第3章 小学部の各教科

第1節 国  語

第1 低 学 年

1 目  標 (1) ことばを使う生活を広げて,訴えたいこと,見たり聞いたりしたことなどを,進んでことばに表わすようにする。

(2) 身近な生活で使われていることばがわかり,また,人の話をよく聞くようにする。

(3) 身近な人たちとごく簡単なあいさつや話のやりとりができるようにする。

(4) 絵本,紙しばい,幻燈,放送などを見たり,聞いたりすることに興味をもつようにする。

(5) 日常生活において,しばしば触れる標識などに関心をもつようにする。

2 内  容 (1) 話などを楽しむこと。 ア 動物,乗り物その他,身近な生活のなかの事物を表わした絵本,写真,模型などを楽しんで見る。

イ 友だちといっしょに短い紙しばい,劇,幻燈,放送などをしまいまで見たり聞いたりする。

ウ 紙しばい,劇,幻燈,映画などを見て,おもしろかったことをことばや動作で表わす。

エ 絵本などを見て,その内容について話し合う。

オ 話を聞いたり,絵本などを見て,ごっこ遊びや劇遊びをする。

(2) 聞くこと,話すこと。 ア 担任や友だちなどの話を聞く。

イ 話しかけた人のほうを向いて聞く。

ウ 担任などのさしずを聞いて,できるだけそのとおり行動する。

エ 絵本,紙しばい,幻燈などを見ながら話を聞く。

オ 身近な人に,ごく簡単な日常のあいさつをする。

力 自分の名まえ,学校や担任の名などを言う。

キ 名まえを呼ばれたときには,はっきりと返事をする。

ク 目の前にあるものについて,担任や友だちなどと話す。

ケ 見たこと,聞いたこと,遊んだことを担任や友だちなどと話す。

コ 担任などに簡単な依頼や訴えなどをする。

(3) 読むこと,書くこと。 ア 身近な生活において,しばしば触れる看板,広告,その他の標識などに注意を向ける。

イ 字と絵の違いがわかる。

ウ ひらがなや漢字で書かれた自分の名まえがわかる。

エ 絵合わせや簡単なかるた遊びをする。

オ 自分の名まえをわかる程度に書く。

カ 鉛筆やクレオンなどで簡単な絵日記を書く。

3 指導上の留意事項 (1) この段階においては,全生活にわたっていろいろな経験をさせ,それらの経験を通して語句を豊かにし,児童の話し聞く生活の素地を築くようにする。そのためには,自分のこと,家族,友人,教師のこと,その他見たこと,聞いたことのうち,特に興味のあることを中心にして,聞くこと,話すことのごく基礎的な技能や態度を身につけさせるようにする。

(2) この段階の児童は,いまだ生活が自己中心的で未分化な状態にあるので,その話の内容や筋道なども判然としないものが多い。また,幼児語や方言などを用いるものも少なくないが,しかし,これらの点については,無理な指導をしないようにする必要がある。なお,口をきかない児童や言語障害をもつ児童が多いことにも注意して,できるかぎりその原因の発見に努め,自由なふんい気の中で指導するようにする。

(3) ひらがなの文字や標識などについては,遊びなどの身近な生活の中で,しばしば触れるものにかぎり,それらへの関心が高まる程度に取り扱い,自分の名まえがどうにか読み書きできる程度にし,それ以上の指導については,あまり無理をしないように注意する。

なお,文字がうまく書けるようにするために,図画工作の指導と密接な関連をもたせ,鉛筆やクレオンなどで,いろいろな線や形などをなぞったり,描いたりさせることも望ましいことであろう。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) ことばを使う生活をいっそう広げ,聞いたり,話したりすることにますます慣れるようにする。

(2) 身近な人とのあいさつや話のやりとりや指示の理解などができるようにする。

(3) 絵本,紙しばい,幻燈,映画,放送などを見たり,聞いたりして,その内容がだいたいわかるようにする。

(4) 日常生活において,しばしば触れる標識などに対する関心を深め,しだいにその意味がわかるようにする。

(5) 読むことに興味をもたせ,身近な生活で使われる簡単なことばの読み書きに必要な文字や語句などがわかるようにする。

2 内  容 (1) 聞くこと,話すこと。 ア 担任や友だちなどの話を注意して聞く。

イ 担任などのさしずや説明などを正しく聞き取る。

ウ 簡単な放送や録音などを聞くことに慣れる。

エ 簡単な童話や物語などを皆といっしょに楽しんで聞く。

オ 身近な人に簡単な日常のあいさつをする。

カ 担任などから指示を受けたり,仕事を言いつけられた時には,よく聞いてそのとおり行動する。

キ 自分の親などの名まえや住所,学級や学校や担任の名などを言う。

ク 担任などに簡単な依頼や希望などを言う。

ケ 簡単なことなら,家の人や担任や友だちなどに尋ねたり,答えたりする。

コ 身近な経験について,家の人や担任や友だちなどに話す。

サ 皆の前で簡単な話をする。

シ 聞き手のほうを向いて,なるべく気おくれしないで話す。

ス 担任からの簡単な伝言を家の人などに伝える。

セ 簡単な紙しばい,幻燈,劇,映画,放送などを見たり聞いたりして,おもしろかったことなどを話す。

ソ 友だちといっしょに,簡単なせりふのある劇をする。

タ なるべく正しい話しかたや発音で話す。

チ 身近な生活における簡単なきまりや約束ごとなどについての意味がわかる。

ツ 簡単な買物に必要なことばがわかる。

(2) 読むこと,書くこと。 ア 絵本や簡単な紙しばい,幻澄などを見たり,聞いたりして,その内容のあらましがわかる。

イ ひらがなや簡単な漢字を読む。

ウ 漢字で書かれた家族,友だち,担任などの名まえや学校名がわかる。

エ 日常生活において,しばしば触れる看板,広告,その他の標識などの意味がわかる。

オ 日常生活において,しばしば使われるかたかな書きのことばを読む。

カ かるた遊びや文字遊びなどをする。

キ ひらがなや漢字で自分の名まえを書く。

ク 読めるようになった文字を使って表わしたことばを書写する。

ケ 絵日記を書く。

3 指導上の留意事項 (1) この段階においても,話し聞く生活を深めることに重点をおき,日常生活で経験したことのうち,特に興味のあることを中心に,聞くこと,話すことの基礎的な技能や態度を養うようにする。

(2) 児童が使用する幼児語,方言,話す場合のなまり,くせなどについては,正しいことばや話し方と対比させて,その違いに気づかせる程度にとどめる。

なお,言語障害をもつ児童については,適切な指導をするように心がける。

(3) ひらがなや簡単な漢字などの文字指導は,児童が日常生活においてしばしば触れ,また,使用することばを表わしたものを読むことから始め,書くことについては,興味をもたせる程度にとどめる。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 日常生活の中で聞くこと話すことの能力を高め,必要な相手や場に応じた話し方,聞き方にしだいに慣れるようにする。

