健康,社会,自然,言語,音楽リズムおよび絵画製作の各領域に示す事項は,幼稚園教育の目標を達成するために,原則として幼稚園修了までに幼児に指導することが望ましいねらいを示したものである。しかし,それは相互に密接な連関があり,幼児の具体的,総合的な経験や活動を通して達成されるものである。
幼稚園においては,各領域に示す事項によって,全期間を通じて指導しなければならない事項の全体を見通し,望ましい幼児の経験や活動を適切に選択し配列して,調和のとれた指導計画を作成し,これを実施しなければならない。この際,各領域に示す事項については,幼児の年齢の違い,教育期間の相違および地域の実態などを考慮して,その程度を適切に決めなければならない。また,特に必要な場合には,各領域に示す事項に基づいて適切なねらいをくふうし,それを各領域に加えて指導することができる。しかし,指導する事項をいたずらに多くしたり,程度の高すぎるねらいを達成しようとしたりして,幼児の負担過重とならないようにし,またその趣旨を逸脱しないように,慎重に配慮する必要がある。なお,幼稚園教育の特質に基づき,各領域は小学校における各教科とその性格が異なるものであることに留意しなければならない。
(2) 不潔なものを口に入れず,ハンカチ,手ぬぐいなどは自分のものを使う。
(3) 食事のしかたを身につけ,食べ物の好ききらいをしない。
(4) 便所をじょうずに使う。
(5) 健康診断,予防接種,病気やけがの治療をいやがらずに受ける。
(6) 伝染病やその他の病気について関心をもつ。
(7) 適切な服装で遊びや仕事をする。
(8) なるべく戸外で遊ぶ。
(9) 姿勢を正しくする。
(10) 休息のしかたがわかり,運動や食事のあとは静かに休む。
(2) いろいろな方法で,投げる,押す,引く,あるいはころがるなどの運動をして遊ぶ。
(3) かけっこ,とびっこ,なげっこ,ならびっこなどをして遊ぶ。
(4) 鬼遊びなど集団的な遊びをする。
(5) すべり台,ぶらんこなどで遊ぶ。
(6) ボール,綱,箱車などを使って遊ぶ。
(7) のびのびとリズミカルに運動する。
(8) いろいろな運動器具の使い方を知り,くふうして使い,また,あとかたづけをする。
(9) だれとでも仲よくし,きまりを守って遊ぶ。
(2) 安全に気をつけて遊具や用具を使う。
(3) 危険なものに近寄ったり,危険な場所で遊んだりしない。
(4) 交通の規則を守る。
(5) 災害など非常のときに,先生のさしずに従って行動する。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,幼児の興味や能力に応じ,地域や季節などを考慮して,いろいろな種類の運動をのびのびと積極的に行なわせ,身体諸機能の調和的発達を促すとともに,運動能力を高め,また,社会生活に必要な態度の芽ばえをもつちかうようにすること。
ウ 1および2に関する事項の指導にあたっては,幼児の経験や活動がいずれか一方にかたよることのないように指導すること。
エ 3に関する事項の指導にあたっては,日常生活において適当な機会をとらえてくり返し指導し,危険を避け,安全を守る習慣や態度,特に交通安全の習慣を身につけるようにすること。
(2) 明るくのびのびと行動する。
(3) 物をたいせつにする。
(4) 規律のある生活をする。
(5) 自分の思つたことをすなおに正直にいう。
(6) 遊びや仕事を熱心にし,最後までやりとおす。
(7) よい悪いの区別ができるようになり,考えて行動する。
(2) 友だちと仲よく遊んだり仕事をしたりする。
(3) 父母や先生などに言われたことをすなおにきく。
(4) 人に親切にし,親切にされたら礼をいう。
(5) 人に迷惑をかけたらすなおにあやまり,人のあやまちを許すことができる。
(6) 友だちの喜びをいっしょに喜ぶことができる。
(7) 先生や友だちと約束したことを守る。
(8) 自分の物と人の物の区別ができる。
(9) 共同の遊具や用具をたいせつにし,ゆずりあって使う。
(10) 遊びのきまりを守る。
(11) グループを作って遊びや仕事をする。
(12) 学級やグループの中で役割を受け持って仕事をすることができる。
(13) 身近な公共物をたいせつにする。
(2) 幼稚園,家庭,近隣などには自分たちのために働いている人がいることを知り,親しみをもつ。
(3) 自分たちの生活と特に関係の深いいろいろな公共施設や交通機関などに興味や関心をもつ。
(4) いろいろな人が,いろいろな場所で働いて,人々のために物をつくっていることに気づく。
(5) 身近な世の中のできごとに興味や関心をもつ。
(6) 幼稚園の行事に喜んで参加する。
