第4章 中学部の各教科

 

第1節 国   語

第1 目  標

1 いろいろな相手や場に応じて,聞いたり話したりする能力をさらに高め,しだいにことばを通して社会生活に参加できるようにする。

2 簡単な話の要点を正しく聞き取ったり,身近な経験を聞き手によくわかるように話すことができるようにする。

3 日常生活においてよく用いられる語句や文などを読んだり,書いたりする能力を,できるだけ伸ばすようにする。

4 将来の職業生活に必要と思われることばに慣れるようにする。

5 ことばを使う能力をさらに高めて,言語生活を向上させ,できるだけ生活にうるおいをもたせ楽しく過ごすようにする。

 

第2 内  容 1 聞くこと,話すこと。
  (1) 人の話を注意して終わりまで聞く。

(2) 簡単な話の要点を聞き取る。

(3) 簡単な放送や録音の要点を聞き取る。

(4) 指示や説用などを正しく聞き取り,それに従って行動する。

(5) 物語などを聞いて,喜びや悲しみなどを感じる。

(6) 相手や場に応じたあいさつをする。

(7) 相手や場に応じた話し方をする。

(8) 相手のいうことをよく聞いた上で話す。

(9) 知りたいことやわからないことは進んで尋ねる。

(10) 人に聞かれた場合,はっきりと応答する。

(11) 伝言を相手に正しく伝え,まちがいなく取り次ぎをする。

(12) 経験したことについて説明する。

(13) 見たり,聞いたりしたことの要点を話す。

(14) 学級会,生徒会などで自分の意見を人にわかるように話す。

(15) 実習の時などにおいて,作業に必要なことばの聞き取りや使用に慣れる。

(16) 話し合いのきまりを守って,有効に話し合う。

(17) 映画・劇・物語・放送など,見たり聞いたりして楽しむ。

(18) 教師や目上の人にはなるべく敬語を使って話す。

(19) 必要なときには全国に通用することばを使って話す。

(20) 皆といっしょに劇のせりふのやりとりをして楽しむ。

(21) 電話でのやりとりを確実にする。


2 読むこと,書くこと。
 

(1) やさしい読み物を読む。

(2) 日常生活に必要な看板,広告,その他の標識,立て札,掲示などをできるだけ正しく読む。

(3) 職業生活や経済生活に必要な伝票,領収書,説明書などがわかる。

(4) テレビ,ラジオなどの番組や列車,バスなどの時刻表がわかる。

(5) 新聞や雑誌などを,見たり,読んだりすることに関心をもつ。

(6) 自分の履歴書を正しく写し書きする。

(7) 簡単な手紙や日記などを書く。

(8) 簡単なメモや作業日誌などをつける。

(9) ひらがなやかたかなや漢字まじりの文を書く。

(10) 適当な大きさの文字で「,」(てん),「。」(まる)などに注意しながら文を書く。

(11) 日常生活においてしばしば触れるローマ字などに関心をもつ。

第3 指導上の留意事項 (1) 中学部においては,日常生活,ことに職業生活や経済生活に適応していくために必要な言語指導に重点をおき,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことのすべてにわたって,指導に一応のまとまりをつけるようにする。

(2) いろいろな実習などの具体的な場面において,相手の意図をできるだけまちがいなく聞き取ったり,読み取ったりすることと,自分の思うことの主旨をできるだけ相手にわかるよう話したり,書いたりするよう指導することが望ましい。

 

第2節 社   会

第1 目  標

1 学級におけるいろいろな活動を通して,自分の意見を述べたり,人の立場を理解して,互いに協力しあう態度を身につけるようにする。

2 自分も社会の一員であることを知り,年令や性別などにふさわしい行動や態度をとることができるようにする。

3 学校や地域社会などにおけるきまりやしきたりなどを知り,それらに適応できるようにする。

4 公共の施設やその他の機関などについて,そのはたらきを知り,必要に応じてこれらを利用できるようにする。

5 身近な生活を通して生産,流通,消費などに関する基礎的な事がらを理解させ,これらに関する諸施設を利用できるようにする。

6 社会における大きなできごとや行事などを通して,国にはいろいろな法律が定められていることを知り,これらを守らなければならないことがわかるようにする。

7 遠足や旅行,視聴覚教材などを通して,見聞を広め,社会生活に対する経験をいっそう豊かにするようにする。

 

