第1 目 標
2 自然の環境から問題をとらえ,事実に基き,筋道をたてて考えたり処理したりする能力を養い,また,実験や観察に必要な機械器具を目的に応じて取り扱う技能を高める。
3 生活や産業の基礎となる自然科学的な事実や原理の理解を深め,これを活用する能力を伸ばし,さらに,新しいものをつくり出そうとする態度を養う。
4 自然科学の進歩が生活を豊かにするのに役だつことを認識させ,自然科学の成果や方法を生活の中に取り入れ,生活を合理化しようとする態度を養う。
5 自然と人間生活との関係を認識させるとともに,自然の保護利用に対する関心を高める。
以上の目標の各項目は,相互に密接な関連をもって理科の目標をなすものである。指導にあたっては,特定の項目にのみ重点をおくことなく,目標が全体として達成されるように考慮しなければならない。
第2 各学年の目標および内容
各学年の内容は,第1分野および第2分野に分かれているが,各分野の学習は,年間を通じて行うことをたてまえとする。
〔第1学年〕
1 目 標
(2) 生物の特徴を分析や比較によって考察する能力を養い,また,生物の適応や生物相互間の関係を理解させる。
(3) 水や空気,火山や地震などの作用によって地表が変化すること,およびおもな岩石・鉱物について調べ方や性質を理解させる。
2 内 容
A 第1分野
ア 水の重さと圧力
(ア) 重さと力
b 水1cm3の重さが,ほぼ1gであることを確かめ,あわせて重さの測りを習得する。
c 力の大きさを重さで表わすことを理解する。
圧力は面に垂直にはたらく力であること,および単位面積あたりの力の大きさで圧力の強さを表わすことを理解する。
(ウ) 水の圧力
b パスカルの原理と,これの水圧機への応用を理解する。
アルキメデスの原理を理解し,船が浮くわけを考察する。
(オ) 比重
b 物の浮き沈みと比重との関係を調べ,浮きばかりで液体の比重が測定できるわけを考察する。
(ア) 水平面
b 水平面と鉛直線とが直交することを調べる。
水の表面には表面張力がはたらくことを確かめ,表面張力によって起る諸現象を調べる。
(ウ) 毛管現象
毛管現象がいろいろな場合に起っていることを調べ,管が細いほど水が高くまで上がることを確かめる。
ウ 空気の重さと圧力
(ア) 空気の重さ
空気に重さがあることを調べる。
(イ) 大気の圧力
b トリチェリーの実験によって,大気の圧力と真空とを理解する。
c 気圧の単位を知る。
d サイホンのはたらきを調べる。
b 圧搾空気の利用について調べる。
気球が空気中に上がるわけを知る。
エ 水の三態
(ア) 水蒸気・水・氷
b 水の三態の変化と温度との関係を調べ,沸点・氷点が温度の定点になることを理解する。
c 水の三態の違いが水の分子の集まり方の違いから説明できることを知る。
沸点と氷点の測り方および温度の目もりの決め方を理解する。
オ 水の精製
(ア) 飲料水
b 上水道における浄水のしかたを知る。
c ろ過のしかたを習得する。
b 蒸留の方法を理解する。
(ア) 溶液
b 溶液の概念を確かにする。
c 物質によって溶け方が違うことや,同じ物質でも溶け方が温度によって違うことを理解する。
d 濃度とその表わし方(重量パーセント)を理解する。
e 物を速く溶かす方法を調べる。
b 食塩の性質と日常生活におけるおもな用途を知る。
溶液からいろいろな結晶をつくり,結晶の形が物質によって特有であることを理解する。
キ 水の成分
(ア) 水の分解と合成
b 酸素と水素とで水が合成されることから化合の概念を理解し,また,化学変化と物理変化の違いを知る。
水の電気分解のほか,希酸と金属の反応などで水素が発生することを調べ,水素のおもな性質を理解する。
(ウ) 元素と原子
b 化合物と単体とがあることを知る。
c 原子と分子の概念を理解する。
