第1 目 標
2 家庭・学校・市町村・国その他いろいろな社会集団につき,集団における人と人との相互関係や,集団と個人,集団と集団との関係について理解させ,社会生活に適応し,これを改善していく態度や能力,国際協調の精神などを養う。
3 生産・消費・交通その他重要な社会機能やその相互の関係について基本的なことがらを理解させ,進んで社会的な協同活動に参加しようとする態度や能力を養う。
4 人間生活が自然環境と密接な関係をもち,それぞれの地域によって特色ある姿で営まれていることを,衣食住等の日常生活との関連において理解させ,これをもとに自然環境に対応した生活のくふうをしようとする態度,郷土や国土に対する愛情などを養う。
5 人々の生活様式や社会的な制度・文化などのもつ意味と,それらが歴史的に形成されてきたことを考えさせ,先人の業績やすぐれた文化遺産を尊重する態度,正しい国民的自覚をもって国家や社会の発展に尽そうとする態度などを養う。
社会科は,社会生活に対する正しい理解を得させることによって,児童の道徳的判断力の基礎を養い,望ましい態度や心情の裏づけをしていくという役割をになっており,道徳教育について特に深い関係をもつものである。したがって,社会科の指導を通して育成される判断力が,道徳の時間において児童の道徳性についての自覚としていっそう深められ,この自覚がふたたび社会科における学習に生きてはたらくように指導することが望ましい。
以下に示す各学年の目標は,次のような児童の発達段階に応じた社会科の特性を考慮して作成したものである。すなわち,低学年では,児童の日常生活における諸経験を整理,発展させながら,身近な社会生活をささえている人々の仕事や事物のはたらきなどに着目させ,これらの意味を正しく理解させることを通して,社会生活に対する正しい見方,考え方の基礎や集団の一員としての自主的,自律的な生活態度の芽ばえを育てることが重点であって,社会事象に対するあまり立ち入った解釈や批判をしいてもたせようとすることは適切ではない。学年が進むにつれ,ものごとを系統的に考える力や,社会事象相互の関係を追求したり,批判的に考える力などもしだいに発達してくるので,このような特性をじゅうぶん生かしながら,社会科の目標を有効に達成するように配慮したものである。
第2 各学年の目標および内容
〔第1学年〕
1 目 標
(2) 学校や家庭,その他の身近な生活におけるいろいろなきまりや行事,施設などの意味について理解させ,みんなが健康でしあわせな生活ができるように苦心が払われていることに気づかせる。
(3) 身近な地形・事物の位置関係や場所的相違,あるいは家庭の暮しなどにみられる季節的変化,事物の新旧の違いなどを観察,理解させ空間や時間についての意識を育てる。
(4) 学級や家庭における人間関係に目を開かせ,これらの生活も自分たちの協力やくふうによって,いっそう楽しくなることを考えさせ,集団生活に進んで参加しようとする態度を養う。
(2) みんなで使う道具や施設の使い方,行事への参加のしかたなど,学級や学校できめたことをよく守れば,みんなが楽しい学校生活を送ることができる。
(3) 自分から進んでくふうし,みんなのためになることをすれば,気持よく楽しい学級の生活ができる。
(4) 集団生活では,互に自分の意見や希望をすなおに述べあったり,人の立場や意見も考えて行動したりしなければならない場合が多い。
(5) 家の職業は,家族の生活をささえるもとになっているたいせつなものであり,友だちの家と比べてみても,いろいろな職業があることがわかる。
(6) 家庭で衣食住の準備や世話をしてくれる人の仕事は,忙がしく苦労が多いが,そのほかの家族もめいめいたいせつな役割をもっている。
(7) 人々の仕事には,季節や時刻,人手の関係などで特に忙しいことがある。
(8) 家庭では,みんなが仕事の上で協力するばかりでなく,いろいろくふうして,楽しい時間や行事をもつように努めることがたいせつである。
(9) 人々は,いろいろくふうして,土地を田や畑にしたり,道路にしたりなどして,暮しに役だてているが,その様子は場所によって違っている。
