応用数学は,「数学Ⅰ」あるいは「数学Ⅱ」に続いて履修する科目であって,数学をよく用いる専門分野の学習を容易にするため,特にそこに必要な数学の部門について,その基本的なことを取り出して学習することがねらいである。
その目標は,取り上げる内容によって相違はあるが,次のような点は,いずれの場合にも共通である。
(2) 記号の使い分けに対する理解を深め,応用方面で用いられている数学的な記号やその用法に慣れる。
(3) 取り上げに内容に密接な関連をもった数学的な考え方についての能力と態度とを高める。
2.内容
(1) 次にあげる内容は,この科目の指導計画で取り上げられる項目の全体の概略を示したものである。実際には,それぞれの課程の必要に応じて,この中から適当ないくつかを取り出して指導するのであって,たとえ5単位の場合でも,この全体を取り上げることを意味するものではない。したがって学校や課程によって,この科目で指導する内容は,かなり変化があるのが普通である。
b その数学的な意味や応用のしかたなどが,生徒が努力すれば理解しうる程度のものであること。
注 専門科目で必要であるからといって,何もかにも取り入れて盛りたくさんな計画を立てることは,適当でない。基本的で,発展性のある内容を精選することが必要である。専門科目の中で用いる度数の少ないもの,専門科目の中で説明したほうが理解しやすいものなどは専門科目のほうにゆずったほうがよい。
内容とその説明
a 統計
この内容の扱いは,専門科目での必要よりも,卒業後における必要を多く考えて程度を決める必要がある。課程によっては,相関関係を詳しく知るための方法としての相関線にふれることも必要であろう。また,調査のしかたについては,理論的な説明は無理であるが,数表や公式を利用して実際に処理したり,結果を用いたりする程度まで進めることも,課程によっては必要である。この場合,世論調査,品質管理などの実際についの説明も,必要であれば加えることが望ましい。
b 数列・級数
定積分等への準備のために課す場合と,複利計算・年金計算等の基礎として課す場合とで,いくぶん扱いは異なるであろう。後者の場合には,各種の実用的な数表(たとえば現価表)についての指導も必要である。前者の場合には,積分の指導計画の中に含めてもよい。
(2) 複素数の極表示(z=r(cosθ+isinθ)となること)
(3) 複素平面上における四則の幾何的解釈
(4) ド=モアブルの定理(指数が正の整数の場合)
d 三角函数
「数学Ⅰ」における三角函数を履修している者といない者とで扱いが異なるであろうし,三角函数がどんな意味で必要であるかによって重点が異なるであろう。周期現象の表現として必要な課程では,測量的な扱いは簡単にしたり省いたりすることも考えられるし,測量的な応用が必要な方面では,一般角の三角函数の性質は簡単にして,測量公式とその検算法に重点をおくことも考えられる。
e 微分
なお必要な課程では,次のような事項を加える。
(2) 自然対数および指数函数・対数函数の微分。(lim n→∞(1+1/n)n をeと表わすことを知り,これをもとにして,log x の微分を知ること。)
(3) 簡単な函数についてf(x)=f(0)+f´(0)/1 x+f〃(0)/1・2 x2+……が成り立つことを確かめ,これを利用すること。
なお必要あれば,次のような事項を加える。
(2) ex,1/xの積分
(3) 導函数と変数との間の関係を表わしたものとして微分方程式の意味を扱い,図によってその解の意味を明らかにする。(微分方程式の意味と図的解法)
多くの場合,図による計算(対数方眼紙の利用,計算図表を含む),補間法,誤差の扱いなどのうちから適当なものを選ぶことになろう。また,場合によっては,この内容を独立した項目として扱わず他の内容の中に含めることがあってもよい。
課程によって必要があれば,さらに実験式や近似公式を扱うことも考えられる。
課程によって必要があれば,さらに簡単に,極座標の概念を導入し,r=k0の程度の曲線を扱うことも考えられる。また,「数学Ⅰ」の幾何的内容の扱い方によっては,この項目の中での解析的な扱いのほうを少なくして,画法幾何学的な扱いを中心にして指導することがあってもよい。
高等学校 学習指導要領 数学科編
昭和30年12月26日 改訂版発行
昭和33年3月10日 再訂版発行
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