d いくつかの元素と元素記号を知る。
e 成分元素の種類と成分元素の原子数の割合を,化学式で表わすことを理解する。
(ア) 空気の組成
空気はその体積のおよそ1/5が酸素であることを調べ,空気の組成の大要を知る。
(イ) 酸素
b 酸素のおもな性質を理解する。
ア 燃焼
(ア) いろいろなものの燃焼
b 石油,ロウ,砂糖などが燃えてできるものから,もとの物質に水素と炭素があることを理解する。
c すすのできる燃え方を調べ,あわせて炎が明るいのは炭素粒によることを知る。
d マグネシウムの燃え方と燃えてできるものを調べる。
e 水素,炭素およびマグネシウムが燃える反応を化学反応式で表わすことを理解する。
f 酸化と酸化物について理解する。
b 爆発の危険と利用について知る。
c 黒色火薬の成分のはたらきを知る。
b 燃焼が続く条件を調べ,消火の原理と応用を理解する。
(ア) 温度と熱量
b 熱の移動によって温度の変化が起ることを知り,熱量の概念を理解する。
c 同じ熱量を与えても,物によって温度の上がり方が違うことを知る。
d 水の比熱は,他の物質に比べて特に大きいことを知る。
b 液体の膨張の割合は,一般に固体に比べて大きいことを理解する。
c 気体の熱膨張の割合は,固体や液体に比べて大きく,また,気体によってほとんど違わないことを知る。
d 熱膨張が温度の測定などに利用されていることを知る。
(ア) 融解と凝固
b 物が凝固するときには,その体積が変化することを知る。
b 圧力によって沸点が変化することを理解する。
c 気化の様子を調べ,気化には気化熱を要することを理解する。
d 水が液体から気体になると,その体積が増すことを知る。
e 空気中の飽和水蒸気の量は,温度によって変ることを知り,また,湿度の意味と表わし方を理解する。
f 冷凍機の原理を知る。
g 液体空気の性質を知る。
h 昇華の現象を調べる。
b 保温のしかたを知る。
ア 気候と生物
(ア) 季節と生物
b 生物の冬越しや,渡り・回遊などを理解する。
土地の気候によって,生物の分布に違いのあることを知る。
イ 生物と環境
(ア) 環境要素
b 種子の発芽と環境条件との関係を調べる。
生物は,環境に適応して生きていることを知る。
ウ 生物どうしのつながり
(ア) 群落と集団
b 動物には,家族生活や社会生活などをするものがあることを知る。
b 根粒細菌や地衣類などのように,共生生活をするものがあることを理解する。
ア 種子でふえる植物
(ア) 花と種子
b 裸子植物の花の構造を調べ,被子植物の花と違う点を理解する。
c 子房は果実になり,はい珠は種子になることを理解する。
b 茎には,草本・木本の別,地上茎・地下茎の別があることを理解する。
c 葉の形を調べ,単葉・複葉の別,網状脈葉・平行脈葉の別などがあることを理解する。
(ア) シダ類・コケ類・海ソウ
b 海ソウについて,緑ソウ類・カッソウ類・紅ソウ類の特微を知る。
b キノコやカビは,菌糸からできていて,動物性または植物性の養分をとって生きていることを知る。
(ア) ホ乳類・鳥類・ハ虫類
身近なホ乳類,鳥類,ハ虫類について,形態を比較し,それらの間の違いや共通性を理解し,あわせてそれぞれの形態と生活との関係を考察する。
(イ) 両生類・魚類
カエルと魚の形態を比較し,それらの間の違いや共通性を理解し,あわせてそれぞれの形態と生活との関係を考察する。
エ 背骨のない動物
(ア) コン虫類・クモ類
コン虫とクモの外部形態を調べ,それぞれの特徴を理解する。
(イ) 貝類
二枚貝や巻貝のからだを調べ,その特徴を理解する。
オ 微生物
(ア) 水たまりの微生物
いろいろな微生物が水たまりにいることを調べ,おもな原生動物や糸状のソウ類について知る。
(イ) 細菌類
細菌類には,球菌・カン菌・ラセン菌・放線菌などがあることを知る。
