第3章 農業科の各科目の目標と内容
1.総 合 農 業

1.性   格

(1) 「総合農業」は,その地域の将来のよい農業自営者になるために必要な農業に関する教育の内容を,有機的に一つの学習体系に統合したものである。

(2) 「総合農業」の教育内容は,地域農家の必要や生徒の必要によって異なる。したがって「総合農業」は,作物や家畜などの取上げ方,およびそれぞれの組合せ方などにより,さまざまな特色をもってくるものである。

(3) 「総合農業」の学習においては,教師の指導のもとに生徒みずから行う実習(学校農場実習および家庭実習〔ホームプロジェクト〕)が,学習の大きな原動力になるものである。

(4) 「総合農業」の学習は,学校農業クラブの活動によって,円滑に進められるものである。

(5) 「総合農業」は,将来のよい農業自営者を目ざすものであるが,これを学習することによって,農業技術者としての素養も得られるものである。

2.目   標 (1) 自分の家ならびに地域の環境と農業との関係を理解し,それに応じてみずから農業を計画する能力を養う。

(2) よい農産物を生産性高く生産し,これを有利に販売するに必要な技術ならびに経営能力を養う。

(3) 農業に関する自然的,社会的,経済的環境を改善する能力を養う。

(4) 農業の個人的,社会的な意義を自覚し,進んでこれを改良しようとする態度を養う。

3.具体的な到達目標

 「総合農業」の「目標」を達成するためには,まず,到達すべき具体的な目標を決めておいて,それを一つ一つ達成していくようにする必要がある。したがって各学校は,地域農業の実態を調査し,次にあげるものの中から必要なものを取り上げ,また足りないものはさらに加えるべきである。

 なお,これらの具体的な到達目標の中には,1年間で到達できるものもあるであろうし,2年ないし3年間かからなければ到達できないものもあろう。したがって,各学年の到達目標を決めるには,これを最も適当な学年だけに取り上げるものもあるし,さらに中間目標を決めて一歩一歩この目標に近寄り,最後にこれを達成するように計画するものもあるであろう。
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
 1.地域の環境と農業に関するもの       

1.地域の自然的,社会的,経済的環境を理解する。     

2.自然的,経済的環境は,作物・家畜の種類・品種やその生育を支配する。     

3.自然的ならびに経済的環境によって,農業経営の組織や規模が決定される。     

4.わが国の農家は,がいして耕地面積が少なく,穀作中心の農業経営を営んでいるものが多い。     

5.わが国の農業では,特に労働や肥料の集約度が高い。     

6.わが国の農業では,農業所得が少ないものが多い。     

7.わが国の農業と地域の農業を比べ,地域の農業の特色を理解する。     

8.地域の農業とわが家の農業を比べ,わが家の農業を理解する。

 2.農業経営と土地利用に関するもの     

1.それぞれの地目を合理的に利用することができること。     

2.地力を見分け,これを高めることができること。     

3.土地の賃貸借の契約ができること。     

4.登記の手続ができること。

      

1.適地適作・作付回数の増加および適当な輪作によって,土地の生産性が高まる。     

2.土地の自然的条件は,ある程度まで人為的に改良することができる。     

3.土地改良や水利改良によって,地力を高めることかできる田畑が少なくない。     

4.耕地の拡大や草地・林地の利用は,農業経営を有利にする場合が多い。     

5.交通機関の発達は,農業経営を有利にする場合が多い。     

6.主穀偏重の経営方式は,土地の生産力を低下させる場合が多い。     

7.土地の貸借や所有には,契約や登記が必要である。     

8.農地改革は,自作農を創設し農業生産を高め農村を民主化するためにおこなわれたものである。

 3.農業経営と労働に関するもの     

1.自家労力の評価ができること。

      

1.わが国の農業は,主として自家労力によって経営されているから,これを合理的,能率的にすることがたいせつである。     

2.適期作業は労働の生産性を高める。     

3.農業労働は季節によって繁閑の差がはげしい。     

4.農作業の繁閑の差は,作物・家畜の種類・品種の組合せや,農産加工・林業などをうまく取り入れることによって調節することができる。     

5.畜力や機械力によって,労働手段を高度化することや,作業方法を合理化することは,農業労働を楽にし,労働能率を高める。     

6.農作業は,協同することによって有利になる場合がある。     

7.土地の交換分合によって、畜力や機械力の利用が容易になり,労力の節約ができる場合が多い。

 4.農業経営と販売・購買・金融に関するもの     

1.その資材がどれだけ生産に役だつかを考えて,有利に資材の調達ができること。     

2.生産物を合理的に処理することができること。     

3.規格に応じた包装・荷造ができること。     

4.農産物の需給や価格の変動に対して,ある程度の見とおしがつくこと。     

5.農産物の市場出荷,特に共同出荷ができること。     

6.経営に必要な資金を有利に調達できること。

      

1.農産物の価格は,農業経営に大きな関係があり,また国民の生活にも影響するところが大きい。     

2.農産物の価格は,生産者の立場を考えて,合理的に決めなければならない。     

3.農産物の価格は,生産や販売の調節によって,ある程度まで調整することができる。     

4.販売する農産物は,特に市場の要求に合うように計画的に生産しなければならない。     

5.農産物は,規格や包装をそろえれば,販売に有利である。     

6.農産物は共同出荷するほうが,有利である。     

7.共同出荷する農産物は,初めからその目的に従って生産する必要がある。     

8.農家の必需品は,協同で購入するほうが有利である。     

9.農業生産に要する資金の需要は季節的である。     

10.農業金融は商工金融に比べ,長期低利のものが多く利用されている。     

11.農業金融のために,農業協同組合の機関や農業手形の制度などがある。

 5.農業経営と作物・家畜の特性に関するもの     

1.作物・家畜の特性調査ができること。

      

1.作物や家畜を取り入れたり,組み合わせたり,また数量を決めるには,その特性を知ることがたいせつである。     

2.作物・家畜の発育は,発育中の温度・水分・光線・養分などに影響される。したがって,自然状態のもとでは,栽培および飼育の期間や場所が制限されるものが多い。     

3.作物が発育するためには,地上部と地下部の発育関係にある種の相関が必要である。     

4.作物のうちには,その生育中に一定期間低温に合わなければ,成熟しないものがある。     

5.花芽の分化や果実の発育には,栄養生長と生殖生長の調和がたいせつである。     

6.家畜の発情や妊娠には,栄養状態が影響する。     

7.作物のうちには,受精しなくても果実が発育するものと,受精しなければ発育しないか,または発育のよくないものとがある。     

8.作物のうちには,比較的酸性に強いものと,そうでないものがある。     

9.作物・家畜のうちには,自然的環境や栽培・飼育条件のわずかな変化によっても,収量・品質に大きな違いを生ずるものがある。     

10.作物のうちには,地力の消耗がはなはだしいものと,そうでないものがある。     

11.作物・家畜のうちには,集約的な栽培・飼育を要するものと,粗放的な栽培・飼育のできるものとがある。     

12.作物・家畜のうちには,自給を目的とするものと,販売を目的とするものとがある。     

13.作物・家畜のうちには,それを取り入れるにあたって,わりあいに資本を要するものと,そうでないものがある。     

14.作物・家畜のうちには,資金の回転の早いものと,そうでないものがある。     

15.作物のうちには,耕地を長期間利用するものと,そうでないものがある。     

16.作物・家畜のうちには,経済的利用年齢の長いものと,短いものがある。     

17.作物・家畜のうちには,収益度の高いものと,そうでないものがある。     

18.作物・家畜のうちには,価格変動の影響を受けやすいものと,そうでないものがある。

 6.栽培・飼育等の技術に関するもの     

 (栽培技術に関するもの)     

1.栽培暦がつくれること。     

      

      

      

      

      

      

2.郷土の食用作物・工芸作物・飼料作物・緑肥作物・野菜・果樹・草花などのおもな種類・品種の見分けができること。     

3.輪作をくふうして,土地の肥よく度を高めることができること。     

4.草花や花木の開花期や休眠期間を調節することができること。     

5.じゃがいもの芽出しができること。     

6.抑制栽培ができること。     

7.わらがこい・木わくなどで温床がつくられること。     

8.よく発熱するように温床をつくることができること。     

9.電熱温床の計画や実施が完全にできること。     

10.温床の日々の管理ができること。     

11.苗床やはちものに,うまくかん水することができること。     

12.種の塩水選ができること。     

13.果樹・草花などの,さし木・さし芽・つぎ木・とり木ができること。     

14.草花の子葉や本葉などによって,目的とする苗の良否を見分けることができること。     

15.苗木の良否の見分けができること。     

16.苗の良否や品種の見分けができること。     

17.誘引や芽摘みによって,園芸作物の生育を調節することができること。     

18.郷土にあるおもな果樹の整枝や,せん定ができること。     

19.庭木の簡単な整枝や,せん定ができること。     

20.苗の植付や,植えかえができること。     

21.よく成るように果菜類が仕立てられること。     

22.すいか・かぼちゃ・なす・トマトなどの人工授粉ができること。     

23.野菜の軟化栽培ができること。     

24.こまかな種をよく発芽させることができること。     

25.自動耕うん機・すき(犁)・砕土機・カルチベータなどが使いこなせること。     

26.郷土にあるおもな作物の収穫物の品質の鑑定ができること。     

27.作物の収穫期を見分けることができること。     

28.郷土のおもな作物の収穫をすることができること。     

29.穀類・豆類や草花の種のくん蒸ができること。     

30.いも類・野菜類・球根類の貯蔵ができること。     

31.花を飾ることができること。     

32.桑の各種の仕立ができること。     

33.桑の単位面積当りの収量が推測できること。     

34.桑の全芽育成ができること。     

35.桑の肥培管理ができること。     

      