(7) 幼稚園内外の行事において国旗に親しむ。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,入園当初においては特に幼稚園に慣れることを中心として指導し,しだいにのびのびと行動できるように導き,さらに集団の中においていろいろな経験や活動をさせて,社会生活に必要な習慣や態度を身につけ,協同の精神の芽ばえをつちかうとともに,教師,父母,兄姉などの目上の人に対する敬愛の念を養うようにすること。
ウ 3に関する事項の指導にあたっては,幼児に関係深い人々に対し親しみや感謝の念をもたせるようにし,また,その地域の実態に応じて,幼児に関係深い公共施設や交通機関等に興味や関心をもたせ,それらについての理解の芽ばえをつちかうようにすること。
エ 1,2および3に関する事項の指導にあたっては,幼児の経験や活動がいずれにもかたよらないようにするとともに,いずれの場合においても道徳性の芽ばえをつちかうようにすること。
(2) 動植物を飼育栽培することを喜ぶ。
(3) 喜んで屋外の自然に接したり,いろいろな自然の事物を利用して遊ぶ。
(4) 山川,気象,天体などの自然の事象におどろきや親しみを感じ,その美しさや大きさなどに気づく。
(2) 自然の事象に疑問をいだき,注意して見たりためしたりして,自分で考えようとする。
(3) 季節によって,自然に著しい変化のあることや,人間や動植物の生活に変化のあることに気づく。
(4) おもちゃなどを作って遊ぶときなどに,その作り方や遊び方などをくふうする。
(5) 身近にある遊具や用具を使うときに,その使い方をくふうする。
(6) 日常生活を通して,物の性質の違いや,電気,熱,光,音などの事象に興味や関心をもつ。
(7) 身近な乗り物やおもちゃなどについて,その動きやしくみに興味や関心をもつ。
(2) 日常生活における身近な器械を操作することができる。
(3) 器械や用具を正しく扱い,危険を防ぐことができる。
(2) いくつかの物を分けたり寄せ集めたり,これらを整理したりする。
(3) 日常生活の中で具体的な事物を簡単な数の範囲で数えたり,順番を言ったりする。
(4) 長い短い,広い狭い,または速いおそいなどに興味や関心をもつ。
(5) 物の形について興味や関心をもち,丸や四角などの特徴に気づく。
(6) 前後,左右,遠近などの位置関係について興味や関心をもつ。
(7) 日常生活を通して時刻について興味や関心をもつ。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,たえず適切な機会をとらえて,きわめて簡単な自然科学的事実に気づかせ,それを正しく見たり考えたりしようとする気持ちを育て,できるだけくふうや創意をはたらかせるように導き,幼児の発達に応じた考察力や理解力を養うようにすること。
ウ 3に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度に応じて,日常生活のなかで必要な簡単な器械や用具などを,適切にかつ安全に操作できるようにすること。
エ 4に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度に応じて,数量や図形などに関して基礎となることがらの理解に役だつ経験や活動をさせるようにすること。なお,数については,日常生活や遊びのなかで,幼児の年齢や発達の程度に応じて具体的な事物と対応させながら取り扱うこと。また,いたずらに数詞を多く覚えさせたり,多くのものを数えさせたりするようなことは望ましくないこと。
(2) 人の話を注意して聞く。
(3) 簡単なさしずに従って行動する。
(4) 友だちといっしょに話を聞く。
(5) 先生の話す童話を喜んで聞く。
(2) したいこと,してほしいことをことばで表現する。
(3) したこと,見たこと,聞いたこと,感じたことなどを話す。
(4) 疑問をもったことについて尋ねる。
(5) 簡単な伝言をする。
(6) 相手にわかるように話し,また話す態度に気をつける。
(7) 友だちと話し合う。
(8) 幼児語,幼児音などを使わないで話す。
(2) 簡単な日常のあいさつができる。
(3) 自分や友だち,先生や幼稚園などの名まえが言える。
(4) 身近な事象の名まえが言える。
(5) 遊びその他の生活に必要なことばが使える。
(6) 日常生活に必要な簡単な標識や記号などがわかる。
(2) 絵本,紙しばい,放送などを見たり聞いたりして,その内容や筋がわかるようになる。
(3) 見たこと,聞いたこと,感じたことなどを紙しばいや劇的な活動などで表現する。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,身近な人に親しみをもって話しかけたり,尋ねたり,人に伝言をしたりできるようにするとともに,しだいに自分の話す態度に気をつけて,経験したことや,自分の思うことなどをはっきりと話すことができるようにすること。