第2 内  容 1 学級会や生徒会などで次のような活動をする。 (1) 自分の意見をはっきり述べる。

(2) 他人の意見をよく聞き,相手の立場を理解する。

(3) 話し合いでものごとを決める。

2 家庭,近隣などの学校以外のいろいろな行事や集団生活に,できるだけ参加するようにする。

3 悪い遊びをしたり,よくない仲間にはいらないようにする。

4 目上の人や来客などに,ていねいなことばや態度で応待する。

5 男子と女子の役割に違いのあることを知り,それぞれにふさわしい行動や態度をとる。

6 学校のきまりを守り,また,学級会や生徒会などで,自分たちの生活に必要なきまりを話し合って決める。

7 地域社会のしきたりなどを知り,それに従う。

8 交通規則や公衆道徳などを守る。

9 切手やはがきを買ったり,速達や電報を頼んだりする活動などを通して,郵便局のはたらきを理解し,それを活用する。

1O 電話のはたらきがわかり,必要に応じてこれを利用する。

11 簡単な外傷や病気ならひとりで診療所や病院などに行くことができる。

12 危険なものごとを発見したとき,警察や消防署に知らせるなど,適当な処置をとる。

13 必要に応じて,乗り物の時刻表や料金表がだいたいわかる。

14 簡単な地図をたよりにして,目的地に行く。

15 乗り換えがあっても,交通機関を利用して目的地に行く。

16 地域のデパート,劇場,公園などのおもな建物や施設を知る。

17 いろいろな商店で売っている品物の種類と値段がだいたいわかり,ひとりで買い物をする。

18 工場の見学などを通して,物がつくられていく過程や様子を知る。

19 身近な生活を通しておもな職業の種類とそれらのはたらきを知る。

20 収入によって計画的に生活をたてることと貯蓄の必要を知る。

21 勤労に対して報酬が得られることを知る。

22 祝祭日の意味がだいたいわかる。

23 選挙の意味がだいたいわかり,学級会や生徒会などの役員の選挙などに参加する。

24 税金の意味がだいたいわかる。

25 未成年者に禁じられていることがわかり,それらを守る。

26 ごく身近な具体的なことがらを通して,法律の意味がわかる。

27 遠足や旅行などの機会を通して,おのおのの土地の模様や人々の生活の様子などについて,関心や理解をもつ。

28 新聞,ラジオ,テレビ,映画,雑誌などを通して,日本や世界の大きなできごとなどに対する見聞を広げ,また,それらに対する関心を深める。

第3 指導上の留意事項 1 この段階では,現実の社会生活や職業生活に関連した指導すべき事項がきわめて多いから,これらの事項の指導にあたっては,個々の生徒の能力に応じて,実際的な問題の解決や処理ができるようにすることが必要である。

2 生徒個々の能力に応じて,それぞれに対し自分自身の考え方や判断力を高め,それ相応の自己反省ができるよう指導していくとともに,社会人としての自覚と自信をもって,卒業後の生活を営みうるような態度や能力を養うように努める。

3 能力の低い生徒に対しても,卒業後の社会生活において,かれらが最少限必要とするであろうと思われる事項に関しては,できるだけ生きた知識や技能・態度として,しっかり身につけさせるように指導することがたいせつである。

4 なお,上掲第2の内容に掲げる各事項は,他教科および道徳の指導すべき事項との密接な関連を図かって取り扱っていくとともに,また,特別教育活動および学校行事等における,さまざまな活動の行なわれる場や機会を適切にとらえて,有効な指導形態のもとで指導するようにするなど,いろいろとくふうする必要がある。

 

第3節 数   学

第1 目  標

1 いろいろな生活の場面には,数量的な事がらのあることを理解させ,日常生活の数量的処理に必要な簡単な計算やその他の技能を身につけさせる。

2 職業生活に参加し,消費生活を合理的に行なうために必要な数量的処理の態度や技能を身につけさせる。

 