(2) 学校や近隣などで人と話のやりとりができるようにする。

(3) 見たり,聞いたりしたことを説明したり,わからないことを進んで人に尋ねたりするようにする。

(4) 簡単な内容の童話,物語,映画,劇,放送などを見たり,聞いたりして,そのだいたいがわかるようにする。

(5) 身近な生活で用いられる簡単な語句や文を読んだり,書いたりする能力を伸ばす。

2 内  容 (1) 聞くこと,話すこと。 ア 人の話を注意して聞く。

イ 人の話を終わりまで聞く。

ウ 簡単な話なら,聞いてそのあらましがわかる。

エ 簡単な放送や録音などを聞く。

オ 童話や物語などを皆といっしょに楽しんで聞く。

カ 聞きとれない時やわからないときは聞き返す。

キ 担任などのさしずや説明を正しく聞き取って行動する。

ク 簡単な日常のあいさつをする。

ケ 自分の住所,氏名,年令などを正しく言う。

コ わからないことを担任や友だちなどに進ん尋ねる。

サ 人から物事を聞かれたときには,はっきり答える。

ン 人に物事を頼むとき,ことわるとき,あやまるときなどに適切なことばを使う。

ス 来客があった場合に取り次ぎや簡単な応待をする。

セ 簡単な伝言なら正しく伝える。

ソ 簡単な買い物に必要なことばを使う。

タ 家の人や担任,友だちなどに見たり,聞いたりしたことを,できるだけ順序よく話す。

チ 皆の前で自然な態度話す。

ツ 映画,劇,放送などを見たり,聞いたりして,その内容について話し合う。

テ 見たり,聞いたりした映画,劇,放送などの内容について説明する。

ト 相手のいうことをよく聞いて話し合いをする。

ナ 学級会などで進んで話し合いをする。

ニ 必要な時に方言や乱暴なことばなどを使わないで話す。

ヌ なるべく正しい話し方や発音で,適当な速さや大きさの声で話す。

ネ 皆といっしょに楽しく簡単な劇などをする。

ノ 簡単なことなら電話をかけたり,聞いたりする。

(2) 読むこと,書くこと。 ア やさしい読み物を読むことに興味をもつ。

イ 日常生活において,しばしば触れる看板,広告その他の標識,立て札,掲示などの意味がわかる。

ウ ひらがなや漢字で書かれた語句や短い文を読む。

エ 時間割りや日課表などを読む。

オ 自分の名まえや住所をはっきり書く。

カ 日付けや曜日などを正しく書く。

キ ひらがなや簡単な漢字を書く。

ク 日常生活において,しばしば使われるかたかなで書き表わすことばを書く。

ケ 簡単で短い文などを書写する。

コ 簡単な記録などを書く。

サ はがき程度の簡単な通信文や日記などを書く。

3 指導上の留意事項 (1) この段階においては,児童の話し聞く生活に土台をおきながらも,しだいに読み書く生活に関心をもち,進んで読むこと書くことに興味をもつように導く。

(2) 読むこと,書くことの指導については,できるかぎり児童が日常生活でしばしば触れ,また,きわめて興味のあるものごとを表わした簡単で短い語句や文や文章を中心に進める。

(3) 自他の生命や資財の保全等に関する標識,立て札,掲示などは,記号としてでも理解させ身につくように指導する。

 

第2節 社  会

第1 低 学 年

1 目  標 (1) 自分のものと,他人のものを区別して扱うようにする。

(2) 担任の指導により,友だちといっしょに行動することができるようにする。

(3) 学校生活において,自分に直接関係のある人や場所,きまりなどを知る。

(4) 学校や通学の途上における危険な場所や物などを知り,これらに気をつけるようにする。

2 内  容 (1) 自分の席やげた箱,整理戸だななどがわかる。

(2) 自分の鉛筆やノート,かばんなどがわかる。

(3) 自分の帽子や洋服,くつなどがわかる。

(4) 他人の物をだまって持っていかない。

(5) 落とし物を拾ったら届ける。

(6) 担任の指導により,友だちといっしょに鬼遊びや砂遊びをしたり,すべり台をすべったりする遊びなどをする。

(7) 担任の指示に従って,整列,行進,着席などがだいたいできる。

(8) 皆といっしょに簡単なあとかたづけをする。

(9) 担任の先生や自分の組の友だちがわかる。

(10) 自分の学校の校長先生がわかる。

(11) 自分の学級の教室や便所などがわかる。

(12) 上ばきと下ばきを区別したり,ごみをごみ箱に捨てるなどの学級における簡単なきまりを知る。

(13) 帽子やかさ,かっぱ,作業衣などをきめられた場所におく。

(14) 始業や終業,給食などの合い図がだいたいわかる。

(15) プールや階段,マンホール,配電盤,ストーブなどの学校内の危険な場所に気をつける。

(16) 踏切や横断歩道,プラットホーム,川,用水池などの通学途上にある危険な場所に気をつける。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,知的な理解はきわめて困難であるから,具体的な生活実践を通して,社会生活における基本的な行動様式を身につけさせるようにする。

また,特に道徳教育との関連において取り扱うことが必要である。

(2) この段階では,自分と他人の区別をだんだんにわからせていくように心がけ,しかも,それによって集団生活への参加の基礎を養うことが必要である。

上掲2の内容に掲げる(1)から(5)までの各事項は,このような観点からも取り扱うようにする。また,(7)から(14)までの各事項の取り扱いは,おもに「きまり」がわかり,これに従うという習慣的な態度を身につけるように努めなければならない。

(3) 集団生活への参加能力は,まだ低い段階にあるので,遊びなどにおいても教師がいちいち指導しなければならないであろうが,しかし,しだいに担任の手をはなれて仲間といっしょに遊べるようにしむけなければならない。

(4) 社会の指導においては,さきにも述べたように道徳の指導との密接な関連を図ることはもちろん,社会以外の各教科の学習,特別教育活動および学校行事等の活動ともじゅうぶんに連係を保って指導するようにすることがたいせつである。ことに特別教育活動および学校行事等における諸活動は,上掲2の内容として掲げる各事項を指導する際のよい機会や場となることに留意する必要がある。

なお,以上のことがらは,この段階だけでなく他の段階にもそのまま適用するものである。

第2 中 学 年 1 目  標 (1) 他人の物や学級の物などをたいせつに扱うようにする。

(2) 数人の友だちと仲良く遊んだり,仕事をしたりすることができるようにする。

(3) 学級や学校のきまりがわかって,それらを守るようにする。

(4) 通学の途上などで交通の規則を守り,また,他人の迷惑になるようなことをしないようにする。

(5) 自分たちの身近な生活に関係のある公共施設や商店などについて関心を深め,しだいにこれらを利用することができるようにする。

(6) 買い物などを通じて金銭についての理解をもつようにする。

2 内  容 (1) 友だちから借りたクレオンや絵本,道具などをていねいに扱って必ず返す。

(2) 遊び道具や学習用具,そうじ道具,学級文庫の本など,学級の備品をたいせつに取り扱う。

(3) 簡単な遊びなら担任がいなくても自分たちで遊べる。

(4) 簡単な遊びのルールがわかる。

(5) 他人のじゃまをしないで遊んだり仕事をしたりする。

(6) 悪い遊びや危険な遊びをしないようにする。

(7) いっしょになって皆と物を作ったり,ごっこ学習をしたりする。

(8) 給食の簡単な手伝いやへやのそうじなどを皆で分担し合ってする。

(9) いろいろな係りの役割がだいたいわかる。

(10) 遊び道具などを使うときは順番を守るようにする。

(11) 学校の先生や校務員など関係のある人がわかる。

(12) むやみに他の教室や職員室などにはいらないようにする。

(13) 無断で学校の外へ出ないようにする。

(14) きめられた係りの仕事をきちんとする。

(15) 学校の日課にそった行動がだいたいできるようにする。

(16) 簡単な約束なら守るようにする。

(17) 道を歩く,右側を歩く,信号に従うなどの交通規則を守る。

(18) 道で遊んだり,人をつきのけたり,石を投げたり,他人の家や田畑に無断ではいるなど,他人の迷惑になるようなことはしないようにする。

(19) 乗り物の乗り降りは順序を守り,車内で騒いだり,窓から頭や手を出したりしないようにする。

(20) 見学その他の活動を通して,警察署(交番),郵便局,消防署,病院,駅,デパートなどで働いている人々を知る。

(21) 公園や遊園地などでのきまりを守る。

(22) 近所の商店を見学することなどを通して,そこで売られている品物を知る。

(23) きまった額の簡単な品物なら商店に行って買うことができる。

(24) むだ使いをせず,ほしいものがあってもときにはがまんをする。

(25) お金をたいせつに取り扱う。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,数人の集団としての仲間意識が生まれる。そこで学習活動においても,共同学習や係りの分担などを通して,なるべく集団の形成を助長するように心がけることが必要である。

(2) この段階においては,ごっこ的な学習方法を利用するほか,共同の仕事や作業,見学,買い物学習その他現実的で実際的な学習方法を重んじることがたいせつである。

(3) 校外に出て,見学などの学習を行なう場合には,その前後の指導にもよく留意して,全員が参加して共通の経験を深めるとともに,個人差に応じた学習もできるようくふうする必要がある。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 相手のことを考えて,できるだけ話し合ったり,ゆずり合ったりすることができるようにする。