カ 細胞
b ほおの粘膜などを用いて,動物細胞の構造を調べる。
c 生物は,単細胞生物と多細胞生物に分けられることを知る。
ア 風化作用と土
(ア) 風化作用
b 岩石は,空気や水の化学的な作用によって風化することを知る。
土は,岩石が風化してできたものであること,その成分や粒度などによって性質が違うこと,およびその違いが植物の生育に影響することを理解する。
イ 川と海の作用
(ア) 川の作用
b V字形の谷,扇状地,三角州などのでき方を理解し,地形図の見方を習得する。
c 湖のでき方やはたらきについて知る。
海水の浸食・運搬・たい積の作用と,海食がい,海食台,砂州などのでき方を理解する。
(ウ) 地形の移り変り
地形は,浸食によって長い間に幼年期・壮年期・老年期の順に変っていくことを理解する。
ウ 火山と地震
(ア) 火山
b 火山の形は,溶岩の性質や噴火のしかたなどによって決まることを理解する。
c 火山の分布を調べ,また,火山活動の原因を考察する。
d 温泉の成因および温泉と火山との関係について知る。
b 初期微動の継続時間から,震源までの距離がわかることを知る。
c 日本の震央分布から,地震の多い地域と少ない地域のあることを知る。また,世界の震央分布と比較する。
d 地震のおもな災害と,その防止の方法について知る。
(ア) 土地の隆起と沈降
b リアス式海岸やおぼれ谷などの地形は,土地の沈降によってできたものであることを理解する。
b 山脈は,しゅう曲や断層が大がかりに起ってできたものであることを知る。
ア 岩石のでき方と性質
(ア) 火成岩
b おもな火成岩の組織から,そのでき方を考察する。
c 火成岩の節理の特徴を知る。
b 生物体がもとになってできたたい積岩の特徴や種類を理解する。
c 火山の噴出物が積ってできたたい積岩の特徴や種類を理解する。
変成岩のおもな種類と特徴を調べ,その成因を考察する。
(エ) 岩石の利用
b 岩石には,ガラス,セメント,陶磁器などに利用されるものがあることを知る。
(ア) 造岩鉱物
おもな造岩鉱物の特徴を調べ,それらの間の違いを理解する。
(イ) 鉱物の性質
b 方解石の酸に対する反応や,シン砂,輝安鉱などの開管・閉管の実験から,それらの鉱物の成分について知る。
(2) A(1)およびA(2)で取り扱う元素記号,化学式および化学反応式の種類は,内容で触れたものの程度にとどめる。また,構造式は取り扱わない。B(4)イ(イ)bで取り扱う鉱物の成分については,それらの重要な成分を実験などを通して知る程度にとどめ,化学式については扱わない。
(3) B(1)およびB(2)で扱う生物やB(4)で扱う岩石と鉱物については,できるだけ身近なものを選び,それらの特徴を,分類の基礎的な考え方と関連づけて指導する。種類を多くして,これらを機械的に記憶させることは避ける。
(4) B(1)およびB(2)で扱う生物やB(3)で扱う地かくの変化や構造およびB(4)で扱う岩石と鉱物については,できるだけ野外観察や野外調査をさせ,自然を直接に観察して,そこから系統や原因を帰納させるように指導する。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 気象現象の起る様子を理解させ,また,天気予報についての知識を得させ,気象現象と生活との関係を認識させる。
(3) 生物体(人体を含む。)の構造とはたらきを,分析的に関係的に理解させる。
2 内 容
A 第1分野
ア 酸
(ア) 酸の水溶液
b 塩酸・硫酸のうすい水溶液の金属に対するはたらきを調べる。
濃い塩酸,濃い硫酸,濃い硝酸および酢酸の性質を知る。
イ アルカリ
(ア) アルカリの水溶液
b 水酸化ナトリウムの濃い水溶液のはたらきを調べる。
水酸化ナトリウムおよび水酸化カルシウムの性質を知る。
ウ 塩