第2 内  容 1 数の範囲を広げ,数えたり,読んだり,書いたり,加法・減法の計算を正しくしたりするようにする。

2 そろばんを使って,簡単な加法や減法ができる。

3 具体的な事がらの扱いを通して,簡単な乗法・除法の意味とそれを用いる場合について理解する。

4 具体的な事がらの扱いのなかで,長さや重さや容積などをはかる単位を知り,いろいろな測定の用具の使い方に慣れる。

5 具体的な生活を通して,時計で時刻や時間がわかる。

6 具体的な生活のなかで,暦がつかえる。

年号。1月=30日,31日。 1年=12月。 1週=7日。

7 具体的な生活のなかで,温度計(寒暖計・体温計)の使い方がわかる。

8 三角定木やコンパスを使って,簡単な図形がかける。

9 身切かな生活に必要な範囲の金銭の処理ができる。

10 簡単なこづかい帳をつけたり,郵便局などで,貯金の出し入れができる。

11 簡単な伝票・請求書・領収書などの意味がわかり,それに使われる漢数字などが読める。

12 物のねだんや割引・損得などの意味がだいたいわかる。

13 乗り物などの時刻表が読める。

14 簡単な棒グラフなどを読んだり,書いたりすることができる。

 

第3 指導上の留意事項 1 上掲第2の内容に掲げる各事項は,単に数学の時間に指導するばかりでなく,職業・家庭その他の教科の学習と密接に関連させ,また,実際生活のあらゆる場面で数量的処理の能力や態度を身につけていくように考慮して指導する。

2 この段階においても,取り扱うべき数の範囲や四則計算における程度などについては,具体的に示されていないが,しかし,それらを取り扱うにあたっては,生徒ひとりひとりの能力や発達の程度をじゅうぶんに考慮し,それに応じて,指導していくようにする。

 

第4節 理   科

第1 目  標

1 身近な自然の事物や現象に関心を深め,人間生活との関係について知るようにする。2 身近な生物の飼育・裁培や野外観察などにより,いろいろな生物の生活の様子を知り,広く生物をかわいがるようにする。

3 からだのおもなしくみやはたらきに関心をもち,健康や安全に心がける。

4 身近な生活の中で,できるだけ合理的にものごとを処理する態度を養う。

5 衣・食・住に関する初歩的な知識を習得し,日常の処理に役だてるようにする。

 

第2 内  容 1 草花などを栽培し,それらがよく育つように手入れや世話などをする。 (1) 学校園や茶園などに春と秋にその時期の種子をまいたり,球根を植えたりして,育ち方が種類によって違うこと,よく育てるためには日がよく当たるようにすること,ときどき水をやらなければならないことなどに気づき,手入れや世話を続けてする。