      

      

      

36.作物のおもな害虫を見分けることができること。     

37.作物のおもな病気を見分けることができること。     

38.郷土のおもな作物の病害虫の防除暦がつくれること。     

39.おもな殺菌・殺虫剤を使用できること。     

40.種ものの薬剤消毒ができること。     

41.種ものの温湯消毒ができること。     

42.凍霜害対策ができること。     

      

      

      

      

      

      

43.土性・土層の見分けがつくこと。     

44.土の酸性の度合を知り,石灰の必要量の算出ができること。     

      

      

      

      

45.緑肥の生産量の目安がつくこと。     

46.材料に応じてつみ肥をつくることができること。     

47.つみ肥・しも肥などの量の目安がつくこと。     

48.しも肥を衛生的,効果的に使うことができること。     

49.穂肥の要否と時期を決めることができること。     

50.作物の種類に応じて合理的な肥料配合と施用ができること。     

51.菜・だいこんが,他の品種と雑種した個体の見分けがつき,間引ができること。     

52.野菜などの種採り用の母本の選択ができること。     

53.一代雑種がつくれること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

54.郷土の林地に適した木を選ぶことができること。     

55.郷土において重要な樹木の苗を育てることができること。     

56.苗木の良否を見分けることができること。     

57.林地に植えつけることができること。     

58.補植・下刈・つる切・除伐・枝打・間伐ができること。     

59.薪炭林の択伐ができること。     

60.郷土に適した竹,その他の特用樹種の栽培ができること。     

      

      

61.食用きのこの栽培ができること。     

      

62.炭がまを築いて炭を焼くことができること。     

63.立木や森林の材積の側定や評価ができること。     

64.立木を切って運搬することができること。    

  (飼育技術に関するもの)     

65. 家畜のおもな品種の見分けがつくこと。     

66. 飼育する土地・目的,品種の特徴などから,取り入れる家畜の品種および頭羽数を決めることができること。     

67.家畜の個体について審査ができること。     

68.家畜の健否の見分けがつくこと。     

69.外形・歯が(牙)などから年齢の見分けができること。     

70.血統書がつくれること。     

71.家畜の輸送ができること。     

      

72.家畜の繁殖計画ができること。     

73.徴候によって発情の見分けができること。     

74.家畜の交配ができること。     

75.家畜の簡単な人工授精ができること。     

76.妊娠の鑑定ができること。     

77.妊娠中の管理ができること。     

78.家畜の出産の手当ができること。     

79.種卵を採ることができること。     

80.人工および母鶏による,ふ(孵)化ができること。     

81.生後の日数に応じて,ほ乳・離乳ができること。     

82.人工ほ乳ができること。     

83.幼畜の育成ができること。     

84.鶏やあひるの育すうができること。     

85.幼畜のとうた・選別ができること。     

86.雌雄鑑別ができること。     

      

87.飼料標準によって飼料の給与計画ができること。     

88.家畜の1日分の飼料の量を決めることができること。     

89.おもな飼料用の野草の見分けがつくこと。     

90.乾草やサイレージをつくることができること。     

91.飼料の貯蔵ができること。     

92.給飼用器の設計ができること。     

93.畜舎や舎内設備の設計が,環境や用途に応じてできること。     

94.畜舎の整理や清掃が能率よくできること。     

95.家畜の標識や鼻輪をつけることができること。     

96.乳をしぼることができること。     

97.豚や羊などの去勢ができること。     

98.家畜の肥育ができること。     

      

      

99.家畜の病気が早めに発見できること。     

100.簡単な,かん腸または投薬・注射などの治療がきること。     

101.畜舎や家畜の消毒ができること。     

102.伝染病にかかった家畜の処置ができること。     

      

      

      

103.家畜の調教ができること。     

104.役畜に装具をつけることができること。     

105.家畜を使って,耕起・中耕・草取・うね立てなどができること。     

106.だ駄)載や牛馬車によって運搬ができること。     

     
 

      

      

      

107.蚕卵を解剖しはい(胚)子の発育程度を観察することができること。     

108.飼育室・貯桑室が設定できること。     

109.いろいろな飼育法により春蚕・夏秋蚕の飼育ができること。     

110.蚕体解剖ができること。     

111.蚕病の予防や病蚕の処理ができること。     

112.ぞく(簇)中の保護ができること。     

113.収繭が適期にできること。     

114.繭の鑑定ができること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

115.飼育量による蚕さ(沙)の量の計算ができること。     

116.真綿その他の蚕糸の副産物の加工ができること。     

117.蚕種の卵数2万粒に要する桑園の面積,蚕室・蚕具および消耗品の数量が計算できること。     

118.桑葉の売買,特に条桑による売買ができること。     

119.桑葉および繭の生産費が算出できること。     

120.繭の掛目を算出して1貫目の価格を決めることができること。     

      

  (農産加工技術に関するもの)     

121.郷土における農産加工の生産計画をたてることができること。     

122.農産加工場の建物・設備の設計ができること。     

123.各種の加工用機械の取扱と分解・組立ができること。     

124.製品の品位鑑定ができること。     

125.原料の品質の見分けができること。     

126.麦芽をつくることができること。     

127.水あめ・甘酒の糖化の程度が側定できること。     

128.発酵中のパン生地の手入れができること。     

129.こうじの手入れができること。     

130.みそ・しょうゆの製造諸原料の配合ができること。     

131.豆腐・こんにゃくの凝固剤の添加量を決めることができること。     

      

      

      

      

      

      

      

132.乾燥果実のいおうくん(燻)蒸ができること。     

133.簡単な火力乾燥器の設計ができること。     

134.かんづめ・びんづめの密封や殺菌ができること。     

135.ゼリーポイントを決めることができること。     

      

      

      

136.つけもの原料の配合ができること。     

137.果じゅうの清澄ができること。     

138.かきの渋抜きができること。     

139.生野菜・果実の保存ができること。     

140.果実酒がつくれること。     

      

141.生乳の品質の鑑定ができること。     

142.セパレータを用いてクリームの分離ができること。     

143.かくはん(攪拌)の終期を決めることができること。     

144.ウォーキングが能率的にできること。     

145.クリームの酸度の測定ができること。     

146.小家畜の,と殺・解体ができること。     

      

147.豚肉の浸せき(漬)液を調製できること。     

148.豚肉のくん煙ができること。     

149.乳酸発酵中の管理ができること。     

150.搾油機の取扱ができること。     

151.植物繊維の調製ができること。

      

      

1.作物の発育状態は土地の肥よく(沃)度や施肥量によって違う。     

2.作物の地下部がよく発育するには,そのまわりに空気がいるが,じゃがいも・さつまいものように地下部の肥大を必要とするものには,特にたくさんの空気がいる。     

3.作物の花芽の分化や発育は,生育中の温度や日の長さに影響される。     

4.切り花をするには,水揚げのよいことが必要である。     

5.ある土地に適する作物の種類・品種は,その栽培目的,土地の栽培環境,輪作関係によって違う。     

6.作物の種類・品種の感温性・感光性によって成熟の時期が違い,また栽培適地も異なる。     

7.作物には,生産の時期を変えると市場価値の高まるものがある。     

8.作物の中には,栽培法をくふうして生産の時期を変えることのできるものがある。     

9.花や野菜を普通と違った時期に生産するには,特別の手入れや,資材や技術を必要とする。     

10.作物は,種の貯蔵のしかたや貯蔵の期間によって,発芽や生育の状態が違う。     

11.種まき前に種を処理することによって,発芽や生育を促すことができる。     

12.充実して栄養に富んでいる種からは強い芽が出る。     

13.作物の中には,栄養体の一部を繁殖に供するものと,種を使うものとがある。     

14.苗の良否には,苗床の地温・水温,日照,有機物の使用量,苗の疎密,草取・病気・害虫などが影響する。     

15.栽培の様式を変えることによって,必要な労力の量や時期を変えることができる。     

16.質のよい収穫物をたくさん取り入れるには,均等な発育が必要である。     

17.種まき・植付の密度は,気温や土の肥よく度,施肥量,植付の早晩,品種の特性・用途などによって違う。     

18.花芽の分化や結実がおこなわれるころの水分・養分・日照,手入れの良否などは,作物の収量に大きな影響を与える。     

19.せん定・摘果などの手入れは,木の状態によって違う。     

20.作物の収穫の時期は,収量や品質に大きな影響を与える。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

