第4章 数学科 数学Ⅱ

 

1.目標および内容

1.目 標

 「数学Ⅱ」は,「数学Ⅰ」をさらに発展させ,「数学Ⅰ」と合わせてやや高い程度において数学科の目標を達成しようとする科目であって,主として次のことを目標とする。

(1) 解析的な方法の特質およびこれと図形的な方法との関連を理解し,その意義を知るとともに,これらを用いて数量的な関係を適切に表現する能力を伸ばす。

(2) 初等的な函数についての理解を深め,代数的な操作を運用する能力を伸ばす。

(3) 図形についての動的な見方を深めるとともに,解析的に図形を扱う能力を養う。

(4) 論理的に筋道を立てることの意味を理解し,その能力を養うとともに,いろいろな場合に前提と結論との関係や論理の進め方に注意を払う習慣を身につける。

(5) 数学的な物の見方・考え方の意義を知るとともに,これらに基づいてものごとを的確に処理する能力と態度とを身につける。

2.内 容

(1) 数学的内容として示したのは,「数学Ⅰ」の代数的内容・幾何的内容に対応するもので,これと中心概念との関係は,「数学Ⅰ」の場合と同じである。

(2) 中心概念の欄では,新たに取り上げられるものとともに,「数学Ⅰ」で指導したものも,かっこの中に付記しておいた。後者についても機会あるごとに指導することが必要である。

数学的内容

a 方程式

因数定理

分数方程式・無理方程式 

b 函数とそのグラフ

グラフの概形のとらえ方

指数函数・対数函数のグラフ

二次函数・三次函数のグラフ

分数函数のグラフ

c 三角函数とその性質

一般角の三角函数とそのグラフ

三角函数の加法定理

d 図形とその方程式

直線の方程式・円の方程式

二次曲線とその方程式

楕円・双曲線・放物線に帰着する軌跡

 

中心概念

a 概念を記号で表わすこと。

記号と対象との対応

(記号・文字による一般的表現,文字式,式の形)

b 概念・法則などを拡張すること。

(拡張の原理)

c 演繹的な推論によって知識を体系だてること。

必要条件・十分条件・同値関係

(公理・定義,定理・命題,証明)

d 函数の大域的な性質や局所的な性質をとらえること。

連続的変化,極限

函数値の増減,周期性

極大・極小

e 式や図形について不変性を見いだすこと。

f 解析的方法と図形的方法との関連。

曲線を表わす方程式

(函数のグラフ)

 

2.内容の説明

数 学 的 内 容

 「数学Ⅱ」における数学的な内容の主眼は,「数学Ⅰ」の内容の補充および発展として,方程式,函数,図形等に対し,解析的な取扱の程度を高め,極限による考察を導入し,高い立場からその研究を進めていくところにある。それぞれの研究対象に対し,式による考察,図形的に表わしての考察を,それぞれ適切に用いていくようにすることがたいせつである。

a 方程式

 「数学Ⅰ」で扱った方程式の種類を拡張し,次数が二次を越える実係数の整方程式・分数方程式・無理方程式について,これらを二次方程式の解法に帰着させる解法の原理を明らかにする。

b 函数とそのグラフ

 「数学Ⅰ」で扱った函数や,三次函数・簡単な文数函数・無理函数および指数函数・対数函数・について,函数値の増減のもよう,式の形,グラフの概形等についての特徴をまとめる。その際に,無限大や極限の考えを導入し,これによって上記の特徴をとらえる方法を明らかにする。

c 三角函数とその性質

三角函数を一般角にまで拡張し,周期函数としての特徴を扱うとともに,加法定理や,特殊な関係にある角の三角函数の間の関係に及ぶ。

d 図形とその方程式

 座標平面によって,点や直線を数・式で表すことについは,すでに数学Ⅰで扱っている。このような解析的な方法を発展させ,二次曲線のそれぞれについての標準形の方程式を用いる程度までを扱う。これによって数学Ⅰで学んだ図形的な方法と解析的な方法との相違や関係を明らかにし,図形について研究がa,b,cで示した函数や方程式と深い関係にあることを明らかにする。

中 心 概 念

 「数学Ⅱ」の中心概念は,「数学Ⅰ」の中心概念のうち,「数学Ⅱ」の内容に即したものは引き続きそのまま取り上げるとともに,そのいくつかについては新たに発展した内容のものが付け加わる。ここでは新しく付け加わるものについて説明することにする。

a 概念を記号で表わすこと。

 新しく強調する考え方としては,対象の種類の違いに応じて,これを表わす記号の種類を変えたり,同じ種類の対象の中で,異なるものを表わすのに同じ文字に添数をつけて表わしたりなどして,表現を見やすくする考え方がある。

b 演繹的な推論によって知識を体系だてること。

 ここでは,必要条件・十分条件という見方や,命題の同値関係を明らかにする考え方が新しいものとして考えられる。

c 函数の大域的な性質や局所的な性質をとらえること。

 「数学Ⅰ」において考えた対応関係・依存関係のとらえ方は,「数学Ⅱ」では,特に函数に対して深まる。函数を大域的,局所的にとらえるためには,独立変数の連続的変化に対応させて従属変数の変化を見ることが必要となる。そしてその方法としては極限による見方が重要なものとなり,これによって,大域的,また局所的な函数値の増減や極大・極小も明らかになる。極大・極小は,それ自身,局所的な性質であるが,これを明らかに

することはまた函数の大域的な変化の全貌をつかむに役だつ。このような一連の見方が「数学Ⅱ」においては新しく加わる。

d 解析的方法と図形的方法との関連

 「数学Ⅱ」では,この面に対して,図形を表わす方程式という考え方が特に強調されるようになる。