(2) 種子を取ったり,球根を掘ったりして,一つの種子や球根から多くの種子や球根ができることを知る。

(3) 草木で,さし木や株分けなどを行ない,植物はさし木や株分けなどで,ふやすことができることを知る。

2 家畜や小動物などを飼い,続けてその世話をするとともに,その育ちかたや著しい習性などに気づく。

3 虫を飼ったり観察したりして,その一生の変化などに気づく。

4 観察などを通して身近な生物の冬越しのしかたなどについて知る。

5 四季の天気や気候,土地の様子や方位などを調べる。

(1) 観察などを通して,梅雨,雷,夕立,台風,霜,雪など,季節によって特徴のある気象や現象に関心をもつ。

(2) 太陽,月,星などについて関心を深める。

(3) 温度計を正しく操作して,気温を測ることができる。

(4) 気温を測り,それが1日のうちでも,また,季節によっても変化することに気づく。

(5) 川の水の流れ方などを調べ,川(海)の水のはたらきなどについて知る。

(6) 磁石を使って東西南北などの方位がわかる。

6 自分のからだの発育やからだのおよそのはたらきなどを調べ,健康や安全に心がける。 (1) 健康診断などを通して,体重・身長など自分のからだの成長に気づく。

(2) 鼓動・体温・呼吸などが,運動したときや病気したときには,正常時と違うことを知る。

(3) 栄養不足や過労,不節生などのため,からだが弱っているときには,病気にかかりやすいことを知る。

(4) 回虫や十二指腸虫などの寄生虫を知り,検便の必要やこれらの駆虫法や予防のしかたなどがわかる。

(5) 伝染病は病原体によって伝染すること,病原体は,日光・熱・薬品などによって殺すことができることなどを知り,これを実行するよう努める。

7 日常の食物には,発育と活動に必要な栄養素が含まれていることを知り,一つの種類だけでは,栄養を完全にとることがてきないことがわかる。

8 身近にある毛織物,絹織物,綿製品,ナイロン製品などに使われている繊維の性質に関心をもつ。

9 日常用いられている塗料,防腐剤,防虫剤などのはたらきや使用法などを知る。

10 石油,アルコールその他油の性質や用途について知る。

ll 家庭の電気の配線や電熱器具の安全な扱い方がわかる。

(1) スイッチ,コード,ソケットなどのしくみやはたらきを知り,それらを回路に正しくつなぐことができる。

(2) 屋内配線のしかたを知り,安全器,ヒェーズなどのはたらきがわかる。

(3) 家庭の電気器具を安全に扱えるようになる。

12 日常生活で使われるいる簡単な道具のはたらきに関心をもち,その使い方がわかる。 (1) 滑車や歯車などを使っている簡単なおもちゃや道具のはたらきに関心をもち,その使い方がわかる。

(2) てこ,ころ,サイホンなどのはたらきとそれらが使われている場合を知り,それらの使い方がわかる。

(3) 乾電池の両極と豆電球を導線でつなぐと点燈することを知り,これらを使って簡単な道具をくふうして作ろうとする。

13 鉄,鋼,アルミニュウムなど,日常多く使われる金属のおもな性質を知り,その性質に応じた使い方がわかる。

 

第3 指導上の留意事項 1 上掲第2の内容に掲げる各事項は,生徒が日常生活や実習などの場で,常に使用したり,しばしば見たり,ふれたりするものごとについて,科学的な理解を深め,また,それらを合理的に処理し,さらに日常生活や将来の職業生活に役だて,健康で安全な生活を送ることを最終目標とし,しかも,その目標の達成を図るという観点から選ばれたものである。

 また,これらの事項は,いろいろな学習の場面や機会に,比較的容易に観察や実験・観測などができ,あるいは,また,飼育・栽培や製作などが行なえるもののうちから,そのおもなものについて掲げたものである。

 したがって,これらの事項を取り扱うにあたっては,それらが確実に身につくように指導していくことが望ましい。

 ただし,これらの事項については,必ずしもそれらのすべてにわたり,単独に取り出して指導していく必要はない。

2 上掲第2の内容に掲げる各事項は,特に,職業・家庭,図画工作,保健体育などの学習と密接な関係を有するものであるから,これらの学習との関連をじゅうぶんに考慮する必要がある。また,これらの事項のあるものについては、特別教育活動や学校行事等の実施の機会をとらえて,指導することも望ましいことである。

 

第5節 音   楽

第1 目  標

1 音楽に親しませ,生活にうるおいをもたせるとともに,余暇利用にも役だてるようにする。

2 よい音楽を進んで聞き,楽しむようにする。

3 せい唱や合奏にいっそうなれさせ,皆と協調する態度を養う。

4 歌う技術を高め,平易な輪唱や合唱にも親しむようにする。

5 生活や作業のなかで音を聞きわける力をいっそう伸ばし,実際生活に役だたせるようにする。

 

第2 内  容 1 聞くこと。(進んで音楽を楽しむ。) (1) よい音楽を静かに聞いて楽しむ。

(2) いろいろな種類の音楽を鑑賞する。

(3) よい音楽映画を見たり,音楽会へ行く。

(4) 皆といっしょに学芸会などで音楽を楽しむ。

2 からだを動かす。(リズミカルにからだを動かす。) (1) いろいろなリズムに合わせてからだを動かす。

(2) 音楽に合わせて,いろいろな運動をする。

(3) 音楽に合わせて,フォークダンスやスクェアーダンスなどをする。

(4) 音楽を聞いて感じたことを創造的にからだの動きで表現する。

3 器楽。(多くの楽器を合わせて奏する。) (1) 木琴,ハーモニカ,たて笛,オルガンなどを奏する。

(2) リズム楽器や旋律楽器を使って合奏することを楽しむ。

(3) 楽器の取り扱いに注意し,手入れを確実にする。

4 歌うこと。(やや,音楽的な歌い方になれる。) (1) 音の強弱,音程,リズム,発音などに気をつけ,できるだけ正しく歌う。

(2) 伴奏を聞きながら,声を合わせて,できるだけきれいにせい唱する。

(3) 簡単な輪唱や合唱をする。

5 音を聞きわける。 (1) いろいろな楽器の音色を聞きわける。

(2) 日常生活のなかにあるいろいろな音やリズムに関心と注意を向け,その聞きわけができる。

(3) 種々の音楽的経験によって得た聴感覚を,いろいろな作業の上に役だてる。

 

