教育活動および学校行事等
第1節 道 徳
第1 目 標
1 道徳教育の目標は,教育基本法および学校教育法に定められている教育の根本精神に基づくものであるから,小学部や中学部の道徳教育の目標や内容も,小学校や中学校の道徳教育の目標や内容と,基本的にはなんら異なるところがない。 したがって,各教師は,これらの目標や内容に掲げられている各項目の精神にのっとり,また,そのねらいとするところをできるだけ達成するために,上掲第2の内容に掲げられているかっこ内のただし書きに基づいて,適切に道徳教育を行なうものとする。
2 指導計画は,学校の教育活動全体を通して行なう道徳教育の計画の一環として,各教科,特別教育活動および学校行事等における道徳教育を補充し,深化し,統合し,また,これと相互に交流しうるよう組織的,発展的なものでなければならない。
3 指導計画は,固定的なものであったり,融通性がないものであってはならない。学習時はもちろん,登校・下校の時間,学校行事等の実施中などに起こった問題や,身近な生活で起こった時事的な問題等も適宜取り入れ,修正を加えうるよう,弾力性をもたせることがたいせつである。
4 道徳の時間は,児童・生徒の心身の状況に応じ,小学部にあっては1単位時間を数回に,中学部にあっては1単位時間を2,3回に分けて指導することもさしつかえない。
5 児童・生徒の性格・行動の傾向やその道徳性形成に関係のある家庭環境,生育歴,地域の特性や交友関係などに関する資料は,指導計画作成のためにも,指導の効果をあげるためにも,できるだけ多く収集・整理しておき,これを活用することが必要である。
6 指導の効果をあげるためには,家庭や地域の人々との連絡を密接にするとともに,よい学級のふんい気を作るようにすることが望ましい。
なお,児童・生徒のなかには,いろいろな原因から情緒不安におちいるものや自己統制,協調性などに欠けているものが少くないので,特にこの点についてのじゅうぶんな配慮も必要である。
7 教師は,簡単なことがらについても,すべて先頭にたって示範し,また,手をとってわかりやすく指導する懇切さを必要とする。しかし,発達段階が高まるにつれて,徐々に児童・生徒みずからが考え,話し合い,行動し,反省していくように方向づけることがたいせつである。そのためには,あせらず長い目で根気よく指導していくよう努力する必要がある。
8 指導は,広い角度からいろいろな場面,機会,教材等を適切に利用し有効に行なわなければならない。そのためには,具体的で簡単なことがらや問題について話し合いをさせること,教師がわかりやすく,また,納得がいくように説明すること,やさしい読み物を楽しんで読んで聞かせること,紙しばい・幻燈・放送その他の視聴覚教材を利用すること,劇化に訴えること,実践的な活動をさせることなどの諸方法を,適切に組み合わせて用いることが必要である。
なお,児童・生徒の道徳性を高めるための指導においては,教師の一方的な教授や単なる徳目の解説に終わるようなことは,絶対に避けなければならない。
第1 目 標
2 所属する集団の運営に加わり,その向上に役だつことができるようにする。
3 実践活動を通して積極性を養い,個性をできるだけ伸ばし,心身ともに健康な生活が送れるようにする。
2 特別教育活動は,児童・生徒の自主的活動を基本とするものであるから,その指導計画作成と実施にあたっては,児童・生徒の自発的な要求を可能なかぎり受け入れるようにし,取り上げるべき種類,時間,方法などについても,かれらの特性や発達の程度に即するよう慎重に考慮する必要がある。また,その計画は,固定的なものであってはならない。特に中学部の段階においては,できるだけ生徒とともにいっそう具体的な実施計画を立てることができるような弾力性・融通性に富むものであることが望ましい。
3 小学部低学年における学級会は,始業開始時における相談や終業時におけるその日の反省など,担任の指導による話し合い程度にとどまるであろうが,中学年の段階では,徐々に学級会に所属するいくつかの簡単な係りの活動を加えて行なわせるようにし,高学年以上の段階では,中学年における係りの活動をさらに高めるとともに,できるだけ自分たちの力で学級内の問題を解決したり,また,児童会や生徒会へ問題を提起したりするような実践的な活動となるように指導する。
4 児童会または生徒会は,あくまで児童または生徒による実践的な活動を基本とするものであるから,その活動が具体的な生活の場面で実際に生かされるものでなければならない。
児童会は,全校の児童で構成されるものであるが,その運営は,おもに高学年の児童によって行なわせ,その活動は,学校生活全体の向上に関係する奉仕活動に重点をおくことが望ましい。
生徒会に所属するいくつかの部(またはこれに類するもの)の種別や数は,できるだけ生徒の希望を入れ,また学校の事情などを考慮し,さらに各部の活動が有機的な関連をもって,学校生活全体を向上しうるような配慮のもとに,決められなければならない。
必要に応じては,中学部の全生徒が集まって生徒会を開くことがあり,また,地域社会との関係において,校外における奉仕活動が行なわれる場合にも考えられるが,それらの際には,学枚行事等との関連に留意するとともに,その教育的価値と限界について配慮する必要がある。
小学部の児童会と中学部の生徒会の関連についてもじゅうぶんに考慮する必要がある。また,可能であれば,ときに児童会と生徒会とが合同で集会をもつことも一つの試みであろう。
5 クラブの種別,数の決定には,児童・生徒の希望,学校の実情,地域社会の特性などをじゅうぶん考慮しなければならない。
どのクラブに参加するかは,児童・生徒の自発性にまつものであるが,その際にも教師の適切な指導が特に必要である。
第1 目 標
2 学校行事等の指導計画は,児童・生徒の心身の特性を考慮し,教育的見地から取り上げるべき種類ならびに実施の時期,時間,回数,方法などを決めることが必要である。なお,その計画や実施にあたっては,児童・生徒の負担過重にならないよう留意し,その健康や安全に努めなければならない。
3 地域社会の要請と関連して,学校行事等の計画を作成し実施する場合には,その教育的価値をじゅうぶん検討し,学校全体の教育計画を乱すことのないよう,特に留意する必要がある。
4 学校行事等の計画や実施にあたっては,学校生活に変化を与え児童・生徒の生活を楽しく,豊かなものにするとともに,節度ある態度を育てることなどにじゅうぶん配慮する必要がある。
5 国民の祝日などにおいて儀式などを行なう場合には,児童・生徒に対して,これらの祝日などの意義をできるだけ理解させるようにするとともに,国旗を掲揚し,国歌をせい唱させることが望ましい。
6 学校給食を実施する場合には,給食時において,関係の教科,道徳および特別教育活動との関連を特に考慮して,適切な指導を行なうようにしなければならない。
養護学校小学部・中学部学習指導要領
−精神薄弱教育編−
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昭和38年3月1日印刷
昭和38年3月5日発行
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