(ア) 中和と塩
b 金属と酸によって塩ができることを調べる。
b 炭酸ナトリウム,硫酸銅,塩化第二鉄などの水溶液は中性を示さないことを調べる。
ア 力のつりあい
(ア) 力
力は,大きさと方向によって表わされることを理解する。
(イ) 1点にはたらく力のつりあい
b 作用と反作用との関係を理解する。
c 3力のつりあいを理解する。
d 力が合成・分解できることを知る。
b 斜面の利用を知る。
c 摩擦力は,物と物とが接する面にはたらくことを理解する。
(ア) てこと滑車
b てこの原理を理解する。
c 滑車のはたらきをてこの原理から理解する。
b 物体のすわりのよしあしと重心の位置との関係を調べる。
c 船の安定について知る。
b 仕事の原理を理解する。
c 仕事率の意味とその表わし方を知る。
b 往復運動と回転運動とを互に変えるしくみに,クランク,カムなどが用いられることを理解する。
(ア) 物の変形
b 物の弾性変形についてフックの法則がなりたつことを確かめる。
b 棒を三角形に組み合わせると,じょうぶであることを調べる。
ア 音波とその伝わり方
b 音の伝わる速さを調べる。
(ア) 音の高さ・強さ・音色
音の高さと振動数,音の強さと振幅および音色と波形の関係を知る。
(イ) 音の共鳴とうなり
b 振動数のわずかに違う二つのおんさで,うなりが発生することを調べる。
ア 電気と電流
(ア) 摩擦電気
b 雷は放電であることを知る。
b 電気抵抗が物質により形によって違うことを調べる。
c 電圧・電流・抵抗の間にはオームの法則がなりたつことを理解する。
(ア) 電流による発熱
b 安全電流と安全器および感電について知る。
電力と電力量について理解する。
ウ 電流の化学作用
(ア) 電解質
b イオンについて知る。
b 金属塩と金属板を用いて電気めっきができることを知る。
ポルタの電池を調べ,その原理が実用の乾電池・蓄電池にも用いられていることを知る。
ア 気温
(ア) 気温の変化
b 気温は,海面からの高度によって違うことを知る。
b 地面や海が気温の変化に関係することを知る。
(ア) 湿度の変化
b 湿度には,日変化,年変化および場所による違いがあることを理解する。
c 水の蒸発のしかたは,温度,湿度,風などによって違うことを知る。
b 雲や霧が,水滴または氷晶の集りであることや,大気中に浮んでいるわけを知る。
c 霧および雲のでき方の大要を理解する。
b 降水量の測り方を知る。
(ア) 気圧の測り方
気圧は水銀気圧計,アネロイド気圧計などで測ることを知り,海面更正が必要なことを理解する。
(イ) 風の原因
気圧傾度によって風が吹くことを理解し,高気圧・低気圧における風の吹き方を知る。
(ウ) 風の測り方
風向(16方位)や風速の測り方を知る。
(エ) 風の変化
b 暴風と風圧および防風林のはたらきについて知る。
(ア) 天気図
b 高気圧,低気圧,気圧の谷,前線(温暖・寒冷・停滞)および気団ならびにそれらと天気の変化との関係を理解する。
日本の天気の大要を理解し,天気が生活と関係の深いことを知る。
(ウ) 天気予報
天気予報や気象警報が出るまでの経過の大要と,それらの利用について知る。
(2) 植物の各器官は,それぞれ特有の組織をもち,決まったはたらきを営むことを指導する。
ア 葉の構造とはたらき
(ア) 蒸散
植物体は,葉から水分を蒸散していることを調べ,その意義を知る。
(イ) 葉の構造
b 葉をつくっている組織や,葉脈の断面の構造を調べる。
b 光合成によってつくられたデンプンの移動と貯蔵について知る。
(ア) 茎の内部構造
b マツなどの裸子植物の茎の内部構造を知る。
c 草本と木本の茎の構造の違いを知る。
茎の通道のはたらきを調べる。
ウ 根の構造とはたらき
(ア) 根の構造
根の先の断面の構造を調べ,成長点や維管束があることを知る。