(2) 学級の一員としての自分の役割を知り,できるだけその任務を果たすようにする。

(3) 共同の作業や遊びなどを通して,進んで集団生活に参加できるようにする。

(4) 日常生活に関係の深い交通規則や公衆道徳を進んで守るようにする。

(5) 日常生活に関係の深い職業や官公署,工場,病院などについて知り、それらのはたらきがわかるようにする。

(6) ごく初歩的な経済生活についての関心や理解をもつようにする。

(7) 社会のできごとなどについて関心をもつようにする。

2 内  容 (1) 友だちの話をよく聞いて,相手の考えを知る。

(2) 自分の言い分を無理に友だちにおしつけないようにする。

(3) 年下のこどもをいたわって仲良く遊ぶ。

(4) 友だちの過失やあやまちをむやみにとがめないようにする。

(5) あやまちをしたらわびるようにする。

(6) 学級での当番や係りの仕事などを進んでする。

(7) 分担した作業などを最後までやりとげる。

(8) 学校の日課にそって,きまりよく行動する。

(9) 机やいす,戸だななどを整とんする。

(10) 皆で使う遊び道具や学習用具,そうじ道具や学級文庫の本などの学級の備品を使ったら,正しくもとの位置にもどす。

(11) ルールを守って皆といっしょに遊ぶ。

(12) 仲間にはいれない友だちもいっしょに遊んでやる。

(13) 学芸会や運動会などの学校行事に進んで参加する。

(14) 誕生会や学芸会,運動会などで使ういろいろな物を協同で作る。

(15) 給食の手伝いや教室内外のそうじなど進んで皆といっしょにする。

(16) 日常生活に関係の深いいろいろな交通標識を知る。

(17) いろいろな交通規則を正しく守る。

(18) 人の迷惑になるような不衛生なことをしないようにする。

(19) 車内や人の集まる場所などで騒いだり,不作法なふるまいをしないようにする。

(20) 公園や遊園地などの公共の施設をたいせつに取り扱う。

(20) 警察や消防署,郵便局,病院,市役所(町・村役場)などのある場所を知り,それらの施設のはたらきなどがだいたいわかる。

(22) 知った場所なら,ひとりで切符を買い,乗り物に乗って行くことができる。

(23) 家族の人の職業などを通して,世のなかにはいろいろな職業があることを知る。

(24) いろいろな商店があることを知り,それらの店で売っている品物がだいたいわかる。

(25) 近くの工場などを見学し,そこで作られている物や働いている人々の活動の様子を知る。

(26) 学用品などの値段がだいたいわかる。

(27) 簡単な買い物をする。

(28) ほしい物や必要な物を買うために貯金をすることを知る。

(29) 遠足や旅行などの機会を通して,その土地の模様や人々の生活の様子に関心をもつ。

(30) 新聞やラジオ,テレビなどを通して社会の大きなできごとなどに関心をもつ。

(31) 地域の祭りやその他の行事などに関心をもつ。

3 指導上の留意事項 (1) 上掲2の内容に掲げる(1)から(5)までの対人関係をおもに表わしている各事項は,現実的な生活の実際場面において,児童ひとりひとりの個人差に留意しながら取り扱っていくことがたいせつであり,ただことばだけで,言ってきかせるような,いわゆる説話式の指導は望ましくない。したがって,これらの指導については,学校におけるあらゆる教育活動の全面において,適切な機会に最っとも望ましい方法をくふうし,しかも,自然にこうした心情や態度がはぐくまれていくようにする必要がある。

(2) この段階においては,グループの組織や係りの役割などを通して,集団生活(おもに学級内での集団生活)に進んで参加していく能力をできるだけ伸ばしていくようにすることが必要である。

(3) この段階における児童は,だんだんその生活空間が拡大してくるから,それに応じた学習の場を設定したり,学習のための素材を選択したりする配慮が望ましい。また,児童たちの興味や関心が深いと思われる偶発的事項も適当に取り入れて,弾力的で融通性のある指導を行なうことが必要である。

 

第3節 算   数

第1 低 学 年

1 目  標 (1) 数量に関係あるいろいろな具体的な経験を豊かにさせ,数量生活の素地を養う。

(2) 具体的なことがらの取り扱いを通して,数量生活の基礎となることばを身につけさせる。

2 内  容 (1) 身近にあるいろいろなものを並べたり,比べたり,取りかえっこをしたりする。

(2) 具体的なもので多い,少い,大きい,小さいなどがわかる。

(3) 具体的なことがらの取り扱いを通して,上や下,前や後などがわかる。

(4) 具体的な経験を通して,丸,三角,四角などの図形の区別がわかり,名称が言える。

(5) 具体的なことがらの取り扱いを通して,○,×などの記号の意味がわかる。

(6) 朝,昼,晩がわかる。

(7) 自分の年がわかる。

(8) 買い物には,お金が必要なことがわかる。

(9) おもちゃや道具を種類別に分けてしまったり,もとの位置にもどしたりすることができる。

3 指導上の留意事項 (1) この段階においては,遊びなどの具体的な生活を通して,楽し豊かな経験を与えることに重点をおき,しいて数への結びつけを考えて指導する必要はない。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) 身近な数量に関係のあることがらについて,数え,読み,書き,測り,比べるなどの初歩的な能力を伸ばす。

(2) 具体的な遊びや学習を通して,生活の中にいろいろな数量的なことがらのあることを知らせ,その処理についての基礎的な技能を養う。

2 内  容 (1) 身近にあるいろいろなものを数えたり,それを数字に書いたりする。

(2) 具体的な経険を通して長い,短い,広い,狭い,軽い,重いなどがわかる。

(3) 具体的なことがらを通して右や左がわかる。

(4) カレンダーなどに親しみ,日付けや曜日がわかる。

(5) 簡単な場合に,時劾がだいたいわかる。

(6) 具体的なことがらのなかで,加える必要のあることがわかる。

(7) 具体的なことがらのなかで,余ったり,足りなかったりすることがわかる。

(8) きまった値段の簡単な買い物ができる。

(9) 丸,三角,四角などがだいたい書ける。

(10) 身近な生活のなかで使われている○,×などの表がわかる。

(11) 道具などをもとの数に合わせたり,もとの位置にかたづけたりすることができる。

(12) 学習の道具や給食の食器などをひとりひとりにまちがいなく配ることができる。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,児童に親しみやすいいろいろな経験を,豊かに学習活動のなかに取り入れるとともに,具体的な事物について,直接観察したり,操作したりする活動を通して,数量的な経験をさせていくようにする。したがって,数えたり,比べたり,加えたりするなどの活動を行なわせる場合には,児童がそれらの活動について,必要を感じるような場面の設定や材料の選択に心がけるようにすることがたいせつである。

(2) この段階の児童の数概念の形成には,そうとうに幅の広い個人差がみられるので,上掲2の内容のなかには,特にこの段階で取り扱うべき,数や計算の範囲や程度を具体的には示していない。したがって,これらを取り扱う場合においては,児童ひとりひとりの能力や発達の程度をよく見きわめ,かつ,それに応じたものを取り上げて指導していくことが望ましい。なお,数量概念のような抽象概念は,単に数や計算などを機械的に行なわせることによって身についていくものではないので,その指導にあたっては,この点にも留意して,あくまで具体的な生活場面における,具体的な事物の取り扱いを通して,気長にあせらず,指導していくことがたいせつである。

(3) 上掲2の内容に掲げる各事項は,単に算数の時間に指導するだけでなく,具体的で総合的な学習のあらゆる場面において,他教科の内容に掲げる各事項の指導と密接に関連させて取り扱っていくことが望ましい。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 数の範囲を広げ,数を数えたり,読んだり,書いたりする能力を高め,加法や減法についての理解と技能を伸ばす。

(2) 具体的な事物について,まとめたり,分けたりすることができるようにする。

(3) 具体的なことがらの取り扱いを通して,長さや重さなどをはかる能力を伸ばす。

(4) 具体的な生活を通して,日時やお金のことをわからせる。

2 内  容 (1) 具体的なことがらの扱いのなかで,やや広い範囲の数を数えたり,読んだり,書いたりする。

(2) 簡単な加法や減法を用いる場合について知り,初歩的な計算ができる。

(3) そろばんのしくみがわかり,数をおいたり,読んだりする。

(4) 具体的なことがらの扱いのなかで,同じ種類のものを集めたり,まとめて数えたり,同じように分けたりする。

(5) 身近にある具体的なものを比べることを通して,長さや重さを表わす単位やそれをはかる道具のあることがわかる。

(6) 具体的な生活と結びつけて,だいたいの時刻や午前・午後の区別がわかる。

(7) 今日は×月×日であるかがわかる。

(8) 定価表が読めて,簡単なおつりのある買い物などができる。

(9) 簡単な生活の処理を,○,×などの表で表わす。

(10) 丸,三角,四角,長四角などがわかり,それらがかける。

3 指導上の留意事項 (1) 中学年のところで述べた「指導上の留意事項」は,原則的にこの段階でも適用する。

(2) この段階の数量指導においても,そのねらいは,単に抽象的な数の処理にあるのではなく,身近な生活における具体的な事物などの数量的処理にあることに留意する必要がある。