21.桑は,品種によって葉質・収穫量等の性状や用途が違う。     

22.桑は,品種によって栽培法が違う。     

23.桑の仕立方は,気候・収穫法などによって違う。     

24.桑は,肥料のやり方,仕立方,手入れのしかたなどによって発育・収量・葉質に大きな差ができる。     

25.桑の病気や害虫にはいろいろな種類があり,それぞれに適当な予防駆除対策がある。     

26.栽培の時期を変えることによって病害虫を避けることができる。     

27.病気や害虫に対する抵抗力は品種によって違う。     

28.同じ作物でも温室や温床で栽培する場合には,特別の病気や害虫が発生することが多い。     

29.作物の病気は,虫やきずによってひろがる場合もある。     

30.病原菌や害虫卵などは種ものについてひろがることがある。     

31.病気や害虫の発生は,気象などの条件によって消長する。     

32.雑草の種類や生育のしかたは,土地や季節によって違う。     

33.草取には,薬剤によって雑草を駆除する場合や,いわゆるめくら除草をする場合がある。     

34.作物の冬越しの難易は,その含糖量に影響される。     

35.落果は,天候・栄養状態などの不調和による場合と,病気や害虫による場合とがある。     

36.土の酸性の程度は,作物の発育や病害と深い関係がある。     

37.作物の生育には,作土の性質や深さだけでなく下層土の状態,地下水の高さも影響する。     

38.水稲が健全な生育をするには,土の中の鉄の働きが大きい。     

39.土の中にマンガンなどの微量要素が欠乏すると,作物の生育が悪くなることがある。     

40.速効性窒素肥料を有効に使うには,適当に分けて施すのがよい。     

41.飼料として価値あるものを直接に肥料として使うよりも,家畜に与えて,そのふん尿を利用したほうがよいことが多い。     

42.緑肥を使う場合には施肥量と使用法に注意しなければならない。     

43.施肥量と施肥法は,土地の様子と作物の種類によって違う。     

      

      

44.作物の形質には遺伝するものとしないものとがある。     

45.よい遺伝質をもっている種からはよい作物が得られる。     

46.品種の改良は生産力に大きな影響を及ぼしている。     

47.品種改良には遺伝の法則がたいへん役だっている。     

48.品種改良には,系統とうた(淘汰)をおこなう場合や,雑種や倍性や突然変異を利用して新しい品種をつくる場合がある。     

49.他花受粉をするものと自家受粉をするものとによって,種の採り方が違う。     

50.一代雑種には,生育が盛んで生産力の高いものがある。     

51.同じ系統の集団のみでくり返して種を採れば,品質や収量が落ちるものがある。     

52.主要作物の品種改良は国や地方の試験場などでおこなわれているが,特殊なものは民間でもおこなわれている。     

53.よい種を能率よく採るには,よい採種組織をつくる必要がある。     

54.よい種苗を供給するため品種の登録の制度が設けられている。     

55.環境要素の影響によって木の育ちぐあいが違う。     

56.森林には,更新のしかたや作業の方法の違ういろいろな型のものがある。     

57.農用林はその目的によって木の種類が違う。したがって,いろいろな手入れ・保護の方法がある。     

58.苗木や林木に対しては,急激なあるいは慢性的な危害があり,それぞれの害に対していろいろな対策がある。     

59.竹林の経営その他特用樹種の栽培には,特殊な取扱方が必要である。     

60.森林内には,脂・樹脂・精油・タンニン原料などの採れるいろいろな植物がある。     

61.和紙の原料として,いろいろな林産繊維が使われる。     

62.森林内には,食用きのこ・有毒きのこや,木材を腐朽させるきのこなど,いろいろなきのこの種類がある。     

63.木炭にはいろいろな性質があり,品質も違う。そうして,それぞれに応じた使い方がある。     

      

64.適当な伐期は,木の生長やその用途によって違う。     

      

65.飼育する家畜の種類・品種は,気候・土地・用途などによって決まる。     

      

      

66.信用ある家畜販売者からよい家畜を買うことができる。     

67.家畜の血統から,ある程度までその能力を判断することができる。     

68.審査によって家畜を選ぶことができる。     

69.正確な年齢の見分けは,不正な売買と無益な損失を防ぐことができる。     

70.輸送方法の適否は家畜の消耗に関係する。     

71.すぐれた種畜からはよい子孫が得られる。     

72.交配する時期は,乳・肉などの販売,育成の時期,幼畜生産の目的などから決まる。     

73.受胎率は発情期間中の時期によって違う。     

74.妊娠中の管理は,流産や,出産の難易に関係する。     

75.出産の前後には特別な注意がいる。     

      

76.ほ乳する子の数は,親のほ乳能力と乳の出ぐあいによって決まる。     

77.親のほ乳力以上の子はとうたするもよいが,人工ほ乳することによって有利に育成することもできる。     

78.離乳の時期は,親の栄養と子の発育の状態によって決まる。     

79.幼畜育成の適否は,将来の能力発揮に影響する。     

      

      

      

80.家畜の種類・用途・能力によって与えるべき栄養の量や質が違う。     

81.飼料標準によって飼料を配合することは,栄養の効率を高める上に役だつ。     

82.粗飼料と濃厚飼料の配合の割合は,経営の所得に関係する。     

83.給飼用器の構造は,食べることの難易や飼料を利用する割合に関係する。     

84.飼料は,乾燥したり,サイロに詰めたりして貯蔵することができる。     

85.畜舎の構造や設備および管理は,家畜の健康,管理の能率に関係する。     

86.畜舎を清潔にし,個体の手入れをよくすることは病気を予防し,能力をじゅうぶんに発揮させるのに役だつ。     

      

87.じゅうぶんな運動や放牧は家畜を強健にする。     

88.雄は,去勢すると性質が温和になり,肉の質もよくなる。     

89.家畜を肥育すると良質の肉が多く得られる。     

90.家畜の病気には予防がいちばんたいせつである。     

91.病気にかかったらなるべく早めに手当をすると回復を容易にする。     

92.適切な消毒と予防注射は伝染病を防ぐのに役だつ。     

93.なおる見込みのない病気にかかった家畜は,適当な時期にと殺することによって損失を最小限にくいとめることができる。     

94.伝染病にかかった家畜の処置を誤ると病気がひろがる。     

95.畜力利用の効果は,調教や管理の良否などによって決まる。     

96.畜力利用の能率は,地勢・土質,使用する農機具の種類,役用のしかたなどによって決まる。     

97.正しく装具をつけることによって,家畜の疲労を少なくし,危害を防止する。     

98.規則的な使役と,適時の休息は家畜の消耗を少なくする。     

99.うまや肥の生産量は,家畜の種類・大小および敷きわらの量などによって決まる。     

100.うまや肥の肥料成分は,その取扱によっても異なる。     

101.蚕種の保護・取扱・催青法は蚕の健康と収繭量とに大きな影響がある。     

102.蚕室の位置・構造と蚕具の適否とは,蚕の発育と飼育労力とに大きな影響がある。     

103.貯桑の適否は葉質に大きな関係がある。     

104.桑の葉質の適否は蚕の発育の良否と,繭質・糸質の優劣に影響する。     

105.蚕にはいろいろな種類があって,それぞれ発育経過や繭の品質が違う。     

106.蚕の品種は,遺伝の法則を応用して新しい形質のものをつくることができる。     

107.掃立の時期・方法は,その後の蚕の発育に影響する。     

108.蚕の飼育法は稚蚕と壮蚕とでたいへん違う。     

109.蚕の飼育法は,飼育室の温湿度や給桑のしかた,飼育装置などによって違う。     

110.蚕の取扱を合理的にするには,その外景・内景を知ることがたいせつである。     

111.絹糸せんは五齢期中期以後急激に肥大する。     

112.上ぞく法とぞく中の保護は,営繭伏況,繭の質,糸の質に大きな影響がある。     

113.営繭は室温の高低によって遅速がある。     

114.蚕にはいろいろな病気があって,それぞれに適当な予防・駆除対策がある。     

115.さなぎ・蚕さ,桑皮・残桑・くず繭・くず糸などは,蚕業の副産物として有効に利用される。     

      

      

      

      

116.養蚕は農業経営の面から重要な役目をする。     

      

      

      

      

117.農産加工事業の規模は,原料の供給・設備・労力,製品の販路などによって違う。     

      

      

      

      