(イ) 吸収
b 肥料の3要素および水耕法について知る。
植物が呼吸していることを確かめ,呼吸熱について知る。
(3) 人体のおもな器官の構造とはたらきや,体内における物質の変化について指導し,あわせて他のおもな動物の器官のはたらきを指導する。
ア 人体の構造の大要
(ア) カエルのからだの構造
b カエルの皮膚,筋肉および骨格について知る。
人体の各部や諸器官の大要を知る。
イ 食物
(ア) 食物と栄養
b 糖やデンプンは,炭素,水素および酸素の化合物であることを知る。
c タンパク質は,炭素,水素のほかに窒素などを含む化合物であること,およびタンパク質の簡単な検出法を知る。
d 脂肪は,炭素,水素および酸素の化合物で水に混じらないこと,および脂肪の簡単な検出法を知る。
e おもなビタミンを知る。
b アルコール発酵が,酵母菌のはたらきによって起ることなどから,発酵の意味を知る。
(ア) 消化器の構造
b ウシ,ニワトリなどの消化器と,ヒトの消化器との違いを知る。
b おもな消化液の種類とそのはたらきを知る。
c 小腸の吸収作用について知る。
(ア) 血管と心臓
b 魚やカエルの心臓とヒトの心臓との違いを知る。
b はく動について知る。
b リンパと血液の違いと,リンパせんのはたらきを知る。
(ア) 呼吸
b 呼吸運動のしくみを理解する。
c 呼吸が必要なわけと内呼吸・外呼吸について理解する。
d コン虫,魚などの呼吸について知る。
b 汗せんとそのはたらきを知る。
(ア) 骨格と筋肉のなりたち
b 横紋筋と平滑筋の違いを知る。
b ヒトの骨格とエビ・カニの仲間やコン虫の骨格との違いを理解する。
(ア) 中枢神経と末しょう神経
脳・せき髄の構造と末しょう神経の構造の大要を知る。
(イ) 反射
b 内臓の運動やはたらきも,神経によって調節されていることを知る。
b コン虫などは複眼をもっていることを知る。
c 耳の構造について,鼓膜や内耳のあることを知り,耳のはたらきを理解する。
b 舌と味覚について知る。
b 皮膚の体温調節のはたらきを理解する。
b おもなホルモンのはたらきについて知る。
(2) B(1)については,〔第1学年〕A第1分野の学習経験を基礎とし,またB第2分野における生物や地表の変化に関する学習経験にも関連づけて指導する。
(3) この学年の生徒は,数量関係を文字を用いた式で取り扱うことができるようになるが,文字を用いた式を使うときには,その意味をじゅうぶんに理解させるように指導しなければならない。また,A(2)ア(イ),(ウ)などで分力を求めるときは,縮図の方法による。
(4) B(3)におけるヒト以外の動物の構造とはたらきについては,それらの目だった特徴や人体とのおもな違いを理解させる程度にとどめる。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 生物は,種族を保ちながら進化していくこと,生物は多種多様であるが,それらは地球の歴史とともに進化したもので,系統ある類縁関係を示していることを理解させる。
(3) 太陽系の構造と地球や月の運動およびそれらの運動と生活との関係を理解させ,また,恒星や宇宙についての概要を知らせる。
(4) 天然資源がどのように開発され,また,加工されて利用されるかを知らせる。
A 第1分野
ア 光の進み方
(ア) 光線と影
b 光の速さは非常に大きいことを知る。
b 光度の単位としてカンデラ,照度の単位としてルクスが用いられることを知る。
(ア) 反射のしかた
b 平滑でない面では,乱反射が起ることを理解する。
c 平面鏡によって物体の像ができることを理解する。
b 球面鏡が利用されている様子を知る。
(ア) 屈折のしかた
b 屈折率を測定と作図によって求め,それが入射角によって変らないことを理解する。