 

第4節 理   科

第1 低 学 年

1 目  標 (1) ごく身近な自然の事物や現象に関心をもつようにする。

(2) 学校や家庭で育てられている草花や動物に親しみ,その世話の手伝いができるようにする。

(3) おもちゃや身近にある簡単な道具などで遊び,それらの扱いに慣れるようにする。

2 内  容 (1) 花だんや草花などの観察と世話の手伝いをする。 (2) 野山の自然に接し,草花や虫などに関心をもつ。 (3) 飼っている動物をかわいがり,その世話の手伝いをする。 (4) 天気や土地の様子に関心をもつ。 (5) おもちゃや身近にあるごく簡単な道具などで遊び,その扱い方になれる。 3 指導上の留意事項 (1) この段階では,天候や天気のよい時などに野山や屋外で遊ばせて,できるだけ自然の事物や現象に触れさせるようにし,そのおりおりの野山の姿や土地の様子などを強く印象づけるようにする。

(2) 学級園や学校園などに,そのおりおりの草花を植えたり,教室の内外に小動物を飼ったりして,できるだけ環境を整え,児童が自らこれらに親しみ,また,関心をもつようにする。

(3) この段階では,主として全体的,直覚的な観察や遊びを通して,自然の事物や現象を直接学ばせるようにし,児童があまり興味や関心を示さないことがらについて,教師が初めから教えこむなどの無理な指導は,絶対に避けるようにする。

(4) 上掲2の内容に掲げる各事項は,特に算数,図画工作,体育などの指導内容および学校行事等と密接な関連を図って取り扱っていく必要がある。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) 遊びや作業などを通して自然の事物や現象に興味や関心をもつようにする。

(2) 育てやすい草花や身近で興味のある動物の世話をし,それらをかわいがって育てるようにする。

(3) 自分の歯について関心をもち,歯をたいせつにするようにする。

(4) 身近にある道具やおもちゃなどでくふうして遊び,それらの扱いにいっそう慣れるようにする。

2 内  容 (1) 花だんに草花などを植え,その世話をし,その育ち方に関心をもつ。 (2) 野山の自然に接し,草花や虫などを観察する。 (3) 飼っている動物をかわいがり,その世話をする。 (4) 天気や土地の様子に関心をもつ。 (5) 自分の歯について関心をもつ。 (6) おもちゃや身近にある簡単な道具で遊び,その扱いに慣れる。 3 指導上の留意事項 (1) この段階でも,低学年のところで述べた「指導上の留意事項」に基づいて,低学年からの学習をいっそう徹底させるようにする。

(2) 飼育・栽培など長期間を要するものについては,世話をする係りや当番などの役割や分担をきめて,これに当たらせることが望ましい。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 身近な自然の事物や現象に触れ,それらに対する興味を広げ,自然に親しむようにする。

(2) 生物の飼育・栽培などにより,生物の生活の様子に関心をもち,それらをかわいがり,よく育つように努めさせる。

(3) 外部からの観察などを通して,人のからだのつくりの大要に気づくようにする。

(4) 遊びや作業などの活動を通して,簡単な道具のはたらきを知り,これらについて正しい見方や扱い方ができるようにする。

2 内  容 (1) 草花などの世話をし,その育ち方に関心をもつ。 ア 花だんに球根を植えたり,水栽培などをして,花が咲くまでの様子を観察し,その育ち方などに興味や関心を深める。

イ 春と秋に,学校園や菜園などにその時期の種子をまき,それがうまく育つように続けて世話をするとともに,その著しい変化に気づく。

(2) 野山の自然の有様を観察し,生物の様子などを調べる。 ア 四季おりおりに野山に出て,野山の草木,虫,鳥などの種類や生活の様子を調べたり,空の色,吹く風の強さなどの違いに気づいたりして,それぞれの季節の自然に親しむ。

イ 田畑の虫を観察したり,採集したりして,住んでいる場所や活動の様子を知り,また,飼ったりして,それらの虫の生活について興味を深める。

ウ 池や小川(海)で魚・虫・貝などのいろいろな動物を観察し,それらが住んでいる場所や活動の様子について興味を深める。

(3) 飼いやすい動物を飼って,うまく育つように世話をし,その育ち方やえさの種類などについて知る。

(4) 天候や気候や土地の様子などについて関心を深める。

ア 1日のうちには,昼と夜,朝と夕方などの変化があることを知る。

イ 季節によって暑さや寒さに違いのあることを知る。

ウ 具体的な状況を通して,天気の変化に関心をもつ。

エ 地上に降った雨水を観察し,水は低いほうに流れ,土を掘ったり,物をおし流したりすることがわかる。

オ 太陽は毎日東から出て西にはいることがわかり,これらをもとにして東西南北の方位を知る。

カ 影踏みなどの遊びを通して,朝・昼・夕で影のできる方向や長さに違いのあることを知る。

(5) 人のからだのおよそのつくりなどを調べる。 ア からだを外部から観察して,筋肉,骨組みなどのおよそのつくりを知る。

イ 胃,腸などのおもな内臓器官のおよその位置を知って,姿勢を正しくするようにする。

(6) 食べ物には,いろいろな種類があることを知る。

(7) 簡単な道具のしくみやはたらきがわかり,その使用に慣れる。

ア ゴムやばねを使ったおもちゃをくふうして作る。

イ 紙でっぽうや水でっぽうを作り,玉や水がよく飛ぶようにくふうする。

ウ 糸電話を作って遊び,音が糸を伝わって聞こえることを知る。

エ 虫めがねでものを見たり,虫めがねに光をあてて黒い紙を焦がしたりして,虫めがねのはたらきを知る。

オ 物には水によく浮くものと沈むものがあることを知る。

カ こんろの火のじょうずな起こし方について知る。

キ せっけんを使って,いろいろな布を洗い,よごれの落ちぐあいなどを調べる。

ク 日常生活に必要な簡単な器具や道具のはたらきを知り,その使用に慣れる。

3 指導上の留意事項 (1) この段階でも,低・中学年のところで述べた「指導上の留意事項」に対しては,注意する必要がある。

(2) 「野山の自然の有様を観察し,生物の様子などを調べる。」の扱いは,地域の状況により,観察に適当な時期を選ぶようにする。「田畑の虫」では,そのころの作物についても関心をもたせるようにするとともに,作物を荒らさないように注意する。「池や小川(海)の生物」については,海に近い所では,潮干狩りなどの機会を利用することが望ましく,また,このような場合には,危険の予防に心がけるように指導する。

(3) 「虫めがね」を使用させる場合には,特に危険の防止に心がけるよう指導する。

 

第5節 音   楽

第1 低 学 年

1 目  標 (1) 音楽に親しませ,楽しく,明るい学校生活がおくれるようにする。

(2) よい音楽に触れさせ,音楽的感覚の芽ばえを伸ばす。

(3) 音楽を聞きながら簡単な動作ができ,また,音による合い図などを聞き,それに応じてあらかじめきめられた簡単な動作ができるようにする。

(4) リズミカルな音楽を聞きながらリズム楽器が打てるようにする。

(5) 歌をうたおうとする意欲を高める。

2 内  容 (1) 聞くこと。(音楽に親しむ。) ア 自由にからだを動かしながら聞く。

イ よい音楽が流れているなかで遊んだり,休息したりする。

ウ 紙しばいや人形しばいなどを見ながら聞く。

エ 先生の歌や演奏を聞く。

(2) からだを動かす。(からだを動かして楽しむ。) ア リズミカルな音楽を聞いて手・足を自由に動かす。

イ 音楽を聞いてとぶ,歩く,かけあしする,手を上げるなどの簡単な運動をする。

ウ 拍手をしながら,また,打楽器をたたきながら歩く。

エ 動物,乗り物,風や雨などの動きを表わした音楽を聞いて,それらをからだの動きで表現する。

(3) 楽器で演奏すること。(リズム楽器や笛になじむ。) ア いろいろなリズム楽器を自由に打ったり,簡単な一音笛を自由に吹いたりする。

イ リズム楽器や笛の名まえを知る。

ウ リズミカルな音楽を聞いたり,歌を歌いながらリズム楽器を打つ。

(4) 歌うこと。(歌おうとする。) ア 知っている歌を元気に歌う。

イ 先生が歌う簡単な歌曲をまねて歌う。

ウ 皆といっしょに歌ったり,ひとりで歌ったりする。

エ 胸を張って口を大きく開いて歌う。

(5) 音を聞きわけること。 ア 音の強弱や速い,おそいがわかる。

イ 集まれ,立て,すわれなどの音による合い図に合わせて動作をする。

ウ 簡単な楽器などで音あて遊びをする。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,ひとりひとりの児童の行動や心の動きをよく観察して,そのときの児童の心情に最も適当な音楽を選ぶようにする。したがって,児童が精神薄弱であり,また,年少であるからといって,幼児向きの童謡的なものとか,描写的なものばかりに傾くことのないようにし,愉快なもの,静かな眠りを誘うようなもの,荘厳なものなど,いろいろなレコードを用意しておく。鑑賞のための時間は,特に設定する必要はない。

