第2章 小学部の教育課程とその編成

 

1 小学部の教育の目標

 小学部においては,盲児童の心身の発達に応じて,初等普通教育を施し,その教育の目標は,小学校における教育の目標に準ずるものとする。

 小学校における教育の目標は,学校教育法第十八条において、次のように定められている。

一 学校内外の社会生活の経験に基き、人間相互の関係について正しい理解と協同、自主および自律の精神を養うこと。

二 郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養うこと。

三 日常生活に必要な衣、食、住、産業等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

四 日常生活に必要な国語を、正しく理解し、使用する能力を養うこと。

五 日常生活に必要な数量的な関係を、正しく理解し、処理する能力を養うこと。

六 日常生活における自然現象を科学的に観察し、処理する能力を養うこと。

七 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ること。

八 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸等について、基礎的な理解と技能を養うこと。

 小学部の教育課程は,この目標の達成を目ざし,この時期における盲児童の成長発達に即し前章に示すところに留意して編成され展開されなければならない。

 

2 教科と教科以外の活動

 (1) 教     科

 小学部の教科は,国語・社会・算数・理科・音楽・図画工作・家庭および体育を基準とする。

 盲学校小学部における各教科の目標は,小学校における各教科の目標に準ずるものであるが,この目標を達成するためには盲児童の特性にかんがみて留意すべき点が多い。以下,小学校の各教科の目標および盲学校小学部における留意事項を示す。

国 語 科  国語科は,日常生活に必要な国語を,正しくかつ効果的に使用する能力と態度を養うための教科である。日常生活におけることばの役割から考えて,国語科の一般目標は次のとおり定められる。小学校においては,児童の発達に応じてこの目標の達成を目ざす。 1 自分に必要な知識を求めたり、情報を得ていくために、他人の話に耳を傾ける習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

2 自分の意志を伝えて他人を動かすために、生き生きとした話をしようとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

3 知識を求めたり、情報を得たりするため、経験を広めるため、娯楽と鑑賞のために広く読書しようとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

4 自分の考えをまとめたり、他人に訴えたりするために、はっきりと、正しく、わかりやすく、独創的に書こうとする習慣と態度を養い、技能と能力をみがく。

 以上のように,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことの習慣と態度を養い,技能と能力をみがくためには,ことばについての知識や理解を高めることはいうまでもなく,また鑑賞の力を養うことが必要である。

 この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。

○盲児童は生活経験が豊かでないために語いの数も少なく,また視力の障害のために意味を理解しにくいことばが多い。 この欠陥を補うために,あらゆる機会をとらえてことばの意味がじゅうぶん理解できるように指導し,また語いを豊富にしてやる。 ○点字の習得は特に必要であるから,効果的な指導によって点字による表現や理解がじゅぶんできるようにさせる。

○弱視児童については,その視力の程度に応じて,日常特に使用される文字についての墨字の指導を行うことが望ましい。

社 会 科

 社会科は,児童に社会生活を正しく理解させ,同時に社会の進展に貢献する態度や能力を身につけさせるための教科である。

 小学校における社会科の目標は次のとおりである。

1 自己および他人の人格やそれぞれの個性を重んずべきことを理解させ,自主的自律的な生活態度を養う。

2 家庭・学校・市町村・国その他いろいろな社会集団につき,集団内における人と人との相互関係や,集団と個人,集団と集団との関係について理解させ,集団生活への適応とその改善に役だつ態度や能力,ならびに国際協調の精神などを養う。

3 生産・消費・交通・通信・生命財産の保全・厚生慰安・教育・文化・政治などの社会機能の働きや,その相互の関係について基本的なことがらを理解させ,社会的な協同活動に積極的に参加する態度や能力を養う。