第3 指導上の留意事項 1 この段階では,音楽的経験の場を,単に学校生活のなかだけに求めず,家庭や社会における,いろいろな場での,いろいろな音楽にも親しませ,生徒の音楽的経験をできるだけ豊かにするように指導する。なお,音楽の学習で身についたことがらを余暇利用に役だて,できるだけ生活にうるおいをもたせるように指導していくことが必要である。

2 この段階の合唱やその他の歌唱の教材は,ちょうど生徒が変声期にあることを考慮して,選択する必要がある。なお,この段階の生徒は,一般に青年前期の特性として感受性が高まってくるから,精神年令に即した指導よりも,むしろ生活年令に即応した指導に重きをおき,成人向きの音楽も必要に応じて取り入れるように考慮する。

3 この段階においては,音楽のなかにあるいろいろなきまりや約束ごとを,かれらの理解力に即して習得させるようにし,しかも,それにより,できるだけ楽しい音楽的表現ができるように指導する。

4 この段階における音楽の指導においては,できるだけ他教科や道徳の学習との密接な関連を図るように心がけることはもちろん,特に,職業・家庭の分野においては,音楽の学習で得た力を役だてていくようにする。たとえば,作業場などでミシンやモーターその他の機械の音の調子を聞きわけ,作業の能率と安全に役だてていくことなどである。

 なお,特別教育活動や学校行事等の活動との関連もじゅうぶんに考慮する必要がある。

 

第6節 図 画 工 作

第1 目  標

1 造形活動を通して,造形的な表現意欲を高め,創作の喜びを味わわせる。

2 造形的な表現のための材料,用具や技法の範囲をいっそう広げ,造形的な表現能力を養う。

3 造形的技能を簡単な修理や美化などに役だたせるようにする。

4 余暇を有効に使うために,造形的な能力を活用するようにする。

5 造形活動を通して,職業生活に役だつ造形的な能力や態度を養う。

 

第2 内  容 1 造形的な活動によって,自分の意図したものを表現することに喜びと自信をもつ。

2 製作題材や材料の扱い方や用具の使用法がやや困難な場合にも進んで製作をやり通す。

3 できるだけ合理的に材料や用具を使う。

4 木材や石材,コンクリートや金属などの材料を使ってものを作る。

5 のこぎり・かんな・のみ・なたなどの工具の使い方に慣れる。

6 ペンチ・ねじまわし・ハンドドリル・グライダー・いとのこ機・ミシン・簡単な織機・編み機などの使用に慣れる。

7 塗料や接着剤などの利用に慣れる。

8 身近な器具や用具などの修理ができる。

9 絵画・版画・手芸品・工芸品などを見たり,作ったりして,余暇を楽しむ。

10 共同製作などで相手と協力する。

11 自分の作品とともに他人の作品もたいせつにする。

12 自他の作品のできばえに関心をもつ。

13 自分のへやや教室などの配置・配合や装飾をくふうする。

14 造形的な能力を将来の職業生活に活用するための基礎的な扱いもする。

15 けがをしないように注意する。

 

第3 指導上の留意事項 1 この段階では,生徒の体力や手さきの器用さがいっそう発達してくるので,小学部の造形活動において,身についた造形的な能力を,いっそう伸ばしていくようにする。

2 この段階における造形活動においては,色や形や質,あるいは種類や用途などの,違ったさまざまな材料や用具を使ったり,また,比較的その取り扱いが困難で,複雑な,工具や機械を使用したりする必要が生じてくる。したがって,それに応ずるため,できるだけ特別教室などの施設や必要な設備,備品などを整えていくようにするとともに,その活動にあたっては,材料や用具,その他工具・機械などの出し入れ,使用後の保管・手入れなどを確実にするよう指導し,また,危険防止に心がけさせるようにすることがたいせつである。なお,材料や用具などの購入・保管・手入れ,あるいは,製作品などの整理や処理などについては,できるだけ生徒の参加を計画していくことが望ましい。