(2) この段階の児童は,未だ未分化な状態にあるので,音楽の時間を設けて指導するよりも,遊戯や体育その他の教科の学習や領域の活動と密接な関連を図るとともに,また,児童の心理的な欲求に応じて音楽を経験させるようにし,できるだけかれらの音楽に対する興味や意欲を高めるようにする。

(3) 歌唱や簡単な楽器を使っての学習,あるいは,からだを動かすことや音を聞きわけることなどの学習においては,じょうず,へたに関係なく,皆の前でひとりで表現したり,発表したりする態度を養うように努める。また,この段階における歌唱では,メロディーのくるいや不正確な発音などをあまりやかましくいわないで,楽しいふんい気のなかで,皆といっしょに歌わせることに重点をおく。なお,からだを動かす場合の音楽は,きわめてリズミカルで,しかも,この段階の児童に最も適したテンポのものを選ぶことがたいせつである。

 

2 中 学 年 1 目  標 (1) 音楽に親しませ,楽しい学校生活がおくれるようにする。

(2) よい音楽にふれさせ,音楽的感覚の発達をはかる。

(3) 音楽に合わせて簡単な動作ができるようにする。

(4) 皆といっしょに歌ったり,音楽に合わせて簡単な楽器を奏することができるようにする。

(5) 好きな歌が正しく歌えるようにする。

(6) 音に敏感に反応したり,簡単なリズム感,拍子感が身につくようにする。

2 内  容 (1) 聞くこと。(よい音楽に親しむ。) ア 自由に身体反応をしながら聞く。

イ ラジオや蓄音器等のまわりに集まって聞く。

ウ 描写音楽などに興味をもつ。

エ 先生や友だちの歌や演奏をよろこんで聞く。

(2) からだを動かす。(簡単な音楽のリズムに合わせて楽しくからだを動かす。) ア 簡単な音楽に合わせて,手足を自由に動かす。

イ 手や足を音楽に合わせてリズミカルに動かす。

ウ 音楽に合わせて手と足をいっしょに動かす。

エ 音楽に合わせて模倣遊びをする。

(3) 器楽。(旋律楽器にも親しむ。) ア ハーモニカ,木琴,オルガンなどに親しみ,初歩的な奏法を知る。

イ 身近にある楽器の名まえを知る。

ウ 簡単な音楽に合わせて,皆といっしょにリズム楽器を打つ。

エ 楽器をていねいに扱う。

(4) 歌うこと。(楽しく歌う。) ア 習った歌や,好きな歌のリズムや発音をしだいに正しくする。

イ 先生の歌い方や口もとに注意し,それをまねて歌う。

ウ 伴奏に合わせて,皆といっしょに歌ったり,ひとりで歌ったりする。

エ どなったり,小声すぎたりしないように歌う。

(5) 音を聞きわける。 ア 音の強弱や速い,おそいに敏感に反応し,音の高い,低いがわかる。

イ 集まれ,立て,すわれなどの合い図の音にびんしょうに反応する。

ウ 身近にある楽器の音色をだいたい聞きわける。

3 指導上の留意事項 (1) この段階においては,音,リズム,拍子などに対する感覚訓練を行なう場合はもちろんのこと,鑑賞や表現を行なう場合でも,からだを動かすことによって,児童のからだの動きのぎごちなさをなおすように努める。

(2) 器楽を奏したり,歌を歌う場合には,仲間と合わせて表現していくことに関心をもたせ,自分かってな行動を少なくして,しだいに協調していく方向へと導びいていく。歌唱や器楽を使っての学習では,前段階よりいくらか整った歌になったり,また,演奏をしたりするために努めようとする態度や能力を養うようにする。なお,歌唱の指導では,必然的にことばの指導がともなってくるから,特に,国語との関連をじゅうぶんに考えて,指導することが必要である。

(3) 以上のほか,低学年のところで述べた「指導一上の留意事項」は,そのままこの段階でも考慮されなければならない。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 音楽に親しませ,生活にうるおいをもたせるようにする。

(2) よい音楽を静かに聞こうとする態度を養う。

(3) 音楽に合わせて,簡単な動作ができるようにする。

(4) 皆の前で,ひとりで歌を歌うことやせい唱や合奏に慣れて,簡単な曲目が演奏できるようにする。

(5) 音を聞きわける力を伸ばし,合い図の音にびんしょうに反応できるようにする。

2 内  容 (1) 聞くこと。(よい音楽を楽しむ。) ア よい音楽を静かに聞く。

イ よい音楽を皆といっしょに聞く。

ウ 描写音楽などを聞いて場面や情景を想像する。

エ 聞きたい音楽をレコードやラジオなどから選んで聞く。

オ 先生や友だちの歌や演奏を静かに聞く。

(2) からだを動かす。(リズムに合わせて,楽しくからだを動かす。) ア ゆるやかな速さや静かな曲に合わせて,からだを自由に動かす。

イ 音楽に合わせて,やや複雑な手,足の運動をする。

ウ 簡単なフォークダンスをする。

エ 音楽を聞いて,自由な身体表現をする。

(3) 器楽。(簡単な曲の演奏に慣れる。) ア 木琴やハーモニカ,オルガンなどを使って,簡単な歌曲のさぐりびき,さぐり吹きをする。

イ ピアノやレコードなどの音楽に合わせて,皆といっしょにリズム楽器を演奏する。

ウ 楽器の取り扱いや手入れなどに注意する。

(4) 歌うこと。(正しく歌う。) ア 知っている歌,好きな歌をはっきりした発音と正しいリズムで歌い,音程もできるだけ整えるようにする。

イ 先生の歌う歌曲を摸倣して正しく歌う。

ウ 簡単な歌の内容を理解して歌う。

エ 皆と声をそろえて歌う。

(5) 音を聞きわける。 ア 和音を聞いてきめられた動作をする。

イ 身近な生活のなかにあるいろいろな音に注意を向ける。

3 指導上の留意事項 (1) 前段階までは,とかく受動的な音楽学習といった形式がとられがちであったが,しかし,この段階からは,徐々に能動的な音楽学習の形式に移行していくことが必要である。そのためには,鑑賞すること,歌うこと,器楽を奏することについて,一定の時間を設けて学習させることが必要になってくるであろう。

(2) 鑑賞においては,精神薄弱の児童も正常の児童に劣らず,音楽を美しく感じる能力をもっているので,いろいろなレコードを豊富にそろえておき,児童が自ら自分の好きなものを選んで,かけられるように指導する。そのためには,児童のひとりひとりに対して,レコードの正しい取り扱い方と電蓄などの正しい操作法を教えて,それに慣れさせておくことがたいせつである。

(3) 皆といっしょに声を合わせて歌ったり,器楽を合わせて奏したりすることに楽しみをもたせ,進んで協調していく態度を養うように導くとともに,また,音楽を余暇利用にも役だてていこうとする態度や能力も身につけるように努める。

(4) 音楽の指導においては,体育や国語などの学習と密接に関連をもたせることはもちろん,特に特別教育活動や学校行事等の活動とのじゅうぶんな関連を図り,それらの活動の場や機会をできるだけ活用していくことが望ましい。

 