4 人間生活が自然環境と密接な関係をもって営まれていることを理解させ,自然環境に適応し,それを利用する態度や能力を養う。

5 社会的な制度・施設・慣習などのありさまと,その発達について理解させ,これに適応し,これを改善していく態度や能力を養う。

 この目標を達成するために,盲学校では,さらに次の点に留意しなければならない。 ○盲児童は視力の障害のために社会性の発達に遅滞や偏向を招く。この欠陥を補い,円満な人間関係を結び,集団生活への適応についての態度と能力が養われるよう,適切な活動を用意する。

○盲児童は視力の障害のため経験範囲が狭いから,これらの欠陥を補い,社会機能の働きやその発達,自然環境との関係などについて理解させるためにじゅうぶんな経験を与えるよう,特別な配慮をする。

算 数 科  算数科は,児童が数量的思考を用いて,自分の生活の向上をはかっていく教科である。

 小学校における算数科の目標は次のとおりである。

(1) 算数を,学校内外の社会生活において,有効に用いるのに役だつ豊かな経験をもたせるとともに,物事を,数量関係から見て,考察処理する能力を伸ばし,算数を用いて,めいめいの思考や行為を改善し続けてやまない傾向を伸ばす。

(2) 数学的な内容についての理解を伸ばし,これを用いて数量関係を考察または処理する能力を伸ばすとともに,さらに,数量関係をいっそう手ぎわよく処理しようとして,くふうする傾向を伸ばす。

 この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○図形や計量に関する指導については,視力の障害を補うための特別の教具をくふうすることなどにより,その経験の範囲を広げるように配慮する。

○計算の方法としては珠算と暗算によることが多いから,これについて特に力を注ぐ。

理  科

 理科は,科学的な思考や技能によって,生活を高めていくことを目ざす教科である。

 小学校における理科は次のことを児童の身につけさせることを目標とする。

(1) 自然の環境についての興味を拡げる。

(2) 科学的合理的なしかたで,日常生活の責任や仕事を処理することができる。

(3) 生命を尊重し,健康で安全な生活を行う。

(4) 自然科学の近代生活に対する貢献や使命を理解する。

(5) 自然の美しさ,調和や恩恵を知る。

(6) 科学的な方法を会得して,それを自然の環境に起る問題を解決するのに役だたせる。

(7) 基礎になる科学の理法を見いだし,これをわきまえて,新しく当面したことを理解したり,新しいものを作り出したりすることができる。

 この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○観察実験などの学習活動をなるべく多く用意し,その際には視覚以外の感覚の働きによって具体的な知識・理解の習得と科学的な見かた考えかたを養うよう,特別のくふうと配慮とを要する。

○盲児童は,空間概念,光に関する現象の理解が特に困難である。これらに関する教材の選択,配列やその扱いには特別の配慮とくふうを要する。

○機械・器具・電気・薬品等の取扱については特別なくふうによって危険予防の能力と習慣を養うことに特に意を用いる。

音 楽 科

 音楽科は音楽経験を通じて,深い美的情操と豊かな人間性とを養い,円満な人格の発達をはかり,好ましい社会人としての教養を高める為の教科である。音楽科の一般目標は次のとおりである。小学校においては児童の発達に応じて,この目標の達成を目ざす。 1 いろいろな音楽経験を積むことによって,いっそう音楽を愛するように育てる。

2 よい音楽を鑑賞し,音楽の鑑賞力を高める。

3 音楽の表現技能を養い,音楽経験を通しての創造的な自己表現を奨励する。

4 学習経験を豊かにするために必要な,音楽に関する知識を得させる。

5 音楽を理解したり感じとる力を,各個人の能力に応じて高める。

6 音楽経験の喜びや楽しさを,家庭や地域社会の生活にまで広げる。

7 音楽という世界共通語を通して,他の国々に対するいっそうよい理解を深める。

 この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○聴覚は盲児童のあらゆる行動のよりどころになるものであるから,あらゆる機会をとらえて聴覚訓練をすることが必要であるが,特に音楽を通じて聴覚を鋭敏にするように指導する。