118.めん類に食塩を加えると粘りが強くなる。     

119.パンは,アルコール発酵やふくらし粉から出る炭酸ガスの作用でふくれる。     

120.大麦は,適度の温度・水分・酸素を与えると発芽して麦芽になる。     

121.水あめや甘酒の糖化の程度はでんぷんのヨード反応で調べられる。     

122.よいこうじや酵母を使わなければ,よい製品はできない。     

123.こうじができるには,適度の温度・湿度と,じゅうぶんな酸素が必要である。     

124.こうじや麦芽の酵素は,でんぷんを分解して糖分にする。     

125.水あめは,酸で分解してつくることができる。     

126.みその熟成期間は,使う食塩やこうじの量に影響される。     

127.たんぱく質を酸で分解して,しょうゆを速くつくることができる。     

128.大豆のたんぱく質は,塩化マグネシウムなどで固まる。     

129.乾燥果実をつくるには,いおうくん蒸をするとよい製品をつくることができる。     

130.野菜や果実の乾燥速度は,温度・湿度・風速,原料の処理法などに影響される。     

131.かんづめ・びんづめの密封の原理。     

132.びんづめの加熱殺菌の温度と時間は,原料の種類,容器の大小,注加液の濃度,水素イオンの濃度,内容固形量などによって決まる。     

133.ゼリーポイントの決定には各種の方注がある。     

134.つけものは,いろいろな条件によってつかる速さが違う。     

135.清澄法にはそれぞれ長所短所がある。     

136.かきの渋抜きは湯・アルコール・炭酸ガスなどで行われる。     

137.埋蔵・冷蔵・ガス貯蔵などによって果実・野菜を生のまま貯蔵することができる。     

138.牛乳は,バター・チーズ・コンデンスミルク・粉乳・カゼイン・乳糖・乳酸飲料などに加工される。     

139.牛乳の脂肪は遠心力によって分離することができる。     

140.クリーム脂肪球の凝集は,かくはん器の回転速度と温度に影響されることが多い。     

141.ウォーキングは,バターの色沢・風味・組織・保存性などに関係する重要な作業である。     

142.クリームの発酵は人工法によるほうが安全で,よい製品が得られる。     

143.豚肉は,塩づけすることによって風味をよくし,保存性を高める。     

144.豚肉は,くん煙することによってその成分が変化する。     

145.採油の圧搾法・浸出法・溶出法には,それぞれ長所短所がある。     

146.繊維作物の収穫期の適否は製品の品質歩止りに大きく影響する。     

147.植物繊維は,種類に応じてそれぞれ適当な調製法がある。

 7.農業経営と記帳に関するもの     

1.農家経済簿記や労働日記の記帳ができること。     

2.栽培日記や飼育日記の記帳ができること。     

3.農業資産の評価ができること。     

4.建物・農機具・果樹・家畜などの減価償却の計算ができること。     

5.農業所得・生産費などの計算ができること。     

6.農家経済簿記・労働日記・栽培日記・飼育日記などから,農業経営の改善点を見いだし,さらに栽培・飼育上の改善の方途や労力節減の方途をたてることができること。     

7.農家にかかる租税の算定ができること。

      

1.農業経営の計画と実施にあたっては,計画的に記帳し,その結果を反省し,絶えずくふう改善することがたいせつである。     

2.農家経済簿記や労働日記・栽培日記・飼育日記などによって,資産や損益や経営の実情がわかる。     

3.固定資本は,減価償却を毎年の費用として見積る必要がある。     

4.農民の公租・公課にはいろいろあるが,簿記をつけることによって公正な租税負担額を算定することができる。     

5.農業協同組合を運営するには,農業協同組合簿記がわかることが必要である。

 8.農業経営と農家生活・農村生活に関するもの     

1.農家生活の改善すべき点を見いだすことができること。     

2.農家の衣食住生活の改善計画の大綱がたてられること。     

3.農業協同組合など,農家独特の金融を利用し,またこれをもりたてることができること。     

4.文化的な農村生活の設計がたてられること。

      

1.農業経営と農家経済は密接不可分の関係にある。     

2.農家の生活を向上させるには,農業所得をふやすことが必要であるが,農家の生活改善もたいせつである。     

3.農業協同組合は,農民自身の協同によって,農業経営や農家生活を豊かにするための組織である。     

4.建物・農機具・土地改良などは,協同して設備し,共同で利用すれば,有利な場合が多い。     

5.農家の衣食住生活には,不合理な点もあるので,これを強力に改善しなければならない。     

6.農村生活を豊かにするには,絶えず教養を高め,健全なレクリェーションを普及することが必要である。     

7.農村生活を向上するために,ある面の生活の協同化も考えられる。     

8.農村問題を解決するには,常に知識や技術を交換し,あい協力して事にあたることが必要である。     

9.農村の文化を向上させるには,進んで社会の文化を受け入れ,正しい判断のもとに,これを消化することがたいせつである。

 9.農業経営と農業政策に関するもの       

1.国際経済の動向は,日本農業に影響するところが大きい。     

2.外国農業の動向は,日本農業に影響するところが大きい。     

3.国や地方公共団体の農業政策は,生産増強を目ざし,農地改革・土地改良・交換分合・開拓・農業資金等に関して進められている。また,林業・畜産等の増強に関する政策も推進されている。     

4.農村における人口問題は,農政上大きな問題である。     

5.個々の農業経営は,国や地方公共団体の政策によって影響されることが多い。     

6.農業の改良や生活の改善に関する国および地方公共団体の指導は,農業改良普及事業を通じておこなわれている。     

7.農業経営や農村生活を改善するには,農業改良普及員や生活改良普及員の助力を得ることがたいせつである。     

8.農業経営を遂行するには,関係ある法規を知らなければならない。

 10.農業経営の診断と設計に関するもの     

1.自分の家や地域の農業の実態調査ができること。     

2.実態調査の結果を分析し,問題点をはあくすることができること。     

3.自分の家では,どんな農業経営の形態が適当であるかを判定することができること。     

4.自分の家に適する作物の種類・品種や作付面積を決めることができること。     

5.その土地に適した輪作計画がたてられること。     

6.自分の家の経営に適する家畜の種類・品種・頭羽数を決めることができること。     

7.作物・家畜の特性や栽培・飼育の目的にかなった生産計画がたてられること。

      

1.実態調査の項目や調査の方法には,いろいろある。     

2.実態調査の結果を見ると,経営のいろいろな面がわかる。     

3.農業経営の問題点をはあくし,それを改善するには,実態調査の結果を利用し,それを分析して考察することが必要である。     

4.農業経営は,自分の家または社会で必要な農産物を多く生産するばかりでなく,農業所得を大きくするようにおこなわなければならない。     

5.作物や家畜の種類・品種は多いが,それらのうち,何を,どの程度取り上げ,またどう組み合わせて経営するかは,自然的,経済的環境やその経営に属する生産手段,労働力の量質などの関係によって決められる。     

6.単作よりもいくつかの作物を組み合わせて経営するほうが安全であり,有利である場合が多い。     

7.耕種と畜産とは,畜力の利用や飼料・肥料の自給を通じて関連し合い,経営を堅実にする。     

8.農産加工は,生産物の価値を高め,労力の利用を有効にし,販売を有利にする。     

9.農業に林業が加味されると,経営が堅実になる場合がある。     

10.同じものを続けて栽培・飼育すれば,市場の需給による収入の増減は免れないが,生産技術は向上し,生産資材は節約される。     

11.あまり多くの種類の作物や家畜を取り入れると,生産技術の高度化を妨げ,販売上不利になることが多い。     

12.農業を経営するには,長期計画とともに,毎年度の前に精密な経営計画をたてておくことが必要である。     

13.経営計画は,経営の実態と総合的な改善計画に基いてたてられることがたいせつである。     

14.農業経営は,環境の変化や技術の進歩に伴って,常にくふう・改善されなければならない。

 なお「総合農業」の性格にかんがみ,特にホームプロジェクトや学校農業クラブにおいて達成される具体的な到達目標は次のようである。
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
 1.ホームプロジェクトに関するもの     

1.ホームプロジェクトの計画がたてられること。     

2.ホームプロジェクトを計画に従って遂行できること。     

3.ホームロジェクトの記録ができること。     

4.ホームプロジェクトの評価ができること。     

5.ホームプロジェクトの評価・反省に基いて改善計画をたてることができること。

      

1.ホームプロジェクトは,生産をあげることのほか,技能向上や生産手段の改善などのことを考慮して実施される。     

2.ホームプロジェクトは,初め簡単な生産プロジェクトを主体にして出発し,徐々に,種類・規模の拡大をはかるとともに,技術プロジェクト・改良プロジェクト等を加えて総合をはかり,ついには自分の家の農業経営改善に発展することを目ざしている。     

3.ホームプロジェクトは,常にわが家の農業経営改善の立場にたって,計画され,実施され,反省されることがたいせつである。

 2.学校農業クラブに関するもの     

1.大ぜいの人の前で,農業の問題について発表することができること。     

2.農業の問題について,他人と意見を交換し,正しい判断をくだすことができること。     

3.正しい議事法によって,会議を進めることができること。     

4.互に協力して,農業改良や生活改善の仕事を進めることができること。     

5.品評会・研究会・見学などの催しを,あい協力して運営することができること。

      

1.自分の意見や研究を発表することは,その考えが正しいかどうかを確かめることになると同時に,お互の生活を向上させる上に役だつ。     

2.他人に話をするには,話の内容をみずからよく理解し,話の要点を明らかにするとともに,視聴覚資料を利用するなどの着意がたいせつである。     

3.他人と意見を交換するには,他人の意見を尊重して聞き,その内容を理解して,正しい判断をくだすことがたいせつである。     

4.会議を民主的におこなうことは,農村を民主化し,農村に協同性をつちかうために必要である。     

5.会議を正しく,しかも能率的に進めるには,議事規則を設け,各人の意見を平等に尊重することがたいせつである。     

6.正しい結論を出すためには,まず,いろいろな意見を発表させ,その議論の中心と判断すべき点とを明らかにすることが必要である。     

7.問題によっては,小委員会を設けて研究する必要がある。     

8.会議の結果は正しく記録しておく必要がある。     

9.お互に個性を理解し協力し合うことによって,農業を改良し,楽しく豊かな生活をすることができる。     

10.いろいろな催しや奉仕活動を行うことは,地域社会の発展のために役だつものである。     

11.催しに参加する人を多くするには,参加する人の立場や状況をよく知る必要がある。     

12.催しを円滑に進めるには,多くの人の意見を取り入れ,精密な計画をたて,関係方面との交渉や連絡を確実にすることがたいせつである。     

13.催しを愉快に能率的に進めるには,各人の責任を明らかにし,その責任を遂行することがたいせつである。

 

