第1章 総  則

 

第1.教育課程の編成

 1.一般方針

 肢(し)体不自由者を教育する養護学校(以下「養護学校」という。)小学部の教育課程は,国語,社会,算数,理科,音楽,図面工作,家庭および体育・機能訓練(以下「各教科」という。)ならびに道徳,特別教育活動および学校行事等により編成するものとする。

 各養護学校においては,教育基本法,学校教育法,および同法施行規則,養護学校小学部学習指導要領肢体不自由教育編,教育委員会規則等に示すところに従い,地域や学校の実態を考慮し,児童の発達段階,経験および肢体不自由の状態に即応して,適切な教育課程を編成するものとする。

 2.授業時数の配当

(1) 養護学校小学部各学年の年間における授業時数の標準は次の表のとおりとする。

    ただし,道徳については最低時数を示すものとする。

区   分

第 1

学 年

第 2

学 年

第 3

学 年

第 4

学 年

第 5

学 年

第 6

学 年

各     教     科

国   語

238

(7)

315

(9)

280

(8)

280

(8)

245

(7)

245

(7)

社   会

68

(2)

70

(2)

105

(3)

140

(4)

140

(4)

140

(4)

算   数

102

(3)

140

(4)

175

(5)

210

(6)

210

(6)

210

(6)

理   科

68

(2)

70

(2)

105

(3)

105

(3)

140

(4)

140

(4)

音   楽

102

(3)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

図 画 工 作

102

(3)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

70

(2)

家   庭

 

 

 

 

 

 

 

70

(2)

70

(2)

体育・機能訓練

170

(5)

175

(5)

175

(5)

175

(5)

175

(5)

175

(5)

道    徳

34

(1)

35

(1)

35

(1)

35

(1)

35

(1)

35

(1)

884

(26)

945

(27)

1,015

(29)

1,085

(31)

1,155

(33)

1,155

(33)

 

(2) 上掲(1)の表においては,授業時間の1単位時間は45分とし,かっこ内の授業時数は年間授業日数を35週(第1学年については34週)とした場合における週当たりの平均授業時数である。なお,授業の1単位時間には,教室を移動したり,休憩したりするのに要する時間を含まないものとする。

(3) 各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等に授業時数を配当するにあたっては,下記の事項に注意することが必要である。

ア 各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等の授業時数を定めたり,これを配当したりするにあたっては,児童の肢体不自由の状態を考慮し,負担過重にならないように留意すること。

イ 体育・機能訓練については,児童の肢体不自由の状態に応じて,それぞれ適切な授業時数を配当しなければならないこと。

ウ 道徳の授業時数については,各学年35単位時間(第1学年にあっては34単位時間)以上でなければならないこと。

エ 各教科および道徳についての1週間の時間割りを作成するにあたっては,上掲(1)の表のうち,かっこ内に示した週当たりの平均授業時数を参考として,調和的,能率的な指導ができるように配慮すること。

オ 特別教育活動および学校行事等については,児童の肢体不自由の状態に応じて,年間,学期,月または週ごとに適切な授業時数を配当することが望ましいこと。

カ 各教科および道徳についての各学年の授業は年間35週以上にわたって行なうように計画すること。

キ 各教科および道徳の授業の1単位時間は45分とすることが望ましいが,児童の肢体不自由の状態,季節およびその他の事情により45分未満とすることができること。

ク 第1学年から第4学年までの各学年においては,一部の各教科について,これをあわせ授業を行なうことができることとなっている(学校教育法施行規則第73条の10第3項で準用する同条第1項)。この場合それぞれの教科の目標,内容を逸脱しないように注意しなければならないこと。

ケ 機能訓練は,特別な技能を有す教職員による個別指導を必要とするから,その時間の配当にあたっては,担当教職員,施設設備,各教科および道徳にあてる授業時数などを考えあわせ,能率的かつ効果的な指導が行ないうるよう特に配慮すること。

 3.特  例

(1) 私立の養護学校の小学部においては,各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等のほか,宗教を加えて教育課程を編成することかでき,この場合宗教をもって道徳に代えることができる。

また,道徳のほかに宗教の時間を設けている場合には,宗教の授業時数をもって道徳の授業時数の一部に代えることかできる。

(2) 複式学級において,特に必要のある場合には,各教科の目標の達成に支障のない範囲において,各教科についての学年別の順序によらないことができる。

(3) 重症脳性まひ児童のために特別に編成された学級や肢体不自由児施設等に入院治療中の児童については,実情に応じた特別な教育課程を編成し実施することができる。

(4) 非常変災,伝染病等により,臨時に授業を行なわない場合で,その年間にあらかじめ定められた授業時数を補うことかできないような,やむを得ない事情があるときは,その定められた授業時数を下ることかできる。

(5) 上記2(3)のクの場合は,当該養護学校の設置者は,市町村立養護学校にあっては都道府県教育委員会に,私立の養護学校にあっては都道府県知事にそれぞれあらかじめ届け出なければならないこととなっている(学校教育法施行規則第73条の10第4項で準用する第25条の2第3項)。また国立の養護学校にあっては文部大臣に届け出るものとする。