○盲児童はうるおいのある情緒に欠けやすい。音楽によって盲児童の美的情操と創造力を伸ばすための経験を豊富に与えるようにする。

○点字楽譜の読解,表現に対する基礎的な技能の習熟に努める。

図画工作科  図画工作科は,造形的な表現活動や鑑賞活動を通して,日常生活に必要な衣・食・住・産業についての基礎的な理解と技能とを与え,生活を明るく豊かに営む能力・態度・習慣などを養うことを目ざす。

 小学校における図画工作科の目標は次のとおりである。

(1) 個人完成への助けとして。 a 絵や図をかいたり,意匠を創案したり,物を作ったりするような造形的創造活動を通して,生活経験を豊富にし,自己の興味・適性・能力などをできるだけ発達させる。

b 実用品や美術品の価値を判断する初歩的な能力を発達させる。

c 造形品を有効に使用することに対する関心を高め,初歩的な技能を発達させる。

(2) 社会人および公民としての完成への助けとして。 a 造形的な創造活動,造形品の正しい選択能力,造形品の使用能力などを,家庭生活のために役だてることの興味を高め,技能を発達させる。

b 造形的な創造活動,造形品の選択能力,造形品の使用能力などを,学校生活のために役だてることの興味を高め,技能を発達させる。

c 造形的な創造活動,造形品の選択能力,造形品の使用能力などを,社会生活の改善,美化に役だてるための関心を高め,いくらかの技能を養う。

d 人間の造形活動の文化的価値と経済的価値についての,初歩的な理解を得させる。

e 美的情操を深め,社会生活に必要な好ましい態度や習慣を養う。

 この目標を達成するために,盲学佼ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○図画工作科における活動は工作に関するものを主とし,視力障害の程度に応じて,簡易な絵画の鑑賞や図案などを加えることが望ましい。

○事物を常に全体的な関係において理解させるように留意し,立体的な物も正しくはあくしうる能力を養う。

○教具を豊富に用意して触覚の鋭敏化をはかる。

家 庭 科  家庭科は,家庭生活に役だつ仕事を中心として,家庭生活に必要な知識・理解・技能などを養い,家庭生活を充実発展させようとするための教科である。

 小学校における家庭科は次のことを児童の身につけさせることを目標とする。

1.家庭の構造と機能の大要を知り,家庭生活が個人および社会に対してもつ意義を理解して,家庭を構成する一員としての責任を自覚し,進んでそれを果そうとする。

2.家庭における人間関係に適応するために必要な態度や行動を習得し,人間尊重の立場から,互に敬愛し力を合わせて,明るく,あたたかい家庭生活を営もうとする。

3.被服・食物・住居などについて,その役割を理解し,日常必要な初歩の知識・技能・態度を身につけて,家庭生活をよりよくしようとする。

4.労力・時間・物資・金銭をたいせつにし,計画的に使用して,家庭生活をいっそう合理化しようとする。

5.家庭における休養や娯楽の意義を理解し,その方法を反省くふうして,いっそう豊かな楽しい家庭生活にしようとする。

 この目標を達成するために,盲学佼ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○視力の障害を克服し,積極的に家族の一員として,家庭生活に適応するための正しい心構えや態度を身につけさせる。

○起居動作,その他生活技術の基礎について,視覚以外の感覚を通して習得し,生活を安全に能率的に営みうる能力と習慣を身につけさせる。

体 育 科  体育科は,健康の保持増進に努め,病気や危険から自己や他人を安全に守り,精神的にも明朗健全であって,かつ好ましい社会態度やレクリエーション活動の基礎を身につけさせることを目ざす教科である。