4.教 育 内 容

 「総合農業」の教育目標を達成するに必要な教育内容は,上に述べた性格・目標に基き,地域農家の必要や生徒の必要などによって異なるものである。

 そして地域の農業の形態には,水稲作を中心とするもの,畑作を中心とするもの,酪農を中心とするもの,野菜栽培を中心とするもの,果樹栽培を中心とするものなど,いろいろある。したがって,作物や家畜などの取上げ方,およびその組合せ方にはさまざまあるが,またこれらの農業形態に共通に必要なものもある。

 いま,「総合農業」の教育内容をあげると次のようである。しかし,これらの教育内容は,単元のまとまりや学習の順序を意味するものでない。

1.地域の環境と農業

 地域の環境,環境と作物・家畜,地域の農業,わが家の農業。

2.農業経営と土地利用

 適地適作・多毛作・輪作,土地の改良,草地の作用,農用林地の利用。

3.農業経営と労働

 適期作業,農繁期と農閑期の対策,労働手段の高度化,作業方法の合理化,共同作業,土地の交換分合。

4.農業経営と販売・購買・金融

 農産物の販売機構,農産物市場,農産物の価格と生産費,必需品の購入,販売・購買と協同,農業金融の特徴.組合金融・短期金融・長期金融。

5.農業経営と作物・家畜の特性

 作物・家畜の生態的特性,作物・家畜の経営的,経済的特性。

6.栽培・飼育等に関する技術

 栽培・飼育等に関する技術には,次の左欄にあげるようにいろいろあるが,これらは次の右欄にあげてある作物や家畜などを素材として体得されるものである。しかし,これらの取上げ方や,その組合せ方は,地域によって異なるものであるから,これらを厳選しなければならない。

 
(1) 栽培技術     

  (1) 作付順序     

  (2) 有望な作物や品種の導入     

  (3) 種ものの選択     

  (4) 種ものの予措     

  (5) 種まきと植付     

  (6) 苗の育成     

  (7) 耕し方     

  (8) 土寄せ     

  (9) 中耕     

  (10) 草取     

  (11) 間引     

  (12) 肥料のやり方     

  (13) 水のかけ引き     

  (14) せん定・整枝     

  (15) 抑成・促成     

  (16) 気象の害の対策     

  (17) 病虫害の対策     

  (18) 農機具の使い方     

  (19) 畜力と機械力の利用     

  (20) 収穫期の判定     

  (21) 収穫の予想     

  (22) 収穫物の処理・貯蔵     

  (23) 種採り     

  (24) 種の貯蔵     

  (25) 植林     

  (26) その他

食用作物     

 稲・麦・豆・雑穀・じゃがいも・さつまいも・その他。     

      

      

      

工芸作物     

 麻類・こうぞ・たばこ・茶・菜種・その他。     

      

      

飼料作物・緑肥作物     

 桑・牧草・れんげそう・青刈大豆・ザードウィッケン.ルーピン・その也。     

      

野 菜     

 きゅうり・かぼちゃ・すいか・なす・トマト・いちご・だいこん・にんじん・ごぼう・結球白菜・たまな・ちしゃ・セルリー・ほうれんそう・ねぎ・たまねぎ・うど・その他。     

      

      

      

果 樹     

 桃・梅・びわ・桜桃・なし・りんご・かき・みかん・いちじく・くり・その他。     

花 木     

      

      

農用林     

 竹・苗木・しいたけ・木炭。

(2) 飼育技術     

  (1) 品種の鑑定     

  (2) 有望品種の導入     

  (3) 体形・能力の審査     

  (4) 飼料の生産     

  (5) 飼料の購入・配合・給与     

  (6) 畜体の手入れ     

  (7) 家畜の衛生     

  (8) 卵・乳・肉の審査     

  (9) 生産物の処理     

  (10) 家畜の繁殖     

  (11) 幼畜の育成     

  (12) 家畜の肥育     

  (13) 蚕の飼育     

  (14) その他

      

家 畜     

 うさぎ・鶏・あひる・七面鳥・やぎ・羊・豚・牛・馬・その他。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

     

みつばち     

その他

(3) 農産加工技術     

  (1) 原料の選定     

  (2) 原料の調製・配合     

  (3) 調味料・香料・着色料等の選定・配合     

  (4) 各種加工の操作     

  (5) 製品の鑑定

      

農産加工     

 穀類・豆類・いも類・野菜類・果実類・工芸作物・畜産物などの加工。

  7.農業経営と記帳

 農業経済簿記・労働日記・栽培日記・飼育日記,生産費の計算,協同組合簿記。

8.農業経営と農家生活・農村生活

 農業経営と農家経済,農家生活の特質,農家生活の向上,農業協同組合,農村生活の改善。

9.農業経営と農業政策

 日本農業と外国農業,農業政策,農業改良普及事業,農業法規。

10.農業経営の診断と設計

 実態調査,農業経営の分析,農業経営の診断,農業経営の改善設計。

 なおこれらの学習においては,学校における理論や実験・実習・家庭実習(ホームプロジェクト),および学校農業クラブなどが重要であるが,特に「総合農業」の性格に基き,ホームプロジェクトおよび学校農業クラブについては,次の諸点を体得させることが必要である。 1.ホームプロジェクト

 計画・実施・記録・評価。

2.学校農業クラブ

(1) 目的

(2) 組織

(3) 事業

a.学校農場実習やホームプロジェクトの実施の援助

b.地域社会との協力

c.教養活動

d.レクリェーション・その他

(4) 運営
5.指導上の留意事項 (1) 各学校が,「総合農業」の教育計画をたてる場合には,特に実態調査をおこない,教育内容を重点的に選ぶことがたいせつである。

(2) 「総合農業」の学習においては,1個学年,12単位の履修を原則とするが,学校の事情や定時制の課程においては,適宜増減することもできる。

(3) 家庭実習(ホームプロジェクト)や学校農業クラブを指導し,生徒の自主的な活動を図ることが必要である。

2.土・肥 料

1.性   格

(1) 「土・肥料」は,土・肥料を有効に利用して土地の生産力を高め,農業生産をおこなうための基礎的な事項を学習する科目である。

(2) 「土・肥料」は,主として実験・調査を通じて学習するものである。

(3) 「土・肥料」は,「理科」を基礎とし,「総合農業」や「作物」・「園芸」などと緊密な関連をとって学習するものである。

2.目   標 (1) 作物栽培の基礎となる土および肥料の性質を理解させる。

(2) 土を管理・改良するに必要な基礎的な能力を養う。

(3) 肥料を合理的に使用するに必要な基礎的な能力を養う。

(4) 自分の家や,郷土の土の実態を理解し,進んで地力を維持増進しようとする態度を養う。

(5) 「土・肥料」の実験・調査を通じて,科学的な調べ方を理解し,合理的に栽培しようとする態度を養う。

3.具体的な到達目標
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
 (土)     

1.土じょう調査と土じょう図の作成ができること。     

2.土の物理的性質,ことに機械分析や,容積重測定などの検査ができること。     

3.土の化学的成分や,性質などについて簡易な検査ができること。     

4.土の酸性の度合の側定と,石灰の必要量の算出ができること。     

5.秋落田の改良ができること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

 (肥 料)     

6.おもな作物の三要素・微量要素などの欠乏の診断ができること。     

7.おもな販売肥料(化学肥料・有機質肥料)の選択と施用試験ができること。     

8.おもな化学肥料の鑑定ができること。     

9.うまや肥・つみ肥の製造法の試験ができ,その良否の判別と生産量の目安がつくこと。     

10.各種緑肥の肥効と,その生産量の目安がつくこと。     

11.根粒菌の検鏡と接種ができること。     

12.肥料の配合がうまくできること。     

13.肥料の価格計算ができること。     

14.作物の施肥設計ができること。     

15.簡単な肥料試験ができること。

      