(10) 自分たちの周囲には,いろいろな道路があり,また各種の乗物が走っていて,人や物を運ぶたいせつな役割を果しているが,その利用には危険も伴うから,登下校などにはつねに注意が必要である。
(11) 自分たちの周囲には,公園,空地,遊園地などもあり,遊び場その他に役立っているが,その利用のしかたについてもいろいろな注意やくふうが必要である。
(12) 家庭の衣食住,自分たちの遊びや生活のしかたなどには,季節によって,さまざまな違いがみられる。
(13) 道路や建物などには古いものと新しいものがあり,また道路工事が行われたり,新しい建物ができたりなどして,近所の様子も変っていく。
(14) みんなが健康に暮すことが楽しい生活のもとになるので,学校や社会では病気やけがを防ぐためのきまりをつくったり,行事を行ったりしており,両親や先生もつねに気を配ってくれている。
(2) 内容の(5),(6),(7)等に関連して,家族の人たちの仕事について学習を行う際,単にいろいろな仕事を列挙するだけでなく,いわゆる家計の基礎である職業的活動として行われている仕事と家族の衣食住の世話にあたる仕事などとの間には,「仕事」という同じことばで呼ばれても,そこにはかなり意味の違いがあることに気づかせ,かつそのような職業を通して家庭の生活もより広い社会につながっていることに気づかせておくことが,第2学年の学習の基礎として重要である。ただし,職業の種類については,学級の児童の家庭の職業として取り上げられる範囲にとどめ,それ以上にわたる必要はない。
(3) 内容の(9),(10),(11)等の学習を通して空間的意識を育てることがたいせつであるが,その場合には,児童の日常の生活経験を整理し,具体的な観察の観点を明確にし,絵地図,簡単な模型等の有効な活用に努めることが,特にたいせつである。
(4) 内容の(12)および(13)は,児童の時間的意識を育てるものとして重要な意味をもつている。しかしこの学年としては,これらを単独に切り離して単元を構成するのではなく,学校や家庭生活等に関する具体的な学習と関連して取り扱うことが望ましい。
〔第2学年〕
1 目 標
(2) 人々の生命財産を守るための各種の仕事やその意味について具体的に理解させ,自分たちが日常安心して生活できるようなしくみが考えられていることに気づかせる。
(3) 天候と人々の仕事との関係,自分たちの生活が遠い地方の人々とも関係をもっている事実,人々の使う道具や機械が進んできている事実などの一端を理解させ,空間や時間についての意識を深める。
(4) 学校や家庭ばかりでなく,世の中でも多くの人々がそれぞれの仕事を分担しあっている事実を理解させ,これらの人々に対する協力や感謝の気持を育てる。
(2) 近所の人々は互に協力して不時の災害に備えたり,共同施設の改善を図ったりなどして,安全で住みよい環境をつくる努力を続けている。
(3) 田畑を耕して米や野菜などを作っている農家の人々,山の木を切り出したり炭を焼く人々,海で働く人々などはすべて自然と関係の深い仕事をしている。
(4) 工場では,大ぜいの人々が,生活に必要ないろいろな品物を機械を使って大量に作り出している。
(5) 店の人々は生産者と消費者とをつなぐ役割を果しているが,問屋や市場から品物を仕入れる仕事その他にいろいろなくふうをしている。
(6) 交通,運輸の仕事に携わっている人々は,安全にしかも早く人や物を運ぶために努力している。
(7) 天候の変化は,人々の仕事にいろいろな影響を与えるが,特にあらしなどで田畑が荒されたり,交通,通信機関などがとまったりすると,その復旧には多くの苦労が伴う。
(8) いろいろな仕事をする人の使う道具や機械を見ると,便利になってきたものが多い。
(9) 警察官,消防官,医師などは,盗難,けが,火災,病気等の不幸からみんなの生活を守るための仕事を休みなく続けているが,自分たちとしてもこれらの事故を未然に防ぐくふうをしなければならない。
(10) これらの人々の仕事の特色は,いつでも仕事にとりかかれるように用意しており,時にはその仕事に生命の危険が伴うことなどである。
