第3章 社会科社会

1.目   標

 中学校社会科の政治・経済・社会的内容を主とするものの学習では,それらの諸事象の理解に必要な一般的知識を,歴史的背景や世界的視野の裏づけのもとに与えることにより,現代日本における政治・経済・社会・国際関係などにおいて,どのような問題があるかについて目を開かせ,また個人の価値や人生の問題については,身近な生活上の問題を通して考えさせるようにしている。しかし専門的知識や現実社会の諸問題については,あまり程度の高いものに深入りしないようにしている。

 高等学校社会科社会は,主として政治的,経済的,社会的および倫理的な観点から,現実社会の諸問題について,それを,それぞれの分野における諸科学の成果に基き,さらに世界的視野に立って,明らかにすることによって,当面する課題を科学的,合理的に批判し解決していくことのできるような能力や態度を身につけ,有能な社会人としての資質を育成しようとするものである。

 以上の趣旨を達成するためには,具体的には,次のような目標が考えられる。

 

2.内   容

 次に示した各項目は,高等学校のすべての課程を通じ,単位数の多少にかかわらず,履修させることが適当であると考えた内容の素材である。

 これらの内容の素材については,社会科および社会の目標に基き,さらに各項目に付記した説の観点や取扱方を考慮て,各学校において,適切な指導計画を立案することが望ましい。

 したがって,次の各項目の組織・配列は,単元の例を示すものではなく,また,それぞれの項目を,分解したり,相互に組み合わせて指導してもよい。各項目は,指導の上で,同等の重要さをもち,同量の時間数をこれにあてるものと考えたのでもない。

(1) 民主政治

(2) 日本の政治 (3) 国際政治 (4) 経済生活 (5) 日本経済の諸問題 (6) 国際経済 (7) 農村生活の向上 (8) 労働関係の改善 (9) 社会福祉の増進 (10) 個人と社会 (11) 人間の理念と民主的社会 (12) 社会生活のあり方と文化の創造  

3.留 意 事 項

(1) 社会科社会の学習は,単なる専門的知識の講義だけに終ったり,特定の領域の学習だけに片寄ってはならない。さまざまな基本的問題の学習を通して,社会科社会の目標がよく達成されるようにすることがたいせつである。また,中学校社会科との関連を考慮して学習が行われるようにすることも必要である。

(2) 単位時間数の少ない場合は,一般に,より重点的に素材の配列をくふうしたり,あるいは,学習活動の方法に配慮を加えるようにすることがたいせつである。

(3) 低学年に履修させる場合と,高学年に履修させる場合とでは,他の教科との関連を考慮するほか,社会科の他の科目との連絡をじゅうぶん考えて,社会科として一貫した指導計画をもち,そのねらいがよく達成されるようにすることが必要である。

(4) 学習環境の特色は,指導計画の中にできるだけ反映されなければならない。どのような問題にしても,それがそれぞれの学習環境といかに関連しているかを考えて,学習効果を高めることができるような計画を立てることが必要である。