ウ 3に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度に応じて,日常生活に必要なことばに慣れさせ,正しいことばで表現しようとする意欲を目ざめさせ,しだいに正しい言語習慣を身につけるようにし,さらに日常生活に必要な簡単な標識や記号などに慣れさせ,文字への興味や関心をも育てるようにすること。なお,幼児のことばの指導は,聞くこと,話すことを中心として行ない,文字については,幼児の年齢や発達の程度に応じて,日常の生活経験のなかでしぜんにわかる程度にすることが望ましいこと。
エ 2および3に関する事項の指導にあたっては,教師は常に個々の幼児のことばにじゅうぶん注意し,適切な機会をとらえて,ことばで表現する意欲を高めるとともに,相手のことばをよく聞き取る態度を養うようにすること。
オ 4に関する事項の指導にあたっては,絵本および紙しばい,スライド,放送などの視聴覚教材を精選し,喜んで見たり聞いたりするような態度を養うとともに,幼児の経験を広め,豊かな情操を養うようにすること。
(2) みんなといっしょに喜んで歌い,ひとりでも歌える。
(3) すなおな声,はっきりしたことばで音程やリズムに気をつけて歌う。
(4) カスタネット,タンブリン,その他の楽器に親しむ。
(5) 曲の速度や強弱に気をつけて楽器をひく。
(6) みんなといっしょに喜んで楽器をひく。
(7) 役割を分担したり,交替したりなどして,楽器をひく。
(8) 楽器をたいせつに扱う。
(2) 手を打ったり,楽器をひいたりしながら,リズミカルな動きをする。
(3) 曲に合わせて歩いたり,走ったり,とんだりなどする。
(4) 歌や曲をからだの動きで表現する。
(5) 動物や乗り物などの動きをまねて,からだで表現する。
(6) リズミカルな集団遊びを楽しむ。
(7) 友だちのリズミカルな動きを見て楽しむ。
(2) 静かに音楽を聞く。
(3) いろいろのすぐれた音楽に親しむ。
(4) 友だちの歌や演奏などを聞く。
(5) 音や曲の感じがわかる。
(6) 日常生活において音楽に親しむ。
(2) 知っている旋律に自由にことばをつけて歌う。
(3) 楽器を感じたままひく。
(4) 感じたこと,考えたことを,自由にからだで表現する。
(5) 友だちといっしょに,感じたこと考えたことをくふうして歌や楽器やからだで表現する。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度に応じたさまざまな表現活動をさせるようにし,からだをのびのびとリズミカルに動かすことを楽しませるようにすること。また,集団的な遊びのなかでリズミカルなものを適当に加えるようにすること。
ウ 3に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度などを考慮して,できるだけすぐれた音楽に接する機会を多くし,しだいに音楽に親しませるようにすること。
エ 4に関する事項の指導にあたっては,幼児の年齢や発達の程度を考慮して,幼児の気持ちや考えを自由に表現させ,創造的な活動を楽しませて,創造的な表現への意欲を高めるようにすること。
オ 1,2,3および4の事項の指導にあたっては,いずれにもかたよることなく,種々の経験や活動をできるだけ総合的に行なわせて,情操を豊かにし,生活にうるおいをもたせるように常に配慮すること。
(2) 身近にある材料で思いのままに表現する。
(3) 見たり聞いたりしたことなどを絵にかいたり,ものに作ったりする。
(4) かいたり作ったりしたものを使って遊ぶ。
(5) みんなといっしょに絵をかいたり,ものを作ったりする。
(2) 身近な生活に使う簡単なものを作る。
(3) ごっこや劇的な活動などに使うものを作る。
(4) いろいろな色や形に興味や関心をもち,それらを集めて並べたり,組み合わせたりする。
(5) いろいろな色や形を使ってさまざまな表現をする。
(2) 砂,積み木などを使って,いろいろなものを作る。
(3) いろいろな用具をじょうずに使う。
(4) 材料や用具の準備やあとかたづけをする。
(2) 身近にある美しいものを見て喜び,作品などをたいせつにする。
(3) 身近な環境を美しくすることに興味や関心をもつ。
上記の指導にあたっては,次のことに留意する必要がある。
イ 2に関する事項の指導にあたっては,幼児の生活や遊びのなかで,絵をかいたり,使うものを作ったり,色や形などを組み合わせて模様を作ったりなどさせ,飾ろうとする欲求を満たし,くふうする態度や構成する力の芽ばえをつちかうようにすること。
ウ 3に関する事項の指導にあたっては,1および2に関する事項と関連をもたせて指導し,各種の材料や用具の扱いに慣れさせるとともに,特に安全に留意すること。
エ 4に関する事項の指導にあたっては,日常生活のなかでつとめて美しいものに接する機会を多くし,身近な環境を美しくすることに興味や関心をもたせるようにし,美的な情操の芽ばえをつちかうようにすること。