(11) 人々は郵便,電報などを利用して,よその土地の人々と必要な連絡をしているが,郵便局などで働いている人々は,それらが確実に早く相手に届くよう努力している。
(12) 働く人たちは身なりやことばづかいは違っていても,それぞれたいせつな仕事を受持っていることを考えたり,これらの人々の働きで作られた品物をたいせつに使うくふうをすることなどが必要である。
(2) 特に内容の(3)および(4)については,地域によって,それぞれの働く人の様子を実際に観察したり,調べたりすることの困難な場合もあろう。しかし,そのような場合でも,教科書,スライド,映画の利用その他の方法によって,これを有効に学習させるようにくふうしなければならない。
(3) 内容の(8)の取扱については,内容の(3),(4),(6),(7),(10),(11)等に関する具体的な学習の中で,児童に理解しやすく,できれば実際に比較観察することのできる道具や機械の事例を取り上げていくのが望ましい。時代の順を追ってこれらの変遷を扱うような学習を行う必要はない。
〔第3学年〕
1 目 標
(2) 村(町)の人々の仕事は,その地形,気候,資源,交通条件などと深い関係をもって営まれていることを観察,理解させ,自然環境と人間生活の関係についての関心を高める。
(3) 村(町)の生活には,今昔の違い,歴史的な移り変りがいろいろな姿でみられることを理解させ,先人の努力について考え,これを尊重し,感謝する気持を育てる。
(4) 自分たちの村(町)にも今後くふうや改善を要するいろいろな問題があることを知り,その解決や村(町)の発展を願う気持を育てる。
(2) 村(町)の人々はいろいろな職業に携わっているが,その中には自分の村(町)で働いている人と,他の村(町)に働きに行く人とがある。
(3) 村(町)の人々の仕事や暮しは,その土地の地形,気候,資源,交通,条件などと深い関係を持っているが,かんがいのための各種の工事を行ったり,協同組合を作ったり,水道を引いたりなどして,いろいろくふうをしている。
(4) 村(町)では,みんなの健康を守ったり,火災や水害などの災害を防いだりするために,保健所,診療所,消防団,水防団などをつくって,さまざまな活動を行っている。
(5) 村(町)では,村(町)の人々によって選ばれた議員や村(町)長が村,(町)全体の人々のために必要な仕事を計画したり,行ったりしている。
(6) 村(町)の人々は学校,公民館,図書館,公園などの公共施設を利用して,生活の向上に役だてている。
(7) 村(町)の人々は,昔から神社や寺院などを中心として祭その他の行事を催し,楽しみをともにしてきた。
(8) 村(町)の人口や集落の状態,人々の仕事の種類や方法,道路の様子などをみても,父母や祖父母のこどものころに比べて変った点が少なくないが,そこには鉄道やバスの開通,道路や港の改修,工場の設置など,村(町)の人々のいろいろな努力があった。
(9) 村(町)の人々の仕事や暮しには,電信,電話や各種の交通機関などによる他地域との通信,住来,物資の輸送等もたいせつな働きをしている。
(10) 自分のことばかりでなく,村(町)の人々全体のことを考え,みんなが協力しあえば,村(町)の生活も改善される面が少なくない。
(2) 内容の(3)については,地域によって具体的な取扱方が異なってくるが,いずれの場合にも具体的な観察や事実の認識に基いて,自然と人間生活との基本的なつながりに目を開かせるようにすべきである。したがって学習に地図を利用する機会をできるだけ多くし,基礎的な地図記号や方位等についても的確な指導をしておくことが望ましい。
(3) 内容の(5)に関連した学習においては,村(町)の政治や行政組織等に関する程度の高い学習にはしりすぎないように特に注意する必要がある。村(町)の人々全体の福祉を目ざし,そのために必要な仕事が,村(町)の人々の税金などをもとにして行われるようなたてまえになっていることを理解させることができればよい。