1.土は岩石が風化し,さらに生物が働いてできたものである。     

2.土の性質は,気候・地形・母岩・植物などの生成条件によって違い,土はいくつかの土じょう型に区分される。     

3.土の性質は,管理・作物・肥料などの人為によって変化する。     

4.作土の性質,深さ,心土の性伏は,作物の生育に影響する。     

5.土粒の集合状態は,土の空気や水に関する性質と密接な関係がある。     

6.土の中の空気は,作物の生育に重要な役割をもっている。     

7.土の中の水の性質と移動は,土の種類と密接な関係があり,作物の生育や肥料の溶脱等に関係する。     

8.土を団粒化するには,石灰や有機質肥料を施すとよい。     

9.土の中にはいろいろの無機成分があり,それぞれ重要な役目をもっている。     

10.土の中の肥料成分は,土の状態によって利用できるかたちになったり,利用できないかたちになったりする。     

11.土の中には,マンガン・ほう素等の微量要素や,苦土・けい酸等の成分が欠乏していることがある。     

12.土の肥料成分の吸収力は,土の種類によって強弱がある。     

13.腐植は,作物養分の給源となるばかりでなく,他の肥料成分を保持し,あるいは土の改良にあずかって,生産力に影響することが大きい。     

14.土の中のこう(膠)質物の性質と量は,土の生産力と密接な関係がある。     

15.土のこう質物は,土の中の肥料成分の動きに大きく影響する。     

16.置換性塩基の種類と量は,土の物理的,化学的性質と密接な関係がある。     

17.土が酸性になるのは,おもに置換性塩基が減少して不飽和になるからである。     

18.土の酸性の程度は,作物の生育や病害と深い関係がある。     

19.日本の土は,おおむね塩基に欠乏し,酸性土になっている。     

20.日本の開墾地は特に強酸性の土が多く,りん酸分にも欠乏している。     

21.酸性土の改良には,石灰の使用とともにりん酸の補給や,うまや肥・つみ肥の併用がよい。     

22.土の肥よく土と微生物の発育条件には,きわめて密接な関係があり,作物のよくできる土は微生物がよく発育しうる条件をそなえている。     

23.土の中の有機物の分解や,腐植のできる様子は,微生物の種類によって違う。     

24.土の中の窒素化合物の形態の変化には微生物が関与する。     

25.土の中では微生物の働きによって遊離窒素が固定される。     

26.畑と水田とでは繁殖する微生物の種類や働き方が違う。     

27.土の乾燥や加熱は,土中の窒素や,その他の成分を有効にする。     

28.土をかわかしたときに出てくるアンモニア態窒素は,ききめが高い。     

29.水をはった水田では,土層が酸化層と還元層に分れる。     

30.秋落田では,硫化水素(硫化水素ガス・水溶性硫化物)が生じて稲の根をいため,生育を阻害する。     

31.秋落田を改良するには,含鉄物料を施用し,あるいは客土をおこなって鉄を補給することが肝要である。     

32.秋落田には無硫酸根肥料が適当である。     

33.秋落田では,各種の塩基およびけい酸などが欠乏していることが少なくない。     

34.傾斜地では,土の浸食が激しく行われ,浸食には土の性質が関係する。     

35.作物の生育は,養分との関係においては,この最も不足する養分に支配される。     

36.作物の養分吸収は,根の呼吸作用と深い関係がある。     

37.各種の肥料成分は,作物の生育にそれぞれ独特の影響を与える。     

38.肥料成分の作物に吸収される割合は,肥料の種類,用い方,土の状態,作物の種類等によって違う。     

39.肥料の種類は,収穫物の品質に大きな影響を与える。     

40.肥料の種類は,土の性質に大きな影響を与える。     

41.肥料は,その含んでいる肥料成分の形態によって性質が違い,それぞれ適した使い方がある。     

42.合理的施肥を行うには,各種肥料の主成分の含量や,形態を知る必要がある。     

43.速効性窒素肥料を有効に使うには,適当に分けて施すのがよい。     

44.水稲の穂肥は,原則として出穂24〜25日前に施すが,その要否は,その時期の稲の生育状況による。     

45.窒素肥料は,酸化層と還元層の中で,それぞれ違った変化をする。     

46.水田に元肥として窒素肥料を施すとき,深肥にすると成分の損失を防ぐことができる。     

47.石灰窒素を有効に使うには,いろいろのくふうがいる。     

48.りん酸肥料を使うには,いろいろのくふうがいる。     

49.溶成りん肥・トーマスりん肥は水溶性のりん酸肥料でないが,よくきく肥料である。     

50.尿素は葉面散布にも使われる。     

51.うまや肥・つみ肥のつくり方や管理法は,その品質に関係する。     

52.しも肥や家畜のふん尿は,貯蔵のしかたによって成分の損失程度が違う。     

53.しも肥は食塩を多量に含むので,使用法に注意すべきである。     

54.豆科作物は,根粒菌を接種することによって,よくできる。     

55.緑肥を使う場合には,施肥量と使用法に注意しなければならない。     

56.有機質肥料の分解には,その中に含まれる炭素と窒素との割合,リグニンの含量,分解時の反応,通気などが影響する。     

57.肥料の反応は,化学的反応と生理的反応に区別して考える必要がある。     

58.肥料の配分については,配合してよいものといけないものとがある。     

59.肥料を合理的に使うには,副成分のことも考えなければならない。     

60.肥料購入の場合は,市価が安いだけでなく肥効の高いものを選ぶ必要がある。     

61.作物の施肥設計をたてるには土の性質,肥料の種類,栽培方法など,いろいろな条件を考えなければならない。     

62.合理的な施肥をおこなうには,まず肥料試験をおこなうのがよい。     

63.肥料試験には,その目的により,三要素試験・適量試験・施肥法試験・肥効比較試験等があり,またその方法によって,水耕試験・はち試験・現地試験などに大別される。     

64.国はよい肥料を販売させるために,肥料取締法等の規則を決めている。

4.教 育 内 容 (土)  1.土の断面調査と土の採取

 2.土じょう図の作成

 3.土の標本作製

 4.土の機械分析

 5.土の比重側定

 6.土の容積重側定

 7.土の容水量の側定

 8.土の毛細管現象の測定

 9.土の水分側定

 10.腐植の検出と定量

 11.土の化学的成分の検出(簡易土じょう検定)

 12.酸土の測定と中和石灰量の計算

 13.土の肥料成分吸収力の測定

 14.土のアンモニア化成作用の検定

 15.土の硝酸化成作用の検定

 16.根粒菌の検鏡と接種

 17.窒素循環図の作成

 18.炭素循環図の作成

 19.水田の土層分化の実験

 20.老朽化水田の調査と実験

(肥  料)  21.肥料成分の検出

 22.肥料のまざりものと副成分の検出

 23.おもな肥料反応の実験

 24.肥料配合の理化学実験

 25.うまや肥・つみ肥の積み方に関する実験

 26.三要素試験

 27.三要素適量試験

 28.肥効比較試験

 29.施肥法試験

 30.微量要素に関する実験

 31.葉面散布の実験

 32.水耕法実験

 33.肥料価格計算

 34.作物の施肥設計

5.指導上の留意事項 (1) 「具体的な到達目標」および「教育内容」は,その一例を示したものであるから,地域によって取捨選択するものとする。

(2) 「教育内容」は,学習の単元や順序を示したものではないから,各学校は,地域や生徒の必要,あるいは季節を考慮して,具体的な教育計画をたてられたい。

(3) 学習の効果を高めるために,学習に必要な実験材料・実験器具,学習の方法などについては,つとめて創意くふうされたい。

(4) 学習の効果を高めるために,できるだけ機会をとらえて,現地調査・試験場などの見学,関係機関との連絡を図られたい。

3.作 物 保 護

1.性   格

(1) 「作物保護」は,作物の病害虫を防除し,気象災害の対策をたて,作物の生産を高めるために学ぶ科目である。

(2) 「作物保護」は,主として,実験・調査を通じて学習するものである。

(3) 「作物保護」は,「理科」を基礎とし,「総合農業」や「作物」・「園芸」などと緊密な関連をとって学習するものである。

2.目   標 (1) 病害虫を見分け,これを防除する技能を養う。

(2) 気象災害を予知し,これを防止する技能を養う。

(3) 郷土におけるおもな病害虫や気象災害の種類,その被害ならびに発生を多くさせる条件を理解する。

(4) 災害発生の状況を判断し,合理的に処理する能力を養う。

(5) 地域社会の公益を尊重し,協力して計画的に実践する態度を養う。

3.具体的な到達目標
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
  (病害虫)     

1.病害虫標本をつくれること。     

2.シャーレや飼育箱によって害虫の飼育ができること。     

3.微生物の検鏡と培養ができること。     

4.病原体を植物に接種できること。     

5.病気や害虫による被害の調査ができること。     

6.郷土のおもな作物の病害虫の防除暦がつくれること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

  (農 薬)     

7.薬剤の効力を比較する試験ができること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

  (気象災害)     

8.微気象を測ることができること。     

9.微気象を変えることにより,ある種の災害を防ぐことができること。     

10.天気図が理解できること。     

11.霜害発生を予想できること。     

12.気象災害の原因となった気象の資料をつくることができること。     

13.気象災害の起りやすい場所が見分けられること。     

14.郷土のおもな気象災害を防止するに必要な気象暦をつくることができること。     

      

      

      

      

      

      

  (雑 草)     

15.除草剤によって駆除できる雑草を見分けられること。

      