第6節 図 画 工 作

第1 低 学 年

1 目  標 (1) 自由な造形的表現を楽しんでするようにする。

(2) 造形的な表現のために,色紙,クレヨン,粘土など身近にある材料や用具を使うことに慣れるようにする。

2 内  容 (1) 身近な材料や用具を使って,思ったまま自由に造形的な表現をする。

(2) 鉛筆,クレヨン,パス類,水絵の具などでかいたり,塗ったりする。

(3) 色や形を考えて,はさみで画用紙や色紙などを切ったり,それをのりではったりする。

(4) 粘土をのばしたり,丸めたり,平らにしたりし,また,ごく簡単な形を作ったりする。

(5) ひもにビーズ類を通す。

(6) 自然物をできるだけじょうずに並べたり,そろえたり,重ねたりする。

(7) いろいろな積み木で自由にものの形を作る。

(8) 造形活動のごく基本となる色や形や用具・材料の名をおぼえる。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,材料や用具などをいじることそれ自体を楽しむ傾向にあるので,製作目的の有無や作品のできばえなどにこだわらないで,製作過程そのものに重点をおき,どんなふできな作品でも認めてやり,児童の造形的な表現の意欲をわきたたせ,自由な造形活動をじゅうぶんに楽しませるようにする。

(2) 精神薄弱の児童の造形的な表現能力には,大きなひらきがあり,また,性格や興味・関心の傾向にも片寄りを示すものがあるので,それらのあらわれとみられる造形的な表現は,注意して取り扱うことがたいせつである。そして,児童の作品は,長く保存して,それらを生活の指導上の参考にも資するようにすることが望ましい。

(3) 材料や用具については,手さきの器用さや体力の発達の状態,造形的な表現に対する理解や能力の程度に応じて,児童に親しみ深いもののなかから,適当なものを選び,それらを使いやすいよう平素から分類・整理しておくことが望ましい。なお,この段階では,材料や用具を破損したり,むだにしたりすることが多いが,しかし,これらの点については,あまりやかましくとがめだてしないようにすることが必要である。

(4) この段階では,作業や学習についての基本的な習慣や態度を確立していくことが必要であるので,特に,材料や用具を出したり,配ったり,あとかたづけをしたりするための時間をじゅうぶんに取り,これらの活動を造形活動の一環として,楽しさのなかに習慣づけていくようにすることがたいせつである。

(5) この段階では,手足をよごしたり,ときにはけがをしたりすることがあるので,危険の防止やよごれのあとしまつに注意して指導する必要がある。

(6) この段階では,造形活動のごく基本になる色や形や用具・材料の名称については,児童の知っている程度のものがまちがいなく言える程度の指導にとどめる。

(7) この段階では,ほとんどの学習活動が総合的な形で行なわれることが多いので,他の教科の学習や領域の活動との密接な関連を考慮して,指導する必要がある。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) 自由な造形活動を通して表現の喜びを味わい,さらに,その意欲を高めるようにする。

(2) 造形活動のための基礎的能力を養うようにする。

(3) 造形活動を通して,いろいろな材料や用具の使い方にいっそう慣れるようにする。

(4) 教室や身のまわりなどを美しくすることに関心をもつようにする。

2 内  容 (1) 自由な造形的表現を通して,材料や用具の使用に慣れ,表現の意欲を高める。

(2) 造形活動のための準備やあとかたづけをする。

(3) 鉛筆,クレオン,パス類,水絵の具などで,ていねいにかいたり,ぬったりする。

(4) はさみを使って,画用紙や色紙などで簡単な形を切り抜いたり,それをのりで美しくはったりする。

(5) 色紙などを使って,簡単な折り紙,はり絵,ちぎり絵などをする。

(6) 粘土で球などの簡単な形を作ったりする。

(7) ビーズ通しなどで,色を交互に通す。

(8) 自然物や糸・布などで,簡単な模様や飾りを作ったりする。

(9) 画用紙などで紙版画を作って刷る。

(10) 木片などに金づちでくぎを打ちこむ。

(11) 造形活動を通して,基本になる色や形や用具や材料の名をおぼえる。

(12) 自分たちの作ったもので教室を飾る。

(13) 持ち物の模様や色などに関心をもつ。

3 指導上の留意事項 (1) 低学年のところで述べた「指導上の留意事項」は,この段階でも考慮する必要がある。

(2) この段階では,少しずつ目的的な造形的表現をするようになってくるから,児童が造形活動をする場合には,目的に応じた材料や用具の選び方や造形的な基礎的技術についての指導を加えていく必要がある。

(3) この段階では,児童の造形的な活動がだんだん活発になり,それにつれて多量の材料を使うようになってくるので,材料をむだにしないように指導することが必要である。また,経済的な観点から,家庭や学校などから出る不用品や廃物品を,必要に応じて,活用することもたいせつである。

(4) この段階では,日常生活のなかで,どこでも見られる材料や用具の名称,造形的な活動のなかでよく使われる用語などについて,正確に指導する必要がある。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 造形的な表現を通して,作品完成の喜びを味わせ,表現についての自信を高めていくようにする。

(2) 造形活動を通して造形的な表現の基礎的能力を身につけさせる。

(3) 造形活動を通して,いろいろな材料や用具の特色に応じた使い方に慣れさせる。

(4) 美しい風景や作品などに触れさせて,美に対する関心を高め,環境の美化に役だたせる。

(5) 共同製作などを通して,人と協力したり,分担した役割などを責任をもって果たせるようにする。

2 内  容 (1) 造形活動によって自分の意図したものが表現できる喜びを味わう。

(2) 鉛筆,クレヨン,パス類,水絵の具などを必要に応じて使い,自分の意図した表現をする。

(3) 画用紙,厚紙,または,糸,布などで簡単なものを作る。

(4) 粘土で動物などの形を作り,色をぬったり,焼いたりする。

(5) ゴム板,リノリゥム板などを彫刻刀で彫り,それを使って版画を刷る。

(6) ビーズなどでごく簡単なものを作る。

(7) のこぎりやきりなどを使って,ごく簡単な木工品を作る。

(8) 針金,板金などを使って,ごく簡単なものを作る。

(9) 造形活動に必要な用具や材料の名をおぼえ,その使い方に慣れる。

(10) 美しい風景や作品に触れる。

(11) 教室の掲示物や飾りなどの配置や配色に関心をもち,教室を美しくしようとする。

(12) 共同製作などで相手と協力する。

(13) 自分の作品とともに他人の作品もたいせつにする。

3 指導上の留意事項 (1) 中学年のところで述べた「指導上の留意事項」は,この段階でも考慮する必要がある。

(2) この段階では,からだや手さきの機能の発達もだいぶ進んでくるので,造形的な表現のための基礎的な技術指導を考慮する必要がある。

(3) この段階では,使用する材料・用具の整理,整とんや管理・手入れなどを,なるべく進んでするよう特に指導する。

(4) 上掲2の内容に掲げる各事項は,これらのすべてをまんべんなく機械的に指導することを意味していない。精神薄弱の児童の特性にかんがみ,ある種の活動を長期にわたって継統的に指導したり,または,共同製作を取り上げて,これに参加させたりするなどの考慮を払うことが必要である。

 

第7節 家   庭

第1 低学年

1 目  標 (1) 基本的生活習慣をできるだけ身につけるようにする。

(2) 家庭生活の簡単なきまりを守るようにする。

(3) 家族の仕事のじゃまをしないようにする。

2 内  容 (1) 洋服,ねまき,ンヤツなどの,簡単な衣服の着脱をする。

(2) 脱いだものをだいたいたたむ。

(3) 上着と下着の区別をする。

(4) はきものがはける。

(5) よくかんで食べる。

(6) なるべくこぼさないようにして食べる。

(7) なるべく好ききらいをしないようにする。

(8) 食前に手を洗う。

(9) さじ,はしなどがだいたい使える。

(10) 食事の途中で遊ばないようにする。

(11) 用便を告げ,便所へ行く。

(12) 排便のしまつがだいたいできる。

(13) できるだけ便所をよごさない。

(14) 戸を締めて用便をする。

(15) 用便後,手を洗う。

(16) 早寝・早起きをする。

(17) ひとりで寝る。

(18) 寝まきをきかえて寝る。

(19) 寝床にはいったら騒がないようにする。

(20) 寝る前に便所へ行く。

(21) 朝晩,歯をみがく。

(22) 顔を洗う。

(23) 手足がよごれたら洗い,ぬれたらふくようにする。

(24) 鼻じるが出たらかむ。

(25) 家庭の言いつけをできるだけ守る。

(26) できるだけ,はきものをそろえるようにする。

(27) できるだけ,使ったもののあとかたづけをする。

(28) 電気器具,ガスのせん,マッチ,刃ものなどの危険物にさわらないようにする。

(29) 家庭でたいせつにしている物や金銭など,かってに触れないようにする。

(30) ふすまや障子などを破らないようにする。

(31) 家の内外の危険な場所で遊ばないようにする。

(32) だまって遊びにいかないようにする。

(33) 家族の人が仕事をしているときは,じゃまをしない。

3 指導上の留意事項 (1) この段階から家庭の目標や内容を掲げた理由は,精神薄弱の児童・生徒を教育していく場合,特に基本的な生活習慣を身につけさせるための指導が重要であり,また,その指導は,幼少のころから適切に行なわれなければならないからである。すなわち,基本的な生活の習慣や態度を養うということは,あらゆる教育指導の土台となるものであり,また,その成果を真に決定づけるかぎともなるからである。