(4) 内容の(7)および(8)に関連した学習を行う場合,この学年の児童の能力を考え,歴史的資料(史跡,記念碑なども含む)についても児童の興味に応じた取扱について配慮する必要がある。
〔第4学年〕
1 目 標
(2) 国内の特色ある土地について,自然環境と人々の衣食住その他の生活などとの関係を理解させ,人間生活と自然との密接な関連について考えさせる。
(3) 人々の自然への積極的な働きかけが,現在いろいろなかたちで行われているばかりでなく,先人の努力やくふうを通じて今日まで積み重ねられてきたことを理解させ,自分たちの生活の歴史的背景についての関心を深める。
(4) 郷土の生活を現在の状態にまで発展させてきた先人の苦心や,他地域の人々の暮し方などに学びながら,郷土の発展に尽そうとする気持を養う。
(2) 県庁の所在地は,県の政治の中心地であるほかりでなく,各種の重要な施設も多いので,自分たちの村(町)の生活も,これと深いつながりをもっている。
(3) 自分たちの村(町)で作られる物資の中には,遠い地方や大都市などへ大量に送り出されて,自分たちの村(町)の人々の生計をささえるもとになっているものもある。
(4) 新しい土地や道路の開発,災害の復旧,公共施設の整備などは,一つの村(町)の力だけでは困難な点もあるので,多くの村(町)の協力あるいは都道府県や国との協力で進められることが少なくない。
(5) 自分の村(町)のことだけでなく,さらに広く他の地域との結びつきに目をそそぐと,国内各地で,それぞれの地形や気候などの条件のもとにいろいろくふうして特色ある生活が営まれていることがわかり,郷土の特色や今後の発展を考えるうえに多くの点で参考になる。
(6) 自然が人間の生活に役だっている一面として,すぐれた自然景観に恵まれた土地があり,その美しさを保護するためにいろいろな努力が払われている場合も少なくない。
(7) 国内には,さまざまな特色をもった地域,たとえば暖かくて雨の多い土地,冬が長くて雪の多い土地,高地,平地,海岸,離島などがあり,衣食住や生産など,生活の上で人々はいろいろな苦心やくふうをしている。
(8) 自然への働きかけや暮しのくふうは大昔の人々の衣食住の様子や生産のしかた,さまざまな用具などにも,いろいろなかたちでみられ,その様子は現在の自分たちの生活と比較して大きな違いがある。
(9) 郷上の人々は土地の開拓,用水路・道路の開削,新しい産業の導入など,自然の制約を克服しながら生産や生活の向上に努めてきたが,このような事例は他の土地にも多くみられる。
(10) 人々の旅のしかたや物資の輸送のしかたは,江戸時代と明治以後とでは,道路の発達や新しい交通機関の出現,世の中の変化などに伴って著しく変り,便利になった。
(11) 自分たちの郷土を発展させることが,日本の発展の基礎になることを考え,先人の経験を生かして郷土の生活の改善のしかたなどについてくふうすることがたいせつである。
(2) この学年では,郷土という語を,自分たちの村(町)より広い地域をさす場合に用いているが,その地域的範囲は,行政区画としての都道府県と一致する場合と,一致しない場合とがあることにじゅうぶん留意すべきである。
(3) 内容の(3)に関連した学習を行うにあたって,特に他地方へ大量に送り出しているような生産物資のない地域(たとえば都市の住宅地区など)の学校では,消費物資の面から他地方とのつながりを理解させるような方法を講ずることが望ましい。
(4) 内容の(6)の取扱においては,内容の(7)などの学習との関連を考慮し,ら列的な観光地巡りや国立公園巡りのような学習に陥らないように留意すべきである。また内容の(7)に関連した学習においては,それぞれの土地の特色を具体的に理解できるような資料を多く用意しておくこと,郷土の生活との比較や関係などについても必要に応じて指導することなどがたいせつである。