1.地域に発生するおもな害虫の種類を知る。     

2.ある種の害虫は,その分布が局限されている。     

3.害虫の種類によって,口器・羽・足などの構造および習性に違いがある。     

4.伝染病の病原中,重要なものは,菌類・バクテリア・バイラスである。     

5.病原の植物体侵入方法には,いろいろある。一般に侵入まで飽和湿度に保たれることが必要である。     

6.発病するまでの潜伏期間は,病気の種類,季節などで異なる。     

7.病気や害虫に対する作物の抵抗力は,品種によって違う。     

8.越冬する病菌や害虫を駆除することは,病害虫を防ぐ効果が大きい。     

9.ある種の害虫は,天敵によってその繁殖がおさえられる。     

10.被害は発生の時期・部分・程度によってかなり違う。     

11.病気や害虫の発生を予察することによって,予防や駆除を効果的におこなうことができる。     

12.薬剤には,液剤と粉剤などがあって,それぞれ長所がある。     

13.殺菌剤の作用には,病原体を殺す場合と病原体の発育や胞子形成を抑制する場合とがある。     

14.殺虫剤が害虫にきくのには,口器・皮膚,あるいは呼吸器官などからはいることを理解する。     

15.殺虫剤の効果は,害虫の発育程度や習性によって違う。     

16.散布する薬剤の調合割合は,作物の種類・発育時期・環境などによって違う。     

17.農薬の中には,混ぜ合わせると効果を減じたり,薬害を起したりするものがある。     

18.展着剤を加えることによって,薬剤の効果を高めることが多い。     

19.薬剤の効果や薬害は,散布量・散布時期によって違う。     

20.雪で枝が折れるのは,積雪の重みや沈下によるものである。     

21.雪の深さによって透過する光量や地温が違う。     

22.雪面に土などをまくと融雪が促進される。     

23.ささ立て・土寄せ・敷きわらなどで,温度が下がるのを防ぐことができる。     

24.霜害が起るような天気のときには,夜間地面近くの気温に著しい逆転が認められる。     

25.夜間の冷気は高い所から低い所に向かって流れるので,低い所は霜害が起りやすい。     

26.地面を煙でおおったり,畑に水や液肥をまくと,夜間に温度のさがるのを防ぐことができる。     

27.霜柱の立ち方は,土の水分含量・土質・肥培管理などによって違う。     

28.干害や水害や湿潤害の発生程度は,雨天のひん(頻)度や雨の強さによって違う。     

29.林の風上と風下は,風が弱く,林の高さが高いほど,風の弱くなる地域が広くなる。     

30.地形や地物によって風の吹き方が違う。     

31.風がある程度以上強くなると耕土が飛び始める。     

32.除草剤の効果は,薬剤の種類・雑草の種類によって違う。

4.教 育 内 容  以上述べた具体的な到達目標を達成するに必要な教育内容は,次のとおりである。しかしこれらの教育内容は,単元のまとまりや学習の順序を意味するものではない。 (病 害) 1.病原菌の培養

2.病原菌の分離

3.病原微生物の観察

4.病原体の接種

5.病害標本の作製

6.種ものの消毒試験

7.土の消毒試験

8.薬剤の調製と散布試験

9.発病程度と被害との関係調査

10.作物品種の抵抗性調査

11.郷土の病害調査

12.防除暦の作成

(害 虫) 13.害虫の採集とその標本作製

14.害虫の飼育と習性の調査

15.郷土の害虫とその加害調査

16.郷士の害虫の天敵調査

17.作物の種類・品種の耐虫性調査

18.薬剤の調製と散布試験

19.殺虫剤の効果比較試験(使用量・時期)

20.薬剤混用試験

21.防除暦の作成

(気象災害) 22.積雪と光や温度や荷重との関係についての実験

23.融雪促進実験

24.防寒・防霜に関する基礎実験

25.降霜予想に関する調査

26.降霜の地域分布に関する調査

27.霜柱に関する実験

28.ひでりや大雨に関する調査

29.強い風に関する調査・実験

30.気象暦の作成

(雑 草) 31.除草剤による雑草の駆除試験
5.指導上の留意事項 (1) 「具体的な到達目標」および「教育内容」は,その一例を示したものであるから,地域および農業科の他の科目や他教科との関連を考慮して取捨選択するものとする。

(2) 「教育内容」は,学習の単元やその順序を示したものではないから,各学校は,地域や生徒の必要を考慮して,具体的な教育計画をたてられたい。

(3) 学習の効果を高めるために,学習に必要な実験材料・実験器具,学習方法などについては,つとめて創意くふうされたい。

(4) 夜間に実施しなければならない実験については,家庭実習または宿泊当番の機会を活用するようにする。

(5) パラチオン剤や殺そ剤など,毒性の強い農薬を取り扱うにあたっては,「毒物・劇物取締法」および「取締基準令」など,関係法規を厳守されたい。

(6) 資料収集その他については,つとめて農業試験場・測候所など,関係機関との連絡を図られたい。

4.野 菜 園 芸

1.性   格

 「野菜園芸」は,主として園芸課程で履修される科目で,野菜に関する専門的な知識・技能を体得し,他の園芸科目および「土・肥料」・「作物保護」・「農業工作」・「農業経営」などと緊密な関連をとって学習するものである。

2.目   標

(1) 郷土の自然的,社会的,経済的環境と野菜園芸との関係を解させる。

(2) 環境に応じ,野菜を合理的に栽培する技能を養う。

(3) 野菜栽培技術の根拠となる科学的な知識・理解を養う。

(4) 野菜園芸の経営に関する社会的,経済的な知識・理解を養う。

(5) 豊かな情操をつちかい,野菜を愛育する態度を養う。

3.具体的な到達目標
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
  (野 菜)     

1.おもな野菜の種類・品種の見分けができること。     

2.地域社会に適した優良な種類・品種の選択ができること。     

3.合理的な栽培設計がたてられること。     

      

  (栽培管理)     

4.種ものや苗ものの良否の見分けができること。     

5.種ものの消毒ができること。     

6.種ものの発芽試験や催芽ができること。     

7.種ものをじょうずにまくことができること。     

8.苗床や温床がつくれること。     

9.温床の踏込ができること。     

10.温床や温室の保温管理ができること。     

11.苗床の管理ができること。     

12.苗ものの植えかえができること。     

13.苗ものの植付ができること。     

14.整地・うね立てができること。     

15.土性・土層の見分けができること。     

16.土の酸性の度合が測定でき,石灰の必要量がわかること。     

17.つみ肥や床土がじょうずにつくれること。     

18.おもな肥料の見分けができること。     

19.合理的に肥料の施用ができること。     

20.間引がじょうずにできること。     

21.草取・中耕・土寄せ・敷きわらなどが,じょうずにできること。     

22.整枝・摘心などができること。     

23.支柱立て,誘引ができること。     

24.つぎ木ができること。     

25.野菜の栄養状態を正しく見分けられること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

26.花芽分化の見分けができること。     

27.とうだちの調節ができること。     

28.おもな病害虫の見分けができ,その防除ができること。     

29.おもな農薬の使用ができること。     

      

      

      

      

30.気象の災害対策ができること。     

31.軟化・芽もの栽培ができること。     

32.促成・抑制栽培ができること。     

33.適期に収穫ができること。     

34.野菜の品質鑑定ができること。     

35.野菜の貯蔵ができること。     

36 野菜の調製・荷造・輸送・販売ができること。     

      

      

      

      

  (品種改良と種採り)     

37.種採りと種の調製ができること。     

38.人工交配がうまくできること。     

39.品種改良ができること。

      

1.野菜は,自然環境や栽培条件のわずかな変化によっても,収量・品質に大きな違いが生ずる。     

2.ある土地に適する野菜の種類・品種は,その土地の環境・栽培目的・栽培方法によって違う。     

3.野菜園芸の経営向上は,合理的な栽培設計によることが多い。     

      