3 この段階における造形活動は,余暇利用の分野における活動(楽しみのために絵をかくこと,版画や彫塑を作ること,デザインをすること,模型を作ること,作品を鑑賞することなど。)

 日常生活的な分野における活動(学習によって得た力を,たとえば学校園や校庭の整備,教室や学校行事が行なわれる会場などの整備や装飾,自分の持ち物や家庭用品,学校備品などの修理などに役だて,また,それらの活動を通して,さらに造形能力を伸ばしていくこと。)

 職業技術的な分野における活動(おもに生産的に実用品・装飾品・模型・おもちゃなどを製作すること。)

 などに,しだいに分化して指導していくことが必要である。しかしながら,それらのうち,いずれの分野の活動を重視するかは,それぞれ個々の生徒の興味や能力,地域や学校の実態,他の教科や領域の学習や活動との関連をじゅうぶんに考慮して,決定することが望ましい。なお,職業技術的な分野における活動をおもに行わせる場合においては,特に,地域の産業との関係を考慮して,造形活動の趣旨にそった種目や題材・材料を取り上げる必要がある。

4 造形活動を指導していく過程において,しばしば生徒の職業適性を発見しうることがあるから,これらの点についても配慮することが必要である。

 

第7節 保 健 体 育

第1 目  標

1 健康の保持・増進に必要な知識を与え,自分の健康に注意する態度を養う。

2 各種の運動やゲームを通して,身体諸機能の調和的発達を図り,特に行動のびんしょう性,柔軟性,律動性および耐久力などを養う。

3 ゲームや競技を行なう際のきまりや役割を理解させ,目標に向かって協力して,全力を尽くす態度を養う。

4 健全なスポーツや遠足などに対する興味をもたせ,余暇を利用し生活を豊かにしていく態度を育てる。

 

第2 内  容 1 体育 (1) 2列に正しく並んだり,4列に並んだりする。

(2) 2列に並んで足なみをそろえて歩く。

(3) 次のような徒手体操がひととおりできるようにする。

ア ひざを浅く,深く,曲げたりする。足を左右に開閉してとぶ。

イ 腕を前・横・上にあげたり振ったり,屈伸したりする。前後,内外に回旋する。

ウ 首を前後,左右に曲げる。左右に回す。回旋する。

エ 体を前後,左右に曲げる。左右に回す。回旋する。腕立て伏がをする。

オ 息を大きく吸ったり,吐いたりする。

(4) マット運動をひととおりする。

(5) 平均台を自由に渡る。

(6) 鉄棒運動でさかあがり,足かけあがりをする。

(7) 懸垂腕まげをする。

(8) 簡単なとび箱運動をする。

(9) 全力で走る。……(約100m)

(10) 皆でそろってかけ足をする。……(約10分間)

(11) 約2時間歩く。

(12) 走り幅とびをする。

(13) 走り高とびをする。

(14) なわとびをする。

(15) 自転車に乗る。

(16) 水泳をする。

(17) いろいろのポール運動をする。

(18) ピンポン,バトミントンなどをする。

(19) いろいろなリレーをする。

(20) すもうをする。

(21) 簡易化した野球をする。

(22) フォークダンスをする。

2 保健 (1) 進んで身体および身辺の清潔に気をつける。

(2) 暑さ寒さに気をつけ,簡単な処置をとる。

(3) 疲れたときなどには,適当に休養をとる。

(4) 健康診断のたいせつなことを知り,悪いところは進んで治療を受けるようにする。

(5) 発熱や吐きけ,頭痛などの調子の悪いときは,様子を正しく訴える。

(6) 簡単なけがや生理の処置を自分でする。

(7) 病気にならないように食べ物や過労などに気をつける。

(8) 予防接種の意義を知り,進んで予防接種を受ける。

(9) 運動器具の使い方や遊び方を知り,けがのない安全な生活を送る。

 