(5) 内容の(8)に関連した学習においては,日本の歴史上にみられる具体的な人々の生活を取り上げるようにし,人類一般の文明発祥の歴史の学習などにはしらないように留意すべきである。また内容の(10)に関連した学習においては,その地域的範囲を必ずしも郷土だけに限定することなく,それぞれの時代の交通の特色やその変化などを,児童に最も効果的にはあくさせるようにくふうすべきである。したがって,これらの学習においては,特に視聴覚資料や歴史年表などの活用がたいせつである。
〔第5学年〕
1 目 標
(2) わが国における工業生産の現状やその発達が国民生活全般に及ぼした影響等について理解させ,わが国の発展と科学,産業などとの関係について考えさせる。
(3) わが国の地理的環境の特性をはあくさせるとともに,国内各地における生産活動の条件として重要な役割を果している交通,商業,貿易などについても目を開かせる。
(4) 日常生活の身近な問題でも国全体としての生活に結びついている場合が多いことや,自分が国民のひとりとして生活している事実に気づかせ,国土に対する愛情や国民的自覚の基礎を養う。
(2) 四面を海に囲まれ,山がちの日本の国土の特色に関連して重要な意味をもつ水産業,林業,鉱業のほか,農業,牧畜業,工業,商業など,国民生活をささえる産業の種類はきわめて多く,これらの産業は相互に密接な関連をもって営まれている。
(3) わが国では地形その他の条件のため,国土の2割たらずの土地が耕地として開かれているにすぎないが,この狭い耕地でできるだけ生産を高めなければならないので,わが国の農業には他国にみられない特色があり,いろいろな苦心が払われてきている。
(4) 野菜や果樹や工芸作物の栽培,養蚕,酪農等もそれぞれ重要な役割を果しているが,夏の温度が高く雨量の多い気候を生かして発達してきた米の生産が農業生産の根本になっており,毎年の米や麦の生産高の多少が国民生活に大きな影響を与える。
(5) 農家の人々の労働やこれに伴う苦心は,土地の条件によって異なるが,一般に各種の災害対策,土地の改良,土地に適した品種や肥料や進んだ農機具の導入,経営のしかたなどについて払われる苦心が大きい。
(6) 現在のわが国では,いっそう農業生産を高める必要があるので,個々の農家の努力ばかりでなく,国の立場からも,新しい土地の開発,生産技術や経営の改善などの仕事が進められている。
(7) わが国の工業は,国民の衣食住や産業の基礎になる資材の生産などの面ばかりでなく,貿易の上からもきわめて重要な役割を果している。
(8) 今日の工業は,一部の特殊な手工業をのぞいて大部分が機械生産に移っているが,機械生産は手工業生産と比べて新しい動力や機械の利用,分業のしくみ,大量生産などの点で著しい特色をもち,わが国では明治以降特に発達したものである。
(9) 明治以後,最初は繊維工業などを中心に発達したわが国の工業は,しだいに重工業方面にも及び,アジアにおける重要な工業国としての地位を高めてきたが,この間,新しい技術の導入や改善,発明や発見,その他生産の向上のために払われた努力はきわめて大きかった。
(10) わが国の近代工業は,これまでいわゆる四大工業地帯を中心に発達してきたが,最近ではこのほかにも新しい工業地域が各地におこり,すぐれた工業製品もしだいに多くなりつつある。
(11) 工業の著しい発達は,国の経済力を高め,国民生活を向上させたばかりでなく,人口の分布,農林水産業などにも大きな変化と影響を与えた。
(12) 産業の発達に伴い国内国外各地からの原料の入手,あるいは製品の販売等が重要になり,市場,問屋,小売店などがたいせつな働きをしているが,このような商業のしくみはしだいに発達してきたものである。
(13) また国内の陸上交通や海上交通もしだいに整備,発達し,今日では主要な鉄道幹線や国内航路,さらには航空路等が国内各地の生活をますます緊密に結びつけ,国民生活全般のたいせつな基礎となっている。
(14) わが国の工業は,多くの原料を外国から輸入し,また製品の市場を広く海外に求める必要があるので,諸外国との貿易が行われており,そこにはいろいろな苦心が払われている。
(15) 国民生活の発展は科学の進歩や産業の発達などにまつところが大きいから,それらに深い関心をもつとともに,その成果を国民全体の福祉のために役だてようとすることがたいせつである。