4.充実して栄養に富んでいる種ものからは,よい苗ができる。     

5.種ものの消毒は,その病害虫の防除に役だつ。     

6.種ものの催芽は,発芽を早め,発芽をそろえる。     

7.種まきの時期や方法は,生育・品質・収量に影響を及ぼすことが多い。     

8.苗ものの良否は,野菜の生育・収量に大きな影響を及ぼす。     

9.苗ものの良否には,苗床の材料・構造・床温,日照,有機物の使用量,苗の疎密,草取・病害虫などが影響する。     

10.温床の発熱は,踏込材料の種類・分量,踏込方法・時期などによって違う。     

11.野菜の生育には,水分・空気・温度・日照・肥料などの要因が影響を及ぼす。     

12.生産を向上させるためには,よい種ものや苗ものを選択する必要がある。     

13.苗ものの植えかえは,野菜の植えいたみを少なくすることが多い。     

14.じょうずに植えつけられた苗ものは,その後の生育が良好である。     

15.整地やうね立ての良否は,土の性質や野菜の生育に影響する。     

16.土は,その種類によって組織や性質が違う。     

17.土の酸性の度合は,野菜の生育や病害虫と深い関係がある。     

18.つみ肥や床土の良否は,野菜の生育に影響を与えることが大きい。     

19.肥料は,種類によって,主成分の種類・含有量・性質・使用法などが違う。     

20.適切な施肥量と施肥法は,土の性質と野菜の種類・生育状態・栽培法などによって違う。     

21.草取・中耕・敷きわらなどは,土の性質を変え,野菜の生育に影響することが大きい。     

22.整枝・摘心をおこなうには,結果習性を理解する必要がある。     

23.支柱立て,誘引は,日照・通風をよくし,倒伏を防ぎ,生育をよくするために役だつ。     

24.野菜のつぎ木には,病害虫の防除などに役だつものがある。     

25.落果は,天候や栄養状態の不良,病害虫などによって起る。     

26.日照・温度・養分・水分・生育の程度などは,花芽の分化やとうだちなどに影響することが多い。     

27.野菜栽培の難易は,病害虫に支配されることが大きい。     

28.おもな病害虫の加害は,生育の時期によって,その種類・程度が違う。     

29.病害虫の生活の様子は,種類によって違う。     

30.病害虫の種類によって,防除する薬剤の種類・使用法が違う。     

31.ホルモン剤は,野菜の栽培上有効に使われる場合がある。     

32.気象災害は,生育・品質・収量に大きな影響を及ぼす。     

33.軟化の時期と方法は,品質に大きな影響がある。     

34.殊特な資材・技術・管理などによって,普通と違った時期に栽培することができる。     

35.野菜の特殊栽培を取り入れることは,経営を有利にすることが多い。     

36.収穫の時期は,収量や品質に大きな関係がある。     

37.野菜の商品価値を高め,純益を多くするには,調製・荷造・輸送・販売などを考慮する必要がある。     

38.野菜の貯蔵は,その方法・温度・湿度・野菜の性状などによって,影響されることが大きい。     

39.野菜の特性を知り,栽培技術を理解することが,生産物の品質鑑定に役だつ。     

40.種採りや調製の良否は,発芽に影響する。     

41.野菜の一代雑種には,生育が盛んで生産力の高いものがある。     

42.品種改良には,遺伝の法則がたいへん役だち,系統とうたをおこなう場合と,雑種や倍数性や突然変異などを利用して,新しい品種をつくる場合とがある。     

43.よい種苗を供給するため,品種の登録制度が設けられている。

4.教 育 内 容 1.野  菜  野菜の意義,野菜の分類,野菜の種類と特性。 2.野菜園芸  野菜園芸の特質と現状,農業経営と野菜園芸。 3.育  苗  育苗の目的,温床場・温床わく・被覆物,加温(踏込・電熱).床土,温度の調節,育苗中の管理,冷床・練床。 4.普通栽培  果菜類・根菜類・葉菜類・洋菜類・その他について,その利用と成分,生産伏況,経営上の特性,性状と環境,品種,生理・生態的特性,栽培管理,収穫と貯蔵,荷造と出荷。 5.特殊栽培  促成栽培・抑制栽培・軌化・芽もの栽培。 6.野菜の品種改良と採種栽培  品種改良の目的と方法,採種の適地と様式,一代雑種の利用と採種,種の扱い方 7.野菜園芸の経営  環境と野菜園芸,自給園芸・市場園芸・輸送園芸・加工園芸,作付計画と収支決算。 5.指導上の留意事項 (1) 各学校が,「野菜園芸」の教育計画をたてる場合には,特に実態調査をおこない,教育内容を重点的に選ぶことがたいせつである。

(2) 「野菜園芸」の教育内容は,地域社会の状況および生徒の必要ならびに学校の施設・設備などにより,特色をもたせることがたいせつである。

(3) 学習の効果を高めるために,できるだけ機会をとらえて,現地調査および市場・研究機関の見学,関係機関との連絡などを図られたい。

5.果 樹 園 芸

1.性   格

 「果樹園芸」は,主として園芸課程で履修される科目で,果樹に関する専門的な知識・技能を体得し,他の園芸科目および「土・肥料」・「作物保護」・「農業工作」・「農業経営」などと緊密な関連をとって学習するものである。

2.目   標

(1) 郷土の自然的,社会的,経済的環境と果樹園芸との関係を理解させる。

(2) 環境に応じ,果樹を合理的に栽培する技能を養う。

(3) 果樹の栽培技術の根拠となる科学的な知識・理解を養う。

(4) 果樹園芸の経営に関する社会的,経済的な知識・理解を養う。

(5) 豊かな情操をつちかい,果樹を愛育する態度を養う。

3.具体的な到達目標
〔技   能〕
〔一般的な知識・理解〕
  (果  樹)     

1.おもな果樹の種類・品種の見分けができること。     

2.地域社会に適した優良な種類・品種の選択ができること。     

3.合理的な栽培設計がたてられること。     

      

  (栽培管理)     

4.苗木の良否の鑑別ができること。     

5.苗木の植付ができること。     

6.土性・土層の見分けができること。     

7.合理的に土の管理ができること。     

      

      

      

8.おもな肥料の見分けができること。     

9.合理的に肥料の施用ができること。     

10.根群の分布伏態を知ることができること。     

      

      

      

      

      

11.花芽分化の見分けができること。     

12.おもな果樹の仕立ができること。     

13.整枝・せん定ができること。     

14.摘心や誘引ができること。     

15.摘果・摘房ができること。     

16.袋掛けがじょうずにできること。     

17.くだものの落果を防ぐことができること。     

18.台木の養成ができ,よい台木を選ぶことができること。     

19.さし木・つぎ木・芽つぎなどができ,その後の管理がじょうずにできること。     

20.果樹の栄養状態を正しく見分けられること。     

21.草取・中耕がじょうずにできること。     

22.おもな病害虫の見分けができ,その防除ができること。     

23.おもな農薬の使用ができること。     

24.気象の災害対策ができること。     

25.人工交配ができること。     

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

      

26.適期にくだものの収穫ができること。     

27.くだものの品質の見分けができること。     

28.くだものの貯蔵ができること。     

29.くだものの選果・荷造・輸送・販売ができること。     

      

  (品種改良)     

30.品種改良ができること。

      

1.果樹は,自然環境や栽培条件のわずかな変化によっても,収量・品質に大きな違いが生ずる。     

2.ある土地に適する果樹の種類・品種は,その土地の環境・栽培目的・栽培方法によって違う。     

3.果樹園芸の経営向上には,特に永年作物であることを考慮してつ,合理的な栽培設計をたてる必要がある。     

      

4.生産を向上させるためには,よい苗木を選択する必要がある。     

5.じょうずに植えつけた苗木は,その後の生育が良好である。     

6.土は,その種類によって組織や性質が違う。     

7.果樹は,種類によって生育最適の土の条件が異なる。     

8.草生法・敷草法・裸地中耕法など,土の取扱方によって,果樹の成育に大きな影響を及ぼす。     

9.肥料は,種類によって,主成分の種類・含有量・性質・使用法などが違う。     

10.適切な施肥量と施肥法は,土の性質と果樹の種類・生育状態・栽培法などによって違う。     

11.土層の深さと果樹の生育には,深い関係がある。     

12.根群の分布・活動の状態は,果樹の種類や土の性質によって違うので,合理的な土の管理が必要である。     

13.果樹の生育には,水分・空気・温度・日照・肥料特に土などの要因が影響を及ぼす。     

14.果樹の花芽分化は,枝の生育程度,水分・養分・温度・日照・手入れの良否などによって影響される。     

15.果樹の仕立は,その果樹の性質に応じておこなう必要がある。     

16.整枝・せん定をおこなうには,結果習性を理解する必要がある。     

17.誘引・摘心は,日照・通風をよくし,生育をよくする。     

18.枝の生長,花芽の着生は,枝の扱い方によって,大きな影響を受ける。     

19.結果を制限することによって,品質を向上させ,安定した収量をあげることができる。     

20.ある種の果実では,袋掛けは,病害虫を防ぎ,外観をよくするに役だつ。     

21.落果は,天候や栄養状態の不良,病害虫などによって起ることが多い。     

22.果樹や台木の生理・形態を理解することによって,合理的な繁殖ができる。     

23.草取・中耕などは,土の性質を変え,果樹の生育に影響することが大きい。     

24.果樹栽培の難易は,病害虫に支配されることが大きい。     

25.おもな病害虫の加害は,生育の時期によって,その種類と程度が違う。     

26.病害虫の生活の様子は,種類によって違う。     

27.病害虫の種類により,防除する薬剤の種類・使用法が異なる。     

28.ホルモン剤は,果樹の栽培上有効に使われる場合がある。     

29.気象災害は,生育・品質・収量に大きな影響を及ぼす。     

30.果樹には,受精しなくても果実が発育するものと,受精しなければ発育しないか,または発育のよくないものとがある。     

31.受粉を確実にし,結果数を多くするために,受粉樹を植えたり,人工交配をおこなったりする必要がある。     

32.収穫の時期は,収量や品質に大きな関係がある。     

33.果樹やくだものの特性を知り,栽培技術を理解することが,くだものの品質鑑定に役だつ。     

34.くだものの貯蔵は,その方法,温度・湿度,その性状などによって影響されることが大きい。     

35.くだものの商品価値を高め,純益を多くするには,選果・荷造・輸送・販売などを考慮する必要がある。     

36.品種改良には,遺伝の法則がたいへん役だち,系統とうたをおこなう場合と,雑種や倍数性や突然変異を利用して,新しい品種をつくる場合とがある。     

37.よい苗木を供給するため,品種の登録制度が設けられている。

4.教 育 内 容 1.果  樹  果樹の意義,果樹の分類,果樹の種類と特性。 2.果樹園芸  果樹園芸の特質と現状,農業経営と果樹園芸。 3.果樹の一生  苗木の養成と植付・仕立,生長と結実。 4.各種の果樹栽培  果樹栽培の適地とおもな種類・品種の栽培。 5.果樹園の管理  せん定・整枝・結実作用・落果・摘果・袋掛け,枝・葉および根の生長と働き,果実の発育,土の管理,果樹の施肥,果樹の保護,果実の収穫とその処理。 6.果樹の品種改良  品種改良の目的と方法,品種改良事業の組織 7.果樹園芸の経営  環境と果樹園の経営,果樹の樹齢と経営,労力資材の合理化,果樹園の経営様式,収支決算。 5.指導上の留意事項 (1) 各学校が,「果樹園芸」の教育計画をたてる場合には,特に実態調査をおこない,教育内容を重点的に選ぶことがたいせつである。

(2) 「果樹園芸」の教育内容は,地域社会の状況および生徒の必要ならびに学校の施設・設備などにより,特色をもたせることがたいせつである。

(3) 学習の効果を高めるために,できるだけ機会をとらえて,現地調査および市場・研究機関の見学,関係機関との連絡などを図られたい。