 体育科の一般目標は次のとおりである。小学校においては,児童の発達に応じて,この目標の達成を目ざす。

(1) 身体の正常な発達を助け,活動力を高める。

(2) 身体活動を通して民主的生活態度を育てる。

(3) 各種の身体活動をレクリエーションとして正しく活用することができる。

 この目標を達成するために,盲学校ではさらに次の点に留意しなければならない。 ○視力障害による運動の障害を補正し,視覚以外の感覚や,運動機能の発達を助け,活発な身体活動の基礎的な能力の向上に努める。

○視力障害からくる不必要な緊張を取り除き,正しい姿勢や歩行ができるようにする。

○歩行の安全,杖の使用,各種の傷害防止,危険物に対処する態度や能力を養う。

○集団活動を通して,人間関係における協力と責任を自覚させ,健康で明るい積極的な精神を養う。

○盲児童の生活には適切なレクリエーションが乏しいので,スポーツによる健全な余暇利用の態度や技能が養われるよう留意する。

 (2) 教 科 以 外 の 活 動

 教科以外の活動は,教科としては組織されないが,小学部における教育の目標の達成に寄与する有効な学習活動で,教育課程の一部として,教科の指導以外に設けて指導を行うものである。

 教科以外の活動においては,一般的に次の諸目標に重点がおかれる。

1 民主的な生活について望ましい態度と習慣を養い,公民的資質を向上させる。

2 健康についてよい習慣を育て,個人的および社会的健康に留意させるとともに,不慮の危険を防止し,これに対処する能力と習慣を養う。

3 個性に即して健全な趣味を育て,余暇の活用などに対する望ましい態度や技能を養う。

 その活動の領域は,広範囲にわたるが,年間を通て計画的継続的に指導すべき活動としては,学級会活動,児童会活動およびクラブ活動がある。

 これらの活動についてはいずれも児童の生活の実態とその必要や能力に応じ,また学年の発達段階と学級の性質その他児童相互の集団構成などにもじゅうぶんな考慮をはらい,児童の自発的な活動が健全に行われるように計画し指導しなければならない。

 教科以外の活動の指導にさいしては,教科との関連をもじゅうぶん考慮し,日常生活の実践に役だつ指導資料などを豊富に与え,自発的な活動の場を構成して社会的な経験領域を拡充させることに努めなければならない。

 (3) 指 導 時 間 数

 小学部各学年における教科と教科以外の活動の指導時間数および総指導時間数は次の表のとおりに定める。

 教科と教科以外の活動の指導時間数および総指導時間数
 
\学年
教         科
国 語
228〜304

(6〜8)

228〜304

(6〜8)

228〜304

(6〜8)

228〜304

(6〜8)

228〜304

(6〜8)

228〜304

(6〜8)

社 会
114〜152

(3〜4)

114〜190

(3〜5)

152〜190

(4〜5)

152〜190

(4〜5)

152〜228

(4〜6)

152〜228

(4〜6)

算 数
114〜152

(3〜4)

152〜190

(4〜5)

152〜190

(4〜5)

152〜228

(4〜6)

152〜228

(4〜6)

152〜228

(4〜6)

理 科
76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

音 楽
76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

図 画

工 作

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

家 庭
76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

体 育
114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

114〜152

(3〜4)

教科以外の

活動

38〜76

(1〜2)

38〜76

(1〜2)

38〜76

(1〜2)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

76〜114

(2〜3)

総指導時間
836〜912

(22〜24)

874〜950

(23〜25)

950〜1064

(25〜28)

988〜1102

(26〜29)

1064〜1216

(28〜32)

1064〜1216

(28〜32)

 備考 (1) この表は,教科および教科以外の活動に必要な年間の最低および最高の指導時間数ならびに総指導時間数を示す。また,あわせて1年38週の指導を行ったとき,1週当りの平均指導時間数を()の中に示す。

(2) この表に示された時間数は,すべて50分をもって1単位時間とする。

ただし,これは指導を50分ごとにくぎるべきであるという意味ではない。 (3) 各教科および教科以外の活動の指導時間の間に適当な休憩および昼食の時間を設ける必要があるが,これらの時間は,この表に示す時間数には含まれていない。