c 水から空気へある角度以上で入射する光は,全反射することを確かめる。
d プリズムによる全反射を利用して,光の進路が変えられることを調べる。
b 二つのとつレンズを使って,望遠鏡や顕微鏡の原理を調べる。
c 近視と遠視のめがねのはたらきを知る。
(ア) スペクトル
b 紫外線とけい光について知る。
c 赤外線について知る。
b 高温度の物体は光を出し,その光の色が温度によって変ることを調べる。
ア 気体の生成
(ア) おもな気体の性質
b 食塩と濃硫酸から塩化水素をつくり,そのおもな性質を理解する。
c アンモニウム塩とアルカリからアンモニアをつくり,そのおもな性質を理解する。
d 塩酸と酸化剤から塩素をつくり,そのおもな性質を理解する。
e カルシウムカーバイドと水からアセチレンをつくり,そのおもな性質を理解する。
二酸化炭素,塩化水素,アンモニアなど,水に溶けやすい気体の水溶液から気体を発生させる反応を調べる。
イ 沈殿の生成
(ア) 水に溶けやすい塩と溶けにくい塩
硝酸銀と塩化銀,塩化バリウムと硫酸バリウム,塩化カルシウムと炭酸カルシウムのように,水に溶けやすい塩と溶けにくい塩があることを理解する。
(イ) 沈殿ができる反応
b 塩素イオン,硫酸イオン,カルシウムイオンなどのイオンの検出のしかたを知る。
(ア) 金属の酸化
金属について,激しい酸化とゆるやかな酸化があることを調べる。
(イ) 金属酸化物の還元
b 金属酸化物のあるものは炭素や水素によって還元されることを調べる。
ア 磁石と電流
(ア) 磁石の性質
b 地球は大きい磁石であることを知る。
c 磁界中の鉄片は,磁石になっていることを知る。
b コイルに流れる電流が磁界をつくることを理解する。
c 直流電動機の原理を理解する。
d 電流計・電圧計の原理を理解する。
e スピーカーのはたらくわけを理解する。
(ア) 電磁誘導
b 電磁誘導の現象を理解する。
c 交流発電機の原理を理解する。
d 電磁誘導の原理を応用したマイクロホンのはたらきを理解する。
b 変圧器の原理を理解する。
ア 落下運動
(ア) 物体の速さ
b 等速直線運動の性質を理解する。
b 落下の速さは,重さによらないことを確かめる。
c 水平に投げられた物体の速度(速さと方向)を定性的に理解する。
(ア) 重力
b 重力は,地球の引力であることを知る。
b 一様な加速度について,加速度の意味を理解する。
c 物体に力を加えると加速度を生ずることを理解する。
b 振り子の運動が継続するわけを定性的に理解する。
b 円運動をしている物体にはたらいている向心力がなくなれば,物体は直線運動をすることを確かめる。
板を流れに対して斜めにおくと,板は,流れに対して横向きにも力を受けることを調べる。
ウ エネルギー
(ア) 熱機関
b 蒸気機関や内燃機関は,シリンダーとピストンの機構によって動力を得るしくみであることを知る。
c 蒸気タービンは,はね車の機構によって動力を得るしくみであることを知る。
d ロケットやジェットは,吹き出す気体の反作用によって推す力を得るしくみであることを知る。
エネルギーは,いろいろな形をとること,およびそれらの移り変りについて知る。
(5) 電波が受信できること,および原子の構造の大要について指導する。
ア 電子と真空管
(ア) 二極管と電子
二極管が整流作用をもつことを調べ,それが電子の性質によって説明できることを知る。
(イ) 三極管のはたらき
三極管によって電圧の変化が増幅されることを知る。
イ 電波とラジオ
(ア) 電波
b X線は,透過力が大きいことを知る。
b コイルに流れる交流によって,そのコイルの両端に電圧が生ずることを知る。
(ア) 真空放電
b 陰極線の性質から,ブラウン管の原理を知る。
b 原子核は,陽子と中性子とからできていることを知る。