 したがって,以上の点をよく理解して,この段階から適切な指導を行ないうるよう,あらかじめ計画をたてるようにしなければならない。

 なお,家庭の内容は,特に個人的,家庭的な生活の指導すべき事項に限り,これと社会における集団的,社会的な生活の指導すべき事項とあいまって,身辺生活の処理能力と社会的適応能力の向上を図っていくよう考慮されていることにも留意する必要がある。

(2) 家族や周囲のものたちは,とかく精神薄弱の児童を保護しすぎたり,あるいは,放任的でありすぎたりしやすいものであるから,その指導にあたっては,特に,家庭との密接な連絡を図る必要がある。そして,親や兄姉などに対しても,その指導方法をじゅうぶん理解させるように努め,その協力を得ることがたいせつである。

(3) この段階では,手さきの器用さもまだじゅうぶんてない場合が多いので,衣服やくつなどは,できるだけ着脱の容易なものを選んで使用させることが望ましい。

 また,基本的な生活習慣を身につけさせるための指導においては,一度にあまり多くのことがらを取り扱うようなことは避け,少しずつ順序をおって,折り目正しく行なっていくことが必要である。また,反復練習を行なわせて,あせらず長い目で指導していくことがたいせつである。

(4) 基本的な生活の習慣や態度を身につけさせるためには,特に,学校行事等のなかの保健体育的行事の「宿泊訓練」の機会や「寄宿舎生活」の場などを利用することがきわめて効果的であるから,綿密な計画のもとに,これらの場や機会を有効に利用して,適切な指導を行なうようにすることが望ましい。

(5) 「家庭」の指導においては,他教科,ことに社会,図画工作,体育および道徳の指導との密接な関連に留意する。

 このことは,中・高学年の場合においても考慮されなければならない。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) 基本的な生活習慣をだいたい身につけるようにする。

(2) 家庭の簡単なきまりがわかり,それを守るようにする。

(3) 身近な人と親しみ,家族や近隣の人などにできるだけ迷惑をかけないようにする。

2 内  容 (1) 衣服の着脱をする。

(2) 脱いだものをたたむ。

(3) 上着,下着の前後,表裏の区別をする。

(4) くつの左右を区別し,かがとを踏まないではく。

(5) よくかんで,こぼさないように食べる。

(6) なるべく好ききらいをしない。

(7) 食前には必ず手を洗う。

(8) さじ,はしなどが使える。

(9) 行儀よく食べる。

(10) 便所へはいるとき,ノックをして戸をあけ,きちんと締める。

(11) 用便後必ず手を洗う。

(12) 早寝・早起き,ひとり寝などができる。

(13) なるべく自分で寝まきやふとんなどのしまつをする。

(14) 寝る前や夜中にひとりで便所へ行く。

(15) 朝,晩の歯みがき,洗面を必ずする。

(16) 手足がよごれたら洗い,ぬれたらふく。

(17) 真じるが出たらすぐかむ。

(18) いつもハンカチ,はな紙などを忘れないようにする。

(19) 髪をといたり,洗ったりする。

(20) 家族の言いつけを守る。

(21) はきものをそろえてあがる。

(22) できるだけ戸のあけ締めに気をつける。

(23) 使ったもののあとかたづけをする。

(24) 電気器具,ガスのせん,マッチ,刃ものなどの取り扱いの危険なことがわかり,かってに触れないようにする。

(25) 家族のたいせつにしている物や金銭などに,かってに触れない。

(26) 家の内外の危険な場所がわかり,また,それに気をつけるようにする。

(27) 遊びにいくときは家の人に告げる。

(28) ラジオ,テレビなどを家族の人たちといっしょに楽しむ。

(29) 人の来訪が告げられる。

(30) はたき,ほうき,ぞうきんなどを使ってよごれたところをきれいにする。

(31) その他,簡単な手伝いやお使いをする。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,知的活動をともなう学習にもまして,基本的な生活習慣や態度を確立していく上に,重要な時期であることに留意し,その指導をいっそう徹底させるようにする。また,この段階では,その内容をひととおり身につけさせるようにし,能力に応じた手伝いやお使いなどの活動を通して,家族の一員としての位置づけや働く習慣の素地もつくっていくようにする。

(2) この段階は,すでにある程度身についた生活習慣や態度がくずれやすくなるときでもあるので,それを防ぐためにも,家庭連絡簿や日課表を作成し,利用するなど,効果的な指導方法をくふうすることが望ましい。このことは,高学年の場合にも適用する。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 基本的な生活習慣を,しっかり身につけるようにする。

(2) 家庭生活での家族の役割がだいたいわかり,自分の役割をできるだけ果たすようにする。

(3) 家族や近隣の人などと親しみ,家庭生活をできるだけ楽しくするようにする。

(4) 家庭生活における基礎的な技能を養い,簡単な手伝いなどをするようにする。

2 内  容 (1) 衣服の着脱をきちんとする。

(2) 下着のとりかえや,自分の衣服のしまつをする。

(3) ほころびやよごれに注意する。

(4) はきものをきちんとはく。

(5) 運動や作業にふさわしい服装をする。

(6) 作法を守って楽しく食事をする。

(7) きまった時間以外に間食をしないようにする。

(8) 便所の使い方を守って用便をする。

(9) 寝まきを着がえ,衣服のしまつをして静かに寝る。

(10) 自分でふとんのあげおろしをする。

(11) ていねいに歯みがきや洗面をする。

(12) 手足をきれいに洗ったりふいたりする。

(13) 鼻じるが出たら,すぐきれいにかむ。

(14) ハンカチ,はな紙などを忘れないようにする。

(15) 自分で散髪にいったり,髪の手入れをしたりする。

(16) つめをのばしたり,耳あかをためたりしないようにする。

(17) ふろでからだを洗ったり,ふいたりする。

(18) 家庭内のきまりを守る。

(19) 戸のあけ締めや戸締まりに気をつける。

(20) 自分の持ち物をできるだけ整とんする。

(21) 家庭内にあるいろいろな危険物の取り扱いに注意し,危険な場合は家族に知らせる。

(22) 家族のたいせつにしている物や金銭の取り扱いに気をつける。

(23) 外出する時は,家の人に行きさきを告げる。

(24) 家族のだんらんに参加する。

(25) ハンカチ,くつ下などの洗たくや,簡単なボタンつけをする。

(26) はたき,ほうき,ぞうきんなどを使って,そうじをする。

(27) 食事の準備,あとかたづけなどの手伝いをする。

(28) その他,簡単な手伝いやお使いをする。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,基本的な生活習慣が確実に身につくようになるまで指導する。

(2) 洗たく,そうじ,手伝いなどの生活技術は,学校である程度やれる自信をつけさせ,さらに,それが家庭で生かせるような場面を積極的に設けるよう,保護者との連絡を,じゅうぶんに保つようにすることがたいせつである。

(3) この段階では,基本的な生活習慣のそれぞれの意味や,家庭における家族のそれぞれの仕事や役割などを,できるだけ理解して,規律のある生活が送れるように指導することが望ましい。

 

第8節 体   育

第1 低 学 年

1 目  標 (1) いろいろな運動や遊びを喜んでするようにする。

(2) 皆といっしょに仲良く遊んだり,運動したりすることができるようにする。

(3) あぶない遊びなどを避けて,安全に運動ができるよう気をつける態度を養う。

(4) 食べ物に気をつけたり,からだをできるだけ清潔にする習慣を養う。

2 内  容 (体育)

(1) 担任の指示によって1列に並ぶ。

(2) 1列に並んで歩く。

(3) 次のようなごく簡単な徒手体操をする。

ア しゃがんだり,立ったりする。

イ 足を前後,左右に開く。

ウ 両足をそろえてとんだり,片足で立ったりとんだりする。

エ 腕を振ったり振り回したりする。

オ 片手をすりあげながら,からだを左右に曲げる。

カ しゃがんで歩いたり,いざって歩いたりする。

キ 息を大きく吸ったり,吐いたりする。

(4) ぶらんこに乗ったり,すべり台ですべったりする。

(5) マット遊びでゆりかごなどをする。

(6) 低鉄棒などにぶらさがって遊ぶ。

(7) コースにそってかける。

(8) かけっこをする。……(約30m)