(2) 特にこの学年ごろから,各種の統計資料やグラフを利用する学習の機会が多くなる。したがって,その際に必要な基礎的知識や技能については,算数科との関係などを考えながら,適切な指導を行うべきである。
統計やグラフの利用にあたっては,あまり細かな数字にとらわれず,その概数をはあくさせること,全体的な傾向を理解させることなどが重要である。
(3) また,利用する地図の種類もふえ,地球儀を使う必要性も多くなる。このようなことと関連して,たとえば等高線,等温線,経度,緯度などのおおまかな意味や分布図の読み方等の指導についても留意する必要がある。
(4) 内容の(12)に関連した学習においては,この学年の児童の能力をじゅうぶん考え,詳細な商業史にわたることのないように特に留意すべきである。
〔第6学年〕
1 目 標
(2) わが国の政治のしかたや国民生活は,それぞれの時代の特色をもちながら今日に及んでいることを具体的に理解させ,国家や社会の発展に貢献した人々の業績などについて考えさせる。
(3) 世界の主要な国々の様子やわが国とこれらの国々との関係などを具体的に理解させ,現在のわが国が世界の国々から孤立しては存在できないことに気づかせる。
(4) わが国の文化や伝統に対する正しい理解やこれを尊重する態度などを深め,進んで世界の平和や人類の福祉に貢献しなければならないわが国の立場について考えさせる。
(2) 現在の政治は国民全体の意見を政治に現すため,国民が選んだ代表者による議会政治のかたちをとっている。
(3) このような政治のしくみのおおもとのほか,国家の理想,天皇の地位,国民としてのたいせつな権利や義務などが,日本国憲法によって定められている。
(4) このような現代の政治や国民生活が行われるようになったのは,われわれの祖先が政治を改め,進んで海外の文化を取り入れ,国家や社会の発展に尽してきた努力の結果であるが,わが国の政治や文化は,それぞれの時代の特色をもちながらしだいに広く国民全般に及び,また世界の国々とのつながりも広く深くなってきた。
(5) わが国では,農耕生活が始まってから,しだいに人々の生活も高まり,大和(やまと)朝廷による国家の統一,大化の改新による政治の改革などを経て,朝廷を中心とする貴族の政治が,奈良(なら)や京都を都として栄えたが,その間,大陸の文化も取りいれられ,独特の日本文化がつくられた。
(6) やがて地方に起った武士が政治の実権をにぎり,その政治は,鎌倉(かまくら)幕府の創立,蒙古(もうこ)襲来等を経て室町幕府に及んだが,その間,武士は農村に住んで地方の開発に努めたので,商業も盛んになり,村や町も発達し,都の文化も地方に広まった。
(7) 戦国の世の中がほぼ統一された前後には,ヨーロッパとの交渉が始まり,日本人の海外発展も盛んになった。やがて江戸幕府が武士を中心とする社会のしくみを固めたり,鎖国を行ったりしたので,わが国は世界の進展から遅れることになったが,その間,国内の諸産業や都市が発達し,町人の経済力や文化が高まり,武士の支配はしだいに弱くなっていった。
(8) 開国後やがて明治維新が行われ,四民平等の世の中に移っていったばかりでなく,その後の政府や民間の先覚者たちの非常な努力によって,欧米の文化が取り入れられ,憲法がつくられ,議会政治への道が開かれた。また近代産業もおこり,日清(しん),日露の戦争や条約改正を経て,わが国の国際的地位は向上したが,その後,第二次世界大戦における敗戦を経て国内の事情も改まり,民主的な国家として新たな発展を遂げつつある。
(9) 現在地球上には20数億の人々が多くの国々をつくって,それぞれアジア,ヨーロッパ,アフリカ,南北アメリカ,オセアニア(大洋州)等の各地域に生活しているが,わが国にとって貿易その他の面で関係の深い国も多い。
(10) 世界の国々の中には,わが国とは古くから交渉が深く,現在のアジアにおいても重要な他位を占めている中国やインド,第二次世界大戦後独立の機会を得て,産業の開発や新しい国づくりに努めているアジアやアフリカの国々,古くから産業や文化の開かれた西ヨーロッパにおけるイギリスその他の国々,広大な土地や資源に恵まれ,現在の世界で重要な役割を果しているアメリカ合衆国,ソビエト連邦などがある。