c 放射性元素は,放射線を出すことを知る。
d 人工的に元素を変換できることを知る。
ア 生物の成長と細胞分裂
(ア) 生物の成長
b 植物の発芽と成長の様子を調べる。
c 植物は,成長する間に,いろいろな成長運動をすることを知る。
b 生物の成長は,細胞分裂によることを理解する。
(ア) 分裂・出芽・胞子形成
b カビ類は,無性的に胞子によってふえることを調べる。
植物は地下茎などによって無性的にふえることや,さし木・取り木・つぎ木などによってふやすことができることを知る。
ウ 有性生殖
(ア) 植物の受粉と受精
b 花粉がはい珠に達して受精が行われることを理解する。
b 動物の受精の過程を知る。
(ア) 卵の割れ方
カエルなどの卵の初期の割れ方を知る。
(イ) はいの発生
発生が進むにつれて,組織や器管ができるようになることを知る。
オ 遺伝と変異
(ア) 遺伝
b 生物の形質にはいろいろな変異があることを知る。
b メンデルの法則の大要を知る。
b 良い形質を保存する方法について知る。
ア 地表の歴史
(ア) 地表の歴史を知る手がかり
b 化石から,過去の自然環境や地層の時代を推定できることを知る。
b 太古代・古生代・中生代・新生代の自然の様子やおもな生物について知り,生物の移り変ってきた大要を理解する。
c 人類の出現と進化の大要を知る。
b 日本の地質構造の特徴を知る。
(ア) 進化の事実
生物進化の事実を,化石,発生,分布,形態の比較などから理解する。
(イ) 進化の説明
ラマルク,ダーウィン,ド=フリスなどの進化についての考えを知る。
ウ 生物の系統と分類
(ア) 生物の系統
生物の種類は,系統的に配列できることを理解する。
(イ) 生物の分類
生物の自然分類の大要を知る。
(3) 地球の表面と内部構造,地球と月の運動および太陽系と恒星について指導する。
ア 地球
(ア) 地球の形と大きさ
b 緯度・経度の決め方を理解する。
b 海には海流があることを知る。
c 大気圏の構造を知る。
d 地球の内部の様子とそれを知る手がかりについて知る。
地球の自転と公転を理解する。
(エ) 季節と暦
b 太陽日,太陽時,地方時と標準時などの大要を理解する。
c 太陽暦の決め方を知る。
(ア) 月とその運動
b 月の満ち欠けの様子と月の出入りの時刻との関係を理解し,月の自転と公転を知る。
c 月の満ち欠けと潮の干満とは関係があることを知る。
日食や月食の起るわけを理解する。
ウ 太陽と太陽系
(ア) 太陽
太陽の表面の様子を観測し,光と熱を出していることを知る。
(イ) 太陽系
b 金星,火星,木星などの見かけの運動や,流星について知る。
b 季節によって,見える星座が違うことを知る。
c 銀河系と字宙について知る。
ア 生物資源
(ア) 生物の利用
生物がいろいろの目的に利用されていることを知る。
(イ) 生物資源の保護と開発
b 生物資源の開発について知る。
(ア) 鉱石と金属
b 鉱石のおもな種類と特徴を調べ,また,方鉛鉱などについて吹管分析で化学成分を調べる。
c 製鉄の方法の大要を知り,鋼の特性と利用について理解する。
d アルミニウムの製法を知り,アルミニウムの特性と利用について理解する。
e 銅とその合金の特性と利用について理解する。
b 空気中の窒素からアンモニアが合成されることを知る。
c 硫酸とアンモニアから硫安がつくられることを知る。
b 石油と天然ガスを採掘する方法,原油を分留すると性質の違った油ができること,および天然ガスや石油が化学工業原料にもなることを知る。
c 油脂からセッケンその他の物がつくられることを知る。
d パルプなどのセルロースからビスコースレーヨンその他の再生人造繊維や半合成繊維がつくられ,また,石炭や石油などからナイロンなどの合成繊維がつくられること,およびこれらの人造繊維や天然繊維がそれぞれ特徴をもつことを知る。