第2.指導計画作成および指導の一般方針

1.養護学校においては,下記の事項に留意し,各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等について相互の関連を図り,全体として調和のとれた指導計画を作成するとともに,発展的、系統的な指導を行なうことができるようにしなければならない。

(1) 各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等については,第2章以下に示すところに基づき,学校の実態や地域の状況などを考慮し,児童の肢体不自由の状態や経験に即応して,具体的な目標を明確にし,小学校学習指導要領第2章に示された内容に準じて実際に指導する事項を選定し,配列し,効果的な指導を行なうようにすること。

(2) 小学校学習指導要領第2章に示された各教科の内容に関する事項は,特に示す場合を除き,いずれの学校においても原則として取り扱うことを必要とするものである。各養護学校においては特に必要と認められる場合には,児童の肢体不自由の状態に応じて指導する事項を軽減することができること。ただしこの場合,学年別の目標や内容を考え,慎重な配慮をしなければならないこと。

(3) 小学校学習指導要領第2章に示された各教科の学年別の内容に掲げる事項の順序は,そのまま指導の順序を示すものではない。各養護学校においては,児童の経験や肢体不自由の状態などに即応して,各事項のまとめ方や順序をくふうして指導するようにすること。

(4) 保健に関する事項の指導は,各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等の教育活動全体を通じて行なうものとする。特に体育・機能訓練との関連を密にし,相互に効果的な指導が行なえるように配慮すること。

(5) 各教科,道徳,特別教育活動および学佼行事等の教育活動における適切な機会を利用して,個々の児童の機能障害の改善に資するように配慮しなければならないこと。

(6) 政治および宗教に関する事項の取り扱いについては,それぞれ教育基本法第8条および第9条の規定に基づき,適切に行なうように配慮しなければならないこと。

(7) 児童の心身の状況によって履修することが困難な各教科は,その児童の心身の状況に適合するように課さなければならないこととなっている(学校教育法施行規則第73条の11第2項で準用する第26条)。各養護学校においては指導の実際にあたって,個々の児童について特別な配慮をしなければならないこと。

2.各教科,道徳,特別教育活動および学校行事等の指導を能率的,効果的にするためには,下記の事項について留意する必要がある。

(1) 児童の発達段階や経験をよく理解すること。

(2) 肢体不自由者の心身の状態をよく理解すること。

(3) 学習の目標を児童にじゅうぶんはあくさせること。

(4) 児童の興味や関心を重んじ,自主的,自発的な学習をするように導くこと。

(5) 児童の個人差に留意して,個別指導を重んじ,それぞれの児童の個性や能力をできるだけ伸ばすようにすること。

(6) 学校における好ましい人間関係を育て,身のまわりの美化や整とんに努めるなど,学習環境を整えるようにすること。

(7) 教科書その他の教材,教具などについて常に研究し,特に教具は児童の使用を容易にするよう改善に努めること。また,児童の経験の不足を補うためにも,学校図書館の資料や視聴覚教材等をじゅうぶん活用すること。

(8) 学校医との連絡を密にし,教育活動全般を通じて医学的配慮を加えること。

第3.道 徳 教 育

 学校における道徳教育は,本来,学校の教育活動全体を通じて行なうことを基本とする。したがって,道徳の時間はもちろん,各教科,特別教育活動および学校行事等学校教育のあらゆる機会に,道徳性を高める指導が行なわれなければならない。

 道徳の目標は,教育基本法および学校教育法に定められた教育の根本精神に基づく。すなわち,人間尊重の精神を一質して失わず,この精神を,家庭,学校その他各自がその一員であるそれぞれの社会の具体的な生活の中に生かし,個性豊かな文化の創造と民主的な国家および社会の発展に努め,進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成することを目標とする。

 道徳の時間においては,各教科,特別教育活動および学校行事等における道徳教育と密接な関連を保ちながら,これを補充し,深化し,統合し,またはこれとの交流を図り,児童の望ましい道徳的習慣,心情,判断力を養い,社会における個人のあり方についての自覚を主体的に深め,道徳的実践力の向上を図るように指導するものとする。

第4.機 能 訓 練

 肢体不自由者は訓練することによって,その機能をある程度回復し,障害を軽減することができる。したがって養護学校においては,児童の機能障害の状況を正しくはあくし,その障害を改善するために適切な訓練を行なわなければならない。

 機能訓練の目標は,個々の児童のもっている機能の障害を改善させるとともに,みずから進んで障害を克用しようとする態度を養い,健康な生活ができるようにすることにある。

 機能訓練の時間においては,特別な技能を有する教職員が,学校医の処方に基づき,児童のもっている残存能力,代償能力,および回復能力を利用し,各種の機械器具をも活用して,児童の積極的な参加のもとに,個々の児童の障害の改善を図るように指導するものとする。