(4) 実際の指導にあたっては,教科の統合をはかるなど,実情に即して指導する場合においても,この表に示された時間数をもととしなければならない。

(5) 私立学校においては,この表に示された教科および教科以外の活動のほか,その必要によって宗教に関する教科を設けることができる。

この場合,総指導時間数は,この表に示された時間数の範囲をこえてはならない。  
3 学校における教育課経の編成

 学校における教育課程は,上に示したところに従がい,次に述べる事項に留意して,具体的に編成されなければならない。

(1) 同じ学年あるいは,学級に在籍する児童の間にも,個性と発達の差はもとより,視力の程度,失明の時期に相違があり,またその中には年齢や教育歴を異にするものもある。学校においては,個々の児童の特性についての適確な資料に基き,できうる限り個々の児童の必要に応ずることのできる教育課程を編成しなければならない。

 特に,はなはだしい遅滞を示すものや、心身に他の障害をあわせて持つものについては,その指導上特別な考慮を払うように努めなければならない。

(2) 児童の望ましい経験を発展させるために,教科間の連関をじゅうぶん考慮し,内容の重複や間げきを避け,身体的,知的,社会的,情緒的な経験が,全体としてつりあいがとれて学習が行われるよう配慮しなければならない。

(3) 1週間あるいは1日の指導計画においては,いろいろな活動を組み合わせ,学習に変化と調和を保って指導ができるよう,教科ならびに教科以外の活動の配列と配当時間数を考慮し,児童の充実した学習が積極的に行われるように配慮する一方,児童の負担が過重に陥らぬように注意しなければならない。

(4) 低学年の児童の学習は,心身の発達に即して,教科の区別にあまり強くとらわれることなく,いくつかの教科を統合して指導するほうが効果的である場合などがある。その場合も,統合された各教科の目標はじゅうぶんに達成されるよう,周到な計画のもとに指導を行わなければならない。

(5) 道徳教育・健康教育については,教育課程の全体計画において重視しなければならない。その指導は各教科および教科以外の活動において,互に関連をもって,あらゆる機会をとらえ,あらゆる活動を通て行われることが望ましい。

(6) 教育課程は,それぞれの学年の児童の発達段階に即し,小学部全体として発展的系統的な組織をもって編成されなければならない。小・中学部の教育課程は,一貫性をもって編成されることが必要である。幼稚部との関係も同様である。

(7) 学校における職員組織,学級編成および校舎・運動場・学校図書館・寄宿舎等の施設ならびに実験実習,給食その他の設備をじゅうぶんに整備することは,すぐれた教育課程の編成に欠くことのできないものである。しかし,教育課程の編成にあたっては,これら学校における環境の条件を吟味し,それに即して有効な学習が行われるように留意しなければならない。

 特に,視力の障害による学習上の困難を補うような教材教具の活用によって,学習の効果をじゅうぶんにあげるよう配慮することが望ましい。

(8) 地域の自然的,社会的環境に即して教育課程は編成されなければならないが,一方地域の人々の盲教育に対する理解を深め,その協力を得ることがたいせつである。とかく校内にひきこもりがちな児童の経験を広げ,社会性を伸ばすための効果的な学習が行われるためにも,地域との関係は重視しなければならない。

(9) 生活指導の機会は,教科および教科以外の活動においても多く見いだされるが,その指導の徹底をはかるよう教育課程の編成においても留意しなければならない。

家庭との関係はもとより,寄宿舎生活をする児童については寄宿舎における指導,また通学児童については通学途上の安全指導などの関係は,教育課程のうえでも留意する。

(10) 教育課程は,学校における実践によって絶えず評価され,所期の教育目標がどの程度達成されたかを確かめなければならない。これに基いて教育課程の改善について適切な措置がとられることがたいせつである。