e それぞれ特徴をもった合成樹脂がつくられていることを知る。
b 水力,風力および太陽熱の利用について知る。
c 原子力の特性の大要を知る。
(2) A(5)については,それぞれの実際の応用の細部にわたったり,種類を多くあげたりすることは避け,内容としてあげた基本的なことを理解させる程度にとどめる。
(3) B(1),B(2),B(3)などについても,できるだけ観察,実験,観測などの指導を行い,これらの概念や法則がつくられた筋道がよく理解されるように指導する。またB(2)イにおける地質時代と生物については,化石と関連づけて,結論が得られた考え方に重点をおくように指導する。
(4) B(1)オ(イ)で扱う染色体と遺伝の関係については,遺伝の因子が染色体にあることを理解させる程度にとどめ,減数分裂,遺伝子記号などによって説明することは避ける。
(5) A第1分野で指導する諸種の化学変化における化学式および化学反応式の取扱は〔第1学年〕3の(2)に準ずる。B第2分野においても(4)に関連して諸種の物質を取り扱うが,これらのうち(4)イにおける鉱物や有機化合物については,化学式や化学反応式を扱わない。
(6) B(4)イ(ア)で扱う金属鉱物は吹管分析その他の実験や,実物の観察などを通じて指導する。また(4)イ(イ)および(ウ)で扱う化学工業についても,それぞれの工業の過程のうちから実験しうるものを選び,実験を中心として指導する。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
2 指導計画は,各学年の内容において示したような二つの分野に分けて立てる。各分野をさらにいくつかの分野に分けることは避け,二つの各分野は,それぞれ一つにまとまった組織をもつように計画する。
3 各分野の内容を一つのまとまりに組織だてるとき,学問的体系によりすぎることなく,取り扱う事項の関連を重視し,生徒に理解できる体系を組み立てることが必要である。
4 各学年の内容にあげた各事項は,いずれも学校の指導計画に含まれ指導されるべきものであるが,各事項のまとめ方や順序については,必ずしもこれによる必要はない。学校において適切な組織,順序をもった指導計画を立てて指導する。
5 指導計画作成にあたっては,基本的な事項の指導をじゅうぶんに行うことができるよう配慮する。このために,指導計画の中に取り入れて指導する事項は,特に精選することがたいせつである。最低授業時数より多くの時数を充てて指導する場合においても,各学年の内容にあげた各事項の学習をさらに深めることを方針とし,いたずらに多くの事項を取り扱うことは避ける。
6 基本的な事項の指導においても,理論的な演えきに傾いて生徒の経験を無視したり,実生活との結びつきを軽んじたりすることのないように注意し,つとめて具体的な事象からはいり,帰納的な考え方を重視し,このようにして学習した原理や法則を,実際の応用に結びつけるように指導する。
7 知識を得させることにのみ片寄ることなく,知識や理解を得させる過程において,理料の目標とする科学的能力や態度を,具体的に習得していくように指導する。
8 基礎的な実験法や計量器,機械,器具などの取扱の技能を高めることがたいせつであるが,これらが機械的操作に陥らないように,指導する事項との関連をじゅうぶんに図り,操作の意味を考えさせるように指導する。
9 必要に応じて数量的な取扱を行い,事象の関係を定量的にとらえさせ,また,事象の関係が簡単な場合には,事象の変化を予測させることがたいせつである。この場合,数学の学習との関連をじゅうぶんに図るとともに,取り扱う数量や数式の物理的な意味などが,生徒によく理解されるように指導する。
10 実験・観察や野外調査などの指導においては,特に事故の防止についてじゅうぶんに留意する。