(9) 同じ調子でかけ足をする。……(約1分間)

(10) ボールをころがしたり,投げたりする。

(11) リズミカルな音楽にできるだけ合わせて歩く。

(12) 動物や乗り物などのごく簡単な模倣遊びをする。

(13) 簡単な鬼遊びをする。

(14) すもう遊びをする。

(15) 水遊びをする。

(保健)

(16) からだのよごれに気をつけ,手足や顔などを清潔に保つようにする。

(17) 病気になったときは,親や先生などの言うことを聞く。

(18) いちどにたくさん食べすぎないようにする。

(19) よくかんで食べることに慣れる。

(20) かびのはえたものや,腐ったものを食べたりしないようにする。

(21) 健康診断や予防接種をいやがらずに受けるようにする。

(22) 小石やガラス玉,硬貨などを口や耳に入れないようにする。

(23) 遊びや運動のとき,おしたり,ついたり,わるふざけをしないようにする。

(24) マッチや刃物など身近にある危険なものなどがわかる。

3 指導上の留意事項 (1) この段階の児童は,遊びを中心とした指導により,抑圧された気持ちを除去するように努め,簡単なゲーム等により,集団活動に参加しようとする意欲を育て,その素地を養うようにする。

(2) 精神薄弱の児童は,肢体不自由,病弱・虚弱,てんかん等をあわせもっているものが少なくないことに注意し,医師と密接な連絡を保って,その治療や機能の訓練に努めさせるようにする。

(3) 精神薄弱の児童は,一般的に身体に柔軟性がなく,動作が綬慢で,また,運動機能にも劣るものが少なくないので,その指導にあたっては,あらかじめ個々の児童の身体的特徴をじゅうぶんはあくするようにすることがたいせつである。

(4) この段階では,わるふざけや不注意などによって起こる事故の発生防止に特に注意する必要がある。

(5) 上掲2の内容に掲げる(3)の各事項は,徒手体操の範囲や程度の例を示したものである。したがって,その指導にあたっては,この例を参考とし,各種の方法をくふうして行なうようにする。このことは,中・高学年の指導の場合においてもそのまま適用する。

 

第2 中 学 年 1 目  標 (1) いろいろの簡単な運動を行なわせることによって,基礎的な運動能力を養う。

(2) きまりを守ってみんなと仲よく運動する態度を養う。

(3) 運動と関連した健康・安全についてのきまりを守る態度や習慣を養う。

(4) 食べものに気をつけたり,からだを清潔にする習慣を養う。

2 内  容 (体育)

(1) 1列にまっすぐ並んだり,2列に並んだりする。

(2) 1列や2列に並んで歩く。

(3) 次のような簡単な徒手体操をする。

ア しゃがんだり,背伸びしたりする。

イ 足を前後,左右に大きく開く。

ウ 両足または片足で,その場でとんだり,とんで移動る。

エ 腕を前後・左右に振ったり,回したりする。

オ 腕を前や横や上に,あげたりさげたりする。

カ 片手をすりあげながらからだを左右に曲げる。

キ 腕を左右に振って首やからだを回す。

ク いざって歩るくとき,腕の力だけで前進する。

ケ 息を大きく吸ったり,吐いたりする。

(4) ぶらんこに乗ってひとりでこぐ。

(5) マット遊びで横回りや前回りをする。

(6) 低鉄棒で足をかけて振ったりする。

(7) 平均台を渡ったり,平均台の上で簡単な動作をする。

(8) 雲ていやはんと棒を使って遊ぶ。

(9) とび箱遊びをする。

(10) かけっこをする。……(約50m〜80m)

(11) 同じ調子でかけあしをする。……(約3分間)

(12) 両足をそろえて立ち幅とびをする。

(13) 片足ふみきりで幅とびをする。

(14) ボールを投げたり,ついたりする。

(15) 音楽に合わせて歩いたり,走ったりする。

(16) かごめかごめなどの簡単な歌を伴う遊びをする。

(17) 動物や乗り物などの模倣遊びをする。

(18) こども用の自転車に乗る。

(19) 助けられて,初歩の水泳をする。

(20) 鬼遊びをする。

(21) 片足ずもうなどをする。

(22) ころがしドッチボールをする。

(23) 綱引きや球入れなどをする。

(保健)

(24) からだのよごれに気をつけ,手足や顔などを清潔に保つ。

(25) 健康診断に関心をもつようにする。

(26) けがや病気のとき,すぐ手当を受けるようにする。

(27) 好ききらいをしないで何でも食べるようにする。

(28) 外出から帰ったときなどにうがいをする。

(29) 予防接種をいやがらずに受けるようにする。

(30) 遊びや運動のとき,おしたり,ついたり,わるふざけをしないようにする。

(31) 遊びや運動する場所の小石や危険物を取り除くようにする。

3 指導上の留意事項 (1) 低学年のところで述べた「指導上の留意事項」は,この段階においてもそのまま適用する。

(2) この段階では,意思の交換ができる能力や自他の関係を理解する力などを伸ばすために,特に,集団的に行なう活動を重視し,できるだけ望ましい人間関係の育成に努めるようにする。

 

第3 高 学 年 1 目  標 (1) 能力に応じた運動を行なわせることにより,身体の諸機能の調和的な発達を図るようにする。

(2) 簡単な競技やゲームを行なわせ,ルールを守り,互いに助け合う態度を養う。

(3) 運動やゲームなどにおいて,最後まで努力する態度や持久力を養う。

(4) 健康,安全に注意する態度や習慣を養い,保健に関する初歩的知識をもたせるようにする。

2 内  容 (体育)

(1) 1列に正しく並んだり,2列にまっすぐ並んだりする。

(2) 1列や2列に並んで,正しい姿勢で歩く。

(3) 次のような徒手体操をする。

ア ひざを浅く深く曲げたり,伸ばしたりする。足を左右に開閉してとぶ。

イ 腕を前・横・上にあげたり,下げたりする。うちそとおよび前とうしろに回旋する。

ウ 首を前後左右に曲げる。左右に回す。

エ 体を前後,左右に曲げる。左右に回す。腕立てふくがをする。

オ 大きく息を吸ったり,吐いたりする。

(4) マット運動で連続して横回り,前回りをする。

(5) 平均台運動で,片足で立ったり,簡単な動作をする。

(6) 低鉄棒を使って簡単な運動をする。

(7) 懸垂腕まげを少しする。

(8) ごく簡単なとび箱運動をする。

(9) かけっこをする。……(約80m〜100m)

(10) 皆でそろってかけ足をする。……(約5分間)

(11) 約1時間歩く。

(12) 助走をつけて幅とびをする。

(13) 高とびをする。

(14) スキップ歩きをする。

(15) なわとびをする。

(16) ボールを投げたり,受けたりする。

(17) 初歩の水泳をする。

(18) こども用の自転車に乗る。

(19) 簡易化したベースボールやドッチボールなどをする。

(20) 簡単なリレーをする。

(21) 簡単なフォークダンスをする。

(22) 綱引きや球入れなどをする。

(保健)

(23) 身体や身の回りの清潔に気をつけるようにする。

(24) 暑さ寒さに気をつけるようにする。

(25) 疲れたときなどには適当な休養をとるようにする。

(26) 健康診断のたいせつなことを知り,病気があったら治療を受けるようにする。

(27) 発熱,吐きけ,頭痛など,からだの調子の悪いときには,すぐ親や先生に話すようにする。

(28) 食べすぎや寝冷えなどをしないように気をつける。

(29) うつる病気とうつらない病気のあることを知り,進んで予防接種を受けるようにする。

(30) あぶない遊びや人に危害を加えるようなことをしないようにする。

(31) 運動用具の破損に注意し,危険が起こらないようにする。

3 指導上の留意事項 (1) この段階では,身体の発育や運動機能などに差異が目だってくるので,それらの差異に留意して指導する。

(2) この段階では,特に運動競技やゲームなどにより,集団活動をますます活発にしていくようにする。

(3) 女子は,この段階のころから,しだいにその特性が顕著に現われてくるので,それに応じた指導を考慮するようにする。