(11) このような世界の国々は,最近のめざましい交通,通信,報道機関の発達などによって,互に深く結びつくようになったが,一方国家間の利害の対立や紛争はなお絶えず,特に原子力時代といわれる今日では,これを戦争という手段によって解決しようとすれば,人類全体にとって恐るべき結果が予想されるので,人々の平和への願いはいっそう高まってきている。
(12) 第二次世界大戦後,国際連合というしくみがつくられ,世界の国々はこれに加盟して世界の平和や人類の福祉のために努力しているが,現在,わが国もその一員として重要な役割を果している。
(2) 内容の(5),(6),(7),(8)等に関連した学習においては,
ア 前学年までに児童が習得した歴史的理解との関連をじゅうぶんはかるとともに,単に歴史的事象をもうら的に記憶させるのではなく,特に内容の(4)に示したようなわが国の歴史についての全体的なはあくができるように配慮することがたいせつである。
イ 歴史上の人物を取り上げて指導する必要があるが,その場合には,人物教材の長所,たとえば児童の歴史的理解を具体的にし,学習に対する興味を高めることができる点などをじゅうぶん生かすとともに,時代的背景から遊離した取扱や人物中心の学習にはしりすぎないように留意すべきである。
ウ 特に文化の取扱方については,児童の能力をこえないように注意すること。
したがって,たとえば内容の(5)の文化の場合でも,かな文字,大仏その他著名な神社,寺院など,児童に親しみ深いものを効果的に取り上げることが望ましい。
エ 歴史的事象もできるだけ具体的な地理的位置や環境などと結びつけて指導することがたいせつである。
(3) 内容の(9),(10),(11)等に関連した学習においては,中学校における世界の諸地域に関する学習との関連をよく考慮し,ここでは国際理解,国際協調の精神を養うために必要な程度の基本的事項にとどめるべきである。なお,このような学習を通して,わが国の国旗をはじめ諸外国の国旗に対する関心をいっそう深め,これを尊重する態度などを養うことがたいせつである。
第3 指導計画作成および学習指導の方針
1 どの程度具体的な指導計画をあらかじめ作成しておくことが効果的であるかは,個々の教師の経験や能力によって異なる。
しかし社会科の場合は,単元という内容・学習経験の具体的なまとまりをくふうし,これに基いて指導を進めていくのが原則であるから,少なくとも,
(2) 単元相互の関係。
(3) 各単元における展開のあらすじと所要時間の概略。
2 社会科における単元は,その学年で扱う内容の単なる便宜的区分ではなく,児童がどのような能力や経験をもち,身のまわりの社会的事象をどうとらえ,どのような疑問や問題をもっているか等の実態と教師の指導目標を結びつけて考えたとき,具体的に決定できるものである。
以上のことから,
(2) 学習指導要領に基いて作成された指導計画に関する地域的参考資料を利用する場合にも,単にこれを機械的に模倣するのでなく,じゅうぶん研究検討を加えたうえ,学級児童の実態に適合した指導計画を作ることが望ましい。
社会科本来の目標が個々の単元において,あいまいにならないようにじゅうぶん注意すべきである。
(2) 単元学習の趣旨から考えて,学習の目標を児童自身に効果的にはあくさせるくふうが,特に重要である。それぞれの単元の導入段階などの指導計画や学習指導には,このような配慮がじゅうぶん払われていることが望ましい。
(3) 社会科で行われる各種の学習活動のうちには,たとえば見学とか野外調査のように事前によく検討し,綿密な準備や計画を考えておかなければならないものがある。指導の直前になってあわてて予定を変更したり,漫然と児童を校外に連れ出して時間の浪費に終ることのないように留意すべきである。
(4) 習得した知識の整理をしたり,結論を確かめたりする終末の段階の学習になると,時間が足りなくなって,指導を急いでしまう場合が少なくない。