第3 指導上の留意事項 1 この段階では,身長,体重の急速な発達に心臓の発達が伴わないことがあり,身体の発育が顕著であり,その発育には調和に欠けるところもある。また,第二次性徴も現われてくるので,これらの特性をじゅうぶんに考慮して指導するようにする。

2 上掲第2の内容に掲げる(3)の各事項は,運動の範囲や程度の例を示したものである。

 したがって,その指導にあたっては,この例を参考として,各種の方法をくふうして行なうようにする。

3 この段階では,特に運動・競技やゲームなどを通して,集団活動をますます活発に育成するように努める。

4 肢(し)体の欠陥,病弱・虚弱,てんかん等をあわせもつものが少なくないことに留意し,医師と密接な連絡を保って,その治療や機能の訓練に努めるようにする。

5 保健・安全の指導については,社会,理科,職業・家庭などの教科と密接な関連を図り,学習活動を効果的に行なうように努める。

 

第8節 職業 ・ 家庭

第1 目  標

1 社会の一員となるためには,それぞれの能力に応じた仕事をし,人の役にたつ働きをしなければならないことを知る。

2 職業生活に必要な初歩的な知識や基礎的な技能を習得させ,働くことの喜びを味わい,自信をもつようにする。

3 作業や実習を通して,その仕事における自分の役割を知り,協同と責任を重んずる態度を養う。

4 作業や実習の場所で,健康や安全を守る態度を養い,それに必要な知識や習慣を身につけるようにする。

5 身のまわりのことがらについて,他人の世話にならずに自分で処理することができるようにする。

6 家族のものがそれぞれの役割を果たしていることを知り,互いに協力して家庭生活を楽しくしようとする態度を養う。

7 衣・食・住に関する初歩的な知識や基礎的な技能を身につけ,日常生活の処理に役だてるようにする。

8 時間や物資や金銭などをむだに使わないで,できるだけきまりのある生活をするようにする。

9 余暇をできるだけ有効に過ごし,生活にうるおいをもたせるようにする。

 

第2 内  容 1 個人や共同の作業や実習を通し,次のような内容について指導する。 (1) 働くことに関心を持ち,進んで仕事に参加する。

(2) 物を作ったり,作業を完成したりすることの喜びを味わい,仕事への自信を高める。

(3) 自分が働くことが人の役にたつことを知る。

(4) 仕事の内容と自分の分担する役割がわかる。

(5) 人の仕事にむやみに手だしや口だしをしないようにする。

(6) リーダーの指示や仕事のきまりなどをよく守る。

(7) 仲間とよく協力する。

(8) むやみに他人の失敗や過失をとがめないようにする。

(9) 仕事をかってに始めたり,無断で作業場を離れたりしないようにする。

(10) 根気よく仕事を終わりまでやる。

(11) ふざけたり,むだ話をしないようにする。

(12) 失敗や過失などはかくさずにすぐ報告する。

(13) わからないことはよく聞きただす。

(14) 失敗や過失はくり返さないように気をつける。

(15) ことばや動作,服装などに気をつける。

(16) 作業場に無断ではいったり,使い方のわからない道具や機械,材料などをかってにいじったりしないようにする。

(17) 危険な場所や物などに注意する。

(18) 故障や危険な状態を発見したらすぐ報告する。

(19) 常にからだの調子に注意する。

(20) 休み時間の意味を知り,有効に使う。

2 地域や学校の実情,生徒の実態等に応じて,次の第1項に述べるような作業のうちから,最も適当と考える種目を選び,実習を中心にして,単なる技能の習熟にかたよらないよう留意し,特に下記の第2項に掲げる事項について指導する。 (第1項)

(1) 飼育・栽培 (2) 農林・水産加工 (3) わら加工 (4) 紙加工 (5) 木・竹材加工 (6) 金属加工 (7) 石材加工 (8) 粘土・セメント加工 (9) 印刷・製本 (10) 家事手伝い (11) 調理 (12) 手芸・裁縫 (13) その他

(第2項)

(1) 作業の準備,あと始末,計画など。

(2) 道具・機械・材料等の正しい使い方(手入れ,管理,修理などを含む。)

