盲児童にとっては,特に重要である。したがって,発達段階に即応して鑑賞と創作の能力を高めるように努めなければならない。

5 点字の習得はきわめて重要であるから,効果的な指導によって点字による表現や理解がじゅうぶんできるようにしなければならない。そのためには児童の発達段階に応じた指導の順序と方法の改善に努めなければならない。