(3) 道具・機械・材料等の名称や種類など。

(4) 作業に関連する通信・伝達・運搬・売買・記帳・計算・諸届けなどの実務。

(5) 作業に関連する諸施設の利用。

(6) 勤労,賃金,生計などについての基礎的知識。

(7) 作業に関連する用語。

(8) 実習する場合の心得など。

(9) その他

3 「家庭」の分野においては,次の事項を指導する。 (1) 自分で服装を整え,衣服のしまつをする。

(2) いつも清潔な下着をきるようにする。

(3) 暑さ,寒さ,外出などに応じて衣服をかえる。

(4) 作法を守って楽しく食事をする。

(5) 生理のしまつや排せつについてのよい習慣や,便所を使用する場合の作法を身につける。

(6) 就寝,起床時のよい習慣と作法を身につける。

(7) からだを清潔にする習慣を身につける。

(8) 家庭内の整理,整とんに協力する。

(9) 家庭内のきまりを進んで守る。

(10) 家庭内にあるいろいろな危険物を注意して取り扱い,危険な場合には適当な処置をとるようにする。

(11) 外出する時は行く先を告げ,帰宅する時間を守る。

(12) 日常のあいさつがひととおりできる。

(13) 家庭のだんらんに進んで参加する。

(14) 進んでそうじやお使いをする。

(15) 洗たくや簡単な衣類のつくろい,整理などをする。

(16) 食べ物の名称や種類,栄養などのことを知って,簡単な調理をする。

(17) 簡単な器具などの製作や修理をする。

(18) 物や金銭をだいじに使い,目的に応じて貯金する。

(19) 簡単なこづかい帳がつけられる。

(20) 1日の生活のだいたいの予定がたてられる。

(21) 余暇の意味を知り,休日などなるべく楽しく過すようにする。

 

第3 指導上の留意事項 1 職業・家庭は,精神薄弱の生徒が,将来,家庭生活や職業生活,その他の社会生活を営むために必要な,知識・技能・態度を養う上にきわめて重要な役割を果たすものであるから,他の教科や領域の学習や活動との密接な関連を考慮しながら,特に重視してじゅうぶんに指導していくようにする。

2 作業や実習の選択にあたっては,卒業後の就職のこと,地域や学校の実態,生徒ひとりひとりの特性や能力などをじゅうぶんに考慮し,また,それに即応したものを選ぶようにする。なお,作業量や作業形態,実習期間などについても,適切な配慮をめぐらせ,しかも,それらの作業や実習がきわめて意義深い実践的な活動として,あらゆる教育活動の中核となって,その真価をじゅうぶんに発揮するように努める。

3 職業・家庭においては,男子,女子おのおのの特性を考慮し,しかも,その特性に応じた計画のもとで,適切な指導を行なうようにすることがたいせつである。

4 作業や実習の場においては,それぞれ青年期の特性をじゅうぶん考慮し,反社会的または非社会的な行動におちいることがないように注意するとともに,危害の発生予防にも心がけ,すでに習得したよい習慣や態度,技能が確保され,また,その習熟に努めるように指導することがたいせつである。

 

第9節 選 択 教 科

 

 養護学校中学部の選択教科は,規則等73条の8第2項の規定により,外国語と職業・家庭を基準とすることになっている。また,中学部において,これらの選択教科を設けることの本来の目的は,生徒ひとりひとりの進路・特性に応じ,さらにその能力を豊かに伸ばしていくところにある。

 しかしながら,外国語は,精神薄弱の生徒の場合,これを選択させてもその目標を達成することがきわめて困難であるから,特にこの学習を必要とする生徒を除き,一般に職業・家庭を選択するよう指導することが望ましい。したがって,以上のことと関連して,選択教科としての職業・家庭は,必須教科としての職業・家庭と,必ずしも区別して取り扱う必要はなく,むしろこれらをあわせて授業を行なうよう,あらかじめ計画することがたいせつである。

 なお,精神薄弱の生徒に必要な外国語の内容は,きわめてその範囲の限られたものであり,しかもそれは,生徒の社会的自立の達成に役だつ最少限の具体的経験によって占められるべきものであろう。したがって,その内容は,一つの教科としてよりも,国語,社会,職業・家庭等の内容とあわせて授業を行なうほうが効果的な場合が多い。

 そのため,養護学校中学部において外国語を取り扱う場合には,以上の点をじゅうぶん考慮することが必要である。